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No.43461の一覧
[0] LILITHの世界のアリス【対魔忍二次 女オリ主モノ】[幽霊](2020/02/01 07:08)
[1] ここは何処?[幽霊](2020/02/01 07:09)
[2] 嘗められたら殺す[幽霊](2020/02/01 07:09)
[3] DEATH FROM ABOVE[幽霊](2020/02/01 15:46)
[4] タタキは殺せ[幽霊](2020/02/01 20:20)
[5] 黄鱔田雞煲仔飯(ウナギとカエルの炊き込みご飯 1700円[幽霊](2020/02/02 09:01)
[6] 酒田くんの童貞喪失[幽霊](2020/02/03 09:35)
[7] キナ臭い仕事[幽霊](2020/02/04 07:52)
[8] 時雨「対魔忍は刑法174条に喧嘩売るのが仕事なの?(困惑[幽霊](2020/02/05 08:07)
[9] TIME TO HUNT[幽霊](2020/02/06 07:08)
[10] LOCK ON[幽霊](2020/02/09 22:52)
[11] WHO are YOU?[幽霊](2020/02/23 18:44)
[12] インタビュー[幽霊](2020/03/09 11:59)
[13] アイサツはシンプルに[幽霊](2020/05/27 14:06)
[15] 戦いの理想は一方的な殺戮である[幽霊](2020/06/11 02:36)
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[43461] 時雨「対魔忍は刑法174条に喧嘩売るのが仕事なの?(困惑
Name: 幽霊◆647cadf5 ID:3a6525b3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2020/02/05 08:07

 前書き
やっぱり、感想来たので書く



 時雨「対魔忍は刑法174条に喧嘩売るのが仕事なの(困惑



 「酒田」

 「何です」

 「対魔忍達を此処に案内したら、君はアミダハラに戻れ」

 「どう言う事です」

 僕の言葉に訝しむ。無理も無い。
 だから、正直に話す。

 「今回の依頼は罠だ。あの小倉って野郎、僕を嵌める気でいる……」

 「そんな事って……」

 信じられない。そんな顔をする。
 君、ヤクザの汚さやクズっぷりを間近で見てたんじゃないの

 「ヤクザってのは基本的に利益の為なら、平気で他人を売る……奴等、政府を裏切る方が利益になると踏んで、ノマドに鞍替えする気だ」

 「そんな……アイツ等、一千万渡して来たじゃないですか そんな、最初から裏切るくらいなら、一千万払いますか」

 酒田の言葉は最もだ。
 でも、君は奴等のガチのクズっぷりを知らない。

 「奴等は任侠だの、極道だの言っちゃいるけど、頭の中にあるのはどうすれば一番得をするか の、一点だけだ。それにカネは僕を売り飛ばした後、君を殺して回収すれば事は済むだけの話さ」

 「そんなのあんまりじゃないですか」

 「そうだよ。でも、コレが裏社会で生きるって言う事さ……だから、君にチャンスをやる」

 「チャンス」

 「そう、チャンスだ。僕の部屋に4億円ある……僕が死んだら、君が好きに使え」

 突拍子もない言葉に酒田は言葉を失う。が、直ぐに意識を現実に引き戻し、問うた。

 「どう言う事ですか」

 「言葉通りの意味さ……今回の依頼は罠そのもの。だから、僕は生きて帰れるか ハッキリ言って、解らない」

 「それは解りましたけど、4億やるのとどう繋がりがあるんですか」

 「あの世にまでカネは持ってけない。だったら、汚いカネでも君の人生再起に使う方が建設的だし、クソ野郎共にくれてやるよりとてもとてもマシだ」

 シニカルに嗤う時雨にすれば、カネを放置するくらいならば、誰かに役立って貰う方が気分的に良い。
 特に、風俗なお店で娼婦とヤッただけでクソヤクザに因縁付けられ、ヤクザにさせられて人生台無しにされた酒田の人生をやり直すチャンスになるならば、尚更マシなカネの使い道って言う奴だ。

 「良いかい 君がアミダハラに着いてから一週間。一週間経っても僕が戻って来なかったら、僕のカネや部屋を好きにして良い……そのカネで人生をやり直すんだ。君には裏社会で生きられる程の悪意は無い」

 彼は未だ、裏社会の出入口に立ってるだけ。だから、後戻りも出来る。
 でも、僕と一緒に居続けたら、最終的に後戻りは出来ない。そうなったら、マトモな人間ではいられなくなる。

