「はぁ?意味わかんないんだけど!」
肩と耳でスマートフォンを挟み、誰かと電話をしていた。
愛実の声色は強く怒りが含まれ、スマートフォン越しの男の声は面倒くさそうに言い訳をする声が聞こえた。
ポーチを漁って口紅を取りだし、ローテーブルに乗っている鏡に向かい口紅を塗る。
その行動の最中も喧嘩は続き、愛実は一方的に捲し立てていた。
「もういい!!」
強く言い捨て、通話終了ボタンを押してスマートフォンをベッドに投げた。
ヘアアイロンで茶色に染まっている髪を柔らかく巻き、前髪を整える。
コンセントからアイロンのコードを抜いて、鏡と一緒に雑に片付けた。
「マジで最悪」
「行ってきまぁす」
「行ってらっしゃ~い」
綺麗にイマドキらしく着飾った顔で家を出た。
_あーは言ったけど本当は別に怒ってなかった_
_私なんでアイツと付き合ってるんだろう_
_好きってなんなんだろ_
恋なんて知らない。昔も今も。
今付き合ってる彼も、正直なんで付き合ってるのかわからない。
朝は喧嘩してたけど普通に優しいし、かっこいいと思うこともある。
けど、これが恋とか好きとか言われるとよくわからない。
これは恋を知らない私が初めて知った、酸っぱくて苦い恋のちょっとしたお話だ。