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No.43351の一覧
[0] EVAザクラ 新劇場版[まっこう](2019/08/30 22:14)
[1] EVAザクラ新劇場版 序の次 第一話[まっこう](2019/08/30 22:12)
[2] EVAザクラ新劇場版 序の次 第二話[まっこう](2019/08/30 23:59)
[3] EVAザクラ新劇場版 序の次 第三話[まっこう](2019/08/31 12:37)
[4] EVAザクラ新劇場版 序の次 第四話[まっこう](2019/08/31 19:23)
[5] EVAザクラ新劇場版 序の次 第五話[まっこう](2019/08/31 22:22)
[6] EVAザクラ新劇場版 破 第一話[まっこう](2020/06/01 21:04)
[7] EVAザクラ新劇場版 破 第二話[まっこう](2020/06/26 21:46)
[8] EVAザクラ新劇場版 破 第三話[まっこう](2020/07/05 16:22)
[9] EVAザクラ新劇場版 破 第四話[まっこう](2020/07/22 00:29)
[10] EVAザクラ 新劇場版 搭乗人物一覧[まっこう](2020/07/24 19:53)
[11] EVAザクラ新劇場版 破 第五話[まっこう](2020/08/12 15:01)
[12] EVAザクラ新劇場版 破 第六話[まっこう](2020/09/30 19:42)
[13] EVAザクラ 新劇場版 搭乗人物一覧 update[まっこう](2020/09/30 21:52)
[14] EVAザクラ新劇場版 破 第七話[まっこう](2020/10/06 17:44)
[15] EVAザクラ新劇場版 破 第八話[まっこう](2020/10/10 17:16)
[16] EVAザクラ新劇場版 破 第九話[まっこう](2020/10/15 14:10)
[17] EVAザクラ 新劇場版 搭乗人物一覧 update[まっこう](2020/10/15 14:22)
[18] EVAザクラ新劇場版 破 第十話[まっこう](2020/11/05 17:09)
[19] EVAザクラ新劇場版 破 第十一話[まっこう](2020/11/26 17:26)
[20] EVAザクラ新劇場版 破 第十二話[まっこう](2020/12/26 18:14)
[21] EVAザクラ新劇場版 破 第十三話[まっこう](2021/01/31 20:05)
[22] EVAザクラ新劇場版 破 第十四話[まっこう](2021/04/02 22:25)
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[43351] EVAザクラ新劇場版 破 第一話
Name: まっこう◆564dcdfc ID:4098afbe 前を表示する / 次を表示する
Date: 2020/06/01 21:04
サンダーバードare go シーズン3放送記念という事で。

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 シンジは来るたびに砂漠のサボテンを思い出す。山の中腹のその墓地に、点々と続く墓標は、セカンドインパクトやその後の動乱で亡くなった者達の物だ。シンジの母親である碇ユイの墓もここにある。前までは、月の初めに墓参りに来ていた。父親と折り合いが悪くなってからは訪れなくなった。

「三年ぶりだな、二人でここに来るのは」
「僕は、あの時逃げ出して……その後来ていない。ここに母さんが」
「シンちゃんのお父さんですか」
「あ、ああ」
「わたくし、アンズと申す者です」

 親子三人の感動の再会をぶち壊したアンズは、ゲンドウに挨拶をした。アンズも緊張しているのか言葉遣いが変だ。

「シンちゃんのお父さんだから、私のお父さん?かな?」
「ああ、そうだな」
「では、お父さん初めまして、今シンちゃんのお姉さんをやっています。シンちゃんのお世話はこのアンズがしていますから安心してください」
「そうか、よろしく頼む、シンジまた来月ここで会おう」
「わかったよ、父さん」




EVAザクラ 新劇場版

破 第一話

来日




「え~と、改めまして、アンズです。いまシンちゃんのお姉ちゃんやってます」
 ゲンドウは帰ってしまったが、アンズの墓参りはまだ終わってない。ユイへの報告が終わってない。

「シンちゃんはこのアンズお姉ちゃんが任されました。ええとユイさん。安心してください」

 アンズはユイの墓標を拝むと、今度は持ってきたタオルで綺麗に拭き始めた。なんとなくアンズのペースに呑まれて固まっていたシンジも、同じくタオルで拭き始めた。砂で汚れた墓標も綺麗になった。アンズはもう一度墓標に手を合わせた。

