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日本から、お客様です。
山本春彦さん。石原閣下からの紹介で。
「一度会ってみてくれ。力強い味方だ」
あいかわらず要点をぼかすよなあ。日蓮坊主。
奉天で、お会いしました。
料亭菊文とか、古谷寿司とか、我々がよく行ってた店へ連れていってほしいと。
じゃあ、お昼は割烹金六で。
閣下と、よほど親しくお付き合いされてるみたいですな。
よく喋る人です。
私は黙って聞いてるだけが楽なので、ありがたい。それでいて、私にも喋れよとか言ってこないし、自分に酔って一方的に弁舌ふるうでもない。
分析能力もしっかりしてる。
結論、いいひと。
ハルさんは、一昨年春まで、衆議院議員だったんだそうです。
当時はバリバリの左翼で、軍隊大嫌い。
三年前の満洲事変も、アメリカ出張中にニュースで知ったそうですが、これは支那への侵略だ!と猛然と批判していたのだそうです。
選挙で落ちて、肩書きを失ってから、仙台の石原のもとへ、満洲事変の責任追及のつもりで乗りこんでったそうなんですが。
何度か議論を戦わせるうちに、今ではすっかりお友達に。
石原も中央の政府や軍首脳が大嫌いだし、満洲事変の功労者と崇めながら近寄ってくる新聞記者や政治家にも会おうとすらしないんですが、山本さんとなら楽しい議論ができそうだと、胸襟を開いたわけですね。
山本さんも山本さんで、社会大衆党のロボットでもなく、とことん納得するまで考えて戦う一匹狼だったので、石原とつきあうようになって、党からは除名されかけているとか。
ハルさん、すっかり石原に惚れこんでるので、もう議員に戻る気もなくて、これからは満洲国と協和会を取り戻す戦士になりますよって。
え?もう、いきなりそこまで話がとぶ!
私と大きく違うのは、その行動力。
人との交渉をおそれない。ガンガン相手のふところに飛びこんでいって、仲良くなる。
あるいは、徹底的に戦う。
だから今回も、これから新京まで行って、山口さんや金井さんなど、青年連盟時代からの石原組と語らってくる予定だそうです。
スゲエ。
石原閣下、すごい人をつかまえたな。
政治家か。ノブテルさんも、こんな感じだったな。
いるんだ、まだまだ、こんな日本人。
日本も、捨てたもんじゃないかもな。
やさぐれてた自分を、ちょっと反省。
圧倒されて、力のこもった握手をされて、その足でもう駅へと向かう私たち。
「コダマ君。石原さんはね、陸軍人で参謀なんだ。政治家は、口で戦う。商売人は、カネで戦う。軍人は、武力で戦う。作戦指揮も担うのが、石原さんの役割だ。私たちは連帯して、ふたたび世界と戦わねばならない。めいめいが、自分の職分を最大限につとめることで、はじめて敵は倒せる。まだ数年の時間は必要だが、石原さんが行動を起こすそのときまでに、君も自分自身の役割を担えるように、力をつけておいてくれ。よろしく頼むよ!」
あああああああ。
希望が。希望が。
私の進むべき道が。そうだった。そうでした。
へたれてる場合じゃなかったよ。
私たちの物語は、まだまだ、これからなんだ。
よし。お金、かせごう。
そして。
私のチート能力、再起動!するですよ。ウホッ!