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戦争中です。
中国本土では、河南・洛陽周辺で内乱中。蒋と、その反対派が争ってます。
満洲では、東北辺防軍とソ連が、北部のだだっ広い国境付近で、本格的な砲撃戦を繰り広げているらしいです。
今月も、閣下たち参謀グループは、視察旅行を計画してるんですが、北満は物騒だからって遼西の方へ行くみたいですよ。
慰安旅行じゃねーかよ!
参謀連中が中ソの戦争真っ最中にそこを見てこなくてどーすんだよ!
私だけでいいから行かせろよ!許可くれよ!
やさぐれちゃってる、コダマです。
さすがに前線での戦闘状況詳細を新聞が正確に書くなんてことは、ありえません。
勝ってようが負けてようが、威勢の良い戦勝報告だけが載る。これは古今東西、どんな世界でもアタリマエで、そうじゃなくてはならないものだと、子供にだってわかることです。
わからない大人もいるんだなってことを、わかるようになるには、少し人生経験が必要かもですけどね。
それでも、政府が出資してる東三省民報など中心に、記事のテンション高さ低さで状況を推理し、前線がどう移動しているかを注意深く観察することで、東北辺防軍がどれだけヤバい状況かということを察しましょう。
9月末頃からの被害が急激に増大してるのが見てとれます。
あくまで私の見立てでは、なんですけどね。今はこれが精一杯。
張学良に同情もします。
おやじさんの時代には、関東軍を手駒のように使ってました。打ち出の小槌というか、ドラえもんのひみつ道具というか、アラジンの魔法のランプみたいに。
呼ばれればどこにでも馳せ参じて、叛乱鎮圧でも盗賊退治でも、やってあげてたんですよね。
学良くんからしたら、今こそ関東軍の力を借りたいところ切実すぎるほどだと思うんですよ。
ソ連の重砲や爆撃機の前に為す術も無く、殺されまくる我が歩兵たちを、なぜ日本は見て見ぬ振りをするのか。父の恩を忘れやがったのかてめえらと。
そんな地団駄踏んでると思いますよ。
いまの日本が君に手を貸す大義名分も無ければ、そもそも何一つメリット無いからね。
残念だが、中華民国の旗を背負ってる君が、自分の力で結着をつけねばならないお仕事だよ。
そこは、わかってね。
関東軍は現状、動いてません。
ソ連と東北辺防軍の戦局は、ハルビンや牡丹江の特務あたりから情報送られてきてるはずですし、どのタイミングでどんな結着がつくかによっては、ソ連と関東軍との軍事衝突が発生する可能性も想定されているハズ。
のほほんと構えているであろう内地はともかく、旅順ではそれなりの緊張感をもって様子をうかがっているはずですよ。
しかし、閣下もポーカーフェイスだからなあ。
そこそこお付き合いも長いですが、あの日蓮坊主が現在なにを考えているかは正直、読めないですね。
お互いさまかな。
私にしても、いつまでも旅順と大連で得られる情報だけでは、フラストレーションが限界なわけです。
今はことに、たとえば閣下のいない間にこっそり北満へ行ったりすれば、すぐ特務から通報されて、その後の行動に大きく制限がかかること必定なのです。実際、大連では必ず尾行がつくんですね。いつもご苦労様ですって挨拶する仲ですけど。
強盗やカッパライから守ってもらってる側面もあるので、特務さんへも負担をかけないよう大人しくしてはいますが、フラストレーションは溜まります。これもたぶん、お互いさまです。
そこで今、ちょっと企んでることがありまして。
トーイチさんと、上海デート、したいな。
すべてオープンです。どの便で行って、どの便で帰る。現地で合流したら、トーイチさんが私をずっと監視する。
こんなプランで外出を許可してもらえないかしらんと思ってます。
私としては、トーイチさんとの密な情報交換、および上海の本屋を回れるだけ回って情報蒐集を時間の限りやってきたいわけです。
21世紀なら、ディズニーランドも候補地ですけどね。ずっと手をつないで歩くんだ。ウフフフフ。
なんて妄想はさておき。トーイチさんに手伝ってもらって、たまには檻の外で羽ばたいてみたいんですよ。
わかるでしょ?わかってよ。
あー年内に叶うかなー。どうかなー。