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エニグマと、戯れてます。コダマです。
WW2で、ドイツ軍が使ってた暗号機。エニグマ。
連合軍はこれの解読に成功するも、そのことをひたかくしにし、ドイツの暗号通信を全て傍受していながら、極重要なミッション以外では現場に伝えることをせず、味方を攻撃にさらし続けました。
その犠牲のおかげで、ドイツ軍は終戦までエニグマに頼り続けた。
WW2の勝敗を決した一因とされています。
以上は、私が21世紀人だから知ってることです。
エニグマが買えると聞いてビックリしました。ちょっと古い型だけど、ホンモノよ。
見た目はタイプライター。
3枚のローターで三文字の鍵語をつくり、文章を普通に打ちます。同じ文字数ですが、暗号で出力されます。
解読モードにして、ローターを同じ文字列に設定して、さっきの暗号文をそのまま打つと、原文が出力されて出てきます。
子供が夢中になること間違いないオモチャです。私も今、大ハマリ。
鍵語が同じなら必ず同じ暗号文が出てきます。
AAAをSOSに換える鍵語は何か、とかね。考えちゃう。
たとえば素の英文で一番多く使われる文字はE。一番少ないのはZ。Qの次にはほぼUが続きますが、暗号文中の出現頻度には反映されない。
鍵語をメモしておかないと、私自身、復元不可能です。
実はこれが大きな問題。
どこに確実にメモするか。ずっと同じでも危険です。
なんかコレ、インターネット時代のパスワード管理問題とも通ずるのな。奥深いなあ。
ドイツ軍はローター4枚型を採用し、なおかつ鍵語変更のうえ二重三重に暗号化してるって噂ですけどね。それを解読しちゃったんだ連合軍。ガチバトルにもほどがある。
こんな数学戦争くりひろげてるうちにコンピュータが生まれたのねというのも納得しちゃいます。
私のエニグマには、ドイツ語特有のウムラウトキーは無く、配列もZが最上列にあったりとか、21世紀で見慣れてるのと違ってて難儀するんですが、それにしてもタイプライターで文書が作れるって便利だ。
ローマ文字とアラビア数字。世界を征する共通言語に最もふさわしい簡便さ。
これもまた、モノサシです。チャンポンなのがまた、いいじゃありませんか。
日本語のタイプライターは作れません。中国語のも、ありません。
コンピュータが発明され、漢字変換という超高度なプログラミングと膨大なフォントが作られて、初めて、日本人や中国人は手書きから解放されるのです。
これもまた、君たちに西洋人との戦争なんて無理だからやめときなって思う根拠のひとつです。
もっとも、中国人は英語学んで英語で打つんですけどね。日本人にはその発想すら無い。
脱線します。
東洋文化における漢字の影響力と、それを民族王朝がどれだけ移り変わっても継承維持蓄積しつづけてきたチャイナ文化圏の偉大さは、明白だと思うんです。
そしてそれと付き合ってきた周辺諸国の対応がこれまた実に面白くて。
ざっくりでも語りたい。
日本は1300年くらい前、ようやく日本海を渡りきれる船を造れるようになってから、盛んに大陸へ遣使を往復させ、文化と技術の習得に勤しみます。
かれらにも、そんな殊勝な時代があったんですよ。
漢語に触れることが学問の第一歩とされ、インドで生まれた仏教も日本へどんどん輸入しました。
日蓮宗も、もとは仏教です。それが今、親を絞め殺そうとしてるわけですから、御先祖様ゴータマ・シッダールタもシルクロードの西の涯にてどれほどお嘆きであられましょうぞ。
歳月を重ねるうち、若い世代は新しい言語を必要とするようになります。
小うるさいオヤジさんたちの説教とリンクしてる、カタクルシイお勉強言葉はダサいのです。
そんなのじゃ私たちの恋バナはエキサイトしないんです。
それでは数ある支流の中から、私が興味を感じてやまないものを三つ、ご紹介します。
ハングル。
朝鮮では、漢字をやめました。中央と地続き、いわば三世代四世代同居してる末の世代って、ストレスまみれなんでしょうね。完全に新しいものを編み出したのです。子音と母音の組み合わせで一文字を構成する、アルファベット体系。構造が合理的なので、アジア諸言語の中ではもっとも修得が容易なのが良いです。普及はしてませんがハングルのタイプライターなら既にあります。
日本語。
音韻に沿って漢字を簡略化したカタカナと、より丸みを持たせたひらがなが作られました。漢字も引き続き使います。カタカナとひらがなは一対一対応してるので本来一方は不必要なのですが、日本人はわざわざ活版も全種類作って細かなニュアンスで使い分けます。シンプルさとは対極の価値観なので世界言語には向きませんし、他人に押しつけるなんてもっての外だと強く主張しますが、とことん複雑なストラテジー好きなマニアには挑戦意慾を掻き立てられる言語かもしれません。
チュノム。
仏領インドシナでは、本場中国よりも多彩な漢字が生み出されました。漢字と漢字を合体させた新語をさらに混ぜ合わせるとか複雑怪奇。私も正直読めませんが、グラフィカルなので西洋人には人気です。チュノムの文書って枠線の中に収まらないのでまるでタイポグラフィを鑑賞してる錯覚に陥るんですけど、これも極めて神秘的な体験です。やはり世界言語には向きませんが、筆記言語の創造性について考える一助となるでしょう。
でも西洋のアルファベットだって、コンピュータ言語に比べたら全然シンプルではありません。
コンピュータ言語とは、0と1の二文字だけがひたすら並ぶ究極の暗号。
でも、二進法のまま読み理解し書いて従わせるなんて芸当、少なくとも私はまっぴら御免です。
コンピュータの前では、人類なんて一人残らず効率悪いアーティスト。
とろいし。究極のろくでなしに過ぎません。
その中で更に優劣つけるのは馬鹿馬鹿しい。
機械は、こんな私たちに、文句もいわず尽くしてくれて、やがて全生活を支えてくれるまでになる。
なんてありがたいことだろう。
大いに、ありがたがろう。
こんなこと考えながら、私はエニグマと戯れることに夢中なのです。
今日も無駄話いっぱいしちゃったな。
オタだもの。いつものことですよ。いいよね?