File_1936-01-002D_hmos.
コダマです。日本へ戻ってきて、いろいろ驚いてます。
1月28日から相澤裁判始まるんですが、石原参謀が弁護人やると聞いてた話が、いつの間にか雲散霧消。
私としては、永田さんを殺した犯人の弁護なんて、よりにもよって、と絶望的な気持ちでもあったので、ホッとしましたが。
理由は、はっきりしません。
参謀の仕事が忙しい。相澤に乞われてOKしたけど永田とも付き合いがあったし公正な弁護は難しい。怪文書が自宅にまで送りつけられてくるので危険を感じてやめた、等。
最後のに絡みますが、相澤裁判、これ、とんだ茶番になるかもです。
裁判は、青山南の第一師団軍事法廷内で行われます。
日本の軍事法廷って原則公開なんですよ。え、そうだったの?そういえば関東大震災のさ中に大杉栄殺害事件裁判というのがあって、あれも連日新聞が煽情的に騒ぎ立ててた記憶があります。
今も思い出すと反吐が出ます。
軍事裁判は公開といっても一般市民が誰でも容易に傍聴できるものではないですが、とりあえず新聞社が取材できるんでね。翌日には記事で読めます。
加えて、皇道派連中がすぐにビラを作って配りまくります。
それらを読んで、各パラメーターのバイアスを計算しながら、私なりの真実を求めていこうと、こういう肚づもりです。
しかしそもそもの裁判自体が公正に行われるとは限らない。最大の問題は、もっと奥深いです。
裁判長も裁判官も、検察官も弁護人も、軍事法廷の場合はすべて軍人から選出されます。
石原が相澤の弁護をやめた背景のひとつが皇道派による妨害ですが、石原みたいな暴れん坊将軍を外すだけでは片付かない。やるなら関係者全員に対してやってるでしょ。
すなわち。
すでに亡くなっている永田氏を弁護する人はいないんです。
それよりも、間違いなく殺人という大罪を犯したけれども相澤を赦してやりたい、彼は正しいことをしたのだと証明し、一日でも早く自由にさせてやりたいと、そう心から願う人の方がはるかに、まだまだ、陸軍の中では多数派なんです。
青年将校のアジビラ、日付が近づくにつれて、裁判へ向けての余裕がにじみ出てくるんです。わかりやすすぎて、ほんと、反吐が出ます。
永田さんを殺しただけではなく、その魂まで、尊厳さえ、徹底的に踏みにじり、相澤を救うために今一度、悪人となって裁かれろ。これが、三日後に迫った大イベントの真の姿かもしれないんです。
それを確かめるために、来てるんですよ私。
敢えて、最悪のシナリオを披露しました。杞憂に終わることを願ってやみません。
とはいえね、そこまで考えるからには、やはり裁判をナマで見たいんですよね。
サノに、リクエストしてる、ひみつ道具の中に、盗聴器と録音機も入れてあるんですが、モノになりそうなとこまで出来てる?て聞いてみました。
盗聴器は陸軍からも、以前から要望があって、日特ばかりじゃなく、いくつもの研究所がシノギを削って開発競争やってんですが、携帯できるサイズは、試作品でも、まだまだ難しいそうです。
そんな競争相手のひとつに、ズバリ、録音科学研究所という小さな会社があって、そこの技術顧問の人が、サノ曰く、究極のオタ野郎なんだとか。
赤坂区にある歩兵第一連隊の大尉で、山口さんていう。
サノハウスにも遊びに来たことあるそうなんで、よければ近々セッティングしてみましょうかって言われ、会ってみたいねって答えました。
サノが認めるほどのオタですか。
それだけで、気になります。