 だから、酒田……君は僕の様になるな。
 僕みたいな手遅れのクズになったら、人生は悲惨。
 裏社会とか言うドブでしか生きる事が出来なくなる。

 「解りましたよ。対魔忍を此処に送り届けたら、俺はアミダハラへ戻れば良いんですね」

 「そうだよ。で、アミダハラに着いてから一週間しても僕が帰らなかったら、部屋のカネで人生をやり直せ……」

 話は終わりだ。
 この後は潜伏してる廃ビルで歓迎委員会の準備。アホ共が群れでやって来るのは解ってる。
 だったら、アホ共に僕と言う殺し屋を騙したら、どうなるか 見せ付けてやる為にも支度をしなくちゃね……

 ノマドばかりか、稲代会ともトコトン戦争する気満々の時雨。
 彼女はアミダハラから持って武器から何枚も重ねられた上段に『FRONT』
 下段に『TOWARD ENEMY』 と、刻印されたモスグリーンの分厚い長方形の板と、ロールに巻かれたケーブルや短い筒と大きな四角い箱。それに釣具店で買った釣り糸のロールや特殊なプライヤー《ペンチ》と黒いビニールテープをキャンバス地のバッグに詰め込んで行く。

 「やっぱ、歓迎委員会開くならコレは欠かせないよねぇ……」

 悪戯を仕掛ける子供の如く、獰猛な笑みを浮かべれば酒田は僅かに引いてしまう。

 「何か、楽しそうですね」

 「そりゃ、クソヤクザの絵図を台無しにした上にクズ共を殺れるンだからねぇ……ワクワクするだろ」

 未だ、一般人の感性が有るからか、酒田には時雨の感情が理解出来なかった。
 だが、人生をヤクザに台無しにされた酒田からすれば、ちょっとした復讐が出来ると解れば……

 「俺も手伝います。"役立たず"だとしても、雑用くらいはやれます」

 「じゃ、コレ持って」

 荷物の入ったキャンバス地のバッグを渡されると、酒田はその重さに驚いてしまう。

 「何か、重くないですか」

 「そりゃ、重いさぁ……じゃ、一緒に来て」

 2人は1階まで降りると、非常口等の裏口まで歩いて行く。
 そして、裏口まで来ると、時雨は床に寝そべり一言。

 「板を取って」

 「コレですか」

 「うん、それそれ」

 板を受け取った時雨は板の側面に取り付けられたプラスチック製のチャチな脚を立てると、床に置き、上部にあるスリットを覗き込みながら向きを調整。
 無論『FRONT TOWARD ENEMY』と記された部分を裏口の方に向ける。
 そんな板を裏口に向けて2箇所、据えれば、手を酒田の方に伸ばしてまた一言。

 「箱とロール、筒。後、釣り糸とテープにペンチ」

 「ちょっと、待って下さい」

 酒田は時雨に言われた物を戸惑いながらも、板以外の全てを順番に渡して行く。
 それ等を受け取った時雨は手を床に置くと、慣れた手付きで流れる様にスムースに作業を始めた。

 「それって、確か……」

 「ん クレイモア地雷だよ」

 M18 クレイモア……米軍がベトナム戦争から2081年の現在まで長年御愛顧の指向性散弾地雷。
 それが、板の正体であった。
 時雨は板に箱から出した棒……もとい、信管を取り出すと、端をプライヤー《ペンチ》で平らに切った導火線と繋ぎ合わせ、導火線挿し込んだ信管の端をプライヤーで潰して固定。それから、筒……M60 発火具にセットする。
 そうして、信管と発火具を導火線で繋ぎ合わせると、時雨は発火具をビニールテープで壁やビルの柱に固定。
 発火具を作動させる為のリングに釣り糸を結び付け、床から数十センチの高さでピンと張らせて壁や柱に蜘蛛の巣の如く巡らせれば、発火具の唯一の安全装置とも言えるピンを抜いて地雷設置完了。

 「今後、ここを出入りする時は正面の入口を使って……正面以外から入る奴は敵だから殺せ」

 「は、はい」

 作業を数分で終わらせた時雨は荷物持ちの酒田にペンチ以外の物を渡し、バッグにしまわせてから次の場所へと移動。
 再び、同じ作業を繰り返してクレイモア地雷を仕掛けて行く。
 作業は1時間近く続き、作業が後片付けも含めて終わる頃には通路や非常階段含めた階段に幾つものクレイモア地雷が仕掛けられ、何も知らぬ侵入者が掛かれば死ぬ仕掛けの出来上がり。