「私、猫なんで、結構強いんです。狩りの仕方も知ってます。シンちゃんがEVAで狩りをするのを教えたりも出来ます。だからアンズにお任せです」

 一応姉を立てたということか、シンジはアンズの後ろで同じように手を合わせた。墓参りが終わった所で、二人は墓地の入り口に向かって歩いて行く。

「シンちゃんはユイさんの事を覚えてる?」
「覚えてる。少しだけ」
「お姉ちゃんはお父さんやお母さん覚えてる?」
「覚えて無い。お姉ちゃんのお父さんとお母さんは、お父さんとお母さんだから」

 アンズはシンジの顔をのぞき込むように小首をかしげて笑った。

「そうだね」

 シンジもつられて微笑んだ。無駄話をしながら墓地の入り口まで来ると、ミサトが愛車で待っていた。

「どうだった?」
「姉さんが乱入したせいでちょっとうやむやになったけど、来月もここで一緒に墓参りすることになりました」
「そ、よかったじゃない。アンズちゃんご苦労様。さすがお姉ちゃんね」
「アンズにお任せです」

 褒められて鼻高々のアンズだった。

「じゃ、帰ろうか」




 ミサトの運転で岬の海岸線にそった道を車は走っていく。車からは赤い海が見える。ミサトは海の照り返しがまぶしいのか、少し色の付いたサングラスを付けている。

「ミサトさんは、青い海を見たことがあるんですよね」
「有るわよ。昔は海水浴なんて普通にしていたんだから」

 しばしミサトの昔話になった。しばらくしていると車の無線のアラームが鳴った。

「はい。葛城」

 ミサトが返事をしたところだった。遠くから戦闘車両かはたまた、戦艦かともかくそんな物の一部分がとんできて行く手を塞いだ。

「うわぁ~」

 一応可愛く悲鳴なんかを上げつつも的確なハンドル操作にアクセルワークでミサトは車で躱した。

「シンちゃん、頭下げて」

 どんな時でもシンジを守る。それがアンズの生きる道。最近アンズはミサトにともかくシンジを守る方法を習っている。車に乗る時はシンジはミサトの後ろで、アンズは隣。何かあったら頭を下げさして覆い被さること。それを叩き込まれた。アンズ自体は、普通の人間の五倍ぐらいの速度で傷が治るし、皮膚や骨格の柔軟性もやはり人間の比では無い。何よりシンジが大好きだ。盾になることは望んでやっている。

「やば」

 だが今度は道より大きい、戦艦の一部が飛んできた。少し離れた岬で使徒と国連軍が戦闘中で、破壊された戦艦らしい。

「ありゃ」

 その戦艦の一部が何か見えない壁のような物に当たって下にそれた。ただ直撃は避けられたが戦艦の残骸は行く手を遮った形で道を塞いだ。ミサトは慌てて急ブレーキをかけた。

「にゃ」
「わ」
「ほぇ」

 後部座席から、声が上がったのは当然としても、だれもいないはずの助手席からも声が上がった。ミサトが手を伸ばすと、見えないが何かいる。

「出てきて」

 ミサトの声と共に、魔法の杖を持ったサクラの姿が現れた。

「今のあなた?」
「はい。だけどもう今日は力が残っていない」

 サクラはぐったりと助手席にもたれかかる。顔は脂汗で一杯で、顔色も悪い。シンジとゲンドウが会うというので心配で黙って着いてきた。

「ともかくありがとう。おかげでみんな無事」

 ミサトはサクラの頭を撫でた。

「シンちゃん、アンズちゃん、足下の緊急用のシートをとって頭から被って、防弾、防刃、防炎の優れものよ、サクラちゃんも」
「はい。あれ、なんで木之本さんが」
「彼女はWWRの特殊隊員、ちょっとした特殊技能と装備があるの。説明はあと。ともかくシートを被る。サクラちゃんも足下の箱のシートを被って」
「はい」

 三人ともシートを取り出すと頭から被った。ミサトはまた無線に怒鳴りだした。ただ使徒のせいか無線が繋がりにくい。ミサトが悪戦苦闘していると、なぜか頭の上の方から声がした。

「ミサトさん、大丈夫ですか」

 ミサトが慌てて窓から顔を出し上を見ると全長十五メートルほどの三角翼のVTOLが浮かんでいた。鉛筆のように細い胴体の後ろに小さい三角翼、その両端にエンジンが一つずつ着いている。垂直尾翼はループ状で、着陸用のギアは物がつかめる構造の足のような物が三本出ている。大きな鳥に見えなくもない。まるで八咫烏だ。ステルス性能はとても高そうだ。ほんの五十メートルほど上空に浮かんでいるのに、エンジン音はほとんどしない。よほど優秀な消音機能があるらしい。

