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アメリカが、在米日系資産の凍結を決定。
今までにない、強硬な圧力。
合衆国における、日本企業の経済活動を封じこめました。
イギリスとオランダも、ただちに同様の措置をとる姿勢を表明。
同時に、これもアメリカに倣って、対日通商条約の破棄も検討中と。
一気に包囲網が狭まりました。
近衛の、ただ小狡いだけの浅知恵ぶりが、みなさんのハートに火をつけちゃったんですね。
かなり前から、とくに英首相チャーチルが、ルーズヴェルトの対日制裁は甘すぎると公言してたのですが、私も同感でした。
でも、責めないでいただきたい。大統領は、慎重派なんです。
日本は抵抗をあきらめて矛を納めるだろう。
その程度の分別は持っているだろうと、期待をかけて下さってたんです。
残念ながら、持ってませんでした。
それでも、力でわからせようなんて、まだ考えてません。ちょっとキツめに締め上げるだけです。
さて、分別は、生まれるかな?
生まれてほしいものだと思いますよ、私だって。
外相が交代して、一週間経ちます。特に面白い動きはありません。
近衛が日米首脳会談を希望していると盛んにアピールしてるようですが、何か芸でも見せたいのでしょうか。
大統領はお忙しいのです。身の程をわきまえなさい。
芸なら周りのご機嫌取りが、いくらでも拍手してくれるでしょうに。
ゴシップレベルですけど、駐米大使が英語しゃべれないってのは本当なのかどうなのか。
日本ならありえるけどなあ。そんな話題しかないんですよ。
やさぐれる一方です。
国家による、資産凍結。
実はこれ、私も真剣に考えておかなくちゃいけない問題なんですよね。
ジューくんやルースキエくんたちとも相談してますよ。めいめいで、試行錯誤もしています。
みんな切実なんですから。近衛くんも、少しは学びなさい。
明るいニュースも、なくはないです。上海の岡藤さんが、さいきん、中国人になりました。
今後は、江道恩先生とお呼びします。
あの人はほんと、やる気になったらとことんやる。できる。驚きました。
中国語、いま、かなり話せるようです。
岡藤洋行は債権ごと知人に譲り、自宅も引越し。
なんでも、中国人ギャング団同士の抗争に首を突っ込んで、片方の親玉の命を救ったんだそうです。
「俺は日本人だけど、お尋ね者で、二度と戻らない」
って身振り手振りで語り合ってるうちにすっかり信頼され、たちまち幹部になり、もう日本名も捨てちゃったよと。
中国語で、お手紙もらいました。
その系列で亜東銀行の支配人になったので、預金しないか、融資いらないかという営業攻勢を受けてるところです。
乗りましょう。
私も、今後の資産保全について本気で考えなくちゃってところだったので、一部回します。
日系の銀行には一銭も預けたくないのでね。
本命はスイス銀行だけど、満洲からはアクセスしようがないし。
国際金融市場のモノサシは今もポンドからドルへと移行中ですが、日本籍で登記している以上、ドルも危険です。
それを今度の一件で、思い知りました。
是清さんが何十年もかけて築いてきた、国際社会への信用が、いま、完全に消え失せてます。
まことに、やるかたなし。