 「取り敢えず、クレイモアはコレでいっか……」

 「この後はどうするんです」

 「次かい 次は君に大いに働いて貰うよ」

 そう言うや、時雨は壁に立て掛けられた明らかに重そうなスレッジハンマーを片手でヒョイッと持って手に取り、酒田へと差し出す。

 「あの コレで何を」

 両手で受け取ると、首を傾げる酒田。
 そんな彼に黒のカラースプレーを手にした時雨が命令を下す。

 「今から、僕はスプレーで目印を付けてく。君はそのハンマーで目印の場所を叩き割って孔を開けろ」

 時雨は質問は受け付けない。そう言わんばかりに部屋を後にすると、酒田はボンヤリと時雨が何をしようとしてるのか 予想しながら、後を追う。それから程なくして、黒いペンキで✕印の描かれた所を左右の壁に見付ければ、酒田は腰を捻ってスレッジハンマーを振り被って力を溜める。
 そして、溜めていた力を一気に解放し、腰の入ったスイングと共に壁にスレッジハンマーを叩き付けた。

 ガン、ガンとスレッジハンマーを叩き付ける。が、壁はそう安々とは崩れてくれない。
 それでも、酒田は諦めずに何度も叩き付ける。
 暫くすると、強固な壁はとうとう音を上げ、漸く割れて壁の向こう側が見えて来た。

 「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……ちきしょー、どんだけ硬ぇんだよ」

 スレッジハンマーで強化コンクリートの壁を何度も叩き付けたせいか、両手、両腕が痺れと鈍い痛みを脳に訴えて来る。
 痛みを堪える様に再び、スレッジハンマーを握り締めた酒田は後ろを振り返ると、反対側の壁も先程と同様に叩き始めた。

 作業は夜まで続き、終わる頃には全身で酒田は全身で息をしながらソファーでバタンキュー。
 そんな彼に代わり、時雨は東京キングダムのリトルチャイナと言っても過言ではない中国人街の屋台で買ってきた食事を手に戻って来ると、口を開いた。

 「僕がヤバくなるタイミングは対魔忍達と合流して纏まってる時と対魔忍達が仕事を始めた時……」

 そう……一番、確実なのは獲物達全てが巣穴に入った時。
 其処を狙って、ビルの周囲を包囲して逃げ場を無くせば、後は時間を掛けてゆっくりと嬲り殺しにすれば解決。
 捕獲目的なら、大火力の兵器は初撃で使われるだけで済む。
 だけど、最初から全力で殺すつもりなら、外からRPO-Aやらオートグレネード、RPGに50口径。最悪、迫撃砲やらTOWとかの対戦車ミサイルとかの大火力を全力でブチ込まれ続ける。
 で、その後に死体確認の為に兵隊を差し向ける。そうなったら、打つ手は無い。

 でも、多分……そうはならない。

 一番最悪の事態にはならない。
 確信とも呼べる根拠と時雨自身の勘がそう告げる。

 基本的に悪党連中は算盤弾いて、物事を考える。
 僕みたいなチンケな小娘と対魔忍とやら相手に一発、85000ドル《約860万円》もする対戦車ミサイル《TOW2の値段》をブチ込むメリットは何だ
 復讐の為なら関係無い。と、思うじゃん

 クソな悪党共って基本的に殺す事より、感情の赴くままに相手を嬲る事しか考えない。
 それにケチだから、カネを消費するのも嫌がる。
 だから、差し向けるならレベルの低い使い捨てにしても心痛まない兵隊共。
 特に、クソな地域なら端なカネで命をホイホイ棄てるバカは掃いて捨てるほど居る。そう言う奴等を差し向ける可能性の方が大きい。

 え 合流した時点で差し向けられるのは、考えないのか って

 その為のクレイモア地雷。
 裏口とかからコッソリ侵入して来るバカがクレイモアに掛かれば、爆発で解る。
 でも、それは無い。

 何故 答えは簡単。罠だと思わせない為には、先ずは獲物を安心させる。
 で、自分達が奇襲を仕掛けて、狩る者だって思わせてる間に包囲網を構築。
 否、既に構築してる包囲網の口を閉じて、本格的なハンティングにする方が愉しめるだろ

