前書き
むっちゃんこと紫先生がクッソ使い難い件(紫ファンを敵に回す発言(空になる財布
あ、マジ恋時空……ある意味、この物語の完全な正史を読みたいやつって居る?居たら、挙手しろよー
インタビュー
「さて、透明人間さんは何で残ってるんだい?」
ペルソナマスクのオバサン……もといマダムは去って、既に居ない。が、透明人間は相変わらず僕の背後に居る。
「マダムがアンタに手を貸せって言うからよ……それに」
「それに?」
「……何でも無いわ」
「……あ、そう。別に良いけど」
あのマダムのお目付け《監視》役として居る透明人間……僕が失敗したら、口封じするつもりかな?
ほら、基本的に政府や"諜報"絡みは秘密主義な上に、自分達が関わってるって知られたくない傾向にある。
だから、僕や酒田が万が一、捕まりそうになったら口封じに始末して"店じまい"。その後は知らぬ存ぜぬで、何も無かった事にする。
でも、解らない事が幾つかある……
「あのさ、ノマドって"米政府"を動かせるだけの権力有してるん?」
「ええ、奴はそれなりの権力を持ってるわ」
ご丁寧に透明人間さんは答えてくれた。
そうなると……訳が解らない。否、寧ろ、合点が行く。
あのオバサン《マダム》は、ノマドもといエドウィン・ブラックを始末したいC.I.AだかN.S.A。または、ペンタゴン《国防総省》か、外務省や誰かしらの上院議員の使いっ走り。
つまり、米政府は一枚岩じゃない。
エドウィン・ブラックを始末したい奴。
エドウィン・ブラックを利用。または、"奴に利用されてる"連中の二種類に別れてるって言う事になる。
だとすると……
「ねぇ、オタクはエドウィン・ブラックを利用したい奴? それとも、始末したい方?」
「私はエドウィン・ブラックを"殺したい"方よ」
透明人間は語気を強め、答えた。
時雨は透明人間の口調から、彼女がエドウィン・ブラックに何かしらの怨みを抱いてる。と、察すると共に更に問いを投げる。
「と、言う事はだ。ノマドのダメージになる事をしてる間、僕とオタク等は仲良くなれる訳だ」
「私としてはどうでも良いけどね」
どうやら、彼女は政治には興味無いらしい。
まぁ、それはそれで構わない。こうして、色々な事が解るから都合が良い。
仮面のマダムがこの場に居れば、頭を抱えている事だろう。
"ちょっとした会話"一つから、自分達が米政府……即ち、米国。否、米連の組織の一員である事が露呈。更には、エドウィン・ブラックとノマドを不倶戴天の敵として見てる事等を瞬時に知られてしまったのだから。
しかし、時雨の探りは留まる事を知らない。
「因みにだけどさ、ノマドに便宜図ってる組織ってC.I.Aだったりするん?」
「そうよ。それがどうしたの?」
うーわー、お喋りな透明人間の話がマジだとするなら最悪。
向こうはガッチガチの諜報のプロ。こっちは素人に毛が生えた程度。
勝ち目が一気に見えなくなった。と、言うか……
"このオバサン達と関わるのはヤバい"。
時雨の本能が警鐘を喧しく鳴らすばかりか『この女達とは関わるな。貸しなんて踏み倒して、知らぬ存ぜぬで居ろ!! コイツ等と仲良くしていたら、C.I.Aが本気でお前を狩ろうとして来る!!』 そう、具体的に騒ぎ立てる。
だが、依頼人に裏切りと言う極めてクソ嘗めた真似をされ、エドウィン・ブラックから三年後に死ぬ呪いを掛けられてヤラレっぱなしと言うのは我慢ならない。
故に、危ない橋だろうが中指突き立てながら渡って、報復せざる得ない。
嘗められっぱなしは商売に響く故に。
「ハァ……全く、悪い事はドン底に落ちるまでトコトン起こるもんだよなぁ」
「何よ?」
「何か不味い自体でも?」
透明人間と酒田は首を傾げ、疑問符を頭の上に浮かべてる。