「あっTBニンジャ、パイロットはだれ?」
「洞木ヒカリです」
「わいもいるで」

 WWRの隠密行動、諜報活動用の新しい機体だ。元々トウジがパイロットになる予定だったが、実は機械全般と相性が悪いというかセンスがない事が検査で判明したためパイロットの人選が難航した。丁度その頃、トウジがWWRの隊員である事がヒカリにばれた。災害などが起きる度にいなくなるトウジを不思議に思ったヒカリが、乙女の執念で調べたところ、TB1にコノエと乗り込むところを目撃した。そこでトモヨに確認するため屋敷を訪れた。ちょうどソノミがいたため、そこでスカウトされた。元々カッシュに拳法を習っている者は、屋敷で体力測定や健康診断をすることになっている。その測定の中にはパイロットの適性等の調査も忍び込ませてある。ヒカリは対加速度、反射速度、その他のパイロットとしての適性が高い事がわかっていた。あとはやる気だ。もっともトウジと一緒にWWRの隊員をやれると言うことで一も二もなく承知した。それにヒカリの実家の魚屋も中々商売が厳しい。出動手当てが出るのも魅力だ。そんな訳でヒカリはTBNのパイロットに採用された。TBNの操縦系は高度に人工知能化されているため、一ヶ月程の訓練でそれなりに操縦出来るようになった。TBNは元々一人乗りだが、操縦席の後ろに救助した人を乗せたり、物資を乗せるスペースがある。トウジはそこに乗っている。現場に着いたら、TBNのコントロールはヒカリが、実際の救助や諜報活動はトウジがすることになった。TBN自体の情報はミサトは知っていたが、パイロットは知らなかったようだ。

「丁度良かった。シンジ君をネルフ本部に運んでくれない」
「わかりました」

 今度はヒカリの声はミサトの車の無線から聞こえた。TBNの人工知能かTB5のイオスが少しの間にミサトの無線の暗号を解読して割り込んだようだ。

「車ごと運ぶとマッハ0.3ですが、ひとりだけならマッハ5出ます」
「車をこの瓦礫の向こうに運んでくれない。その後シンジ君だけ運んで。行き先はTB5経由で伝えるわ」
「了解です」

 TBNはゆっくり降下した。10メートルほどに近づくといきなりジェットエンジンの排気音と噴射ガスが車に吹き付けた。ただし噴射ガスは熱くないし、いやな臭いもしない。TBメカの目的はあくまで災害救助だ。TBNのステルス機能もそのためだ。他のTBシリーズに比べれば小型なTBNは極せまい場所に着陸し、人々を救助する役目も持っている。そのため、エンジン低出力時は空気を噴射するらしい。やがてTBNの下面より四機のドローンが細いワイヤーを引っ張りつつ現れた。ミサトの車の下に四方から入り込み、そこで連結した。

「持ち上げます。窓を閉めて下さい。耳も塞いで」

 ミサトは慌てて窓を閉めた。

「みんな耳を手で塞いで」

 シンジとアンズ、サクラ、ミサトは手で耳を塞いだ。いきなり轟音があたりを包んだ。さすがに車を持ち上げるとなるとステルスモードでは無理らしい。ただ、小型とは言えTBメカだ。あっさりミサトの愛車が持ち上がった。すぐに戦艦の残骸の向こうに移動した。ミサトたちの車を下ろすと、車の下で連結していたドローンが外れて、TBNの下面に戻り収納された。TBNもミサトの車の向こうに三本のランニングギアを使い着陸する。着陸と言ってもランニングギアを2メートルほどに伸ばした状態だ。すると直ぐにキャノピー部分が外れて下がり、下部の車輪が道路に着いた。キャノピー部分は密閉された二輪オートバイになっている。よほど優秀なバランサーが内蔵されているらしく。停止した状態だが、二輪だけで立っている。そのキャノピー部分がスライドすると後部の資材置き場兼助手席からトウジが降りてきた。ミサトの車に近寄ってくる。後部座席のまどを叩いた。

