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No.43110の一覧
[0] ディス・パーダ ー因果応報の戒律ー[のんど](2023/12/17 10:35)
[1] 帝国争乱編 第1話 あの日、みたもの[のんど](2022/09/17 23:26)
[2] 第二話 世界は未知領域[のんど](2022/09/17 23:26)
[3] 第三話 理に触れざる手[のんど](2022/10/12 21:34)
[4] 第四話 決断と日々[のんど](2022/06/27 21:12)
[5] 襲撃[のんど](2022/07/04 22:12)
[6] 残酷な灯り[のんど](2022/07/12 01:48)
[7] 偽りの追跡者[のんど](2022/07/12 18:21)
[8] 侵攻の兆し[のんど](2022/07/19 19:49)
[9] ヌレイ[のんど](2022/07/19 23:04)
[10] 部隊との会合[のんど](2022/07/25 20:58)
[11] 補給ルート[のんど](2022/07/26 22:04)
[12] 真祖のなれ果『ネクローシス』[のんど](2022/08/03 05:34)
[13] なれ果『ネクローシス』②[のんど](2022/08/16 21:26)
[14] 休憩[のんど](2022/08/22 22:41)
[15] レジオン帝国『ブリュッケン』[のんど](2022/09/12 20:07)
[16] アルフォール&セドリック[のんど](2023/12/11 04:43)
[17] 諸刃の力[のんど](2023/02/20 13:00)
[18] いにしえの呪縛[のんど](2023/02/20 15:10)
[19] 瀟洒なカフェテリア[のんど](2023/05/01 20:14)
[20] 目に映る偽りの安寧[のんとみれにあ](2023/11/28 18:10)
[21] 一人の考古学者として[のんとみれにあ](2023/11/28 18:16)
[23] セラフィール『人類史上世界最強のディスパーダ』[のんとみれにあ](2023/11/28 18:19)
[24] 第23話 独立機動部隊総会議[のんど](2023/11/29 18:16)
[25] 中尉の決断[のんど](2023/12/02 20:16)
[26] 特異。[のんど](2023/12/12 06:20)
[27] ツァイトベルン時計台[のんど](2023/12/17 10:35)
[28] ツァイトベルン時計台②[のんど](2020/04/17 16:15)
[29] ツァイトベルン時計台③[のんど](2020/04/17 16:15)
[30] ツァイトベルン時計台④[のんど](2020/04/17 16:16)
[31] 真実の裏側[のんど](2020/04/17 16:17)
[32] 新たなる目的[のんど](2020/04/17 16:17)
[33] 帝国へ向かう白色の戦士[のんど](2020/04/22 21:20)
[34] 帝国へ向かう灰色の悪魔[のんど](2020/05/17 17:59)
[35] 悪魔に何を抱くか[のんど](2020/05/19 15:48)
[36] 第35話 再会の時を望んで[のんど](2020/06/12 22:11)
[37] 第36話 枢機士評議会①[のんど](2020/06/22 19:18)
[38] 第37話 枢機士評議会②[のんど](2020/06/28 23:33)
[39] 第38話 枢機士評議会③[のんど](2020/06/29 16:56)
[40] 特異性[のんとみれにあ](2023/11/28 18:13)
[41] 不死性[のんど](2021/07/13 00:57)
[42] 第41話 不死性②[のんど](2021/07/25 00:17)
[43] 第42話 力の自覚①[のんど](2021/10/02 13:20)
[44] 第43話 力の自覚②[のんど](2021/10/02 13:21)
[45] 第44話 力の自覚③[のんど](2021/10/02 13:21)
[46] 第45話 力の自覚④[のんど](2021/10/02 13:22)
[47] 第46話 力の自覚⑤[のんど](2021/10/02 13:22)
[48] 第47話 力の自覚⑥[のんど](2021/10/02 13:23)
[49] 第48話 力の自覚⑦[のんど](2021/10/02 13:23)
[50] 第49話 力の自覚⑧[のんど](2021/10/02 13:24)
[51] 第50話 力の自覚⑨[のんど](2021/10/02 13:24)
[52] 第51話 世界に愛され歪まれる少女[のんど](2021/10/02 13:25)
[53] 第52話 アンバラル第三共和国軍・セクター3[のんど](2021/10/05 20:48)
[54] 第53話 セラフ財団の謀反・クロナの失脚[のんど](2021/10/05 20:49)
[55] 第54話 アンビュランス要塞撃滅作戦・第一段階[のんど](2021/10/05 20:49)
[56] 第55話 アンビュランス要塞撃滅作戦・第二段階『総攻撃』及び第三段階『残党掃討作戦』[のんど](2021/10/05 20:50)
[57] 第56話 黒滅の四騎士『アーマネス・ネクロウルカン』[のんど](2022/07/31 00:02)
[58] 第57話 第9人外終局[のんど](2021/10/05 20:51)
[59] 第58話 第三共和国軍、襲来。[のんど](2021/10/05 20:51)
[60] 第59話 デュナミス評議会[のんど](2021/10/05 20:51)
[61] 第60話 【第一部・帝国争乱編完】決戦、ネクロウルカン[のんど](2022/07/01 21:14)
[62] 第61話 アステロイド領域編・祝福されしエンプレセス達  人外の楽園[のんど](2021/11/08 13:28)
[63] 第62話 人外の楽園②[のんど](2021/11/08 13:28)
[64] 第63話 人外の楽園③[のんど](2021/11/23 02:47)
[65] 第64話 サイード・ボルトア【負の謀略】[のんど](2022/07/31 20:55)
[66] 第65話 新生[のんど](2022/06/21 23:18)
[67] 第66話 民間用南部戦線仕様第301装甲列車[のんど](2021/12/20 00:34)
[68] 番外 ややこしい名称の軽く設定整理等[のんど](2021/12/21 01:00)
[69] 第67話 バスキア戦線[のんど](2022/01/04 02:57)
[70] 第68話 野蛮で、それでいて優しい生き物[のんど](2022/01/10 23:57)
[71] 第69話 君は神を信じるの?[のんど](2022/01/27 20:02)
[72] 第70話 第5前哨基地[のんど](2022/02/01 19:35)
[73] 第71話 ブリーフィング[のんど](2022/02/14 22:36)
[74] 第72話共和国南部統合方面軍統括指揮官ガルガン・エスタール大将[のんど](2022/02/15 21:56)
[75] 第73話 ロサ・カリオサス暗殺用私設特殊部隊[のんど](2022/06/21 11:15)
[76] 第74話 つかのまの飲み[のんど](2022/03/30 01:07)
[77] 第75話 エイヴンズサーヴァント[のんど](2022/04/06 01:58)
[78] 第76話 マギの瞳[のんど](2022/05/11 16:53)
[80] 第77話 消失する遺物の力[のんど](2022/05/11 16:52)
[81] 第78話 新皇帝エクイラ[のんど](2022/07/07 18:42)
[82] 新皇帝エクイラ②[のんど](2022/07/07 18:42)
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[43110] 諸刃の力
Name: のんど◆2901f8c9 ID:c0f89988 前を表示する / 次を表示する
Date: 2023/02/20 13:00
 「一体、今……何が起きたんだ?」