事態のヤバさを嫌という程に理解した上で嘆いていた時雨は二人に怒鳴りたかった。が、怒鳴っても無駄だと理解して言葉を呑み込んで堪え、今回はC.I.Aが介入して来ない事を祈りながら仕返しの嫌がらせに意識を集中させる。
「……カオスアリーナで三人が戦わされるまで、後、どのくらい?」
「マダムから聴いた話が確かなら、夜の9時にスタートするわ」
透明人間の言う通りなら、5時間と30分後に三人は処刑されるって言う事だ。
さて、残り4時間で支度を完全に終わらせなければならない訳だけど……正直、やる事はほぼ"無い"。
何故? 理由は単純に僕は1時間半前に飯食って、"おめかし"済ませればカオスアリーナにカチコミ掛ければ良いだけ。
でも、その前に"来るべき奴等を待たなければならない"。
時雨は新たなロメオジュリエッタを咥えると、火を点して紫煙を燻らせてコーラを飲み始める。
"待ち人は現れず"か……そうなると、最悪……フィナーレもエチュード、台本無しの即興劇だ。
せめて、フィナーレ……東京キングダム脱出の時には"対魔忍側と打ち合わせ"したい。
「透明人間さん」
「何よ?」
「対魔忍側の誰かの電話番号知ってたりしない?」
「……知ってどうするの?」
「そりゃ、勿論、電話するに決まってる。オタク等が何のつもりで僕に接触したのかは知らんけどさ、僕はタダ働きしたくないから対魔忍側に電話する……テメェ等の尻拭いしてやるからカネと迎えを出せってね」
元の依頼人である小倉 雅也が裏切ってくれた以上、残りの一千万円は手に入らない。
いや、それ以前に東京キングダムからの脱出には対魔忍側の協力が欠かせない。
それ故、脱出の支援要請と報酬の支払い請求の為にも可能ならば、連絡を取りたかった。
「そう言う事……三人を助け出す目的はやっぱり、カネなのね」
透明人間は侮蔑的に返す。が、時雨は気にせず紫煙を燻らせ、コーラをぐびり。
「まぁ良いわ、対魔忍の"トップ"の番号を教えてあげるわ……いい? 080……」
透明人間から対魔忍の"トップ"とやらの番号とトップの名前を聞きながら、時雨はスマートフォンの電話機能で教わった番号をタップ。
それを見れば、透明人間は思わず尋ねてしまう。
「ちょっと? 何して……」
時雨の行動を疑問に思ってる透明人間を他所に教わった電話番号を打ち終えた所で、呼び出し音が鼓膜を叩く。
それから程無くして、相手が出た。
『はい、もしもし……』
「井河 アサギ?」
『誰かしら?』
「久隆 雅人、賢木 亮司に聞き覚えは?」
『ッ!? 貴女、何者?』
「小倉 雅也に雇われた傭兵って言えば解る?」
『えぇ、解るわ……どうやって、この番号に掛けたのかしら?』
「そんな事はどうでも良い。オタク等の尻拭いしてやるから"賢木 亮司の現在地、居場所を教えろ"……」
『……どう言うつもり? それに、貴女は本当に小倉 雅也が用意した傭兵だと言うの?』
井河 アサギは僕を疑ってる。無理もない。
作戦は失敗し、三人は囚われた。なのに、僕は自由の身でこうして、電話したら罠を疑うのは当然だ。
逆に疑わなかったら、正気を疑う。
「鬼崎 きらら、紫藤 凜花、穂稀 なおの三人が囚われてるのに、僕だけが無事なのを疑いたくなるのは解る。僕だって罠を疑う……だけど、アンタは僕に頼らざる得ない。だから、もう一度、聞くぞ……賢木 亮司の現在地は何処だ?」
『……賢木 亮司は東京キングダムの外、品川にあるノマドの事務所に居るわ』
品川の事務所……酒田が運輸支局で見付けたベンツの登録住所の所か。
「ありがとう。三人の居所を突き止めたら、また連絡する……その時は、報酬に関して話し合おう」
そう言って電話を切れば、時雨は立ち上がって酒田に指示を飛ばす。
「酒田さん、調べた住所まで運転宜しくお願いします。透明人間さんは……僕の補佐をお願いします」
「解りました」
「ちょっと、待ちなさいよ!? どうして、賢木の所に行く訳? それに、居場所を知ってるのにアサギに教えなかったのはどう言うつもり?」
