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No.43688の一覧
[0] 7ME[994](2020/11/20 07:18)
[1] 7th Mass Extinction[994](2020/11/20 07:25)
[2] 1.事の始まり[994](2020/11/20 07:37)
[3] 2.VS戦車[994](2020/12/03 03:40)
[4] 3.空跳ぶ戦車[994](2020/12/03 03:39)
[5] 4.[994](2020/12/04 03:36)
[6] 5.始まり[994](2021/02/05 17:24)
[7] 6.実践訓練へ[994](2021/02/12 13:37)
[8] 7.セントラルドグマ1[994](2021/02/22 15:39)
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[43688] 7.セントラルドグマ1
Name: 994◆1e4bbd63 ID:821ce689 前を表示する
Date: 2021/02/22 15:39
白い防護服を着た3人組、アレックス、バロッグ、キャリーは目の前の風景を疑った。

「たった6年で、木なんか育ちますかね?」

青々とした下草に竹、広葉・針葉樹林が日差しを享受する雑木林を前にアレックスは立ち尽くした。

「ありえないわ。大気成分や宇宙線はどう?」

バロッグは青々と茂ったシダ植物の葉に触れ、振り返った。その下には倒れた木から様々な木の子が生え、花が咲いていた。

「下層空間内と変わりません。異常なほど正常です」

空気品質モニター、ガイガーカウンター、病原菌センサーなどの測定器に目を落としたキャリーはまるで信じられなかった。測定値は全て基準値の左から小刻みに振るえるものの、どれも見慣れた作動状態だったからだ。

「どう思われますか?」

茶色迷彩の施された防護服に7.15mmアサルトライフルを装備した護衛長がバロッグに尋ね、彼女は風景に顔を厳しくした。

「わかりません、少なくとも私の想像を絶しています。ですが木がどれもこれも大きいなら、動物も大型でしょう、草食も肉食も。決して気を抜かず、警戒を緩めないでください」
「わかりました」

長は下層へ続く穴を中心に集まっていた20人の隊員のところへ戻り、指示を与える。

「まるで映画の世界ですね。映画ならヘルメットを外してますが」

どこまでも続く岩だらけの地面、あるいは砂漠、つまり草木も生えない不毛な土地。シャフトを上る間、一致していた意見がまるで外れた3人は警戒を強めた。

「止めておきなさい、人間辞めたくないでしょ。それよりドローン飛ばして周辺環境の確認」
「組織サンプルも回収しないとですね」

3人はそれぞれ仕事にとりかかる。アレックスは近くの専用コンテナからドローンを取り出し、バロッグとキャリーがメスや鋏等の工具を取り出す。空と同化する迷彩のドローンをコントローラーで操ると透明バイザーに景色が表示され、キャリーが鋏で切った草の葉を透明パックに入れバロッグがメスでキノコを石突から切り取ってパックに回収する。

「森だけじゃなくて海まで! いや、あれは湖かもしれない、でも一体どうなってるんですか?」

海岸線まで埋め尽くす森、図鑑の中の木より遥かに大きな、推定500mをくだらない木の群れにアレックスは悲鳴にも近い声でまくし立てた。

「わからないわ。でも本当に興味深い。……一度高く持ち上げた後、細かく見ていきましょう」

シリンジで樹液を採集している手が止まり、バロッグが笑顔でうっとりとつぶやいた。

「すごい、綺麗」

キャリーには宝石をちりばめて作った絵画に思えた。
森はグリーントルマリンの深緑にヒスイの葉、ペリドットの枯れゆく葉にクリソベリルの照り返し、幹に巻き付く蔓は縞模様でマラカイトを作り、スフェーンの果実を作る。海はトパーズとシトリンの砂浜に、シラーの白波、アクアマリンやブルートパーズへ広がり、潮の交わりでサファイアやアイオライトがうねり、パールやホワイトトパーズに輝く。

「音がします! この音は……飛行音!」
「撤収準備! 荷物をまとめて、出入り口を開けて!」
「スティンガー構え! 周辺警戒」

ドローンが収集した音に耳を澄ませていたアレックスは不安混じりに叫び、バロッグは背後に振り返って手早くシリンジを仕舞い根っこから降りる。護衛が背負っていたスティンガーミサイルを下ろし、前面に出て森へ銃口を向ける。慌ただしく荷物をまとめて護衛が開けたシャフトに近づくと空が異様に青く輝き、その場の人間を釘付けにする。

「オーロラ?」

幾重にも緑のカーテンが揺らめく空にキャリーが呟くとバロッグは我に返った。顔はみるみる青ざめ、空調の効いた服の中だというのに汗が止まらない、どれだけ危険かわかっているのに体は微動だにできなかった。
それは爆音と化し、翼という翼から光を出して空を飛ぶ猛禽類の郡れが真上を通り過ぎてようやく、解き放たれた。

「放射線は!」
「……せ、せいいじょうです」
「いったいどういうこと!?」

木々が揺さぶられて葉が舞い散り、枝の影を縫って足音を潜ませていたもの達の輪郭が、影の中に浮き彫りになる。

「敵襲!」

護衛の絶叫に10メートル前方の幹の隙間を見る。緑と茶色の中に、不釣り合いな鈍い銀色のアーチが蠢めいていた。

「撃て!」

全高2m、全身にはスパイクを生やし、顔には4つの目に立派な牙、8本足は鋭い爪が2本。巨大な蜘蛛は露見を自覚したのか、その大きさからは計り知れない俊敏さで迫った。

「早く地下へ!」

スティンガーミサイルを皮切りに整列した銃弾が突撃しグレネードが躍り、障害物になる幹に足をかけてすり抜けて踏破し迫る蜘蛛の絨毯の中に入る。それは多勢に無勢、吹き飛ばしはするもののすぐに蜘蛛は群体に復帰し、護衛に着々と迫る。3人は考える暇も無く荷物をシャフトに投げ込み、1人1人中へ跳び下りる。
護衛の陣は否応なく間隔が狭まり、3人はシャフト内のエレベーターに乗る。続いて護衛もシャフトに降りていく。

「隊長!」
「行けぇぇぇ!」

最後に潜った長が蓋に手をかけた瞬間、突き出した尻から糸を発射して絡めとる。長の足が消えて代わりに出ていった護衛は、2股に別れた爪の擦り痕さえ見え、足音さえはばかっているのに、鏡の様に反射する目にいすくめられていた。

「ああぁぁぁ!」

その足が視界から消え、土くれが落ちて崩れるのを見た瞬間、絶叫にハっとした護衛は一息に蓋を叩きつけた。足音が複数襲い掛かる中ハンドルを回して密閉処理、エレベーターで降下していく。
緊張の糸が切れ、全員が死を意識する極度のストレスに疲れていた。

「虫がなんであんな巨大化できるんですか!? 酸素が薄過ぎるはずです!」

混乱が混じって責めるような口調のキャリー。

「落ち着きなさい、キャリー。私にもわからないわ。それに鎧を着こんでいるなんてはずないもの」

2人が話し終わると、急にそ音が気を引いた。
それは隔壁が閉まる作動音ではなかった、マガジンを抜いて残弾を確認する音ではなかった、歯を噛み合わせる音でもない。
エレベーターの下降ボタンを連打する音だ。

「もう安全だ。安心してくれ」

副長が肩を掴むと相手は払う様に振り返り、言葉を聞いて膝から崩れ落ちた。


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