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No.43686の一覧
[0] ブラッククロニクル・ホワイトアポカリプス[994](2021/01/31 01:43)
[1] 序 ヤキュヌバキににて[994](2020/11/24 13:16)
[2] 朝議、忍び寄る気配[994](2020/11/24 20:22)
[3] フィアセラ・トーディス・ルーゼン[994](2020/11/25 03:34)
[4] 知識の蛇[994](2020/11/26 15:50)
[5] 銃か剣か[994](2020/11/26 20:56)
[6] No7.Chariot[994](2020/11/27 20:03)
[7] God children[994](2020/11/29 03:49)
[16] Because we are Legion,colony. 我らはレギオン、群団であるが故に。[994](2020/12/02 14:41)
[17] 人生を賭ける価値は?[994](2020/12/02 14:58)
[18] BackGround Leaders 背景の主役達[994](2020/12/02 22:08)
[19] 集合家族[994](2021/02/01 02:33)
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[43686] 人生を賭ける価値は?
Name: 994◆1e4bbd63 ID:d6628bf3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2020/12/02 14:58
「では皇帝騎士団候補は25人の4組に別れ、合図まで待機」

側近が言い終わるとラッパが吹かれ、順送りに帰っていく。

「あの様な規律と統制こそ、軍隊にふさわしい」
「やり過ぎると柔軟性が失われるけど」
「お互いさまというやつだな」

レドヴィアに横槍を突っ込んだアディヴェムはヤイパの怒りの反撃を貰う。沈黙のままでも怒りがわかるのは、彼女が眉を吊り上げ目を見開いているからだ。

「どうぞ支臣様、予定表でござます」

メイドは物静かに1人に1巻ずつ竹簡を渡していく。

「輩を募集された支臣様への釣書です」
「レドヴィア様に渡す前に私を通して!」

メイドが箱をレドヴィアの足元へ置くとヤイパがヒステリックに叫んで顰蹙を買う。今度はレドヴィアが迷惑そうな目線を向けられた。

レギオン目次

開会宣言

1日目、12時より開催
 皇帝騎士団候補
    1回目 剣士戦
    2回目 弓士戦
    3回目 槍士戦
    4回目 騎馬戦

2日目、10時より開催
 輩候補(レドヴィア・エレナス・シャンセータ)
   レドヴィア及びヤイパ、アディヴェム及びマキニヤによる実演戦闘
    レドヴィア候補同士によるリーグ戦
    
3日目、10時より開催
 輩候補(レドヴィア・エレナス・シャンセータ、アディヴェム・ジーン)
    レドヴィア候補同士によるリーグ戦
   アディヴェム及びマキニヤ、ァリウス及びフィアスによる実演戦闘
    アディヴェム候補同士によるリーグ戦
   ァリウス及びフィアス、イーヴィ及びノーガによる実演戦闘

閉会宣言

「(俺が必要なのは早くても2日目か。今日はどうでもいいな) 帰」

それは予定表を読み始めていたアディヴェムの耳を右から左に抜け、腰を浮かしかけたところでマキニヤから封蝋のされた巻紙を2つ突き出される。

「なにこれ?」
「応募者のアピール文だって」
(丁度ならわらざわざ先行する必要……)

表とその1つを交換し、青く染色までされた紙の赤封蝋を砕く。その名前を見てアディヴェムには疑問が芽生えた。

(あれ、ニーマって成人してたっけ?)

そしてそれをすぐに口走った。釣書に描かれた顔は疑わしさを被るのに十分、幼さとあどけなさが同居している無邪気なもの。

「輩って年齢制限有ったっけ」
「無いわ。ヴェムが断らない限りね」
「ニーマっていうのね。どんな子だったの? 詳しく教えて」

隙を突いて覗き込んだァリウスが上目遣いに、厳しさを潜ませる。

「信心深い良い娘だったよ、ただちょっと甘えん坊かな。よく食べるしよく動く、健康的で気力体力共に強い。孤児院のファスターに預ける少し前に、力に気が付いた」
「たくさん知ってるんだねぇ!」

ァリウスとイーヴィの目は座り、特にイーヴィは粘りつくような声で高く指摘する。

「部下になる人間について知ってるのは良い事だと思うぞ。大体、イーヴィだってアディヴェムの事はよく知ってるだろう?」
「そうだけど。……短所はないの?」
「あるよ。寝るときに抱き付かれるんだ。離れてくれないから俺も横にならないとダメだし、しないと泣くこともあったから困らされた」

