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No.4285の一覧
[0] 逃亡奮闘記 (戦国ランス)[さくら](2010/02/09 17:04)
[1] 第一話[さくら](2008/10/14 08:51)
[2] 第二話[さくら](2009/12/08 15:47)
[3] 第三話[さくら](2008/10/22 13:09)
[4] 第四話[さくら](2008/10/22 13:12)
[5] 第五話[さくら](2008/10/30 10:08)
[6] 第六話[さくら](2008/11/04 21:19)
[7] 第七話[さくら](2008/11/17 17:09)
[8] 第八話[さくら](2009/03/30 09:35)
[9] 番外編[さくら](2009/04/06 09:11)
[10] 第九話[さくら](2009/09/23 18:11)
[11] 第十話[さくら](2009/09/26 17:07)
[12] 第十一話[さくら](2009/09/26 17:09)
[13] 第十二話[さくら](2009/09/28 17:26)
[14] 第十三話[さくら](2009/10/02 16:43)
[15] 第十四話[さくら](2009/10/05 23:23)
[16] 第十五話[さくら](2009/10/12 16:30)
[17] 第十六話[さくら](2009/10/13 17:55)
[18] 第十七話[さくら](2009/10/18 16:37)
[19] 第十八話[さくら](2009/10/21 21:01)
[20] 第十九話[さくら](2009/10/25 17:12)
[21] 第二十話[さくら](2009/11/01 00:57)
[22] 第二十一話[さくら](2009/11/08 07:52)
[23] 番外編2[さくら](2009/11/08 07:52)
[24] 第二十二話[さくら](2010/12/27 00:37)
[25] 第二十三話[さくら](2009/11/24 18:28)
[26] 第二十四話[さくら](2009/12/05 18:28)
[28] 第二十五話【改訂版】[さくら](2009/12/08 22:42)
[29] 第二十六話[さくら](2009/12/15 16:04)
[30] 第二十七話[さくら](2009/12/23 16:14)
[31] 最終話[さくら](2009/12/29 13:34)
[32] 第二部 プロローグ[さくら](2010/02/03 16:51)
[33] 第一話[さくら](2010/01/31 22:08)
[34] 第二話[さくら](2010/02/09 17:11)
[35] 第三話[さくら](2010/02/09 17:02)
[36] 第四話[さくら](2010/02/19 16:18)
[37] 第五話[さくら](2010/03/09 17:22)
[38] 第六話[さくら](2010/03/14 21:28)
[39] 第七話[さくら](2010/03/15 22:01)
[40] 第八話[さくら](2010/04/20 17:35)
[41] 第九話[さくら](2010/05/02 18:42)
[42] 第十話[さくら](2010/05/02 20:11)
[43] 第十一話【改】[さくら](2010/06/07 17:32)
[44] 第十二話[さくら](2010/06/18 16:08)
[45] 幕間1[さくら](2010/06/20 18:49)
[46] 番外編3[さくら](2010/07/25 15:35)
[47] 第三部 プロローグ[さくら](2010/08/11 16:23)
[49] 第一話【追加補足版】[さくら](2010/08/11 23:13)
[50] 第二話[さくら](2010/08/28 17:45)
[51] 第三話[さくら](2010/08/28 17:44)
[52] 第四話[さくら](2010/10/05 16:56)
[53] 第五話[さくら](2010/11/08 16:03)
[54] 第六話[さくら](2010/11/08 15:53)
[55] 第七話[さくら](2010/11/12 17:16)
[56] 番外編4[さくら](2010/12/04 18:51)
[57] 第八話[さくら](2010/12/18 18:26)
[58] 第九話[さくら](2010/12/27 00:35)
[59] ぼくのかんがえた、すごい厨ニ病なゆうすけ[さくら](2010/12/27 00:18)
[60] ぼくのかんがえた、すごい厨ニ病なゆうすけ(ふぁいなる)[さくら](2011/01/05 16:39)
[61] 第十話[さくら](2011/01/05 16:35)
[62] 第十一話[さくら](2011/05/12 18:09)
[63] 第十二話[さくら](2011/04/28 17:23)
[64] 第十三話[さくら](2011/04/28 17:24)
[65] 第十四話[さくら](2011/05/13 09:17)
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[4285] 第二話
Name: さくら◆c075b749 ID:d686609c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/08/28 17:45
「すーはー」

「どうした? いきなり深呼吸しだして」

「いや、ちょっとテンションがおかしいって天の声が聞こえた気がして。
反省すると共にちょっと真面目に生きないといけないかと思いまして」

「天の…声? 貴様はわからない言葉を使うな」

始まるよ!



