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新年快乐、生意顺利。コダマです。
まだ北京にいます。面白くてたまりません。
面白いなんて言うと大変失礼かもしれないんですが、でも、毎日がとっても刺激的なんです。
日本、悪辣すぎて笑っちゃう。
昨年11月。冀東防共自治委員会という仮政府が、非武装地帯内の満洲国側に誕生しました。
主席は、殷汝耕。日本で学び、日本文化をよく知り、そのため日本の力を借りることができ、国民政府からの永きにわたる圧政に抗し、満洲国のように我々も独立するぞ!と意気込み、500万市民を代表して、高らかに宣言します。
市内外では連日、地元民の抗議がすさまじい。
華北独立反対運動の代表格の一人、北京大学校長の蒋夢麟先生は、宣言を発した途端、日本軍にしょっぴかれ、北平の兵営へ連行されました。こんなことが平気でまかり通ってます。
南京政府はすでに、国家反逆罪で殷汝耕氏へ逮捕状を出してますが、非武装地帯にも拘わらず日本軍の鉄壁の防御で守られており、警察隊は踏み込めません。
現地の第29軍司令官・宋哲元氏からのSOSに基づき、南京から軍政部長・何応欽氏が派遣されます。熱河侵攻の頃、一時期日本へ協力していたことがあるので、当初は親日派を装って、日本のミナサンとの調整のために来ました、というスタンスをとってました。
どこにでも顔を出す土肥原大佐とも和やかに会談し、その有難い訓話に深く深く頷き、私ならこの混乱をまとめられるかもしれないと期待を持たせて、宋哲元氏へ会いに行きます。
12月8日、冀察政務委員会の誕生。
もうひとつの、新政府樹立です。我々も独立しちゃいましたァ、テヘッてやつですね。ますます混乱するところですけど、こちらは南京政府を後ろ盾にしてて、日本に対し新しい外交を求めてきます。逆ハックですよ。
傀儡はお前たちの専売特許じゃないんだからなって。
どうです、面白いでしょう。
冀東の方は、12月25日に本部を移転すると共に、あらためて独立政府であるぞと宣言を謳いました。
冀東政府には、とんでもない特殊な政策があるため、目下、多くの日本商人がこの政府を絶賛応援中。
通常どの国でも、輸出入には関税がかけられます。外国から輸入する方が安いけど放置していたら自国産業が壊滅してしまう、そんな場合は関税を引き上げる対策をとりますよね。
この関税収入は、国の財源としても重要なウェイトを占めるものです。
冀東政府は人材と処理能力の不足を口実に、税関を持ちません。
定額払って政府の許可証さえもらえば、商売は好きにやれと。
マトモな政府であれば、税収を基礎とする国家なら、絶対にありえない抜け道をつくりました。
ちゃっかり、日本人商人に限りという条件も付けてます。
ここに群がるケダモノども。
秦皇島から蘆台までの、すべての港には今、日本人と死にそうな苦力しかいませんけど、どこも屈強な荒くれヤクザの見本市となっています。
中国内地から華北まで運びこむのは自由なので、ありとあらゆる密輸が冀東を拠点に行われてます。
もちろん国民政府に関税も入らない。
こんな状態が一年も続けば、中国の経済は再起不能なまでに叩きつぶされるでしょう。それは日本の侵略を、より容易にするものです。すでに日本はこの戦略の画期的な効果に気付いています。
南京のリースロス氏も、とっくに気付いて警告しているはずです。さて、どう戦いますかチャイナの民よ。
なんだか、ヒトゴトみたいでごめんね。
話す機会と、話せる相手が現れたときには、私はこのレポートを語りたいと思う。
でも、今の私には、ここで本腰入れて立ち向かう準備もないし、この場で踏ん張るだけの、地盤もコネも持っていない。
私は日本人で、まずは日本を何とかしたいんだ。
そのために、これから、日本へ戻ります。
永田さん事件の裁判は、私にとって、最大の焦点なんです。ここに日本の病魔の根源が詰まっている。その正体を、見極めてやる。
これが、私の戦いなんだ。
那、再见。后会有期、北京。