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石原大尉、大変申し訳ございません。
いつもお葉書、お手紙、たくさん、ありがたく頂戴しております。
あちらでカメラを買われ、最近はその現像もご自分でされているそうで。
いつも楽しく、拝見させていただいております。
敗戦して、ボロボロになっている中でも、ドイツの人たちは、けなげに、力強く、明るく、生きてらっしゃいますな。今、そのことが、ことさら胸にしみいるところです。
ええ。お聞き及びの通り、日本では震災がありました。東京で、直下型です。
地震に加えて、火災でもっと多くの人が亡くなられ、町も、街も、メチャクチャになっております。
ドイツでも、新聞の一面で報道されたんですね。
ドイツの地震計でも何日か震動が観測されてたというのも驚きでした。まさしく、地球規模の大地殻変動だったのでありましょう。
ですが、ご安心ください。詳細にいろいろ書いていただいておりますが、大袈裟に伝わっておる部分も、少なからずあります。さすがに死者三百万は、ないです。
それから、閣下の奥様や、軍の方へも同様にお手紙されておることと推察いたしますので、重複するかとは思いますが、ご自宅は無事であらせられます。
我社も、さいわい、被害は軽微でした。
のちほど、子細を説明させていただきます。もちろん、コダマ君も、ケガひとつ、しておりません。
実をいうと、いつもいただいているお手紙、宛名は私ですけど中身はコダマ君宛てがほとんどですよね。
いちおう目は通すんですけど、そのあとコダマ君に渡すんです。
コダマ君へは、閣下にお返事書くようにといつも言うてるんですが、そういえば最近、切手をもらいに来てないなーと今さら気づきました。
いやまあ、小遣いはあげてますけど。便せんとか封筒とか切手とかは会社のを使ってくれてええからねと言ってはあるんですけど。
そうでしたか。最近はあんまり、お返事してなかったですかね。
閣下からは毎週のようにいただいてるんですけどね。いやまた、はてさて。
今後は、コダマ君から、もうちょっとマメに手紙書かせますので。私からも言いますので。
私からの連絡は、コダマ君に一緒に送らせるようにしましょう。そしたらコダマ君も一筆書かんとならんようなりますからな。いえ、決して、閣下へのお手紙をめんどくさがっとるわけではないですからね。……ああ。
あああ。もういっぺん書きなおそ。
難儀やなあ……。