前回あまりにもはっちゃけ過ぎた祐輔はてるに連れられて魔王カップルを訪れる事にした。
毎回の事ながらほぼ100%の確信を持っているが、何もかもが原作通りというわけではない。
この祐輔が紛れ込んだ世界でも原作通りの健太郎と美樹であるかどうかの確認である。

「小川健太郎に来水美樹」

この世界には魔人という特別な種族がある。
そして魔王とは魔人の上位互換にあたる存在であり、この世界に一人しかいない。
その魔力、剛力、生命力は他の追随を許さず、打倒しうる存在といえば神様くらいなものだ。
更に魔人、魔物に対する絶対命令権なんて物もあるチートである。

魔王は数千年単位で代替わりをするのだが、今回の代替わりで異変が起こった。
前代の魔王であるガイはなんと異世界から次の魔王候補をさらい、無理やり次の魔王としたのである。
無理やり連れてこられた者が喜んで魔王になるはずがなく、魔王の力を拒絶して完全な魔王とはなっていない。

そこで残された魔人達の間でトップ不在のために勢力争いが勃発しているが、それは今置いておこう。
今ここで重要なのは無理やりさらわれた魔王が姿をくらまし、魔王として覚醒していないという点である。

そして健太郎と美樹。
この二人こそが今までの話であったさらわれた魔王と、その巻き添いになった二人なのだ。
美樹は魔王としての力を拒み、健太郎はそんな美樹を支えるためアテのない旅を続けている。

だが祐輔にとって彼等二人も重要だが、それと同じくらい重要な事がある。
それは二人の旅に同行している一本の刀の存在であった。

「ここが彼等の部屋だ。案内だけでよいのだな?」

「ええ。ありがとうございます、てる殿。
彼等とは同じ(嘘)故郷なので、心配なさらずとも大丈夫です」

「そうか。なら私は帰るとしよう。用があったら私の部屋まで来るがいい」

こうして祐輔とてるは健太郎達の部屋の前で別れた。
あの後すぐに来たため、今はまだ健太郎はヒラミレモンを取りに行っているため不在だろう。
つまり祐輔の目の前の部屋には美樹ともう一人(一振り)がいる事になる。

なんにしろ第一印象というのが大事だ。
祐輔にとって二人はこれからの戦いにおいて、またとない戦力になると確信している。
同時に暴発すれば一瞬で人生がおわる爆弾みたいなものだが、そこは目を瞑った。というか逸らした。

「おっはー! 俺、森本祐輔! ヨロシクね!」

「お、おっはー…? おぉ! オッハー! 私、来水美樹! ヨロシクお願いします!」

とりあえず友好的な態度を示すため、一昔前の挨拶で中にいる美樹に相対する祐輔。
中で一人座っていた美樹は一瞬ぽけーっとしていたが、自分も知っている挨拶に笑顔で返す。
これで第一印象はバッチリだと考えている祐輔は未だに前回のテンションが抜けきっていないようだ。

『美樹ちゃん、お知り合いですか?』

「へっ? あれ、この部屋にいるの君一人だよね? けど何処かから声が…」

内心これが通じてほっとしている祐輔。
そんな二人しかいないはずの部屋に第三者の女の透き通った声が響く。
その声にわざとらしく祐輔はびっくりした態度で驚きを顕にした。どうやら知らないフリを決め込むつもりらしい。

「んーん、知らない人だよ。けどどうして私達の世界の流行り言葉知ってるんだろ?」

『! 美樹ちゃん、ひょっとすると同じ境遇の人かもしれませんよ』

「あのー…どう考えても刀から声が聞こえるのは俺の気のせいですよね? ね?」

ヒソヒソと祐輔を無視してぽつんと座布団の上に置かれている刀と話す美樹。
この子天然か? と祐輔はちょっぴり苦手意識を持ちつつも話を自分の意図した流れに戻すため、強引に話しかける。
するとなんと美樹ではなく第三者の声が祐輔の質問に答えたのだった。