 何せ、特等席で獲物が泡食ってる様を見れる上、狩人共に追い回されて傷付いて苦しむ様も拝める。
 そんな上等なショー、見逃す理由も台無しにする理由も悪党共には無いと違うかな

 「それでも、合流した瞬間に踏み込まれたら」

 ソファーで寝そべる酒田が顔を時雨に向けて問えば、彼女は平然と饅頭を頬張りながら答える。

 「モグモグモグモグ……そうなったら 対魔忍と組んで此処から逃げるだけだよ」

 実際、対魔忍を味方と言う肉盾にすれば生存率は一気に上がる。

 「気軽に言いますね。ホントに切羽詰った状態なんですか 時雨さん見てると、そんな風に見えなくてヤバいって感じがしないんですけど……」

 酒田の言葉に時雨は溜息。
 実際、鉄火場に一度しか立った事の無い幸運な彼にすれば、今の状況がどれだけ危険なのか 恐怖を臆面にも出さずに飄々とする時雨を見てしまえば、彼を責めるのは酷というもの。

 「え あぁ、依頼人に裏切られた事も何回か有るからねぇ……特にクソヤクザからさ。アイツ等、根無し草《デラシネ》の疫病神な殺し屋なんてヤクザより劣るって高をくくってるんだ」

 ヤクザの依頼人の中にはキチンとカネを払う者も居た。
 だが、大半は嘗めた真似をして来る。
 それ故、時雨は……

 「だから、嘗めた真似をした組織は皆殺しにした。嘗められたらお終いの業界だからさ」

 時雨を知る者達は、口を揃えて言うだろう。
 アイツを怒らせるな。
 間違えても報酬を踏み倒したり、騙して殺そうとするな。
 もし、そんな事をすれば、悪魔が取り立てに来るぞ……と。

 それは殺し、殺され、騙し、騙されが横行する裏社会で、そう言われるだけの事をして来たからに他ならない。

 しかし、酒田は知らない。
 彼女が最高クラスの殺し屋で、裏社会でも手出しするなと言われる疫病神である事を。

 「え 個人で組織潰すなんてそんな真似……」

 「意外と出来るよ。シノギを燃やしてやって、組員達をダース単位で殺しまくる。そうするとね、外部の連中が死臭を嗅ぎ付けたハイエナやハゲタカ、ハエみたいに群がってさ、死に体の組織を喰おうとする。その混乱に乗じて、幹部や兵隊共を殺して、最後にトップを殺せばお終い……どう 簡単でしょ」

 「ヒデェ……完全に組織崩壊する奴ですやんか。それでよく、復讐されたりしませんね」

 「え 皆殺しにすれば復讐される心配無くない」

 古くから女子どもだろうが、一族郎党皆殺しにするのは復讐防止の為だ。
 憎しみと言うのは、人の性能をブースト強化する。故に、復讐者の存在は破滅のキッカケとも言えるだろう。
 だから、一族郎党皆殺しにして後顧の憂いを断つのは先人達の素晴らしい知識と言えるだろう。

 「ま、兎に角だ。僕は平気だけど、君は生き残れない。だから、君は死にたくないなら対魔忍共を連れて来た後は、さっさとアミダハラに行け……此処は明日辺り戦場さ」

 可愛い顔を険しくし、真剣な眼差しと共に有無を言わさずに言われれば、酒田も首を縦に振らざる得ない。

 「解りました。因みに、罠とか無かったら」

 「そしたら、予定通り仕事するだけだよ」

 時雨はそう言うと、屋台で買った食事を食べるのであった。






 夕食を食べて廃ビルに残されたソファーで眠って一夜を明かし、朝食と昼食を東京キングダムのヴェナム人街の屋台で済ませた後は対魔忍達が来るまで、僕は廃ビルに籠もって暇潰し代わりに武器を弄る。

 メインアームになる元の世界から持って来たM4A1。
 サブアームのファイブセブンとスタームルガーMk.3。
 普段なら、コレだけで事足りる。でも、今回はそれだけじゃ、足りない。
 だから、射程のある銃を用意した。

 旧ソビエトの軍用狙撃銃であるSVD ドラグノフ……の中華コピー品である85式狙撃歩槍。
 この世界の人間からすれば、100年以上前に中国のノーリンコで造られた、とてもとても古い骨董品とも言えるスナイパーライフル。
 だが、その古い時代の平行世界の日本からやって来た殺し屋の時雨にすれば、信頼出来る最高の相棒。

