人生が動く日は、案外平凡なのかもしれない。
何気ない時に起こるからこそ、人は混乱するのかもしれない。
俺の……いや、私の人生が大きく動いた日も、外は晴れて事件もなにもない穏やかさを持っていた。
朝起きて美味しい朝食を食べた。両親が優しく私に笑ってくれる平和な家庭の中で、今日は新たに買った伝記を読んでいた。
読んでいただけだったのに。
「ふぅ……連日に加えて長時間本を読むのは疲れるのね」
疲れた首を左右に動かして外を見る。
ぴよぴよとさえずりながら飛ぶ小鳥達に微笑ましくなった。
机に流れている日射しが暖かい。
「う……ぁっ……!?」
ここで動き始めたのだ。
重たい風邪にでもかかったかのような激しい頭痛に、思わず立ち上がってしまった。
立ち上がっても、ふらついた足ではすぐに尻餅をついてしまう。
「なに……これ……!?」
知らない男、知らない女……?記憶にないフラッシュバックが洪水のように流れ込んでくるのだ。
痛みと混乱で掻き回されていく頭を押さえたって治まらない。
意識を保とうとする脳とは裏腹に、だんだんと力が抜けていく。
一体誰の記憶になのよ……!?
助けを呼ぶこともできずに倒れていく自身と、訳のわからない記憶を恨みながら私は意識を手放した。