そそかしゆうれい
「夜に出る幽霊はこわいかい?」
「ふーん、じゃあ、朝に出る幽霊はこわいかい?」
「えー、こわくないの?」
「じゃあ、ぼくのことも、こわくない?」
「へぇ、そうなんだ。」
「え? こうしておしゃべりできるのも、朝に出てきてくれるから、だって?」
「へぇー、そうなんだ」
「なんだか‥‥うれしいな」
「ところでさ、何でそうなの?」
「‥‥えっ? ああ、ぼくたち幽霊が、朝に出てくると怖くないって話」
「幽霊として、気になるんだよ~」
「‥‥あ、あぁー、そうなんだ。 明るいと、人はいっぱいお外にいるから、こわくないんだねー」
「‥‥え? それだけじゃないって?」
「‥‥へぇ、明るいと、ブキミ、じゃないんだね? へぇ、知らなかった」
「‥‥でもさ、こうして朝に君と会ったわけだけど‥‥怖くないの?」
「いやいや、だって君、今ひとりじゃん」
「え、家の中だからだって?」
「いや、それはさ、そうかもしんないけど‥‥」
「‥‥え、下の階におかあさんとおとうさんがいるって?」
「ああ!! そうなんだ」
「え? この歯?」
「きみのおとうさんの」
「なんだぁ、怖がるじゃん!!」
「ねぇ」
「ねぇ」
「ねぇ」
「ねぇ」
「ねぇ」
「ねぇ!!」
「うそだよ」
「だから、うそ」
「びっくりしたでしょ? とれんだよ? この歯」
「あ、そうそう、俺の歯ね、これ。その指も俺のだね、うん」
「え、だいぶブキミになってきたって?」
「はは!! そうでしょ~!!」
「‥‥」
「これの直しかた、わかる?」