『すみません、私も名乗るべきですね。
ユウスケと言いましたか? 貴方の目の前にある刀、それが私です。名前は日光と言います』

「本当にさっきの声、刀だったんですね! しかも日光って聞いた事ありますよ、俺!」

大げさに身振り手振りをして驚く祐輔。
しかしその内心では いよっしゃーーー!! とガッツポーズをしていた。

聖刀日光。
この世に二振りしかない魔人殺しの剣の一振り。
ランスの持つ魔剣カオスと対を為す刀である。



「――――――と、いうわけで。俺も異世界人というわけ」

「へぇ…僕たち以外にもこっちの世界に連れてこられた人がいたんですね」

「ああ、敬語はいらないよ? その代わりこっちも好きに呼ばせてもらうし。
まぁ俺の場合は気がついたらこっちにいたんだけどね。帰り方もさっぱりわからない。
君達は連れてこられたと。それは大変だったね」

その後ヒラミレモンを手に下げた健太郎を交えてお互いの境遇を話しあう魔王カップルと祐輔。
しかしその話はお互いに真実をぼかした話し合いとなってしまう。
美樹が魔王であると健太郎達も言うわけにはいかないし、祐輔にしてもゲームで知ってますwww とは言えない。

しかし祐輔は原作知識という名前のイカサマの使い手。
健太郎達の話の断片から美樹達の現在の状況をなんとか聞き出そうとする。

「それにしても君達は同年代というわりに美樹ちゃんは中学生みたいだけど?」

「えーと、それは…私、よく童顔って言われちゃうんですよ! ね、健太郎君!」

「そ、そそそ、そうなんですよ! 発育も遅くて、ハハハ! ごめん美樹ちゃん痛いですごめんなさい」

健太郎のフォローにむっとした顔で美樹が健太郎の脚をぎゅーっと抓った。
そんな二人の様子を微笑ましいと思いつつ、ここら辺かと祐輔は追求の手を緩める。
下手につついて二人が毛利から出られては目も当てられない。

「まぁこんな状況だし、ストレスからホルモンバランスが崩れても仕方ないか。
あ、ひょっとしてあの酸っぱくて食べられるような物じゃないヒラミレモンを食べるのもそのせいなのかな?
だったらいくらでも言ってくれよな。俺、ヒラミレモン生えてる場所も知ってるし」

「え、そ、そうなんですか?」

「本当ですか!? よかったね、美樹ちゃん!」

そしてさり気無く健太郎達が必需品としているヒラミレモンの情報を流す。
ヒラミレモンには魔王化を抑える力があるため、魔王となるのを食い止めようとする健太郎達にとっては重要な品なのだ。
そのためヒラミレモンが安定して手に入ると聞いた健太郎と美樹の喜びようはなかった。

「しかしあの聖刀日光をこの目で見られるとは感激だな。 日光さんでいいですか?」

『ええ、構いませんよ。森本殿』

やったやった! と手を繋いで喜んでいる二人から祐輔は日光に話の水を向ける。
祐輔の本命は今話しかけている日光だ。この遺憾ともしがたい現状を打破するため、どうしても彼女の協力を取り付けたい。
実質彼女が魔王カップルの方針を握っているという事を祐輔は今までの会話から察していた。そしてそれは間違いではない。

「何か入用でしたら何でも言って下さい。
打粉・拭い紙・丁子油・油塗紙、刀の手入れの道具でも何でも揃えますんで」

『そ、それは有り難い申し出ですが…待遇が良すぎます。どうしてこのように良くして頂けるのですか?』

祐輔の手入れ宣言にグラっときたようだが、日光はあまりに条件が良すぎると不信がる。
初対面の人間にも関わらず健太郎と美樹は祐輔に同郷の人間というだけで気を許しすぎている。
これは何か裏があるのではないかと日光が疑問に思っても仕方ない。

「いや、ハハハ…俺もちょっと前に日光さんの話を小耳に挟んだんですよ。
以前ザビエルが復活した時に日光さんと天志教の皆さんが協力して封印したと。
ですから今回もザビエルを倒してくれるんじゃないかと期待しているんです」