酒田は素直に頷いてくれたけど、透明人間は納得行かない様子。
説明、面倒臭いんだけどなぁ……それに言ったら、キレられるだろうし。
「理由は単純にマダムとやらも、オタクも信じてないからだ」
「何ですって!? 私達が嘘を吐いてるって言う訳?」
ほーら、キレた。だから、バカと組んで仕事するのは嫌なんだ。
「信用も信頼もクソも無いだろ? 今日出会ったのが初めてだし、その上、いきなり三人の対魔忍の居場所を教える……それをそのまんま信じるバカが何処に居る? 先ずは疑え……で、裏を取ってダブルチェックしろが常識だよね? 僕は変な事を言ってるか?」
「…………」
透明人間は何も答えない。
もし、これが僕に対する試験だとするなら不愉快。コレを理由に僕はマダムの依頼を無視する事が出来る。
当たり前だろ? 明らかに厄種な人種に試されるなんて嘗めた事をされたら仕事を引き受ける気なんて余計に失せる。災いがトコトン降り注ぐ事が目に見えてるなら、尚更。
態々、厄種の危ない橋を渡る義理は無い。
「兎に角。カオスアリーナに本当に居るのか? 確認する為にも賢木 亮司にインタビューする……幸い、時間は5時間もある。問題は無いだろ?」
「良いわ、お手並み拝見させて貰うわ」
透明人間に言われれば、値踏みされてるようで不愉快だった。
しかし、今回のトラブルを上手く片付ければ、休みが待ってる。
そう思えば、少しだけ心は落ち着いた。
時雨達は屋台を後にして、エスカレードに乗り込むと酒田の運転で東京キングダムを後に、品川へと向かうのであった。
品川にあるノマドの事務所に着いてからのアイツ。時雨はズボンのポケットに細長い拳銃の弾倉を何本も突っ込み、太い銃身……否、サプレッサーが目を引く見慣れぬ拳銃を手にしたかと思えば、正面の玄関に立ってインターホンを子供が悪戯するみたいに何度も押し続けた。
暫くすると、ノマドの関係者だろうガラの悪い奴等が出て来た。すると、あの時雨って小娘はガラの悪い奴等の眉間を手にしていた拳銃でブチ抜いて、殺した。
透明人間……否、甲河 アスカは時雨の後を追い、彼女の殺しを目の当たりにする。
何なの、アイツ?
忍術も使わなければ、対魔粒子の恩恵も使わずに瞬時に5人撃ち殺したかと思えば、オークの筋肉や骨に使ってる拳銃の弾が効果ないと理解した瞬間に両目を撃ち抜くなんて……
アルベルタ達でも出来るか怪しいわよ!?
アスカは思わず舌を巻いてしまう。
時雨は拳銃を手にしたノマドの兵隊達を一瞬の内に5人殺し、更には手にショットガンを持ったオークの両目を撃ち抜いたかと思えば、トドメと言わんばかりに耳の穴から弾丸を叩き込んでトドメ。
そこから弾倉を詰め替えれば、即座に踊り出た鬼族の刃を躱し、角を引っ掴んで喉に押し付けてダブルタップ。そうして、鬼族の戦士の喉を22ロングライフルで貫いて殺せば、他の兵隊達を次々に射殺。
そして、10分もしない内に賢木の頭に銃口を押し付け、口を開いた。
「透明人間さん、悪いんだけどさ……コイツの手足を縛ってくれない?」
「人使いが荒いわね」
そう言いながら、アスカはガムテープで椅子に座らされてる男……賢木 亮司の手脚をガムテープで縛り付ける。
程無くして縛り終えると、時雨は手近にあったガラスのコップを割った。
パリーンと言う甲高い音と共にガラスのコップが砕ければ、そこから一際大きな破片を掴んで"賢木の口へ突っ込み、その口をガムテープで塞ぐ"。
「ムー!! ムーッ!!」
「フッ!」
短い呼吸音と共に時雨は右の拳を賢木の頬に叩き付け、矢継ぎ早に今度は左の拳を打ち込んだ。
だが、2発で済まない。
プロボクサーがサンドバッグを拳で乱打する要領で時雨は、賢木の顔面を何度も何度も殴りつける。
