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私の十年間。それは、永い永い、牢獄でした。
産道通って生まれるときから、意識あったよ。
そのときも、窒息するんじゃないかって、わけもわからず、もがいて、暴れて。
いや、もう、わけわかんなくてさ。とにかく苦しくて。
泣きじゃくりながら。
光の射す方へ射す方へと。
穴ぐらをもぐり抜けて出たら、そこは。
この世でした。
なにがなんなのかを理解するまで。
自分の頭の中でとりあえず一応の整理がつくまで。
何時間か、かかったかなあ。
まあいいや。そんなとこまで細かく話してたらきりがない。
何日かして、周囲に誰もいないときに、声出してみたんですよ。
舌がうまく回らないし、手も足もどーにもぎこちないんだけど。
一応、しゃべれるし。動けるし。モノもつかめる。
転生か。転生したのか?わしは。
むかしの日本みたいだけど。どこだよここ、いったい。
時系列的に一直線に過去へ戻ったのか。ぜんぜん違う世界なのか。
宇宙の果ての、地球によく似た惑星なのか。
厳密には今もわかんないでいるわけだけど。
いやそんでさ。記憶もあるし。
よく漫画や映画なんかで、いきなりしゃべり出す天才ベイビー!みたいなのあるじゃん。
あんなマネゴトを、しようと思えば、できたわけ。
できるかアホンダラ。
何が起きるか考えただけでヤバいに決まってるだろ。
足腰がまだ立たないんだ。逃げれないんだぞ。
ええもう。あたしゃ今日まで14年間、隠して隠して、隠し抜いてきましたよ鷹の爪を。
こわくてこわくて人間がこわくてこの世界のあらゆるものがこわくて不気味で。
ただでさえ、前世では、ひきこもり時々ニートだったっちゅうのに。
あの時代でもさー。
家の外には怖い人、いっぱいいたよね。怖い人だらけだったよね。
でもこの時代の人間だって怖いよいつの世でも人間なんて怖いよ怖いんだよ怖いって。
変なことしゃべると、驚かれるんじゃないか。
バレて、おおごとになるんじゃないか。
ヨチヨチ歩きだって、いつ頃からできたら不自然じゃないのか。
まーまって喋るのはそろそろ大丈夫かいやまだもうちょっと待つべきか。
いつまでこの味のないおっぱい吸ってなきゃなんないのかって。わかんねーんだよ。
とにかく!
つらかったのよ!
それをずっと耐えてきたんだよあの日まで。
石原閣下に拾ってもらえたの、マジ感謝!
厳しい家庭教師だけど!
調子に乗ると課題増えるから、いつも厭そうな顔して見せてたけど!
活字に飢えてたあたしには最高の先生でした!
しかも軍のエラい人!
機密情報いっぱい持ち出して、くだらない授業なんかよりよっぽどこの世界のことを知れたのは超ラッキー。
レポートは手控えてました!当然でしょ!
マジ感謝マジ感謝マジ感謝!愛してます!
私は、自由への道を、手に入れました。第一歩!
そして。そして今ようやく。
次なる悲願だった、話のわかってくれそうな。ゆーたらまあオタの匂いのする相棒もね。
偶然、やっと、見つけたわけさ。
逃がさねーぞ、こんちくしょー。
あたしは、生き抜いてやるんだー!