「碇、交代や。いいんちょが運んでくれる」

 トウジは珍しくWWRの隊員服を着ている。

「シンジ君、TBNで運んでもらって」
「はい」

 防弾防刃シートから出たシンジは後部ドアから出た。

「アンズも行く」

 アンズは猫の姿になるとシンジの頭の上に飛び乗った。シンジは小走りにTBNからはずれたバイクに向かう。後部座席に乗った。バイクは直ぐにTBNの中に吸い上げられた。すぐさまTBNのエンジン音が響き垂直に上昇すると、一気に加速してジオフロントの入口に向かって加速していき直ぐに見えなくなった。
「トウジ君乗って」

 トウジが後部座席に乗ると、ミサトの愛車もフル加速で道を進んでいった。少し進むと電波障害が弱くなり本部と連絡がつながった。ミサトはがなりながら車を走らせている。ミサトの愛車は一見普通のクーペだが、ネルフの技術がふんだんに使われている。細い湾岸の高速道路を時速二百キロメートル以上で爆走している。そして現場に少しずつ近づくにつれて、やっと使徒が見え始めた。

「こっちも使徒を肉眼で確認したわ、現在TBNに初号機パイロットを輸送依頼中。まずは零号機優先のTASK-03を、直ちに発動させて、初号機をバックアップ、え?TASK-02を実行してるの。まさか」

 ミサトは使徒との戦闘領域を向くと、サングラスの根元のスイッチをいれた。サングラスには方位などの情報が、情景と重ねて表示された。

「拡大」

 音声コマンドで、サングラスは双眼鏡になった。後は脳波を読み取って勝手に倍率を合わせてくれる。使徒の上空の輸送機から赤い塊が落ちてくるのが見えた。

「やはり弐号機」

 輸送機から落ちてきたのは目が六つある深紅のエヴァンゲリオンだった。EVAに続いて、輸送機からボウガンのような武器が射出された。弐号機はボウガンを取ろうといたが、使徒から漆黒の触手のような物で攻撃され直ぐには取れなかった。次々と黒い触手が弐号機を襲うが、背中のジェット推進や、ATフィールドの反発を使い、かわしていく。使徒と輸送機の中間あたりで弐号機はボウガンを掴んだ。弐号機はボウガンを発射する。弐号機のATフィールドを引き延ばすように紐状に絡みつけたまま矢は使徒の赤いコアを貫いた。使徒は崩壊していく。

「ん?」

 ミサトは使徒と道路を交互に見ながら爆走している。

「何か変」

 ミサトのつぶやきがトリガーになった訳ではないが、分解されかかった使徒が再結合し形状を変えた。もっとも弐号機はそれを予期していたらしい。空中で体勢を修正するとボウガンを連射する。但しこんどの矢は全て使徒のATFに防がれた。空中で武器を捨てた弐号機は足から使徒のコアに向かって突進した。踵の先からスパイクが延びる。そしてそのスパイクと使徒のATFが激突した。一瞬弐号機は跳び蹴りの体勢で空中で止まったが、すぐに使徒のATFを突破し弐号機より大きい使徒のコアに足から突っ込んだ。一瞬にしてコアを貫通して血とも油ともつかない液体にまみれた弐号機は直ぐ側の港の堤防に着地した。

「うわぁ」

 丁度現場に到着したミサトの車は弐号機の着地の衝撃で吹き飛ばされ、側に待機していた零号機の足下に当たって止まった。




「弐号機って赤いんだ」

 トレーラーに横たえられた弐号機を眺めつつ、ケンスケが呟いた。一応、作戦行動があった岬は一般人は入れないのだが、ネルフと協定を結んでいるWWRの隊員は入れるらしい。EVAパイロットにWWRの隊員、または碇シンジと愉快な仲間達が集まっていた。使徒戦の後はいろいろ人命救助があり忙しいのでTBメカのパイロットはいないが、トモヨやケンスケはネルフの行動の調査も仕事と言えるため、FAB-1に乗って現場に来ている。もっともケンスケの場合メカが好きと言う事もある。ビデオで盛んに弐号機を映している。外形なら極秘事項などにはならないらしい。

「違うのはカラーリングだけじゃないわ」

 上の方から声がした。みんな上を見上げる。トレーラーの上に横たえられた弐号機の上に赤い少女が立っていた。正確に言えば赤みがかった金髪の少女が赤いプラグスーツを着て立っていた。腰に手を当て見下ろしている。

