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8月12日。
永田さんが、殺されました。
到一さんも、私も、何をどう考えていいかわからず、とりとめもない言葉を、つぶやくのみです。
夕方の号外で、報じられたところによると。
朝、永田さんが軍務局へ出勤してまもなく、来訪者あり。
広島県福山連隊の中佐で、相澤三郎という陸軍人。
青年将校でもありません。46歳とあります。階級も、それなりの人物です。
軍刀で、いきなり、斬りつけたとか。
乱闘と思われます。同室の憲兵隊大佐も重傷。相澤も腕を怪我しているとか。
永田少将は、病院へ運ばれるも、すでに絶命。
サノから電話で聞いたところによると、内地でも相当の騒ぎになっている模様です。
単独犯ではあるけれども、五・一五に類似していると。
石原閣下は参謀本部へ初登庁後に事件を知り、すぐに護衛がつけられたそうです。
宮本社長へは当分挨拶へ行けないからと連絡したとも。
私はサノに、近々また東京へ行くから、できるだけの情報を集めておいてくれと、頼みました。
どうして?
どうして?
……