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日本が山東省からやっと引き揚げを開始しているさなか。
現在、支那全土は概ね七つのブロックにわかれています。
浙江・広西・西北・華北・東北・四川・雲南。
明確に分けるのは困難です。地理的な行政区域ではなく、軍閥の勢力範囲で分けているので。
三国志ならぬ七国志。しかも。
浙江軍閥の蒋介石に、残り全部が立ち向かっているという構図です。
3月に行われた、国民会議=三全大会。
その議員は選挙によって選ばれたわけではない、と知ってア然としました。
なんでも、蒋に服従を誓うことが参加資格の一つだったとか。
それはアカンでしょ。
国民代表の意味を成してない。
なので現在はそれに対する反対運動があっちからもこっちからも。
広東の金・湖南の血・浙江の官、という言葉も生まれました。
織田が搗き・羽柴が捏ねし天下餅・座して食らふは徳の川、みたいなもんですかね。
蒋介石は家康のような政治的手腕ではなく、あくまで拳で訴えます。
実際、最初に武装蜂起した広西軍は速攻で政府軍によって叩きのめされました。
以上、4月から内地へ異動になったトーイチさんからの情報も交えての経過報告です。
私の知らなかったネタも、いっぱい。
蒋って昔から決断早くて、その場ですぐ命令を速記させて部下に渡すけど、その後の報告を一切求めないんだそうです。
当然そんなこと毎日やってたら重複したり矛盾する命令も出てきますけど、当人に質すと怒られるから誰も言わない。
問題がこじれてから誰かが報告すると、また新たな命令書が瞬時に発行される。
これが蒋介石流の組織運営ドクトリンです。
やっぱりあなたは政治をやっちゃいけない人です。
まだあります。
蒋って、相手のこと気にくわないと、その場で、皆が見てる前でも、平気でビンタをかますんだそうです。
それで?って思うのは私も日本人だからでしょう。
これは日本ではありふれた光景で、21世紀ではいけないこととされてますけど、こっちの世界では日常です。
私も、実の父親とその次の養父には、よくぶたれてましたよ。石原閣下に拾われてからは皆無ですけど。
だから、ああ日本人って野蛮なんだなってこと、つい忘れそうになってました。
蒋は日本陸軍で軍隊式教育受けてますから、その悪習もまんま受け継いでいて、ビンタをよくするそうです。
これは支那ではきわめて無礼にあたる行為で、それがための反発も蒋に近い人ほど、積もり積もって膨れあがってるみたいなんですね。
しかも当人は最高位の国家元首ですから。仮に蒋をビンタする奴がいたら即、国家反逆罪を申し渡すでしょう。
リアルジャイアン、まじやべーよ。
トーイチさんも、今となってはコレ、支那の内政問題なんで、割って入るどころか蒋に会見するのすらイロイロ手続きが必要で、私と同様、様子を見守り情勢観察に専念するしかないのだそうです。うーん。
最後にもうひとつ。
日本、近々ようやく国民政府を国家承認して、蒋介石を主席と認める調印をするみたいなんですね。
やっと。
石原閣下から情報ですが、その協定の中にですね。
「支那という蔑称をやめて、これからは中華・中国・民国などの呼称を使って欲しい」
という要望が盛り込まれてるらしいんです。
支那って、Chinaです。
英語では、Chinaは引き続き無問題です。
これを蔑称というのは、英語圏の人にはいささか不思議でしょう。
しかし日本では、現実問題、支那って侮蔑の響きを持つんですよね。
仮にこれまで日本人がChinaのことを「中国」と呼んでいたら、これからは「中国」と呼ばず「支那」と呼んでほしい、という要望になっていたと思います。
胸が痛くなります。
世界に通用する本来の名前なのに、その当たり前の名前で呼ぶことを、私たちだけが拒絶される。
私たち日本人にだけ、その名前では呼ばないでくれと言われる。
本当に、情けないです。
ごめんなさい。