 口径は強力なライフル弾であり、1891年にロシアで産まれ、200年近い長い歴史と信頼を誇る7.62×54ミリロシアン……それの狙撃用の弾である7N14。
 作動はターンロックボルトのショートガスピストンで、引き金を引く度に撃てるセミオート。
 装弾数は弾倉によって違い、通常の物なら10発。が、嵌め込まれてる大型のタイプならば20発の銃弾が入る。

 そんな、無骨で古臭いライフルからバナナの様に湾曲する大きな弾倉を抜き取ると、AKや56式の物と似た無骨なチャージングを引く。
 ガチャっと粘着く金属音と共にボルトが後退すれば、床に左膝を立ててしゃがみ、左腕の肘を膝先に立てて構える。
 それから、プラスチックで出来たスケルトンストックの上部に取り付けられたチークピースに頬を軽く当て、85式狙撃歩槍に固定されたロシアのスコープであるGiperon 1P69と呼ばれる3-10倍率の中型スコープを覗き込んだ。

 うーん、レンズの映り具合はクリア。良い拾いものしたなぁ……

 今は亡き久隆 惟人の商品の一つでもあった85式狙撃歩槍を構える時雨は窓の外……隣のビルをドラグノフのPSO1スコープの物と似た独特なレティクル越しに見詰める。

 敵は確実にスナイパーを配する。勿論、それと並行して兵隊をこのビルに差し向けもする。
 その証拠に……

 時雨は85式狙撃歩槍を手に立ち上がると、床に置いていた弾倉を拾い上げて85式狙撃歩槍のマガジンハウジングに嵌め込み、歩き出す。
 部屋を後にし、廊下を歩んで取り引き場所である倉庫の方にある別の部屋に入ると85式狙撃歩槍を手にしたまま床に寝そべり、床を這い始めた。
 ズルズルとズルズルと床を芋虫の如く窓際まで這うと、外壁と繋がる壁に酒田がスレッジハンマーを手に苦労して空けた孔から2mばかり離れた所で止まる。
 それから、85式狙撃歩槍の長いフォアグリップと長い銃身の付け根部分に取り付けられた備え付けの二脚《バイポッド》を立てて床に据え、構えた。

 左手をストックの下部に軽く当てる様に添え、チークピースに柔らかな頬をペトリと当てて対物レンズ側にハニカム《蜂の巣状の》シートを取り付けたスコープを覗けば、レティクルと重なって見えるは凡そ400メートル。その先の向かいに見える高層ビルの上層の窓際に"双眼鏡を用いて此方を伺う者達の姿が見えた"。

 うーん……高層ビルを見た感じ、僕みたいに外壁に孔を空けて、銃眼や覗き穴にしてる様子は見受けられない。
 僕が見落としてるだけなのか、相手側にガチのスナイパーが居ないかのどちらかだけど……知られずに僕等を監視する事が出来てないと言う点を鑑みると、後者の可能性が大きい。

 もしも、相手側に軍隊で訓練を積んだ本物のスナイパーが居るならば、間違えても窓際から身を晒して監視をするなんて馬鹿な真似を絶対にしない。
 身を晒さざる得ないにしても、少しは工夫して、最低限に留める。
 だけど、スコープ越しに見える奴等はソレをしてない。と、言う事は素人と判断せざる得ない。

 だからこそ、時雨の中で余計に引っ掛かる。まるで、喉に引っ掛かる魚の小骨の如く。

 「今晩、対魔忍達が来るって言うのにスナイパー共を送り込んでる気配も兵隊を何処かに待機させてる様子も無い……でも、監視者は居る。敵は小娘だ。って、侮られてるなら、それを利用して逆襲出来て都合が良い。だけど、奴等は僕を油断させる為のフェイクで実際はガチのヤベェ奴等が隠れて控えてる……って、オチの方が可能性高いよなぁ」

 時雨の思考は、臆病でマイナスな思考と言えるだろう。
 しかし、想定される事態に於いて常に最悪の事態を頭に入れるのは危機管理能力として当たり前の事。
 それ故、時雨は油断も慢心もせず、自分にとっての最悪を想定。同時に、その最悪を伴ってやって来るだろう死神を出し抜いて生き延びる策を考え、太いサプレッサーが捩じ込まれた銃口を監視者へと向ける。

