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大連駅前を中心に、連鎖街という名前の、巨大な商店街があります。
雨に濡れない、アーケード通り。
21世紀だったら珍しくもない。むしろ寂れたシャッター街が日本中至るところどこにでも、と連想する形容ですが。
この時代では内地にもなかなか無い規模で。
破格にデカくて、連日賑わってる。
そんな、夢ときめくショッピングゾーンです。
スター写真館。おお、ここだ。
チチハルで従軍カメラマンの三船徳造さんから誘われましたので、上海へ発つ前に寄ってみました。
奥さんが店頭にいらして、現像室で作業してた徳造さんを呼んでくださる。
酸っぱい匂いを漂わせた徳造さんと再会。ああ、閣下と同じ匂いだ。
お子さん一人いるんですね、トシローくん。
お年玉をあげました。
徳造さんの撮った作品見せてもらいながら、一時間ほど、世間話。
スクープ狙いで事件とあれば即出かける、わけじゃなくて。
普段は、花に風景、鉄道とか。
七五三にお見合い用、結婚式銀婚式御遺影等々。
ほのぼのした写真もいっぱいあります。
朝日や讀賣みたいな大手は自前のカメラマン持ってますけど、トクさんはフリーで撮って回って、それを小さな新聞社や雑誌社に売るんです。戦場モノは実入りがいいそうです。
面白い話、いっぱい聞けました。
戦場写真て、ほぼ十割、ヤラセだとか。
12枚ごとにフィルムを交換しなくちゃならないし、オートフォーカスなんて無いどころか、絞りの調節すら露出計という機械片手に経験とカンでおおよそを決める。
精密機械だしメチャメチャ高価なので、カメラは命の次に守らなくちゃいけない。
その気苦労も半端ない。
戦闘が終わったあとで、兵士の方たちに再現というかポーズをとってもらって、表情もギリギリ見えるような角度からあざとく、どこまでもアザトく作りこんでいって初めて、載せてもらえるような写真が撮れる。
説明されると、納得です。
むしろ隊長さんとか、部隊の兵と、普段から仲良くしておいて、イザ撮るときには全面協力してもらう。そんな日頃からの根回し、コネ作りがこの商売の成否を決めるのだそうです。
言われてみればチチハルでもそうだったかしら?
現場ではそんな話、口が裂けても言えませんよね。
シビアな現実をまたひとつ、知ってしまいました。
トクさんが写真を売ると、あとは先方さんが煽情的な見出しと記事をつけるわけですけど、これも相当デタラメだったり、見事すぎるくらいおかしかったり。
従軍経験の無い人の手にかかると、そんな記事に俺の写真使わないでくれって怪コラボもできあがっちゃうんだとか。
うわあこれは恥ずかしい。
でも商売なんでね。
次もどうぞよろしくって、なっちゃいますよね。
お忙しいところ、楽しいお話ありがとうございました。
閣下がいっぱい使うので、フィルムを買っていきます。オマケしてくれました。
かさばるので、港の預かり所へ置いていこう。
さて次は、上海です。一年ぶりか。
楽しみだー。ウキウキ。