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ルーズヴェルト大統領、おかえりなさい。
5月27日、二週間ぶりのラジオ出演。やわらかな声で、米国民に直接、メッセージを伝える。
大事ですね、こういう姿勢。
ただ、内容はヘヴィでした。国家非常事態宣言を発令。
いよいよ、総動員体制へと移行です。
同時に、30億ドル超の軍備拡張を議会が承認しました。大日本帝国の国家予算の何百倍だいってね。
まだ開戦してないのが救いですが、ほんとにこの状況でパールハーバー奇襲やっちゃうのかな日本。
わけがわかりませんよ。
商売人には理解不能ですし、ギャンブラーだって、まともならやらない。
カルト宗教、まじやば。
ところで独ソ開戦も近いはずなんですけど、まだ動きは見えません。見えてちゃダメでしょ。水面下ではどうなんでしょうねえ。
私もあれから二週間ほど、対ソ開戦に穴がないか、考えてみました。
1.ドイツ陸軍兵のコンディションに、問題はないですか?
連戦連勝の機甲師団が、弾薬と燃料に余裕を持っていることは信用します。現在は占領地の治安維持を主任務としてるはずですけど、この業務はかなり精神に負担をかけますので、兵士たちをちゃんと休ませてあげてるかどうかが心配です。
日本軍がいい反面教師になると思いますよ。
2.食糧は、余裕ありますか?
目下、とくに西欧での食糧不足はドイツですら深刻な状況にあり、仮に占領地からあるだけ搾り取って準備するとしても、背後に相当の余裕を持つソ連と渡り合うことは無理でしょう。
持久戦は即、死につながる。
そして、失敗して撤退した場合、ドイツは二度とソ連を味方につけられません。最悪の二正面作戦が始まります。
このリスク、私なら絶対に避けます。
よって、対ソ戦はせめてもう一年延期。次の夏にまた考えましょう。
3.モスクワまでの地図は、最新ですか?
地図上では現在の国境からモスクワまで、最短で1000km弱。
ソ連に近代兵器がなければ、たしかに一ヶ月程度で制圧できそうな気もします。
しかし兵器生産力において現状ソ連はアメリカをさえ凌ぎます。理由のひとつは、共産主義。
艦艇・戦車・航空機など、製造過程が複雑重層化するにつれ、資本主義体制下では中間業者が数多く必要になり、コストを押し上げます。
共産主義体制下ではこれを大幅にカットできる。
一点ごとの質ではドイツとは雲泥の差かもしれない。しかし、ソ連の広い国境を考えたら、量を最優先する戦略は極めて正論なのですよ。
なおかつ、ロシア人は地図を扱う天才であることをお忘れなく。
ハルハ河より戻ってからですが、ハルビンのロシア人から面白い話を聞きました。かれらの測量の基本は、天体観測なんです。
星をモノサシに、大地と何万年もつきあってきた。
納得しちゃいました。ロシア人が人類で初めて宇宙へ到達した理由もわかった。
太古からの歴史を持つモチベーション。
かなわないよ。
えー。以上の理由をもって、私はドイツのソ連侵攻って大失策だったんじゃないかな論者へと転向した次第であります。
ヒトラーくん、対ソ開戦を思いとどまるなら今のうちだよ。
必要にして充分な根拠は示せたと思うんだが。どうだろう。
それでもやるなら、君は、カルト教祖以外の何者でもない。
東洋のお猿さんたちと同類だね。残念なことだ。