「所詮零号機と初号機は、開発過程のプロトタイプとテストタイプ。けど、この弐号機は違う。これこそ実戦用につくられた世界初の本物のエヴァンゲリオンなのよ。正式タ」

 少女は言葉を続けたかったが、自分めがけて下から跳ね上がってくる物を見て言葉が詰まった。

「うわぁ。可愛い」

 人間とは思えない跳躍力で弐号機の上を跳ね飛んで少女に飛びついたのはアンズだ。金髪碧眼に赤いプラグスーツが凄く気に入ったらしい。飛びついて頬ずりをしている。

「うわぁわぁわぁ、何よこれ~~」

 少女はアンズから逃れようとするがそこは五人力の化け猫だ。とてもじゃないが離れない。その様子を見てミサトは苦笑いだ。

「アンズちゃんは可愛い物が好きなのよぉ。良かったじゃ無い可愛いと認められて」

 ミサトは苦笑いして、シンジ達の方をむいた。

「紹介するわ。ユーロ空軍のエース、式波・アスカ・ラングレー大尉。第二の少女。エヴァ弐号機担当パイロットよ」
「紹介はいいからミサト何とかしてぇ」

 アンズはまだ頬ずりをしていた。




「ねえねえレイちゃん、アスカちゃんって可愛いね」
「そうね」

 アンズは相当アスカが気に入ったらしい。レイとシンジと共にFAB-1に便乗させて貰って帰る途中ずっとその話をしていた。

「昔近所に住んでいたタマちゃんを思い出すの。その子も赤っぽい毛に青い瞳だったにゃ」
「その方もハーフだったのですか?」

 FAB-1は大型のリムジンだ。後部座席は広い。シンジはレイとアンズの間に座り、トモヨとサクラが向かい合って座っている。運転はいつものようにパーカーだが助手席はケンスケだ。いつもは護衛兼メイドのコノエがいるが今日はいない。

「アビシニアンだよ。私と町内一の美猫を争ってたの」

 しばらくタマの話が続いた。レイをマンションの前で下ろした後もずっと話が続いた。




 今のアスカの頭の中を表すとしたら大量のクエスチョンマークだ。何故か豪邸のダンスホールのように広い食堂で、赤いイブニングドレス姿で手にグラスを持っている。ドイツにいた時はビールだったが今はコーラだ。周りを見渡すと、ネルフとWWRの関係者が似たような格好で飲み物を飲んだりごちそうを摘まんだりしている。ようは立食パーティーだ。EVA出撃の後の検査などが終わったところでミサトに歓迎会をやるからと言われた。面倒だとも思ったがネルフの日本のメンバーなどを早めに知っておいて悪くは無いと思ったので了承した。ジオフロントから上の町に上がり、指定された駅前のロータリーで待っていると、目の前に大型のトレーラートラックが止まった。色はピンクで側面の隅に「大道寺トイズコーポレーション」とある。トレーラートラックの後ろが開くと中からメイド服姿の女性が三人出てきた。そのうちの一人はリーダーらしく、メイドにしては精悍で視線がきつい美人だ。

「式波様、わが主、大道寺トモヨ様の命によりお迎えに上がりました。無骨なトレーラーですが中は広々としておりますのでお乗りください」
「はい?」
「さあどうぞ」

 流石のアスカもどうしたもんやらと突っ立っているとメイドの一人がアスカの手荷物を手に取った。重要書類なども入っているのでしっかりともっていたはずだったが、何故かメイドの手に移っている。

「さあどうぞ、さあどうぞ」

 拉致というわけでは無いのだが、あっという間にトレーラーの中にアスカは連れ込まれた。ここでもびっくりした。トレーラーの内装は豪華な家具がそろっており、そのままここに住めそうだった。トレーラーの後部の扉が上がった。

「では屋敷へご案内いたします」

 こうなったらジタバタしてもしょうがないとソファに座ると、もう立ち上がるのが面倒なぐらい良い座り心地だった。微かなショックがあったのはトレーラートラックが動き出したせいだ。

「お飲み物は何がよろしいでしょうか?」
「afri cola」

 ドイツのコーラだ。

「はい。お待ちください」
「えっ、あるの?」
「はい。お客様のご要望にお応えするのがメイド隊の仕事ですので」
「メイド隊?何それ」
「はい。式波様はWWRは大道寺家が運営しているのはご存じですか?」
「加地さんに渡された資料に載っていたわ」

