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2596年2月28日。金曜日。
三日目の朝。永田町は弛緩してました。
すでに蹶起部隊の兵は散り散りになっており、封鎖も、してたり、してなかったり。
グダグダです。
一部の兵は西へ向かって、原隊ヘ帰り始めてます。中隊長次第のようです。
ムカつきます。こんなの、軍隊じゃない。
ほんの東へ1キロ先の、日比谷公園へ偵察に行ってみなよ。
君たちをいつでも皆殺しにできる野砲陣地が、すっかり準備を整えているから。
北なら、飯田町駅付近がお薦めだよ。戦車と装甲車がズラッと並んでるよ。
私は見に行ってないけど、東京湾には戦艦や軽巡が何艦も投錨していて、砲をこっちへ向けてるらしいよ。
陸戦隊も上がってるって。南の町民が噂していたよ。
戦争ってのはね、こうやるもんだ。
最後まで気を抜いちゃいけないし、駒が勝手に動くなんてもってのほか。
嘆かわしい。大いに嘆かわしい。
石原莞爾も、さぞや、ふがいない思いでしょうな。わが国軍に。
わかりますよ、お父さん。
はじめから、勝負にすら、なっていなかったという。
そんな周辺散策を終え、虚しさに包まれて戻ってきました。
まだ公表はされてませんけど、是清さん、亡くなられてました。
家の前で、黙禱を捧げてきました。
即死だったそうです。
財界への影響を考慮して、負傷と発表してたらしい。それは正しい報道のさせ方だ。
マスコミもね、勝手気ままに放置してちゃダメなんです。ちゃんと手綱を握ってね。
どうせウソしか書けない連中。なら、世の中のためになるウソを書かせましょうや。
さて、大局は決した。
あとは政治的結着を待つのみ。
鎮圧部隊との戦闘は起こらないと思いますよ。跳ねっ返りが暴れ出したところで、戦車まで向かわせる必要はない。一個中隊でもお釣りが来ます。
珍騒団事件は、私の中では終了。
だるい。
今度の教訓を活かすとしたら、陸軍に、ほんと、基本からの再教育を施したい。
こんなやつらでも、中国では、向かうところ敵無しかもしれない。
南京国民政府軍のデタラメぶりもひどいもんですが、それに勝ててるからって自慢にもなりゃしない。
町内のガキ大将が、俺オリンピックで金メダルとれるぜーってのぼせ上がってるみたいなもの。
言ってるだけならいいけど、ホンモノを挑発して表舞台に出てこようもんなら、国辱きわまる大醜態。
即、銃殺刑に処すべき。
ほんと、そんなレベル。