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コダマです。寒いですね。
雪は降ってませんけど、毎朝、霜が張っていて、寒風ふきすさびます。つらいです。
いま、東流鎮という陣地を奪取すべく戦闘中。今日はここで宿営かな。
陣地の中で眠りたいので、なんとか日が暮れるまでに占領したいものですねえ。
日本軍はすでに、ぐるっと南京城を包囲してます。
城の門は固く閉ざされ、市民の大半は逃げ出してると、思いたい。
中に立てこもってる兵は約10万との司令部想定。
兵站の旅程と費用概算もまともに計算できない人たちによる数字ですから、どれほど正確かわかりませんが。
先月のうちに、南京から重慶への、遷都が発表されまして。
国民政府の機能は大方、移されてます。
蒋介石も、すでに南京にはいない、との噂。
四川省重慶といったらここから1400kmほど西ですが、どうするつもりですか日本軍。
そこまで、いえ、どこまで追いかけますか。
楽観主義的視野狭窄ぶりにそろそろ気付きませんか。
これ以上の持久戦に耐えきれますか。
ギブアップしませんか。しませんよね。
仮に城内に現役兵が20万人控えてたとしても、日本軍なら南京城までは、陥落させられるでしょう。
そこをひとまずのゴールとして、何らかの政治的結着に持っていければ良しですが。
でも中央にそこまでの知恵と思考力があったら、そもそもここまで勢いだけで来てないですもんね。
今はすべてが腑に落ちて、やるせないです。
本日は城内に、空からビラを撒いてるそうです。
日軍百万は南京城を包囲しあり。今後の交戦は百害あって一利なし。明日の正午までに城を開放して協定の準備をすべし。回答なければ攻略を開始せん。
すなわち、明日ノ正午ニ一斉攻撃開始スルカラナ、ですね。
余裕をもって、装備の点検と、腹ごしらえをしておきたい。
あいかわらず食糧は徴発に頼るしかなく、割り切ってしまえば毎日それなりのカロリーは摂取できてます。
やむをえません。ここで私が餓死するわけにはいかない。
空腹は敵ですし、痩せ我慢も敵なのです。
毎日、司令部より作戦命令が届きます。
やっぱり、ここまで来て、地図は最初のものをそのまま使ってます。
何ヶ所も書き直されてて、すでにぐちゃぐちゃですが。
斥候が偵察してきてくれた、詳細な地形や敵の配備状況のデータを補完しつつ、フォーメーションを考えておきます。とにかく、無駄のない動きをしないといけませんからね。
私はそんな、佐々木旅団付参謀みたいな役割を、いつのまにやら自然に担ってます。
紫金山には、孫中山先生の柩が北京から移されていて、中華民国のモニュメントとなっています。
この丘に設置された陣地を無力化するには、空爆と重砲で叩いたのちに歩兵が乗りこむべきなんですが、お墓も壊れます。
壊していいですか?これが、本日のハイライトでした。
蒋介石を倒すことには躊躇しない到一さんでも、中山先生への敬慕は、ひとかたならぬものがあるようです。
中山陵へは、攻撃するべからず。
極力、墓へは、傷をつけないよう攻略するべし。
という超めんどくさいクリア条件が追加されました。
では、佐々木支隊だけ別働隊として太平門方面へ向かわせ、中山陵陣地に背後から接近する。
かなり危険なミッションになっちゃいますけど、構いませんか?
佐々木少将は、俺が行く、と言ってます。部下たちが、尊敬のまなざしで応え、自分たちも全力を尽くしますと、力強く宣言します。
美しいような。そんな風に思っちゃいけないような。
明日に備えて、本日はしっかり、休んでおかなくちゃ、ですかね。