暫くして、賢木の顔が青痣、頬からガラス片が飛び出た状態になった所で時雨は彼の口に貼り付けたガムテープを剥がした。
「コパァ……」
ガラス混じりの血の滝が口から吐き出され、虚ろな目が時雨に向けられると、彼女は賢木の首筋を触れながら覗き込む様に瞳を見詰めながらインタビューを始める。
「昨日の夜、三人の対魔忍……何処に居る?」
「か、カオスアリーナ……」
反抗する意思を欠片も見せず、弱々しく答える賢木。
瞳を見詰めて瞳孔の収縮。
首筋から伝わる今まで高かった脈拍が下降し、落ち着き始めて安定。
そして、鼻先等の反応を示しやすい箇所が反応してない事に時雨は正直に答えたと判断すると、ニッコリ笑って賢木の眉間にダブルタップをキメて殺した。
「どうやら、本当にカオスアリーナとやらで見世物にされるみたいだね」
「だから、言ったじゃない……嘘じゃないって」
「この世界、素直に言う事を信じるとバカ見るのが常識だからね……裏取りは大事大事」
アイツはそう言うと、事務所を後にした。かと、思ったら何故か赤い携行缶と発炎筒を手に戻って来た。
時雨は赤い大きな携行缶の中身……ガソリンを死体や防犯カメラのビデオデッキ。それに床へと空になるまで撒き散らし、火の灯った発炎筒をガソリンまみれの事務所へと投げ込んだ。
その瞬間、事務所は爆発し、真っ黒な黒煙と共に紅蓮の炎が事務所を包み込む。
「やっぱり、証拠隠滅は大事だよねぇ」
「アンタ、愉しんでる?」
現場から急いで走り去り、東京キングダムへと向かうエスカレードの車内。
アスカに問われれば、時雨は平然と答える。
「愉しんでる? そんな訳無いじゃん……単にアドレナリンが出て興奮してるだけ。僕は平和主義者。暴力は嫌いなんだ」
「平和主義者が聞いて呆れるわ」
実際、人の口にガラス片を突っ込んでからガムテープで口を塞いで相手の顔面をサンドバッグか、パンチングボールにする様な女が平和主義者と言っても信じる奴は当たり前ながら当然居ない。
しかも、血達磨にしてから脈拍と瞳孔の収縮。それに鼻先等の勃起組織等の動きをつぶさに観察して嘘か真か識別。
まるで、拷問もする人間ポリグラフだ。
アスカはそんな時雨に若干、退いていた。
しかし、そんなアスカを他所に時雨はアサギに電話する。
「あ、どうもー……三人はカオスアリーナに居るみたいです」
『カオスアリーナですって!?』
「賢木 亮司を締め上げて吐かせたんですけど、何でも21時に三人の試合が始まるそうです」
『そう……確か、貴女は傭兵よね?』
電話の相手……井河 アサギの問いに時雨はニヤリと嗤い、答える。
「えぇ、その通り……報酬次第で何でもやる傭兵ですよ」
『三人の救出に手を貸して貰えないかしら? 報酬はキチンと支払うわ』
ビジネスチャンス到来。
時雨はニッコリと嗤い、告げる。
「二千万円を支払ってくれるなら、僕がカオスアリーナから連れ出してやる……だけど、東京キングダムから連れ出すのは流石に難しい」
『えぇ、解ってるわ……カオスアリーナから連れ出せたら、また連絡頂戴』
「頂戴じゃねーよ、バカ。良いか、よく聴け……僕達はカオスアリーナから脱出したら、東京キングダムと本土を唯一繋ぐ大橋の先、検問所を目指す。其処なら、ヘリの着陸が出来たりするから迎えを寄越しやすい筈だ。違うかい?」
『確かにその通りよ……だけど、そこまでの移動手段は確保してあるのかしら?』
「その心配はしなくて良いから、オタクはキチンと迎えを寄越せ。で、僕に二千万円を払う支度をしとけ……」
『信じて良いのね?』
「僕は契約を交わした相手を裏切らないのが自慢なんだ。そっちこそ、迎えをシッカリ寄越してくれ……じゃなきゃ、僕達は仲良く揃ってクソどもに輪姦《まわ》されちゃう」
『解ったわ。必ず、迎えに行く……だから、三人を無事に助け出して』
「おカネの為にもがんばりますよー」