 退屈そうにしてる。でもって、アクビをして呑気にしてる……

 最大倍率で見える標的の姿を見詰めれば、煙草を吸い、仲間と楽しそうに話してる様子が手に取る様に解る。
 そんな様子を暫くの間、見詰めていると唇の動きと会話の様子に変化が訪れた。

 「……ホントにあのビルにボスの弟を殺した小娘と対魔忍が来るのか 何、言ってる あのビルから小娘のパシリしてる野郎が出て来たし、小娘の方も窓際で呑気に煙草噴かしてたろうが……うーん、読唇術ってやっぱり便利だね」

 監視者達の会話を唇から読み取り、情報を秘密裏にバレる事無く収拾。まさにプロの仕事。
 素人が逆立ちしても、ガチのプロに勝てない理由はこう言う所だろう……

 「で、どう言う感じに罠を仕掛けるんだ そりゃ、最も油断を誘う対魔忍達が襲撃して、ウチ等が裏切ってないと思い込んだ所を踏み込ませるんだとよ……何だよ、合流した所を襲えば一気に終わるだろ バーカ、そんな事したら折角の偽取引が台無しだろ 敢えて、取り引きしてる様に見せ掛けて、対魔忍達を誘き寄せる。で、ノマドの方からも腕の立つ人も来て、対魔忍を捕まえるんだってさ」

 唇の動きを音読。其処から得られた情報はとても有意義なモノで、何時 仕掛けて来るかも解った。
 それは依頼人……小倉 雅也が裏切り者である事を意味していた。

 「やっぱり、裏切ってた訳だ。あぁ、久し振りに僕に嘗めた真似をする奴を見るって新鮮だなぁ……よーし、"依頼通りに事を運んでやろう"」

 裏切り者である依頼人はこう言った。

 『シマを荒らすクソ野郎共を殺せ。で、対魔忍が捕まったら救出しろ』

 ならば、雇われた者として依頼人の意向を果たすのは、悪い事じゃない。
 まぁ、法律を幾つもブッチした上、この件で逮捕されれば死刑か無期懲役は免れないが……
 兎に角、依頼を果たす。で、依頼人の立場を最悪なモノにしてやる。
 そうすれば、稲代は今回の不始末をノマドによってケジメを取らされる。
 カネで済むか、命で贖わされるか……そんなの関係無い。
 それは依頼人の都合であって、殺し屋の都合じゃないのだから……

 ホントはこの手で拉致って、煙屋さん式に入れ墨を剥いでやりたいけど、そんな暇は無い。
 だから、死刑執行人はノマドか対魔忍に譲ってやろう……

 裏切り者への報いを考えてると、スマートフォンがブルブルと震える。

 「どした」

 『例の客人達ですが、クルマに乗せました。予定通り、そちらへ送ります』

 「うん。それで良い……因みに人数は」

 『それが……3人で、格好がその』

 何か言い淀む酒田に時雨は首を傾げる。が、今はそれはどうでも良い。

 「ソイツ等がマッパ《全裸》だろうが、アニメのコスしてようが僕等に関係無い。さっさと、連れて来い」

 『解りました』

 語気を強めて言えば、直ぐに返事と共に電話が切れる。

 「取り敢えず、顔隠しとくか……」

 呟きと共に腰の雑嚢に手を突っ込み、中から黒いニット……もといバラクラバを取り出すと、時雨はそれを顔に被った。
 バラクラバで顔を隠し、対魔忍達に素顔を見られる事を防止すれば、85式狙撃歩槍を手に監視役に見られぬ様に這って部屋を後にする。そうして、寝室とリビングを兼ねたソファーのある部屋に戻ると、時雨はソファーに座ってロメオジュリエッタ《シガリロ》の入った紙箱を手にして中から1本抜き取る。
 シガリロ《細巻の葉巻》の先をライターで炙って火を点すと、紫煙を天井に向けて吐いた。
 シガリロの甘ったるい臭いが漂い、天井へと昇る。
 そんな煙を眺めながら、時雨はジョイント《大麻》をキメたヤク中の如くソファーに身を沈め、ボンヤリとし始めた。

 元の世界に帰っても、僕は殺し屋レインを辞められ……ないな。
 "アイツ"の持つ力と能力によるバックアップが無ければ、九鬼 帝を殺す仕事は実現不可能だった。
 だから、協力を得る為にも"アイツ"と『血の誓印』 を結んだんだ。