ァリウスが素早く顔の欄に手をかざし、ニーマの外見を露わにする。ニーマ・レタリアンスは石畳で健気に咲く一輪の花を思わせ、溶け残りの雪の様な儚い印象の少女だった。

「この見てくれで! そんなの短所にならないよ!」
「ひ!」

眉や目を吊り上げたイーヴィが裏声交じりに絶叫し、どこ吹く風のシャーナを除いたメイドを壁へ追い立てる。

「私もそういう小さい子を輩にするのはとても! 気が引くな」
「でもレドヴィア、確かにこの子の本心よ。愛してるって」

反応を見せないのは4人だけ。それ以外は騎士道によって、母性によって、あるいは予想だにしない奇襲によって、目元が痙攣し始めていた。

「その愛って家族愛でしょ、恋とは愛の種類が違う。仮に本当だったとしても、小さい娘が父親に、将来お父さんのお嫁さんになる、ってお遊戯の延長で言ってるだけに過ぎない。大体、俺の愛称を知ってる? お義兄ちゃんだよ。まさしく家族愛だという証拠だ」

普通であれば納得する言葉だったが、3人の目は瞳孔を広げ、いよいよ狙いを定めた。それを救ったのはラッパの一吹き。候補者が北からグラウンドへ流れ込み、話している場合ではなくなった。

「俺は帰るよ。まだ手紙に目を通してない」
「なぜ見ていかない。お前が動かす部下になるかもしれない者達だ。相手だって残念がる」
「むしろ逆、しかも俺は殴られましたよ。なら内定している彼らに割くだけ、時間の損だ」

レドヴィアは何か言おうと口を開きかけたが、渋々という感じで押し黙った。それと反比例してヤイパの睨みは増々熱を持った。アディヴェムは針の筵の中、3人を連れて門を出ていき、クロニクルが殿へと道を作る。

「ごめんね、巻き込んで。昼を食べ損ねた」
「いいえ、弱き者に興味はありません。私はそれより昼は、今から皇城へ行けば大丈夫です」
「マスターが正しいと思う。でもお昼は食べたい」
「ヴェム、そんなに気を遣わないで」

3人はアディヴェムを励まし、皇城へ足を向ける。オパールの薔薇に水晶を隙間無く被せた廊下、宝石床を切り取った廊下を進む。

「あらアディヴェム様、大丈夫なんですか?」
「まあ俺は必要ないでしょうから」

葡萄模様の扉の先、カウンターに頬杖を突いていたメイドが、いかに暇かを物語るレストラン。出窓から入る太陽も手伝って穏やかさが溢れるのだが、活気が無いのがもったいないくらいだ。

「でも支臣様がいらっしゃらないのは、やる気が落ちるんじゃないんですかあ?」

椅子から降りたメイドは注文するよりも早く、厨房へ合図を送る。

「さあ? そんな連中なら、俺を殴らないでしょう」
「あ、聞かせてくださいよその話。どうもあなたの話だけ、吟遊詩人でも歌わないんです。墓まで持って行きますから」

アディヴェムもそれを確認すると座り、メイドは興味深げに目を光らせてやってくる。

「食欲の無くなる話です。ダイエットをしているなら構いませんが」
「その話、私も同行していた時期では?」
「私は平気」
「ヴェムのやり方なら体験したから」
(止めてくれよ)

様子を伺ったがアディヴェムの期待に反して、3人は促してしまう。仕方なく椅子を指さすとメイドが卓に加わる。

「あれはコンティウラ連合国のヤークバルド城攻めを命じられたときの話。丁度そのころ、俺は最も効率よく戦術的に勝つ方法を考えていた時期です。答は簡単だった、城を人間の屠殺場に見立てれば良かったんです」

厨房から刻む音や焼けるにおいが漂ってきた。明るく朗らかなメイドの表情は曇り始める。

「ついでにゾンビ対策も考えていて、実験場にはこれ以上は無いわけです。皇帝騎士団が待ってたけど、俺は作戦結構時間に城の敵全員に転移魔法をかけて、完全に無力化しました。顎の上下、首、肩、腕、指の第2間接? 股関節、膝、足首からそれぞれ転移させた。やられた方は当然死にました、その自覚すらないまま」
「すごい光景でしょうね。さすがにそれは」

金髪の眉を寄せて気持ち悪そうなメイドは、うへえと言わんばかりに声を曇らせた。

「時間丁度に合流して踏み込んだ皇帝騎士団が見たのは血の海と、綺麗に切断されたバラバラ死体。その時は半分くらい、気絶してましたよ。やはり貴族というのは、民とは違って脆い」
「そりゃそうですよ、使用人にやらせてしまうんですから。血だって見ませんよ」
「その城攻めは始まる前から、終わっていたわけです。残りは血と死体処理だけだったので、指示を出していたら殴られたわけです。あんたは人でなしだ、指揮官としても失格だ。と叫ばれてしまいましたよ」