 レオの目はその一連の動作を捉えきることができなかった。明らかに無防備であったアイザックに確殺の一撃を加えたはずのアルフォールとセドリックのソレイスは、アイザックの素手で雨粒を振り払うかのようにあっけなく受け流されてしまった。慣性を受け流された二人は、そのまま減衰することなくアイザックの後方に軽く吹き飛ぶ。

「―――ちっ、なんだァ!!いまのはよぉ!」

 己のソレイスを軽くあしらわれた事に腹を立てたのか、セドリックは大声を荒げながら再びアイザックに真正面から切り込もうとする。

「やれやれ、全く。お前は相変わらずだなぁ」

 アイザックに再び向けられ猛攻する切っ先は寸前にしてその動作を急激に停止させ、間合いを詰めながらアイザックの周りを急速周回する。

「ほう、少しは頭を使うようになったかセドリック。えらいぞぉ~」

 アイザックはそう言いながら自身の周囲を駆け回るセドリックに注視し続ける。

(ちっ、一々口調がムカつく奴だぜ。だが、それがアイツのレイシス連中に対する戦略なのは俺も知っている。散々やられたことだ、俺でも分かっている。レイシスはキレやすいからな、俺の動きを単調にしようと考えているんだろうが、さすがにもうその手には乗せられねぇよ!)