時雨はそこで電話を切ると、思考の海に意識を沈め、思考する。
三人の居場所掴んだ。
カオスアリーナの見取り図はある。
ヤバいネタを除けば、信頼出来る情報屋とコンタクトに成功。
その繋がりで対魔忍のトップと電話連絡に成功。そのお陰で、東京キングダムから逃げ出す手段とカネが手に入る。
武器は揃ってる。
後は時を待って殴り込むだけ。
幸運の女神は時雨に微笑んでくれた。
そのお陰で"謎の多い"情報屋であるクラブペルソナのマダムから三人の情報が手に入り、酒田と言う運転手と逃げる為のアシであるエスカレードを確保。
更には、井河 アサギと言う対魔忍のトップと電話連絡出来た事で東京キングダムから逃げ出せるチケットと二千万ものカネを得るチャンスをゲット。
後は時が来るのを待ち、戦うだけ……
運は僕に味方してくれた。けど、ロメオジュリエッタは最後の1本だ。
エスカレードの中で最後の1本のシガリロを咥え、火を点すと声が挙がる。
「ちょっと! 煙草の臭いが着くし、臭いから煙草プカプカ吸うの辞めてくんない? 明日、学校があるんだからさぁ」
「そりゃ、どうも失礼」
謝るが、煙草の火を消す事は無い。
「ねぇ、謝る気ないでしょ?」
「バレた?」
いけしゃあしゃあと宣い、紫煙を燻らせる時雨。
そんな時、一陣の風が車内に吹いた。その瞬間、時雨の吸うロメオジュリエッタの燃える先が床に落ちた。
火の消えたシガリロを見た時雨は鋭利な刃物で切られた様な切り口を見詰め、断面を指先で触れると溜息。
消えたロメオジュリエッタを灰皿に挿し込んで、最後のシガリロを吸うのを諦める。
「子供かよ……」
どんな原理かは解らない。けど、極細のワイヤーによる切断や刃物による切断では無い。
考えうるのは車内に突如吹いた風。それを考えたら、考え得るのはファンタジー宜しく風の刃……即ち、鎌鼬で切断したって事だ。
コイツもコイツで、対魔忍みたいに……否、"コイツは元対魔忍"って言う可能性も高い。じゃなかったら、何だって対魔忍のトップだとか言う井河 アサギとやらの携帯番号を知ってる?
謎が謎を呼ぶ。が、今はその謎を解明する時では無い。
しかし、東京キングダムに戻るまでの間、時間はタップリとある。
暇潰しには打って付けと言えた。
「あのさ、透明人間って呼ぶのもあれだし……なんて呼べば良いんだい? 僕は時雨だ」
「そうね、アイリーンでどう?」
「アイリーンねぇ……ブラックホークダウンみたいな事にならないと良いけど」
いつか見たソマリア内戦に介入した米軍を取り上げた戦争映画を思い出し、ボヤけばアスカは「ブラックホークダウンって何よ?」 と、返して来る。
「米連の関係者なら終わった後に調べてみれば良い……てか、米連の、軍関係者なら知ってて然るべきだよねぇ?」
「どうせ、良い意味じゃないんでしょ?」
「そうだよ。って、それよりもさ……どうして井河 アサギだっけ? 対魔忍のトップの電話番号を知ってるのさ?」
「……そんなのアンタに関係無いでしょ?」
あ、どうやらこの話題はナーバスになる事か。と、言う事はアイリーンはやはり、元対魔忍って訳か。
対魔忍……あの三人と過ごしてた時に漢字でどう書くか? 聴いたけど、忍者だとするなら傭兵集団なのか?
日本に雇われてる奴も居れば、米国に雇われる奴も居て可笑しくは無いか……
でも、対魔忍の頭領とやらの電話番号を知ってる抜け忍は不味くないか? って、思うけど……なんか大きな事情が有りそう。
「それもそうだね。じゃあさ、エドウィン・ブラックを殺したい理由は何? 僕みたいに死の呪いでも掛けられた?」
「アンタ、アイツに死の呪い掛けられたの!?」
「お陰で寿命が3年。否、2年と11ヶ月と30日だよ……アハハハ……」
死の呪いを掛けられたと言うのに笑い飛ばす時雨。
馬鹿なのか? 豪胆なのか? それとも自分の命を粗末にしてるのか?
