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張学良、待った無し。
11月末。張学良の東北辺防軍、北満にて壊滅的な惨敗を喫し、撤退に次ぐ撤退。
マンチューリ・ハイラル・密山など北満の都市が次々ソ連の占領下へ入っていきます。もはや戦闘継続は不可能。
おそらく、近く講和条約を結ばされることになると思います。
無条件降伏か、それに近い一方的な結末となるでしょう。
張学良、一世一代の絶体絶命です。
彼の、ひ弱な精神は果たして耐えきれるのか。
勝てる見込みは、もともと無かったのですが、敗因について考えさせられること、様々あります。
まず、雪。
満洲は最南端の旅順でさえ日本より寒いのですが、北満はさらに異次元級の極寒地帯です。
その、更に北から、押し寄せるソ連兵。
秋から冬へと季節が移ろいゆくにつれ、戦力差は何倍も開いていきます。
移動コスト。
張学良の東北辺防軍を支援するため、天津や北平からも政府軍が派遣されてくるのですが、かれらは長春までは、唯一の幹線である満鉄を利用するんですね。
日本はかれらに乗車賃を請求します。
そこから先は東支鉄道がつながってますが、もとよりここは敵国ソ連の支配下なので、当然、利用できません。
前線までかれらは徒歩行軍します。
屠殺場まで歩かされる豚さんの群れより哀れですよ。
満鉄上り線で戻ってくる兵はごくごく僅かです。
経済面では、10月に米国で株価の大暴落が発生しました。
今年のはブラックチューズデイというそうです。企業の連鎖倒産が相次ぎ、バタフライどころじゃない爆津波が世界中に伝染してます。
共産国家ソ連には影響ほとんど無いそうですが、資本主義諸国から武器を輸入している南京政府へは痛打となって、泣き面に蜂。
日本は今のところ影響軽微なようですが、シデハラの怠慢外交で孤立傾向なのと、首相が大蔵官僚出身なので、なんとかしてるみたいですね。
正直、経済はよくわかりませんが、日特がツブれなければ良しとします。
社長、よろしく!
かような悪条件が重なって、張学良は今や崖っぷちも崖っぷち。
さぞや日本を怨んでるだろうなあ。
関東軍、いまだに沈黙を守ってます。
閣下、このあとどうするおつもり?
北満がソ連の領土になっちゃうと、日本が今後、ソ連と直に国境を接して交渉する状況というのは発生するだろうか。
長春以南の日本の領土は、あくまで満鉄とその付属地に限られる。
起きうるとすれば、満鉄をソ連が買い戻したい、といったところでしょう。
現在の租借権は日本と中国の間で結ばれているのですが、もともと権利ごとソ連から奪ったものですから、可能性として、なくはない。
しかし、満鉄を23年間整備発展しつづけてきた投資をタテに、莫大な金額を日本は提示するでしょうし、何よりここをソ連に明け渡せば、遅かれ早かれソ連は満洲全土を支配下に収めちゃうでしょうから、日本としては国防上きわめて重要な防波堤を失うことになります。
ソ連側の目線に立てば、と地図をひっくり返して見ましょう。
中国相手なら雑作もない満洲占領計画に、厄介きわまりないクサビがあります。
満鉄と関東軍。
ソ連流儀なら、コミンテルンを浸透させ、日本の内部に赤色分子をつくるはずです。既にやってないわけないと思いますが。
そして内紛を惹起させ、タイミングよく一撃をくらわす。
閣下の想定に、コミンテルンというパラメーターは入ってますか?
共産主義との戦いに、どの程度の知識と対策と戦術を用意されてますか?
考えたら、こんな話じっくりしたことなかったですよね。
私もつい、避けて通ってきました。しかし、こうしてソ連の脅威が目の前に迫ってきた今、共産主義への理解と備えは、急務ですよ。さて、どうしますか?
今度、いまの話をしてみます。堂々と、言ってみます。
共産主義を、勉強させてください。