 血の誓印……時雨の居た裏世界では何人も犯せぬ、絶対尊守の命を賭した契約。
 コレを結んだ者同士は、その身命を賭して誓印を持つ者の願いを果たさねばならない。さもなければ、裏世界に於いて忘八の徒と見做され、裁きが訪れる。
 
 アイツはどうするつもりか 奴からすれば、僕は仕事を逃げ出した裏切り者でしかない。
 父さんと母さんを殺す 否、アイツは担保として敢えて誰にも手出し出来ない様にして、僕が姿を見せるのを待つだけの忍耐と知性は有る。
 でも、僕を殺し屋に仕立てたクソ野郎《師匠》は別だ。

 時雨が、殺し屋レインが、時逆《ときさか》 千雨《ちさめ》が唯一恐れる存在にして不倶戴天の敵であり、彼女を、単なる少女を殺し屋と言う疫病神に変貌させた張本人。
 その人物が今回の異世界転移を理由に、逃げたと判断したら、家族の命は誓印を結んだ主である"アイツ"が警護してるとは言え、警護する人間ごと殺される。
 彼女の師匠は言うなれば、逃れられぬ死そのもの。
 歴戦の猛者であり、裏社会で恐れられてる彼女以上の強さと恐怖を振るう死神なのだ。
 それ故、彼女……時雨。否、千雨は遠く遠くに離れた家族の心配をしてしまう。

 神様御願いです。僕は地獄に落ちても良い……だから、両親だけは、両親だけは、あの男に殺されないようにして下さい。

 居るかも解らぬ神に祈りを捧げてると、足音がした。
 千雨……否、時雨は立ち上がるや柔らかな唇に挟んでたシガリロをペッと吐き捨て、M4A1を引っ掴んで扉を開け、大声を上げる。

 「ヘッドライト」

 そして、答えを待つ間にセレクターを弾いてセミオートに合わせる。

 「……ハゲ」

 「上がって来い」

 時雨の言葉と共に階段を上がる音が木霊する。
 程なくして、階段を上がる音が止み、廊下を酒田が先頭に歩いてる姿が見えて来た。

 「戻りました。」

 「お疲れ様……取り敢えず、君はさっさと帰れ。あ、寄り道とかしても構わないけど、トラブっても助けないよ」

 「解ってますよ。役立たずは大人しく帰りますよー」

 酒田は軽口叩くと、自分の着替え等の荷物を持って部屋を後にしようとする。
 すると、そんな彼の背中に時雨は……

 「ついでだから、エスカレードも持ってけ……」

 「言われなくたって貰いますよ」

 酒田は今度こそ部屋を後にした。
 そして、件の対魔忍達と時雨だけが残る。

 「オタク等が対魔忍」

 「そうよ……その声、貴女、時雨ね」

 見覚えの有る白髪に娼婦がベッドで客を喜ばす為に着そうな、下乳や締まって細い腹を晒す対魔忍装束に身を包む手に黒い髑髏の意匠が施されたナックルを両の拳に纏う少女……紫藤 凛花の姿を見れば、時雨は。

 「シグレ ダレノコト ワタシ、ニホンゴワカラナイアルヨ」

 「……まぁ、良いわ……貴女が協力者なら心強いから」

 「凛花ちゃん、コイツ知ってるの」

 乳牛の乳房と言っても過言じゃないデカいパイオツの乳首やマ○コだけ隠し、後は晒すストリッパーか売春婦染みた刑法174条に思いっきり喧嘩売る格好をした気の強そうな、髪をツインテールにしてる大柄な少女の疑問に凛花は答える。

 「きららちゃん、彼女はアミダハラで私を出し抜いて、久隆 惟人を殺した殺し屋よ」

 「へぇ……こんな弱そうな奴がねぇ」

 「僕が弱いのは認めるけどさ、君達は刑法174条を読み直したら」

 「刑法174条って何よ」

 きららと呼ばれた青少年の性癖に大変よろしくない少女が言えば、時雨は答える。

 「公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する……つまり、君達みたいな露出狂染みた格好をして街を出歩く事を猥褻《わいせつ》行為と言うし、お巡りさんに捕まったら、半年の懲役か30万円以下の罰金を支払わさせられるって事さ」

 遠回しどころか、火の玉ストレートで変態と言われれば、きららはムカッとする。

 「仕方無いじゃない 私の能力だと冷気が籠もるんだから」

 「別に君等がストリーキングだろうが、変態だろうがどうでも良い。君達は仕事……久隆 雅人を殺して、取り引きを台無しにする。僕は君達がお家に帰れる様にベビーシッターして、お金を貰う」

