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1940年11月5日。
全世界注目、アメリカ合衆国大統領選挙の結果が出ました。
フランクリン・デラノ・ルーズヴェルト氏が、米国史上初の連続三選を達成。
八年前、その名が登場したときにも色々なことを考えたように思いますが、8月からの選挙戦をずっと見てきた今また、語りたいことがあります。
民主党。移民の受け入れに積極的で、多様性と扶助を尊重する。
共和党。荒野を切り拓いてきた力を尊び、独立心に重きを置く。
この二大政党から一名ずつの候補者を出し、全有権者の直接投票でリーダーを決めるのがアメリカです。
二期務めてきたルーズヴェルト氏は民主党。挑戦者ウェンデル・ルイス・ウィルキー氏は共和党。
実はウィルキー氏の方が、対独戦については強硬派だったんです。
イギリスの危機を救うため、すぐに参戦し、軍隊を送るべきだと。
ルーズヴェルト氏はもう少し慎重ですが、いずれにしても、モンロー主義で孤立外交という選択肢はすでにUSAにはありません。
枢軸国家どもを、膺懲しなくてはならない。
それを、どう行うか。という段階なんです。
世界中からの難民が、近年、大勢、アメリカでグリーン・カードを得ています。
かれらにとってルーズヴェルト氏は最大の恩人。
その勢力は投票結果に反映されました。
圧勝でしたもの。わかりやすい。
ただウィルキー氏も面白い人で、去年まで民主党員だったそうです。転向者ですね。
ルーズヴェルト人気には勝てないとわかってて共和党から立候補者が出なかったのか。当て馬にされたのか。勘繰ることはできますけど、何らかの形で再登場していただきたい人物です。
演説で、ルーズヴェルト氏を褒めちぎってるんですよ。こんな選挙、見たことない。
党に忠誠を尽くすなんて発想など毛頭無い。喜んで敵役を演じ、米国の世論をまとめることを心掛けた。
すばらしい。こんな人と、商売をしたい。
さてドイツはいよいよ、イギリスを倒した次には、アメリカとの戦争を準備しておかねばならなくなってきました。
日本が当て馬にすらならないことはわかっているはずですから、対英戦で全力を使い切るわけにはいきません。
ネタバレですけどソ連と戦う予定だってあるんだから。
その順序も考えなくちゃいけない。これは大きなアップセット。
アメリカの強みは、生産力と、その資源。
ことに食糧の自給率と輸出能力は端倪すべからざる規模です。
英国本土を陥としたところでドイツが得られるのは束の間の安心くらい。前線のドイツ兵は、廃墟と難民の群れを前に、自らもまた、ひもじい思いに耐えているはずですよ。
豊かな国は、尚更、敵に回さず味方につけるべきでしょうに。
あるいは、水と油が手を取り合って競い合うアメリカをお手本に、自らもそうなればいいのに。なんて思ったりもするのですが。
難しいかな。難しいでしょうね。
ドイツ帝国のイデオロギーは、アーリア人による排他的純潔至上主義。多民族国家とは相容れません。
しかし、不可能では、ないはずですよ。
穢れを知らない者ほど脆いものはないからです。
それに気付けば、よいだけだから。