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到一さんが、帰ってきます。
帰って、でいいのか。定年退職して、満洲へ永住します。
第10師団は昨年、姫路からまるごと満洲チャムスへ移駐してきて、到一さんも師団長だから来てたんです。
後任への引き継ぎを2月までですませ、いったん東京へ。
いろいろ用事を片付けたら、晴れて、大連の新居へ。奥様と一緒に、住み始めるという段取りです。
おつかれさまでした。
これからは、ゆっくり、過ごしてください。
私も、時々、遊びに行きます。
そんな便りを読みながら、心は欧州戦線へ。
ドイツを中心とした、いわゆる枢軸国勢力ですが、日独伊のほか、ハンガリーやルーマニアも加わってます。
3月に入ってからブルガリアとユーゴも加入。
無理矢理でしょうか?
無理矢理でしょうね。
というのも、ユーゴスラヴィア王国については枢軸条約締結の三日後にクーデターで条約が破棄されているからです。
その結果、ドイツ軍に侵攻する口実を与え、2週間かからず新政府軍隊は鎮圧されました。
現在、参加した枢軸諸国による、支配地域の奪い合いが行われています。
むごい。
ギリシアや、アフリカのエチオピアなどへも戦火が拡がっています。
「第二次世界大戦」という呼称も使われ始めました。
「第一次」と呼ばれるようになった20年前の大戦は、参戦国がいずれも疲弊の極みに達した果てに、モスクワとベルリンで革命が起き、いったい誰が誰と戦ってるんだ?と収拾がつかなくなってからやっと、終結しています。
今度はどうなる?
すでに、全人類が滅亡するまで止まらないだろうと予測してる人もいます。山ほど、います。
小説でもどうよそれ、みたいな結末で、そこで思考停止する自称知識人の多いこと多いこと。
要約すれば一行で片付く。それで気がすんじゃう方は、どうぞ、さようなら。
私は過程を気にしたい。
何がどうなったとき、終わるのか?
終わらせるためには、何が必要か?
各プレイヤーは、相互に干渉し合いながら、生存戦略を模索して行動します。
自らの行動は他者の戦略に影響を与えます。
協力、敵対、連合、離反。
これらは、すでに、これからも、めまぐるしく変化します。
中立を保ち続けられるのは、力を持つ者だけです。
その力をもって、行動に出るプレイヤーもいます。
このゲームの終局はどこか。
均衡は、存在するか?
するんです、どこかで。必ず。
その均衡を、平和と呼ぶ人もいますが、間違いです。平和すなわち争いのない状態がゴールなら、生命すべてが死んだ後にしか、ありえません。残念ながらナンセンス。
ヒントは、先の世界大戦。
あのとき、日本は、ヨーロッパに物資を売りまくり、ドイツが敗色濃厚になってから宣戦布告。東洋の権益を分捕りました。
実に小利口でした。
完全なる勝ち組だった。
そこから、学べばよかったのに。
今回は、世界中から、カモられる側に立ってます。
愚かですが、愚かなりに考えて、かれらは行動します。いちプレイヤーとして。
私も私なりの考えで、行動します。いちプレイヤーですから。最適解を求めて。
私の目標なんて、ささやかなものです。
せいぜい、儲けましょう。利用できるものは利用して。
そんな風に行動するプレイヤーが、有象無象、いっぱいいるんですよ。
世界中の商売人が、人類滅亡なんて、起こさせません。起こさせるわけがない。
誰かと誰かは最後まで勝ち残り、均衡点で握手する。
参加する以上、油断は禁物。
最後の最後まで、気を抜けない。
思考停止したら、そこで終わる。
ゲームだと思って、真剣に、戦い抜きましょう。