どれとも付かぬ時雨の態度にアスカは呆れると、理由を口にする。
「私がアイツを殺そうとする理由はね、一族の復讐よ……」
子供っぽい声は何処へやら。
真剣な声で答えられると、時雨は「成程。仇討ちって訳だ」 と、だけ言って無言のまま続きを促す。
「アイツはね、私の一族を皆殺しにした。私には例え手脚を喪おうがね、甲河の頭首として、一族の仇を討つ義務が有るのよ」
「そっか……なら、僕は君の友達になれそうだ」
「どう言う事?」
「さっき言ったろ? 僕はそのクソ野郎から死の呪いを受けたってさ……解くにはエドウィン・ブラックを殺さないとならないんだ。だから、殺しに行く時は一緒に行っても良いし、ノマドをぶん殴る時は喜んで力を貸す」
「対魔忍でもないアンタに何が出来るって言うのよ!?」
「こう見えて、僕は強いぞぉ? それに悪辣な事を考えたり、分析するのも自慢じゃないけど得意……但し、タダじゃないけどね」
「やっぱりカネ目的じゃない!!」
「仕方ないでしょ? 僕は組織に所属してる訳でも無い。だから、何をするにしてもカネは欠かせない」
この世界へ来て数日の時雨……否、千雨にすれば立場はヤクザの客分であったとしても、フリーランスである事に変わりはない。
故に先ずはカネを稼ぎ、衣食住の費用を、暴力を振るうのに欠かせない武器弾薬に爆薬等の費用を獲なければならない。
無論、元の世界に帰る為に必要な物資も調達せねばならない。
だから、カネが要る。
「だったら、私ン所に来なさいよ!」
「いや、下手しなくてもC.I.Aや国防総省と内ゲバしてる組織にはいたくないです」
「何でよ!?」
「だって、ロクでなしの代名詞C.I.Aを敵に回すって犯罪組織に喧嘩売るより自殺行為だし……ノマドとの喧嘩には参加するけど、そっちの諜報絡みの暗闘はお断りだよ」
実際、C.I.Aやペンタゴンを敵に回すと言う事は合衆国という世界の覇者の一柱を敵に回すと同義。
だからこそ、時雨は嫌がる。
「解ったわよ。マダムにはそう伝えとく……で、私はアンタの言う嫌がらせの時はどうすれば良いの?」
「えーとですね……マダムって爆薬を直ぐに調達出来ます? 後、貴女、爆弾扱えたりしません?」
理想を言えば、大量の爆薬を仕掛けて貰い、脱出の時に起爆すれば混乱に乗じて逃げ出せる。
だが、世の中はそんなうまく行かない。
「え? 私、爆弾なんか扱えないわよ?」
「だと思ったよ」
溜息と共にゲンナリとする時雨は少し考えると、時計を見る。
悪趣味なショーまで後、3時間か……
それなら、マダムとやらにサモバリロケットを調達して貰おうかな。
「ならさ、マダムに言ってサーモバリックロケットを撃てるロケットランチャーを調達して貰えないかな?」
「サーモバリックロケット? 何それ?」
「派手な花火だよ」
後書き
時雨ちゃんの初級インタビュー解説
1.インタビュー相手を椅子に縛り付けます
2.ガラス片を用意します
3.ガラス片をインタビュー相手の口に突っ込んでガムテープで口を塞ぎます。
4.インタビュー相手の顔面をパンチングボールやサンドバッグにしてレッツエンジョイ!!
5.相手は素直にインタビューに応じます
真面目に考察しちゃ駄目なんだろうけど、考察したらノマドってC.I.Aとズブズブだよなぁ?確実にさ……それ踏まえるとノマドの地盤でガッチガチだし、後ろ盾が合衆国って時点でノマドの独り勝ちやんけ(
まぁ、龍門は中華が後ろ盾なんだろうけど……日本とかいう魔界と繋がる唯一のゲート巡って裏社会通じて暗闘
その暗闘に紛れて淫魔族が地球社会に進出を隠密理に実行しつつあって……おい、対魔忍世界で魔界関連根絶、廃絶無理やんけ
多分、時雨こと千雨が全てを知ったら
千雨「コレさ、ノマド潰したら確実に戦国乱世開幕して日本がメキシコかソマリアになりかねないんだけどーってドン引きするで(いや、実際問題ねぇ?
取り敢えず、次回はいよいよカチコミです
花火用意して期待しててね(はぁと
あ、感想下さい