 リーダーのコノエが対応する間にもう一人のメイドがコーラを持ってきた。

「どうぞ」

 瓶からそのまま飲むのが好きなアスカの為に、栓を開けずに栓抜きと共にアスカの前のローテーブルに置いた。メイドはお辞儀をして下がっていく。

「じゃ頂きます」

 瓶を手に取るとよく冷えている。栓を開けると一気飲みした。

「ご馳走様、もう一本ある?」
「はい。ございます」

 コノエが答えている間にもう一本が用意されていた。今度はコップと共にだ。

「二本目はコップって良く判ったわね」
「はい。メイド隊の調査部は優秀ですので」
「そのメイド隊ってなあに」
「はい。先ほども説明させて頂きましたがWWRは大道寺家の運営となっております。ですが一応秘密組織です」
「公然の秘密って奴ね」
「はい。その為表立って活動する為の組織として大道寺家のメイド隊が結成されました。実際WWRの隊員は大道寺家でメイドや執事をしている者も多くカバーとしては最適なのです。ちなみにメイド隊は俗称で、正確には大道寺家使用人互助会です」
「ふーん」
「式波様、ところで本日のパーティーのお召し物ですが」

 もう一人のメイドがローテーブルのサイドを操作すると、ローテーブルの表面がディスプレイに変わった。赤を基調にしたドレスが何着も表示された。

「本日のパーティーのお召し物を勝手ながら用意させて頂きました」
「はぁ」

 アスカが見ても高そうな豪華なドレスが並んでいる。その視線を察したらしい。コノエが微笑みながら言った。

「お客様に綺麗なお召し物を着て頂くのはわが主の趣味ですので、お気になさらずにお選びください」
「でも高そう」
「お客様からお代などいただけません。これはわが主のポケットマネーから出ております。隊長はアジアで四番目のお金持ちですのでお気になさらず」
「そうなの。じゃ選ぼうかな」

 ローテーブルのデイスプレイを操作していくつかドレスをピックアップしそれを並べて比べた。赤いドレスで気に入った物が見つかった。

「じゃこれ」
「お履き物も用意させて頂きましたが」

 そんなこんなで屋敷に着くと、ソノミ直々のお出迎えがあった後、アスカ専用の控え室に通された。そこで衣装担当のメイドの手伝いで、上から下まで赤を基調としたドレスや宝飾具に彩られたアスカの出来上がりだ。髪飾りやネックレスのルビーは家が数軒買えるような代物だ。そして今グラスを持って会場に立っている。横にはアスカ専属のメイドも控えている。立食パーティーも政治家の資金集めのそれとは違い、ありとあらゆる山海の美味珍味が揃っている。

「ようアスカ」
「加持さん」

 向こうから無精ひげにスーツを着崩した加持がやってきた。

「楽しんでるかい?」
「何が何だかって感じ。ところで依怙贔屓と七光りはどこ?」
「レイとシンジ君か。あっちにいたな」

 加持が指さす方向にレイとシンジがいた。当然のようにアンズもいる。レイはアンズの好きな白と黒を基調にしたゴシックロリータ風の衣裳を着ている。アンズは猫の姿でレイの手に抱かれて、衣裳の一部となっている。寝ているようだ。シンジはスーツ姿だが着慣れていないようで似合っていない。辺りにはWWRの隊員達も着飾ってパーティーに参加している。最小限の警備の者、食事の用意をする者以外は今日のパーティーに参加している。ネルフからも各部門の代表者が一人ずつ来ている。加持やミサト、リツコ、冬月もいる。今日はネルフとWWRの親睦会も兼ねている。自然とそれぞれの機関の似たような業務をしているどうしで集まって話になっている。冬月はソノミと話しているし、ミサトはマリエルと、リツコはレインと話している。第壱中の在学生も集まっている。
 アスカはシンジの方に向かっていく。近くまで来ると、上から下まで値踏みするようにジロジロ見る。

「何か冴えないわね、七光り」
「え、あ、僕」
「そうよ、大体EVAパイロットが現場にいないって何よ?」
「そう言われても」

 シンジが言いよどんだので畳みかけようとしたときだった。

「あ。アスカちゃんだあ」

 レイの近くから声がすると白い塊がアスカに飛びついて、頭に乗った。

「わ、なによ」
「凄いサラサラ。素敵なかみのけだにゃ」

 アンズがアスカの頭に乗って、しがみついていた。

「離れなさいよ、この化け猫」
「だってこんな座り心地がいい髪の毛ないにゃ」

 アスカがじたばたしていると、ビールのグラスを片手にミサトがやってきた。

「仲良くしなさいよ、一緒に住むんだから」
「えーなにそれ」
「アスカとシンジ君は私の直属の部下だから、一緒に住んで、コミュニケーションをとるようにするの。アンズちゃんはシンジ君のお姉さんだしボディーガードだし一緒よ」
「そんな事聞いてない。離れろー」




