「成り立たないよ」

「‥‥‥」

「「男と女に友情関係が成り立つ」？ ‥‥‥そんなの、男が損するだけに決まってる」

「‥‥‥いや、でも‥‥‥」

「でもじゃない、成り立たないってば」

「‥‥‥」

「‥‥‥だから、もうこの話するの、やめな」

「‥‥‥うん」



僕には、女友達がいる。




「うーん、成り立つと思うんだけどなぁ‥‥‥」

「‥‥‥どうしたの？」

「いやぁ、男女の間に友情関係が成り立つかどうかを考えてるんだよ」

「‥‥‥そう？ 私らは成り立ってるけど」

「ああ、あの幼なじみの子？」

「うん」

「それは、幼なじみだからじゃないの‥‥‥？」

「どういうこと？」

「いや、幼なじみってさ、お互いの事知り尽くしてるじゃん。だから、恋愛感情湧かないかなーって思うんだよ」

「‥‥‥言われてみれば、そうかも」

「だろう？」

「でも、なんでそんなこと考えてるの‥‥‥？」

「‥‥‥いやぁ、こないだアカリとさ、その事について話してたんだよ」

「え、アカリと？」

「うん」

「あの子とは、付き合ってたんじゃないの？」

「いや、付き合ってはいないよ」

「ええっ、あんなに仲良いのに？」

「うん」

「うーん、アカリはあんたのこと、好きだと思うけどなー‥‥‥」

「‥‥‥本当に？」

「‥‥‥え？」

「‥‥‥それ、マジで？」

「‥‥‥えっ、ちょっと、急にどうしたの‥‥‥？」

「やっぱそうだよね、アカリは僕の事を好いている。アカリは僕の事を好いていながら、僕と付き合うことを避けているんだ。それが何故だかわかるかい？ 彼女はまだ僕と友人同士でありたいからだよ。でもね、駄目なんだ。そんなことは許せない。僕は許せない。アカリアカリアカリアカリアカリ」

「‥‥‥ちょっと、まだそんな感じなの？」

「‥‥‥うん」

「‥‥‥お気の毒」



僕には、女友達がいる。





「‥‥‥ああ、アカリ‥‥‥」

夜、僕はアカリの顔を思い出していた。

「‥‥‥彼女は、どうして僕を友達扱いするんだろう」

「‥‥‥お悩みのようだな」

「ア、アカリ‥‥‥どうしてここに！？」

「‥‥‥そりゃ、私は君の側ならどこにでもいるからね」

「‥‥‥アカリ。君はどうして僕の事を友達扱いするんだ？」

「そりゃ、君は私の彼氏としては不十分だからさ」

「‥‥‥」

「アカリ、アカリ、と‥‥‥こんな私の事ばかり考えているような男とは付き合いたくないね」

「‥‥‥仕方ないだろう、好きなんだから！」

「‥‥‥好きなら四六時中テレパシーを送ってもいいのかい？」

「‥‥‥」

「‥‥‥私は今眠いよ。誰のせいで‥‥‥こんな‥‥ふわぁ‥‥‥」

「‥‥‥悪かったよ、テレパシー送って‥‥‥でも、元はといえば、この力は君から‥‥‥」

「‥‥‥でもさ、変な話だよね」

「‥‥‥なにがさ」

「‥‥‥君って、その力で私の事、全部覗けるだろう？」

「‥‥‥」

「なのに、どうして覗かないの？」

「‥‥‥そんな事したら、君と恋人になれなくなるかもしれないじゃないか」

「‥‥‥なぜ？」

「‥‥‥なぜってそりゃ‥‥‥君のことを全部知ってしまったら‥‥‥」

「‥‥‥」

「‥‥‥もうっ、いいじゃないか！ おやすみっ」

「あっ、ちょっ‥‥‥」

「‥‥‥」

僕はアカリを想像する事をやめた。



「私を見ろ私を見ろ私を見ろ私を見ろ私を見ろ私を見ろ私を見ろ私を見ろ私を見ろ私を見ろ私を見ろ私を見ろ私を見ろ私を見ろ私を見ろ私を見ろ私を見ろ私を見ろ私を」




「‥‥‥はぁ、はぁ‥‥‥なんて夢を見てるんだ」



僕には女友達がいる。






「アカリ‥‥‥」

「‥‥‥どうしたの？」

「‥‥‥僕ら、友達だよね？」

「え、なに、お金なら貸さないよ？」

「そういうのじゃないよ‥‥‥」

「冗談だよ。‥‥‥で、どうしたの？」

「‥‥‥友達だよね？」

「うん」

「‥‥‥そ、そうか」

「‥‥‥え、私‥‥‥悪いこと言った？」

「いや‥‥‥」

「‥‥‥」

「‥‥‥あ、あのさ、アカリ‥‥‥」

「‥‥‥」

「‥‥‥僕と、付き合ってくれない‥‥‥？」





「‥‥‥どうしたの？」

「‥‥‥」

「え、なに、お金なら貸さないよ？」

「‥‥‥あ、あの、‥‥‥アカリ‥‥‥」

「‥‥‥冗談だよ。‥‥‥で、どうしたの？」

「‥‥‥」

「‥‥‥なに、どうしたの？」

「‥‥‥なんでもない」

「‥‥‥変なの」

「‥‥‥」




「‥‥‥ねぇ、アカリ」

「なに？」

「男女の間に‥‥‥友情なんて成り立つと思う？」

「成り立たないよ」

「‥‥‥」

「‥‥‥そんなの、男が損するだけに決まってる」

「‥‥‥いや、でも‥‥‥」

「でもじゃない、成り立たないってば」

「‥‥‥」

「‥‥‥だから、もうこの話するの、やめな」

「‥‥‥」

「‥‥‥なんでそんな事、聞いたの？」

「‥‥‥君が、好きだから‥‥‥」




「成り立たないよ」

「‥‥‥アカリ」

「「男と女に友情関係が成り立つ」？ ‥‥‥そんなの、男が損するだけに決まってる」

「アカリ‥‥‥！！」

「でもじゃない、成り立たないってば」

「アカリっ！！ アカリ！！」

「‥‥‥え、なに？ どうしたの？」

「‥‥‥ねぇ」

「‥‥‥なに？」

「‥‥‥僕たち、ずっと‥‥‥友達？」

「うん、そうじゃない？」

「‥‥‥あ、ああ」

「‥‥‥え？」

「あああ、ああああ！！ あああああああ！！」

「‥‥‥え、ちょっと、大丈ーーー」

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ！！！！！！」