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いまここに、スマホがあれば、ググるのに。
この世界に生まれ出て、何万回、つぶやいたか知れない。
2596年2月24日。月曜日。コダマです。
12日の第六回公判。近衛師団長・橋本虎之助中将証人喚問の巻より、裁判は非公開となりました。
17日、第七回。林銑十郎軍事参議官が喚問されました。
故・永田軍務局長と最も親しかった前陸軍大臣として注目を集めましたが、軍機を理由にほとんどの回答を拒んだそうです。
実際のところはわかりません。裁判長や相澤、そして満井特別弁護人からも、その場でどれだけ罵られたことかも、わかりません。
新聞は、簡単な記事のみ。辛うじて、皇道派青年将校らによるアジビラで窺い知れるのみですが、非公開になったことも含めて、猛烈なる怒りの捌け口がこの回へ向けられています。
ゲスト無しの第八回、第九回を経て、明日、2月25日の第十回公判において、ついに、眞崎が登場します。
俺は林とは違う、すべてをぶちまけてやると気炎を上げているそうです。
法廷の中に、永田さんの味方はいません。味方かどうか以前に、これが死者に対する私刑手続きでしかなく、裁判とは似ても似つかない、司法の存在意義まで弄んでいる行為だと気付いてる人すら、どれだけいるのか。
法廷の外から、この危険な集団を解体させようとしてる人は、いるようです。
3月に、第一師団が満洲へ移駐することが決まっています。皇道派の主要人物が特に選出されていることを、アジビラでは烈しく統制派の陰謀だと批判しています。
満洲に住んでいる身としては、勘弁してくれと思うんですけど、東京に押し込めておくよりは、マシかもね。いっぺん大陸の空気を吸って、大人になって戻ってこい。
そんな風にも、思わなくもない。
しかし、この、皇道派が解体される前に蹶起せねばという焦りが、2・26というタイミングにつながるのだな、とも、腑に落ちるところです。
すでにパーツは揃いすぎてるんです。眞崎がトドメを刺すのでしょう。
むきだしの導火線に、盛大に火をつけるのでしょう。
だから、起きる。2・26に、起きる。
もはや、確定。
あらためて白状しますが、私は、2・26の詳細、実はまったく知りません。
スマホが無いから、ググれません。
首相とか、何人か、殺されて、警視庁や新聞社も占拠されて、一週間足らずで鎮圧されて、天皇が激オコしちゃったから首謀者全員銃殺刑。そんなザックリした遠い記憶が、いま私の知っているすべてです。
たった一人で全部をどうにかするのは無理ですが、救うならこの人、と決めている対象がいます。
現大蔵大臣・高橋是清翁。
ターゲットじゃなかったら嬉しいんですけど、おそらく、暗殺リストに入れられてる。
そう考える、根拠があります。
昨11月末。予算閣議で、陸軍の法外極まる要求金額に、高橋翁、最後まで徹底抵抗。
そのとき、このような訓話をしてみせてます。
「予算は、国民の所得に応じたものを作らねばならぬ。財政上の信用とは無形のものであるが、その信用維持こそが国家を世界と連帯させる力となる。ただ国防のみに専念して、悪性インフレを惹き起こし、その信用を破壊するが如きことがあっては、国防も決して安固とはなりえない。吾国にはこの用意と余裕がなければならぬ。なれば、これ以上は到底出せぬ」
新聞各紙は競ってこれを書き立てたのですが、多分に自分たちの日頃の鬱憤を盛って、高橋翁のお言葉だぞと必要以上の飾り立てをするわけです。
「軍部たしなめられる」みたいな大見出しを付けて。
新聞屋どもの、昔から永遠に変わらない、ゲス根性が、またしても、人の憎悪を掻き立て、その矛先を特定の対象へと誘導する。自分たちにさえ向かなきゃいいんです。そのためなら何だって利用するのがマスコミです。
高橋翁は82歳という超ご高齢ですが、今日も規則正しく、背筋を伸ばして赤坂のご自宅から車で登庁されてます。
官舎もありますが、基本、ご自宅で、家族やお孫さんたちと過ごされてます。
2月26日。私はここに貼りつくつもりでいます。
皇道派が来たら、皆殺しにしてやっても、いいですよね?
いいんです。私は正義のヒーローなんかじゃない。
この両手はとっくに血まみれです。満洲でどれだけ汚してきたと思ってんですか。なにをいまさらですよ。
汚れ仕事は汚れ仕事屋にマカセチャイナ。それでは、ご飯食べてきます。