 そんなドタバタをモニターしていたTB5のAIのイオスが呟いた。
「バカばっか」




 翌日の夜、葛城亭のダイニングキッチンのテーブルは料理と酒が大量に並んでいた。酒好き宴会好きのミサトが、葛城家での歓迎会を開こうと言ったためだ。一部はシンジが作ったが、ほとんどミサトが買ってきた。パーティーと言う事で、それぞれの好物が目の前には置いてある。アンズの目の前には合成では無い本物の魚だ。魚洞の女主人が苦労して入手した鮎や岩魚、河豚などだ。海は赤くなってしまったが、淡水魚は採れるところはある。とは言っても世界中の気候が変わってしまったため、淡水魚もほとんどの場所で漁は出来ないし、出来たとしてもごく少数の漁師しか許されない。河豚等の海水魚、汽水魚は陸上養殖だ。その為、合成で無い魚はとても値段が高い。だが一応葛城家は全員働いてそれなりに裕福だ。ミサトは超国家機関の現場監督だし、アスカはユーロ空軍の大尉だし、シンジもEVAの搭乗手当はしっかりと貰っている。アンズでさえもシンジのボディーガードという名目でネルフの臨時雇いの名簿に乗っている。ともかく、それなりの収入はあるのでパーティーなどはそれなりに豪華に出来る。アンズは魚だが、アスカは肉だ。今でもかろうじてブランドが残っている神戸牛のいちばんいいところ1kgが目の前にある。日本に来たらまず食べたかったそうだ。ミサトの前にはアスカのみやげのドイツのビールと餃子専門店のお取り寄せ餃子が山と積まれている。シンジの前には旧東京の有名割烹の豪華幕の内弁当と寿司だ。昨日の大道寺家のパーティーで食べて美味しかったので、また今度食べたいと学校で漏らしたのをサクラが聞きつけ、大道寺家経由で今日届いた物だ。大道寺家からの贈り物は遠慮しても仕方が無いのでありがたくいただく事にしている。

「それでは、アスカの来日を祝って乾杯」
「「「「「「「「「乾杯」」」」」」」」」

 ミサトはジョッキのビールを一気に空けた。アスカはコーラ、シンジとアンズは麦茶だ。 

「日本に来たら、がつんとやってやろうと思ってたのよ。七光りと依怙贔屓に」
「アスカ、名前で言ったら」
「判ったわよ、ともかくシンジとレイにがつんと言ってやろうと思ったんだけど」

 アスカはステーキをぱくついていた手を止めた。

「化け猫はいるわ、変態はいるわ、超能力者はいるわで、なんかほら、毒気抜かれただっけ、そんな感じ」

 今日第壱中に初登校した帰りに、たまたま銀行強盗に出くわし、たまたま変態EVA仮面の濃厚な活躍を見たり、高層ビル火災で高層階に取り残された子供をTB1からジェットパックの飛行能力とシールドの魔法の併用で助け出したサクラとマリエルのコンビを見たりと、やたら濃い一日を過ごしたらしい。

「そりゃ、使徒もEVAも普通じゃないけど、変態と魔法少女よ。なんかこの国へんよ」
「まあまあ、アスカ。重要なのは味方か敵かよ」

 ミサトはビールのジョッキをどんどんと空けつつ微笑んだ。

「まあね。ところでなんであんた達がいるのよ」
「ごはん、呼ばれたから」
「おほほほほ、スポンサーですし」
「えっと、ほええええ」
「ボディーガードだし」
「担任だし、呑み友達だし」

 レイはアンズが呼んだ。美味しい魚があると言ったら来た。サクラはアスカと話したかったらしい。最近前の世界の記憶が薄くなってきたが、それでもアスカの派手さ、美しさは以前の世界を思い出させて話せるのが嬉しいらしい。サクラが行くところには当然トモヨは着いていくし、ケンスケはボディーガードだ。クキコはミサトの呑兵衛仲間でもあり、サクラの後見人みたいな物でもある。トウジやヒカリ等の他のメンバーはWWRの当直でいない。

