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No.43443の一覧
[0] 遺され世代[剛毛遊民](2020/01/07 03:20)
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[43443] 遺され世代
Name: 剛毛遊民◆e9bd7a34 ID:84954ba9
Date: 2020/01/07 03:20
遺され世代


僕の生まれは1997年。

ちょうど、ゲームボーイなんかが流行っていた歳だ。

小さい頃は、よくゲームをして遊んでいたかな。

あの頃は、ゲームソフトが輝いて見えていた気がする。

おばあちゃんが好きで、よくおばあちゃんの家に遊びに行っていた記憶がある。

そのおかげか、少し上の世代の人とは、趣味や話が合っていた。

あの頃は、楽しかった。


「なぁ、あいつ、やばくないか」

「あぁ、正気じゃないね」

22世紀に入って、人々は、オーラを身に纏えるようになった。
オーラ、というのは少々言い過ぎかもしれないが、我が国では、経団連の強い要望を受け、その人の性格・生まれ・世代が一目でわかるように、「色」が表示されるようになったのだ。
人々が「色」を見ることができるようになったのは、1998年、密かに実施された、「第五虹彩法」によるものだった。
理屈は簡単で、眼球に取り付けられたチップが、その人の情報をリアルタイムで視覚上に表示するのだ。
要は、簡単な仮想現実だ。
そして、そのチップが、ようやく、政府の遠隔アップデートによって起動し始めた、というわけだ。

「おい、あいつ陰キャじゃん」

近くで、「分類分け」が始まっていた。

「色」の見える人々は、人から見える「色」を、陰陽五行説になぞらえ、「陽」、「陰」で分けることにした。
例えば、「陽」に属する人は、明るく、活発な人間であり、「陰」に属する人は、内向的で、地道にやるのが得意な人、といった具合だ。
企業は、その人がどのタイプに属するのかをわかりやすくすることで、その企業が欲しい人材をわかりやすくすることを要望した。
しかし、国は、そんな要望をすんなり飲んだわけではなかった。
「色」を見えるようにするための虹彩手術は、新生児の段階でのみ可能である。
つまり、1998年より前の世代の人間には、「色」が見えているかなんて、わからないわけだ。
そして、もちろん、僕にも「色」は見えない。

「‥‥‥おい! あいつ、陰でも陽でもないぜ」

「え、やばくね?」

最近、大学生に、言われるようになった言葉がある。

「陰キャでも、陽キャでもない」



僕の知る限り、うちの学部で、虹彩手術を受けていないのは、僕だけだった。

一年浪人してこの大学に入った僕だけが、1997年生まれの人間だ。

誰もが僕を豚でも見るような目で見る。

そんな状況でも、何とか周りに溶け込もうとした。

しかし、「陰でも、陽でもない」。

そんな僕と関わろうとする物好きは、居なかった。

このまま卒業するまで、誰とも関わることはないだろうーーー

そして、そのまま、3年の月日が流れていった。



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