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No.43686の一覧
[0] ブラッククロニクル・ホワイトアポカリプス[994](2021/01/31 01:43)
[1] 序 ヤキュヌバキににて[994](2020/11/24 13:16)
[2] 朝議、忍び寄る気配[994](2020/11/24 20:22)
[3] フィアセラ・トーディス・ルーゼン[994](2020/11/25 03:34)
[4] 知識の蛇[994](2020/11/26 15:50)
[5] 銃か剣か[994](2020/11/26 20:56)
[6] No7.Chariot[994](2020/11/27 20:03)
[7] God children[994](2020/11/29 03:49)
[16] Because we are Legion,colony. 我らはレギオン、群団であるが故に。[994](2020/12/02 14:41)
[17] 人生を賭ける価値は?[994](2020/12/02 14:58)
[18] BackGround Leaders 背景の主役達[994](2020/12/02 22:08)
[19] 集合家族[994](2021/02/01 02:33)
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[43686] 知識の蛇
Name: 994◆1e4bbd63 ID:d10f212d 前を表示する / 次を表示する
Date: 2020/11/26 15:50
「行ってしまわれました」

アディヴェムは顔を上げ、フィアセラは皇城に消えているのを確認する。

「なぜわかるんだ」

的確に伝えてくるシャーナの耳にアメジストのイヤリングが太陽で煌やいていた。

「歩数です。これからどうしますか」
「食堂が開くにはまだ日が低い。調べものがある、書斎だ」
「私は射場で練習しています」

玄関に入って書斎の前で別れる。
扉を開ければそこは書斎などという小さい部屋でなく、図書館といって過言無いほど広い部屋。それも天井が無い、と錯覚を与えるような奇妙な部屋だ。

「ただいま、俺の宝物達」

カンカン、コツコツ、踏んだ床が擬音語の波を広げる。アディヴェムはコートを脱いで近くのハンガーにかけ、ホルダーに戻す。背負った大剣が落ちる。

「ヴェムがスカートなんて、しかもフリルが付いているのを履いているなんて知ったら、みんな驚くわね」

ドシャ。
秘書兼護衛を務めるマキニヤが人懐っこく笑う。彼女の2重になった光彩を始め、頭の4本角が只者では無いのを物語っていた。

「女装っぽいしな」
「ズボンも履いてるだろ。相殺できない?」

紫のフリルが付いた黒のロングスカート姿に、牙の冠を頂く黒い大蛇が笑うように唇を持ち上げる。

「私は驚いたわ」
「辛味に苦味を足したら、相殺できる?」

白い大蛇が鎌首をもたげた。

「お義母さんのお下がりだから仕方ないね」

話題を終わらせると波打つ黒蛇の本棚から1つ、鱗を取り外す。両手サイズの六角形に大きくなって字が表示され、白い蛇が咥えて支えればアディヴェムにも意味のある文章へ変わった。

(これは戻して)

景色から取り出した本を鱗の本棚に戻すと、題名の隊列に加わった。

(次はこれだ)

属性教典と周りより大きく示された本を取り出した。

「ありがとう、クロニクル」

アディヴェムは鱗を蛇に戻し、勢いをつけて跳び上がる。海の中の様に勢いよく、部屋の中空、光源となっている玉を跳び越える。その一線を過ぎると今度はそちらが床の様に、天井に跳び降りた。

「早かったな」

正反対の白い床で読書を楽しんでいた黒蛇が意外そうに呟く。

「戦争史を振り返りたかったんだ」

様々な言語の文字列を中心へ吸い込む床を歩き、白蛇から鱗を取る。

「読んでて楽しい?」
「どうだろう? ミスティーにとっては、俺にとっての化粧のハウトゥ本かも。戦闘機、戦車、空母、銃、ミサイル、爆弾。大臣じゃない俺から見ても、どれも魅力的な武装だ」
「でもどれも魔法から比べれば見劣りするものよ。暗殺に使えそうなのはあるけど……。それにいくつかの攻撃方法は魔法で再現できるし」
「オレ達より便利な武装があるのか?」

アディヴェムは称賛を酷評されるが顔色を変えずに次のページをめくった。

「返す言葉も無い。これはどうだ?」
「ダメね。撃たれた土地まで死ぬし、放射線が残留する。破壊と死をばら撒くだけの不出来な兵器。それに敵以外を殺すのは、本望じゃないでしょ?」
「うん。ルーゼン帝国と知って敵対するのは、人間くらいだからね」

歴史に残る名だたる兵器を見送り、ページの下大半をうめる青く輝く半円と、白い輝きが点在する黒いページが現れる。

「この宇宙ってのはとても綺麗だ。こんな風景を見たのは海以来だ」
「思い出すね」
「8歳の時に行ったきり、海には行ってないわね」
「連れ去られたんだろ? クラウン・ホワイトに」

覗き込んだマキニヤの表情が曇る。それは蛇とのやり取りに原因があった。

「鮫の女王様だよ。鯱と戦争してて、助けを求められた。他意は無い」
「そう、なら良かった」

アディヴェムは別の本を読みだす。

「兵器、武器、宝器、才器、令器」
「魔素の基本階級だけど、どうしたの?」
「これって正確じゃないと思うんだ。兵器は一般人レベル、武装も同程度の魔性石を含んだ物。武器は矛を止められるほど強い人程度、魔性石も同等。宝器は遺跡で見つかった物だけ。才器は生まれつき、文字通り才能、だから物には付けられない。令器は先天・後天性問わず、ってなってる」
「最終的には、空の魔性石に触った時の輝き次第、でしょ?」

見本答案が正しいか確認するかのような物言いに、聴いているマキニヤの方が困惑していた。

「だけどドラゴンを始め、魔族を分類する規格は無い。あくまで人間中心だ」
「それもそうね」
「それが当たり前だと思ってるから、誰も考えない。なんのために彼らは存在する? 少なくともドラゴン種は何も食べない。命を他に依存しない、完成された存在だ。なら人間より繁栄したっていいはずだ、でも天使より姿を見ない」
「もうわかってるだろ? 散々遺跡を調べさせたんだから」

黒蛇が本から目を逸らさずにつまらなそうに言った。

「魔称地帯の魔獣にとって大事なのは、均衡だ。ある種が看過できないほど繁栄すれば絶滅させ、別の種にチャンスを与える。前人類はお手々繋いで仲良く繁栄したが、権利を主張するばかりで義務を果たさなかった。数の管理を怠って、他の命の、犠牲者達の権利を無視した。だから魔称地帯から出て行って、いとも容易く絶滅させた。あいつらを動かすのは犠牲者達の総意だ、滅ぼすまでは止まれない。過去の惨物を見ればわかるだろう」
「わかるよ、アポカリプス。人間の怨念など鼻で笑うようなすごいのがある」

本を戻し、2匹の蛇が一本の大剣に戻る。

「本なんてどこでも読める。ウィンクルムには行かないのか?」
「今晩行くことにする。都に出たいだろ」
「じゃあシャーナのところへ行く?」
「そうしよう。見ているのも楽しい」

アディヴェムはマキニヤと手を繋いで書斎を出ていく。


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