「でさ、サクラって呼んでいい」
「いいよ」
「あんた、魔法少女なんだって」
「えっと、まあ簡単に言うと」
「まあ、そこまではいいわ、その上、異世界人なんだって?人間なの?」
「うん」

 情報はいつかは漏れる。そのためネルフの実戦部隊のボスとWWRのボス、要するにミサトとソノミでサクラのカバーストーリーを作った。以前似たような世界に住んでいて、似たような仲間と一緒に同じように戦っていたが、使徒のせいで次元の壁を越えたと言う事だ。事実に近いが、その世界の結末や人間関係などは微妙に変えてある。それらのカバーストーリーはとっさの時でも直ぐに出るようにWWRの脳波検出記録移送装置BIG-RATを使いサクラの脳に転写されている。

「前の世界では、超常能力者が多い世界で、EVAと一緒に使徒と戦っていたの。ただ次元を超える時に私はほとんどの力を失ったから、今はWWRで残った能力を活用して人助けしている」
「そうなのよね、この前も助かったわ。瞬間的なら戦艦の残骸をはね飛ばせる念動力。助かるわ。ありがとうサクラちゃん」
「えへへ」

 ミサトに褒められてサクラは照れくさそうに頭をかいた。

「ふーん。で、前の世界の私はどんなだったの?」
「姿はそっくり。それでヒーローが好きで」

 アスカが根掘り葉掘り聞いていく。サクラにはね前の世界のみんなの情報も差し障りのないストーリーが作られていて、BIG-RATで覚え込まされている。よどみなく答えていく。

「弐号機が鳥形とはね。変身ヒーローが好きって、まあ、嫌いじゃないけど。私も」

 アスカの顔が赤い。照れているのではなく、ミサトのビールを飲んでいるからだ。

「で、あんたの世界はどうなったの」
「判らない。決着がつく前、使徒の作った亜空間に飲み込まれて、この世界に来たから」
「まあ、この世界はこのアスカ様がいるから大丈夫よ」
「うん、そうだね」

 サクラは心の底から頷いた。

「アンズもアスカちゃんは出来る子って思うの」
「さすが判っているわね」
「私、人間の姿になれるようになったら、シンちゃん以外にも、レイちゃんやサクラちゃんやアスカちゃんみたいな、可愛くていい子がいっぱい出来て、妹が増えたみたいで嬉しいにゃ。困ったらお姉ちゃんに何でも相談してね」
「まっ、アンズは年上だし、素手では私より強いようだし、まあアスカ様は自慢の妹になってあげてもいいわよ」
「それはうれしいにゃ」
「でも、頭には乗らないでね。乗るのは肩よ肩」
「わかった」
「ところでトモヨ、あんたあの変態のファンなんだって」

 トモヨの横でケンスケがその話はしてくれるなという感じで焦っているが、アスカはもちろん気にせず続けた。EVAパイロットとして、WWRのメンバーの資料は受け取っている。完璧な資料ではないが差し障りの無い情報なら知っている。変態EVA仮面の正体等だ。

「おほほほほほ、もちろんですわ」




「今日は引率ご苦労様」
「ただで美味しい酒が飲めるんだったらいくらでも付き合うわ」

 子供達が勝手に盛り上がっているので、ミサトとクキコは部屋の隅のソファで並んで酒を飲んでいる。

「アスカは我が強いからどうなるかと思ったけど、アンズちゃんのおかげで上手くいきそうだわ」
「そうね。いいお姉ちゃんだわ」
「ある意味理想のお姉ちゃんだから、アンズちゃんは。私は保護者は出来るけど家族になれるかって言うとね。指揮官でもあるから難しいところがあるから。アンズちゃんに家族役は丸投げよ」
「やり過ぎると指揮官としても見放されるわよ」
「あんただって生徒の自主性って放っておくとみんなぐれるわよ」
「ぐれた魔法少女や変態はたまらないわね」
「全く」
「でも、ま、酒飲めば、明日は薔薇色、悩み無し」
「同感、乾杯」

 二人はグラスを当てて、ウオッカを飲み干した。


十か月ぶりにしては短い文章量なのは、やっぱり作者が歳だからだろうか。
WWRばかり目立つのはEVAザクラと言う作品名とミスマッチじゃないのか。
次回「EVAザクラ新劇場版 破 第二話」
さぁて、この次もサービス、サービス!

つづく



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