 アイザックはセドリックへの注視を一旦やめて動きを見せないアルフォールの方へと一瞬目線をやると、その隙を見たセドリックは突如急速周回を気づかれない位置で静穏にやめる。セドリックが足を止めたその位置はドンピシャでアイザックの背後であり、死角だ。そのまま周回によって得ていた加速エネルギーを切っ先に伝達させ、アイザックの背後に目掛けて常人では到底視認することのきない速度で地に一足ついて刺突を繰り出す。

「......セドリックよぉ、お前はまだ真理に気づいていないのか」

 背後をついていたはずの渾身のセドリックの一撃はアイザックの素手で軽く受け止められその剣を素手で掴まれていた。ただ一つのかすり傷もなく。

「―――クソがっ!いみわかんねぇ......」

 セドリックがそう言った後、アイザックは掴んでいたソレイスを離す。そしてセドリックはアルフォールのいる位置まで瞬時に身を引いた。

「―――相変わらずお強いですね先生、さすがの『オールド』というだけある。無駄に長生きしてるわけじゃないんですね。しかし、先生。バカのセドリックはともかくとして、そうやって僕のことも侮らないで欲しいですねぇ』

「あっ!?!?アルてめ......!」

 アルフォールはセドリックの反応に気にする素振りを見せずそのまま話を続ける。

「先生、かつてあなたは僕に言いました。力の根源を負の感情に頼り、恩恵を得るレイシス。それは何とも愚かで、邪の道であると。レイシスの力など所詮見かけだけの紛い物に過ぎぬと。しかし、僕はあの時より学び、そして理解しました。純粋な力の前に人道や倫理など無意味であることを。先生?だとしたら聖なる倫理は弱気人々や愛する人を救えるのですか?先生、あなたは間違っている。やはり力だけがこの世の真理であり、その拠り所に善悪などない。それを僕が証明しますよ」

 アルフォールの顕現させたソレイスは美しい金銀色の施しを受けた槍状のシンプルなソレイス。その美しさはレイシア少佐のソレイスを初見で見た時と同じほどの衝撃を受ける。あれほど精密で美しいものが人体から生成される歪な現象に、未だレオは慣れる事ができない。
 そして、アルフォールは負の感情を象徴するかのように空中で腕を振ると、その軌跡に沿って可視化された漆黒のベールが現れる。
 やがてそのベールは膨張するとアルフォール自信と槍のソレイスを丸ごと飲み込んだ。

「......はぁ、アルフォールよ。お前はセドリックよりバカだ、その力を使うくらいなら無知である事の方が余程幸せな生き様だ。お前達は不幸な生命体だ、そいつに心を売るなアルフォール、その力は真理ではない」

「お、おい......。アル、その黒いの......それはどういう......?そんなの聞いてないぞ......」

 セドリックは変貌しはじめるアルフォールに対して疑念と恐怖心を抱きながら少し距離を取った。ベールに包み込まれたアルフォールは黒き繭の中でもがき苦しみながら、やがてその殻を破る。

「黙れよ、先生......。真理が何かは自身で決める事だろ......なぁ......はっはっは」

 先ほどの清楚な青年のイメージからかけ離れた言動や獣じみた動作は、その力の狂気を伺うことができた。アルフォールは黒い繭から槍を引きずりだし、正面に突きたて、アルフォールは静かに苦し紛れに言い放つ。

「―――我が道を、切り開いてくれ......」

 その冷徹な呼び声と共に周囲に纏っていた漆黒のベールは一気に空間に離散し、アルフォールの体に対してまるで包帯を誰かの手によって巻かれるかのように糸状に巻きついていく。その包帯状の帯には読解不可能な象形文字列が下半身から上半身にかけて刻まれ、槍のソレイスにもそれが巻きつきはじめる。

