世界は果てしない大戦争の末、再生能力を失った多くの国々は世界統合機構・共和国連邦政府によって一部を除き統合されていき、大戦以前のあらゆる文明は見る影を失ってから二百年余りの年月が過ぎた。
そんな過酷な世界を生き抜く一人の傭兵は、共和国連邦政府からとある依頼が持ちかけられ、かつてない謎を追う戦いに巻き込まれる......。
序章第0話 幽世のあなたに繋ぐ異邦の夜
我々は来たるべき脅威に備えなければならなかった。
それはこの世のものでなく、更にそれらは圧倒的別次元の力を誇るものであった。
その為に我々はこの世界に、ある力の因子をこの地に植えた。
いつしかこの因子に適合した人間達が現れ、やがて世界を併合し、来たるべき外敵から身を守るための手段として、その力を振るうことを切に願わん。
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争いというのは、悪であるのか。
この手の話題は善悪の基準の議論をすることで、暫定的な答えがすぐさま用意されてしまう。
偽善たる論者はその本質を理解していながら争いを「悪」と答えるのだ。
そもそも、争いとは何を生むのだろうか?争いと言っても当然ながら一概に言える現象ではない。
子供のささやかな親への反抗も争いであるし、崇高穏やかな思想を掲げ相対する全ての勢力を討ち滅ぼすことも争いである。
争いそのものは時に愛情を育むこともあれば、死者を生み出す原始的な行為でもある。
さながら人は原始的に続けてきた争いを野蛮であると批判しながらその手に掲げた武器を放棄することはなかったが。
それはさておき、私は争いを悪だとは思わなかった、どんな形であれ生存競争の手段として用いられる争いは儚く美しいものだと思っている。
私がこの世界に齎したものは、現存する全ての争いに進化を促すものである。
私はミナ―ヴァ・テレサテレスに福音を齎した、世界は遂に併合の時を迎えつつある。人類の儚き闘争に愛をこめて。