「も、もう一体!?どこにもいねぇじゃねぇか!そんなの何の言い訳にもなんねぇぞ!!」
「朧ちゃん…上…」
「え…」朧が上を見上げる。すると、朧の真横に何かが落ちてきた。
その何かとはEWHの脚だった。とにかくでかい。四足歩行で足の先に無数の棘が付いている。でかすぎてよく見えないが、上にも二本棘の脚が見える。
「くっ…SLAUGHTERだけでなく、SPINEまで来るとは…」華山先輩が続いて、
「SPINEとは脊椎、とげ状の突起という意味だ。上を見ろ奴はでかいが名前の通り胴体は背骨だけだ肉や装甲なんてない。どういう意味か、分かるな?」と聞く。
「上まで登って、背骨を破壊、もしくは真っ二つにすればいい。」私がそう答えた。
「そういうことだ。」
「劔。」
「何?雲母ちゃん。」
「あなた、剣はどうやって浮かしてる?」
「私、生まれつきこういう力があるみたいなの。」
「人は?」
「?」
「人は浮かせる?」
「わからない。」
「華山先輩と朧はSLAUGHTERと戦う。愛海を浮かせて奴の背中に乗せることはできる?」
「やってみる」
「愛海、華山先輩が気になるのはわかる。でも、あの人は朧と戦うから手を貸して。」
「ああ、ええよ。」
「劔があなたをSPINEの背骨まで連れて行く。背骨に上手く乗ったらハンマーで骨を砕いて。」
「任せてや。」
「やるよ。愛海ちゃん。」
「いつでも来てや」
「うぅっ…………も、持ち上がらない…愛海ちゃんだけなら…なんとかなるかも…」
「わかったわ。先に愛海を持ち上げて、その後でハンマーを送ればいいのよ。」
「オッケー」
「いくよ。」
「ええで。」そう言って劔が愛海を持ち上げる。
「うわっ…すげー高いな…ええよ。乗れたー。」
SPINEが背中の上に違和感を感じる。
「ご、ごめん…私、一度この力を使うと暫く使えないの。」
「そ、そうなの!?」困った。これが一番の作戦だったのに…
「いけそうやで〜あ、危なっ!」
見上げると、上に付いてる二本の脚が愛海を襲っている。
「細いから落ちないように気をつけて!!」
「いける。このまま避け続けて、相手の脚で砕く。自滅を狙うことにしたわ。」
愛海がバランスを取りながら襲ってくる脚を避けていく。
「ゲームで鍛えたこのバランス力でクリアしたるわ。覚悟しとけよ!」
避けることに必死の愛海の背後からもう一本の脚が襲ってくる。
「危ない!!」
「ウチはお前に殺られる程、アホちゃうわ!!」
愛海の作戦通り、トゲ付きの脚で自らの背骨を砕く。
SPINEが砕け散り、地面の中に消えていく。
「ウチの勝ちやぁぁぁぁぁ!!!!見たかぁぁぁ!!!」