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2591年10月29日。木曜日。
事態終熄をただ祈っておられるだけの皆さんへ、残念なお知らせがあります。
ハルビンが独立して緩衝地帯になったことで、日ソ事変は回避されました。
これで関東軍は張学良を追い詰めることに専念できる。となればすぐにも山海関を越えて天津、北平へ向かってくるぞ、というのが昨日までの流れでした。
国際連盟は、日本に撤兵を要求しました。
当然ですね。これ以外の決議が出たらおかしいと思う。
3週間の期限付きです。11月19日までに、もとの満鉄付属地内まで戻れと。
軍が退いたら、満洲各都市の治安は誰が守るのか。そこは言及されてないようですが、いいのかな。
ともかく我々は、次のミッションを、3週間以内に終わらせなくてはなりません。
北北西に進路を取れ。
チチハル、黒龍江省。東北辺防軍残党の辺境守備隊が、次のターゲット。
敵大将は、馬占山。
兵力は2万人と見積もられています。
張学良は甘やかされて育った印象が抜けませんが、馬占山には、張作霖が甦ったかと思わせる、馬賊上がりの荒々しいオーラを感じます。
行動する前に必ずメディアへ挑発的なハッタリをかますというプロレスラー気質も持ち合わせており、とにかく日本が大嫌い、というわかりやすいアイデンティティも、ドラマを盛り上げる要素です。
嫩江北岸に陣を構えた馬占山。
関東軍の進撃を阻むため、洮昂鉄路の鉄道橋を三箇所、爆破して通行できなくさせました。
ソ連が管理する中東鉄路の路線なんですけど、奥地からの特産品を輸送するため満鉄が出資して架けさせた橋なので、満鉄は馬占山に損害賠償と1週間以内での復旧を要求。
国際連盟より厳しい期限です。トイチ並みですね私たちって。
どだい無理ですし、馬占山も回答せず。
これを根拠に関東軍が乗り込むという段取りです。
といってもいきなり戦闘ではなく、満鉄の復旧作業を関東軍が護衛する、という過程を踏みます。
襲撃されるのがわかっているので、満鉄も関東軍も、決死隊を編成します。
第二師団の中でも精鋭級の、第16連隊が選抜され、閣下が陣頭指揮をとるため多門中将とともに出発します。
お前も来いと言われます。
ええええーまたですかあ。
奥地ではもう雪も降ってて、気温も氷点下だっていうじゃないですか。
そんな最果ての地へ1500名の兵と一緒に、行ってきます。
3週間といわず、さっさと終わらせて帰りましょう。