 「僕達は君に心配される程、ヤワじゃないつもりだよ」

 今まで口を閉じていた彼女……否、ソプラノボイスだが、男の声をした黒地に赤の猫耳を付けた明るく短い白髪をボブヘアにしてる、赤と黒のツートンカラーのピッチリしたスーツに身を包み、手には見た事の無いSFチックなライフルを持った彼が言えば時雨は「それは失礼」 と、軽く謝罪。
 それから、自己紹介が始まる。

 「私は紫藤 凛花よ」

 「鬼崎 きらら。足を引っ張らないでよね」

 「僕は穂稀《ほまれ》 なお。よろしくね、殺し屋さん」

 対魔忍達の自己紹介が終わり、時雨の番となる。

 「僕は時雨……殺し屋って言うか、傭兵だよ」

 簡単に済ませ、改めてロメオジュリエッタを咥え、火を点して紫煙を燻らせれば、時雨は「付いて来い」 と、言って部屋を出る。

 3人の対魔忍達は顔を見合わせると、言われた通りに時雨の後を追った。

 暗い廊下を進み、階段を幾つも登って屋上へ出ると、時雨が双眼鏡を差し出して来る。

 「ここからなら、取引場所がよく見えるでしょ」

 時雨の指差す方を見ると、取引場所である潰れた大型スーパーマーケットだった名残残る廃墟が見えた。
 双眼鏡を受け取ったなおは、双眼鏡を覗き込むと、時雨に問う。

 「中はどうなってるの」

 「元々がスーパーマーケットだから、残った棚とかで入り組んでる。まるで、キャピタルウェイストランドのスーパーウルトラ・マーケットみたいにね」

 好きなゲームに出る愉快なスーパーを例えに出すが、3人の頭上にはハテナマークが浮かぶ。

 「キャピタルウェイストランドって何」

 「スーパーウルトラ・マーケット」

 「何かのゲームの事かい」

 時雨は「fallout3 やった事無いの」 って、可愛そうな者を見る目を向ける。が、彼等にとって2000年代のゲームは骨董品そのもの。
 彼等が知る訳が無い。特に、海外ゲームなら尚更。
 それに後から気付いた時雨はジェネレーションギャップに内心傷付きながらも、気を取り直して話を続けた。

 「取り敢えずスーパーのフロアに関しては入り組んでて、敵は待ち伏せし放題。しかも、それなりに広いから結構な数の兵隊を収容出来る……中で戦うのは辞めるべきだね」

 「そんなの平気よ」

 きららの言葉に時雨は頭痛を覚える。が、気にせず、話を更に続ける。

 「取り敢えず、ブツ……ヤクを積んだトラック自体は表の駐車場スペースに停められる筈。で、それと一緒にノマドの幹部やオタク等の標的である久隆 雅人がクルマでやって来る筈さ」

 「そうでしょうね……で、今回も貴女は私達が攻め込んでる間に久隆 雅人を狙撃して殺すのかしら」

 数日前、久隆 惟人と言う獲物を横取りした事を言えば、時雨はシガリロを口から離して紫煙を吐いてから答える。

 「それも良いけど、他人様の獲物を奪っちゃ悪いだろ それに、ソイツを殺しても僕にカネは払われないから殺しても意味が無い」

 「そう言う事にしといてあげるわ……で、他に何か問題は」

 「そうだねぇ……今の所は無いかな。でも」

 「でも」

 「君達がお金払ってくれるなら、僕は君達を掩護してあげても良いよ」

 「ふん アンタなんかの力なんか借りないわよ」

 きららに噛み付かれれば、時雨は「それなら僕の仕事は終わりだ」 と、言い残して屋上を後にする。

 屋上に残る3人は双眼鏡を使い、自分達の戦場となるスーパーマーケットだった廃墟を静かに見下ろすのであった。



 後書き
対魔忍、特に凛花、きららパイセン、なおの格好見てみろ……公然わいせつ罪に全力で喧嘩売ってるから(
てか、対魔忍の格好が基本的にアレだけど、きららパイセンはこれは酷い(褒め言葉 だから

取り敢えず、次回はガチのプロとトーシローの案山子共との差を見せれたらいいなぁ(

感想下さい。ヤル気になるから


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