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錦洲爆撃。予想以上の効果あり。
閣下もさすがに、しょげてます。
「やりすぎだったか。以後は、つつしむ」
つつしんでください。
もう充分おどろきすぎてますから。
この先はどうか、もうちょっと、マイルドに。
照準もなしで落としてきた爆弾ですが、いくつか米国領事館へも当たってたり、民間人の死傷者も出しました。
ごめんなさい。
国際連盟からは猛抗議きてます。
民国も米英も、もちろんそりゃあ激怒してます。
学良くんのコメントは見当たりません。生きてる限り狙われてるとわかってるから今、必死に隠れてるはずです。
芝山さんの命も風前の灯ですね。彼とも連絡途絶えてますけど、生きてても動けるわけないか。
東京政府はこれまでもずっと、
「これは戦争でなく事変であり、日本は治安回復後すみやかに撤兵するので決して国際平和を乱す気などなく、中華民国政府および国際連盟とも協調する姿勢を貫きます」
と言い張り続けていましたが、そのナケナシの外交アピールも、こっぱみじんに砕け散りました。
ここまでくると、なぜまだ倒閣してないのだろうと不思議でなりません。
次のなり手がいないのかも。
じゃあクーデターを待つしかないですね。
そんな最期かワカツキシデハラ。
日本史上に残るザンネン内閣。自業自得とはいえ。
実際、平和平和と叫ぶだけで何ひとつ現実的な対策をとれない内閣ってこんなもんだと思います。
他山の石といたしましょう。
こっちは勢いづいてます。
瀋海鉄路が、日本のものになりそうです。
瀋陽から、海龍までを結ぶ鉄道で、張学良が満鉄への並行線として作らせました。
事変以後、運休してたんですが、青年連盟の中でも行動派な山口さんという方が乗り込んで、中国人従業員の方々がろくに給料も支払われていなかった実態を聞き出し、満鉄が買い上げる形で責任者同士を合作させました。
今朝から装甲列車を走らせて路線の点検をしています。
新満洲国は、軍事的制圧で相手を屈服させるのではなく、こうして、地元を味方につける方針で、領土をますます拡大中です。
思い出してください。
これって、森矗昶イズムでしょう?
満洲へ来てから、閣下に、ノブテルさんの話、したことあるんです。何かの折に。
あれを覚えててくれたのか。
閣下が参謀本部・青年連盟・満鉄で講演をするとき、新国家建設とはかくあるべし、という例の中に、盛り込んでいる要素だそうです。
完敗ですよ、閣下。
何てことしてくれちゃうんですか。
錦洲は、勢いあまってヤリスギでしたけど、それは反省してほしいですけど、でも。
滿洲国の基本理念は
三民主義よりも民衆立脚で
共産主義よりも経済発展重視で
中国の大地に、五族協和の一大共同体をつくりだすという
とんでもない新思想によって貫かれてるんです。
昭和6年。歴史は、変わった?
私のいた世界に、石原莞爾という人物は、いただろうか。
日本の歴史に、こんなできごと、ありましたか?
おそらく、イシハラカンジという、無名の参謀はいたと思います。
テイちゃんと結婚して、関東軍に配属されて、平凡な一生か、あるいは太平洋戦争でお亡くなりになられたか、してたんじゃないかと思います。
しかし私がこの世に転生し
なんとかせねばと勉強して
たまたま出会った石原莞爾に、いろんなことをふきこんだ。
そこまで考えてなかったですけど、十年かけて、21世紀の発想法を、この一軍人に、教えた。
歴史は、かわったんだ。
バタフライ・エフェクトを、導いちゃったんだ。
そう思いたい。
信じて、いいよね?
新しい未来を。