File_1938-05-001D_hmos.
5月26日、近衛フミマロが内閣を刷新しました。
え、それってアリなんだ。
廣田さんのときは、寺内陸相ひとりのワガママで、内閣全体がフルチェンジしましたけど、陸相だけを交換するって、あの時点でもできたんじゃないですか?
できないんだ。今回の近衛は、うまく裏技を使ったらしいですよ。さすがタヌキ。
皮肉なことに、退陣させられる大臣の一人は、廣田外相です。
1月、私がまだ南京に閉じこめられてた時、近衛が、世界史上に残るアホな発言しやがってたんですよ。
「我国は、国民政府を相手にせず」
普通は、国交断絶して、大使を本国へ戻らせて、その後で宣戦布告というプロセスで、戦争を始めます。
七・七事変以降、いまだ日本もチャイナも、これは戦争ではないという曖昧な形で軍隊をぶつけ合っておりますが、北京・南京を占領したとはいっても、現在の首都は重慶であり、国民政府は存続しています。
相手もなしで、どこで、どう終わらせるつもりなのか?この状況を。
傀儡政権を立ててから、そこと講和条約を結び、それから国民政府を切り捨てるなら、わかる。
しかし、4ヶ月経って、いまだにチャイナを代表する政府は、重慶国民政府だけです。
他に満洲国と、冀東防共自治政府から発展させた中華民国臨時政府というのがいま北京にできてますけど、後者は国家代表としての体を為してません。
何も考えずに、勢いだけで発言しちゃったのがモロバレなわけですけど、その責任を廣田外相に押しつけて放り出す近衛。まったく、大した政治屋です。
そして代わりに据えた外相が、宇垣一茂。
え?
さらに、文部大臣として、荒木貞夫の名前が突然。
なにを考えてるんだ?
実はもう一人、陸軍出身者が登場する予定ですが、間に合わなかったみたいです。でもほぼ確定なので、言っちゃいましょう。
陸軍大臣が、いま杉山ハジメさん留任中ですけど、まもなく板垣征四郎に交代します。
徐州の前線で師団長やってるのをわざわざ呼び戻してるみたいですよ。
そして、板垣新陸相付の政務次官となるために、東條英機中将が、内地へ戻ります。
急に決まったことらしくて、関東軍はざわざわしています。
あまりといえばあまりのデタラメ人事に、何が起きたんだと思考も追いつきませんけど、一応、考えてみましょう。
いやだめだ、笑うしかない。
首相になりたい功名心だけでマスコミにチヤホヤされることしか頭にない宇垣が、対華政策を引き継ぎ。
竹槍さえあれば世界を征す皇軍幻想の生みの親、荒木が教育官庁のトップ。
石原莞爾のフォローを脇でソツなくこなしていた板垣さんが、その石原に憎さ百倍の東條さんをブレーンにしながらの陸軍統帥。
ただでさえ、この陸軍関係者大量雇用は異様ですし、かれらの支離滅裂で脳天気な企画書にノリと勢いで許可を出すだけの無責任男、近衛公爵が日本の命運を握る。
さすがに終わりでしょう。日本は。
これ以上にひどい政府、想像するのも難しい。
どこがどうしたら、こうなったんでしょう。