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中ソ、国交断絶。
しっくりきませんね。
奉ソ、国交断絶。これかな。
これですかね。ワタシ的には。
7月21日、とうとう張学良くんが、ハルビン駐在のソ連領事を本国へ帰らせちゃいました。
話し合いによる解決への道は、閉ざされたわけです。
協議してた内容は、東支鉄道の再契約について。
ソ連が北満に有する鉄道とその付属地。
これまでは張作霖の旧奉天政府と契約を結んできましたが、今後は南京国民政府が継承します。
南京政府の代表として、張学良くんが対応するんですけど、従来の契約内容を確認した上で更新と。
これ自体は順当だし必要な手続きです。
しかし両者はもとから円満な関係ではなく、既得権益を固守した上で更に拡張していきたいソ連と、できるなら一部だけでも自国領へ回収していきたい民国側とで思惑が正反対。
火種はくすぶり続けていて、5月にハルビンのソ連領事館を中華民国特別警察隊が強制捜査。6月には東支鉄道守備隊に対し東北辺防軍が武力行使。
中国側が喧嘩っぱやくなっている印象ですね。
ソ連側の言い分を直接読んでないため、正確な状況把握とはいいきれませんが。
7月上旬、張学良が、ソ連領事館から押収した機密情報を公表しました。
ソ連は民国の政府や軍部にスパイを潜り込ませ、内部崩壊を煽り、赤化して取り込むプログラムを組織的継続的に行っていた。その証拠を掴んだぞと。
ソ連は即、それは捏造である、と真っ向否定して抗議。
喧嘩腰の交渉が泥沼化した挙句、ソ連領事側は会談をボイコット。本国へ帰ってしまいます。
北満では武力衝突も発生しており、どちらかが今日にも正式に宣戦布告しかねない段階です。
日本も、南満洲鉄道株式会社をめぐっては同じような暴力的外交をさんざんやってますけど、ここまでこじれてなかったのは、戦力差が圧倒的だったからじゃないかな。
現地に、相手を屈伏させるに充分なだけの戦力を駐留させた上で交渉してますからね、日本て。
ソ連は最低限の兵力しか北満に配備していない。東北辺防軍をビビらせるには足りなさすぎる。
これだと、抑止力にならなくて、こじれちゃうんだ。
閣下たちが視察してきた時点では。
ソ連側の鉄道守備隊と、中国側の官憲・軍隊は、互いのテリトリー内側から睨みあっていたそうです。
ソ連が現地の守備隊だけで東北辺防軍に襲いかかることはすまい。戦うとしたら本国に要請中の補充が来てから。
まあ、想定どおり。
関東軍ウキウキ参謀チームは、満洲占領プログラムにソ連というパラメーターを加えどう絡めていくべきかという研究を進めています。私からは、僭越ながら、ロシア人は油断なりませんよと申し添えておきました。
さて今後、中ソが本格的戦闘状態に突入するのか、政治的な結着でなんとか抑えられるのか、予断を許さないところなのですが。
この件について、南京政府からは直接指揮、できなさそうなんですね。
連絡に時間がかかりすぎるせいも勿論ありますが、蒋は内乱の対応で手一杯で。
したとしても、例の即決直線一方通行な命令書一枚出して済ませられそう。
なので、よっぽどこじれるまでは、学良くんの肩に、対ソ戦の命運が賭けられているわけなんです。
中ソというより奉ソの方が腑に落ちる、といったのはそういう意味です。
瀋陽を拠点とする東北辺防軍と、ソ連、そして旅順の関東軍。
参加プレイヤーはこの3者。
フィールドは北満および南満。
この範囲で、今後の展開を考えます。
でも、本日はここまで。
ソ連が手の内見せてくれれば、考えるヒントが得られましょうが、現時点では選択肢を絞りきれません。日本がすぐ前線に立つ状況は発生しないので、ひとまずは様子見。
日本が出てこない、という点については、もう一つ、新ネタがあります。
7月2日。田中義一内閣は総辞職しました。
さすがに田中首相の限界も見えてたんで、潮時かなというところで、倒閣は、まあいいんですが。
同日発足した、濱口内閣のわちゃわちゃぶりが、ユニークです。
ハマグチ・オサチ。経済畑出身です。タイムイズマネーを信条としているイメージ。というのは、首相指名を受諾してから12時間後には内閣を出走させてるんですね。政治的空白をつくることは許されないって。明治憲政以来、前例のないスピード組閣だそうです。
ただし顔ぶれを見ると、官邸近郊ですぐに連絡つけられそうな、ぶっちゃけヒマしてた人たちを掻き集めてきた感が満載。
陸相に宇垣さん返り咲き。朝鮮からは半年で戻ってきて、ブラブラしていたみたいです。
蔵相は井上準之助さんという方。
あと一人を除いて私の知らない方ばかりですが、じっくりお友達を選んで組閣するのもいいのでしょうがこんな即席混成チームもアリだとは思いますよ。でも。
外相、シデハラです。
シデハラきたよ。
こいつのアルゴリズムは丸わかりです。
何もしません。
平和主義の一点張りで、国外のいかなるモメゴトにも不干渉を貫きます。
情報収集すらしません。
中華民国でも欧米南方ソ連でもどこでも、日本人居留民にどんな危難が迫ろうとも、徹底して知らんぷりです。
そんな奴が、またも外相。
だから今回の奉ソ問題に日本本国の出る幕はないんです。はなから部外者です。
満洲や中国本土で何が起きようと、日本は一切動かない。この内閣が続く限り。
私は動く前提でシミュレーションをしますけど、所詮、机上で終わります。承知の上で、考えます。
タメイキをつきながら、おしまい。