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満洲中の日系新聞に、昨日の亡命事件が華々しくスクープされています。
全紙一斉だから、スクープとはいわないか。
内容も大差なく。
一律に日本陸軍中央の権力主義を批判しているので、石原からのリークをただ載せただけ、という御用記事なのが、素人目にもわかります。
いいんですかね、これ。ばらしちゃって。
バカ殿のご乱心にしても、国益に反すること甚だしい。
今後、ソ連からの亡命者は、満洲も朝鮮も選ばなくなりますよ。
まだ国内にいる家族・親類・友人も即、逮捕されるでしょうし。
国境で行方不明にとか、できればこちらで死体ひとつすり替えてあげてね。
恩を売って情報をもらいやすくするとか。諜報戦の基本でしょうが。
そんなことすらわからないほど、耄碌したかよ石原は。
なさけない。
ついでだから、満洲の新聞事情について語ります。
満洲国ができたばかりの頃は、100紙以上の媒体が乱立してました。
多くは不定期刊行。一枚の裏表だけとか。
中国語系だと、青臭い作文練習みたいな評論も多かったです。
でも、勢いあって面白かった。パルプフィクションて、こうじゃないとね。
そんな活字を毎日、浴びるように読みながら、私は中国語を学んだんです。
満洲にも、チャイナ本土にも、全国紙と呼べるものはありません。
良くも悪くも現地に行かなければ、その土地のことはわからない。
どれもこれも偏ってますし、互いに猛烈な批判をし合います。
それらを読んで、自分なりに一本の筋道を立てる。
正解なんて、ありません。あるわけないんです。
あったらどんなにつまらないことか。
今、新聞は、どれもこれも、同じことしか、書いてません。
つまらない時代が来ちゃいました。すでに、自由は、死んでます。
ゾンビが風にそよいでる世界です。
私が、華北、上海、そして南京と、自分で動くことの必要性にもがき始めたのは、このことに恐怖したからです。
このまま息の根まで止められていく。
切実に、それを、感じ取りました。
あと七年を、どうやって、生き延びよう。
正解なんて、ありません。あったら、知りたいですが。
それは、自分で、戦って、手に入れるしかないものじゃないでしょうかね。
座したまま、愚かなままで死にたい人は、死んでくれ。
それも、自由です。
私は他人様の自由を尊重します。
しかし、私は、死にたくないんですよ。
脱線しましたが、戻さなくていいかな。
徐州を征した日本軍は、西へ西へと、突進中。
漢口の手前で堤防が決壊したらしく、安徽省一帯が今、大洪水に見舞われているそうです。
双方、相手の破壊工作あるいは空襲の誤爆によるものと主張してますが、チャイナにとっては多くの町村が水没し、日本軍としては歩兵を大幅に南へ迂回させなければならなくなりと、誰にとってもいいことはひとつもありません。
そろそろ帰る頃合いだよ、日本の皆さん。
まだ行くの?そんな薄着で風邪ひかないかい?
現地でなんとかするからいい?そうかい。
どうぞ、ご自由に。