2019/04/22
00:12
投稿
・・・
砲撃によって支えることのできなくなった足場は沈む様に落下する。
同時にマチルダに搭乗する者達は、驚きの表情を浮かべながら体が浮く感覚を味わっていた。
つい先ほどまで豆戦車を追い詰めていたのに、指揮官からの連絡で引き返すことになったが間に合わず今この瞬間に至る。
戦車から外が見れる者は瞬(まばた)き一つできずに、己の目に映る光景をただ眺めるしかない。
ゆっくり、ゆっくりとその光景は流れていく。
反対側の地面が徐々にせり上がって行く。
真っ直ぐに張られた橋がたわむ足場となって正面を駆けて来る豆戦車を波のように襲い掛かる。
そして飲み込まれる。
かと思いきや波を乗り越えた。
それはジェットコースターの勢いをそのままに上へと駆け上がってコースアウトするかの様に。
それは船の形をした振り子状のアトラクションから勢い良く前へと飛び出すかの様に。
反対側の地面がせり上がって行く。
そして自分達が落下しているということに気付いた時、川へと着水する。
カーボンに守られたマチルダの中では、全員が掴まれる場所に掴まって衝撃に耐えた。
その手にはティーカップがしっかりと握られている。
やがて大量の水しぶきにまみれながら濡れた白旗がだらんと垂れ下がった。
・・・
「やったー!
タンケッテ最強!」
空中を舞って無事に着地し履帯が土を蹴り上げながら、CV33の中では勝利の美酒を味わった気分に酔っていた。
かつて自分達が倒した相手である大洗と共に敵を倒す。
あの時の小さな隊長の指揮の下で。
大洗女子学園戦車道廃止の知らせを聞いた時は、少なからず罪悪感に苛まれた。
事情を知らなかったし、もしも知っていても手心を加えるつもりも無い。
勝負の世界。
戦車道の世界で互いにベストを尽くした。
それでも、彼女達は勝手に心配してこのお茶会に参加した。
「残りはダージリンだけ、だぁあ--」
アンチョビが意気込みを語ろうとした瞬間に、車体右側面を撃ち抜かれた。
・・・
「間に合わなかったか……」
黒森峰隊長が悔やみながら広場へとティーガーを入れる。
左には白旗を上げたCV33が転がっており、正面の橋は見事に崩落していた。
その先にいるのはダージリンが搭乗するチャーチル。
一瞬緊張が走った。
下りて川を渡るのは不可能だから、ここで撃ち合いをするか?
鋭く視線を敵へと向けるが、当のダージリンはティーカップを片手に何やら無線で話しかけている。
そしてチャーチルが一本道を下ろうとバックしているのが分かった。
「ここで決着にする気は無い、ということか」
隊長へと連絡をしてダージリンに追い付こうか、それとも特定の場所へと誘い込む手を考えるかを話すと、「追いましょう」と即答してきた。
相手は最後の1輌。
追い詰めて勝ちを手に入れる。
それが彼女の決断だった。
受諾し、合流を急ごうとした時に無線が再び入ってくる。
作戦変更かと問おうとしたが、相手は予想外の人物だった。
「ごきげんよう。
この無線は会場の皆様方へも伝わるはずですわ」
ダージリンが敵側の無線だけでなく学園艦のスピーカーからも声を発して語り掛けてきたのだ。
「この練習試合、まさかここまで私達が追い詰められるとは想像していませんでしたわ。
各学校の勇敢な方々がいるから?
それもありましょう。
でも、それをまとめ上げてくる大洗女子学園戦車道の底力を見せつけられました。
再びティーセットを送りたいと思える程に」
/////////////////////////////////////
TVシリーズでサンダース戦前に秋山殿の家に行き、両親の話を聞いた時の麻子の心境を想像したことってありますか?
タイトル変更しました。
ガールズ&パンツァー -√^最期の日---(ガールズ アンド パンツァー_さいごのひ_ガルパン二次創作小説)
次回更新日
04/24(水)予定