 やがて謎の形態変化を遂げたアルフォール。その風貌はまるで病院に入院している重病患者のようだ。しかし、それまで旺盛であったはずのアルフォールはその場から一歩も動かずに居た。というより動けずに居たという方が適切なのだろうか。その力を完璧にコントロールできていないようである事は素人目のレオにもあからさまだった。

「『レナトゥス・コード』か......。アルフォールよ、一体何がおめぇをそこまでさせたんだ。教会の連中は一体何をお前に吹き込んだ......」

 アルフォールのもがき苦しみ変わり果てた姿を見て、アイザックは頭を抱える。

「......いいかアルフォールよ。その術を使うには、余りにもお前は優しすぎるのだ。お前の捨てきれない人情の分だけ、その禁忌の術はお前に代償を払わせる。愚かな弟子よ、道を踏み外したな......。はぁ、なんと不甲斐ないことか」

 アイザックはアルフォールに聞こえてるかも分からない言葉を連ね、その隙間にレオは銃型のソレイスをアルフォール方へと向けながらアイザックに静かに駆け寄った。

「おっ、おい!これどういう状況だよ......。よく分からんがいまのうちに逃げれるんじゃないか?あいつらから」

「ふ~む......」

 レオのその言葉に、悩ましいような太い唸り声をあげながら応えるとアイザックは変貌したアルフォールを見据えながら腕を組んで立ち尽くす。

「―――なぁ……嘘だろアル……なんだよその黒いのはよぉ……なんで何も言ってくれなかったんだ……アル……」

 セドリックは言葉を失っていた、彼にとってアルフォールのしたことは余りにも予想外の出来事であったようだ。

「......お、おいアイザック。マジでどうすんだ?俺にはこの状況があんたらの身内ノリ過ぎてとてもじゃないが飲み込めねぇよ、俺の勘が正しけりゃ今が絶好の逃げ時だと思うんだがねぇ……。弟子が心配で動けねぇってんなら俺一人でこの場を引かせもらうが?」

 レオは冷や汗をかきながらアイザックへそう言って銃のソレイスをアルフォール達へと絶えず向け続ける。何かを永遠と悩み込むアイザックだったが、突如として腕組を外した。

「そうだな、じゃ。逃げっか」

「......いいんだな?同情するわけじゃないが、一応あいつらアンタの元弟子とかなんだろ?見るにかなり苦しそうだが」

 アイザックは答えを詰まらせ。強く握り拳を作り、そして手のひらに跡を残すと踏ん切りがついたように脱力させる。

(オールドでありながら、俺もまだまだ甘い......。)

「はぁ......まぁ、あれはほっといてもまだ大丈夫な段階だ。空撃ちとでも言うべきか、アイツにはあれを使うだけの器量が元来備わっていない......。それ故にあれを発動させた代償をその身をもって償わなければならん。あの尋常ならざるであろう苦しみはその代償だ、しばらくは動けんだろうが、それをもって反省することを師として俺は期待するのみだ」

「あぁ、わかったよ。じゃあずらかるぞアイザック」

 変貌の代償で苦しもがくアルフォールと、それに寄り添うように見守り続けるセドリック。念のためレオは銃口を彼らに最後まで向け続けるが、アイザックが彼らに背を向けてもその者達が追撃してくる様子はなかった。

 そのままアルフォールとセドリックの帰還を待ち続ける空中戦艦を背にして、その影を浴びながらアイザックとレオは倉庫区画を後にした。その後、エターヴの増援はせっせと倉庫区画包囲網を構築していたが、それがアイザックの手によって不毛な労力と化す事は想像に難くない。しかし、されどエターヴは卿国の支援下にある訓練されたテロ組織とされる。訪れた時に乗車した車両に乗り込んで、そのまま数ある包囲線を突っ走って逃走するのはさすがに難しい。

 ―――はずだが、それでもアイザック達は車両に乗り込んでは堂々と。張めぐされた包囲線でエターヴの警告通り丁寧に降車をし、真正面からエターヴをそのまましばき倒していく。はなから彼らに対してエターヴの包囲線など殆ど意味をなさない。そうしてアイザック等はそのままブリュッケン都市郊外へと脱出するのだった。



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