メイドは虚を突かれたように目が点になっていた。

「できたから運んでいってくれ」

シェフが叫び、叫んでおきながら自ら持ってきていた。

「お待ちどうさま」
「ありがとうございます」
「でも、親としてはありがたいけどねえ。大事な我が子が危険な目に遭うのを考えれば、ちゃんと毎日帰してくれる方に預けたくなる」

皿の1つを運んできた中年のシェフまで椅子を持ってきて、話に参加した。
ボイル牛タンとアスパラのサラダ、パンが入ったキノコのスープ、トナカイ肉のステーキ、コーヒーのクリームフラッペ、ジンジャーパンが今日のランチメニュー。

「そこは若気の至りというやつですよ。全員、手柄を立てようと必死ですからね」

塩と香辛料でボイルされた牛タンは臭みが無く、独特な触感で柔らかく、シンプル故に素材の旨味が物を言う。

「まあ気持ちはわかる。俺らも散々無茶をやった。でも無茶の程度が違うだろう。貴族にとって、そんなに名誉は大事なのかい?」

スープは濃厚なクリーム仕立てで、キノコの香りに負けず劣らず、パンの触感もアクセントになる。

「どうなんです? 名誉というより偽善じゃないですか。私は敵である人の事も、こんなに考えてる。えらい! って優越感に浸ってるんでしょう」

アディヴェムが声色を変えるとメイドとシェフがそろって笑う。

「まあたしかにな。貴族は変なところにプライドがあるから」

シェフは腕組みをして頷く。

「どうなったんです、その人は。支臣様を殴ってカイセス皇はどうなされたんです」
「懲戒免職ですよ。彼女はもう結婚相手も来ないでしょう。貴族もそんな事で皇に睨まれたくはない」
「止めなかったのですか?」

シェフの代わりにメイドが、ここでは終わりではないですよという風に尋ねる。

「止めませんでしたよ。規則通りでしたので、理由が無いわけです。それに家を取り潰させないためにも、彼女は責任を果たす必要があった」
「え、でも1発でもダメなんですか?」

その不注意はすぐさまメイドに熱視線を呼び寄せた。それも本物の殺意が混じった、まさしく炎そのもののオーラを噴き出した3人だ。

「アディーはモテるな」

ハハハと笑ってシェフがアディヴェムの肩を組む。その背には冷や汗でびっしょりだ。

「顎が取れるほど力強く殴られたら、あなたどう思いますか?」
「それは嫌ですよ。痛いし腹も立ちます」
「じゃあ俺も変わりませんよ。それに彼女は代替案を出したわけじゃありません、ただ批判しただけだ。そしてリスク計算をど返しし、騎士道こそ正義と過信した」

半目半口でメイドは頷き、3人は食事に戻った。

「1年の収穫はどうだった?」
「0人でした。少なくとも俺が旅してまわった場所には、支臣足りえる令器持ちはいませんでした」
「そいつは残念だったな。まあ公告もしてないから予想はしてたけど」

役所の掲示されるお触れを思い出すシェフとメイドは視線を上に持ち上げる。

「まあ村じゃあな……」
「村こそ狙い目なんですよ。都会は切磋琢磨してますし、すぐ応募に来るでしょう。でも田舎はそうもいかない。シャーマンと片付けられたり、妬みを恐れて逆に隠してしまう」
「田舎ならでは、って感じか。それでも居ないとなると帝国は厳しいな。周りは10も20もいるのに、こっちはたったの4人だ。運を天に任せるしかないのねえ」
「まずは計算ですよ。人口比率からすればあと5人くらい眠っているはずです」

おっという感じでシェフはアディヴェムを見て、それからデザートを取りに厨房へ戻った。そして代わりにメイドが顔に疑問を張り付けた。

「なんでわかるんです?」
「私も混ぜてくれよ!」

叫び声でアディヴェムは口を開くのを止め、スパイスケーキがミントに飾り付けられて運ばれた。

「役所に行って訊けばいいんですよ、総人口くらい教えてくれます。共和国の人口がざっと100億、帝国も同数だ。なら5人くらいいてもおかしくないって感じですね」
「それでも足りない。各個撃破されたら」
「そうはなりません。よっぽど隣国と仲良くしていなければ、がら空きの背中なんて見せたりしません」

アディヴェムが言うとシェフが唸り、かぶりを振った。

「料理人にはわからん世界だ」
「ご主人、食べ終わりました」

ハンカチで口をふいたシャーナがシェフを褒める。

「今日もとても美味しかったです」
「それは良かった。また来て欲しい」


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