『今回も…? まさか…』

「そのまさかです。だから日光さんがいれば大丈夫かなと。いざという時はお願いしてもいいんですかね?」

「ま、魔人? 魔人がここにいるんですか?」

「うーん…どっちの陣営の人なんだろ…」

客人である健太郎達にまで魔人復活が伝わっていなくともおかしくはない。
日光は刀であるために表情は伺えないが、動揺している雰囲気が祐輔にまで伝わってくる。
そんな日光とは違いわかりやすい位に動揺している健太郎と美樹に祐輔は三つ指をついて頭を下げた。

「どうかこのJAPANをすくってください。健太郎君、美樹ちゃん、日光さん。
聖刀日光と言えば唯一魔人を倒せる刀だと聞いています。
俺はこの世界の住人ではないですが、ここにいるのはいい人ばかりなんです!!」

がっと勢い良く畳に額を擦りつける。
健太郎達のような純真な人間には下手に探りを入れるよりも真っ向からお願いしたほうがいい。
そう判断した祐輔は真正面から土下座をして頼み込んだ。

「そ、そんな頭をあげてください。僕たちに出来る限りの事はしますから。ね、美樹ちゃん」

「そうですよ。健太郎君は強いですから、その魔人も絶対倒してくれます!」

無論こういったやり方をすれば断れる二人でない。
あまり人から土下座され慣れていない(慣れていてもいやだが)、二人はオロオロとする。
日光はそんなに安請け合いをすべきではないと思ったが、日光が口を挟む前に祐輔はガバッと頭をあげる。

『ちょ、健太郎君! 迂闊な――』

「そうか! ありがとう! 健太郎君が日光さんの使い手なんだな。
魔人に対抗する手段が出来たって城の皆に伝えてくる!! 本当にありがとう!」

『――迂闊な、発言は…』

日光が全てを口にする前に祐輔は言質とった! と言わんばかりに健太郎達と握手をして部屋を退室する。
それは瞬時の早業で、健太郎と美樹は手を握られてそのまま祐輔を見送るしかできなかった。
ポカーンとしている健太郎と美樹を他所に日光は刀なのに大きくため息をつく。

『はぁ…健太郎君、美樹ちゃん。
これでしばらくは毛利家でお世話になる事になりましたよ』

その選択事態は決して悪い選択ではない。
この毛利の城にいればお金の心配もなく、住む場所にも困らない。
しかしここで問題となるのはそれが選んだ結果ではなく、意図的に選ばされた結果であるという事だ。

「でも日光さん、ヒラミレモンが手に入るんだよ?」

「そうだよね、健太郎君。手持ちのヒラミレモンも少なくなってきてるし」

『それもそうですが』

だが祐輔の言葉を信じるなら、必需品であるヒラミレモンが安定して供給できる。
これは彼等の旅の目的の一つであるヒラミレモンを探すという目的の一つを達成できていた。

ヒラミレモンとは柑橘類なのだが、あまりに酸っぱすぎるため食用として流通していないのである。
そのためヒラミレモンを必要とするのは物好きか絶妙な配分で料理に転用できる者のみ。
毛利にヒラミレモンがあったのはたまたま きくが料理のスパイスに使おうと思って確保していたからだった。

『そう、ですね…確かに、悪い話ではありません』

「それに森本さんも良い人そうだったし、同じ世界の人がいるとは思わなかったよ」

「あぅ…けど、森本さん、多分異界の門を通ってきたんだよね。
けど私達があの門を壊しちゃったって聞いたら、絶対怒るよね…」

「美樹ちゃん……」

実際祐輔は二人が想像している方法とは別口で異世界に来たのだが、それを二人は知るはずもない。
実はこの二人、既に自分の世界に戻る事には成功している。
しかし自分たちの世界で美樹が魔王化してしまいそうになったため、焦ってこの世界に戻ってきた過去があるのだ。

その結果異界の門は壊れて動かなくなってしまう。
その事に思い至った健太郎と美樹はどうやって祐輔に真実を話せばいいのかと沈痛な気持ちになった。
祐輔に現実の世界へ帰る気が全くないため、背負う必要がない罪悪感。
それを背負う健太郎と美樹の二人は間違いなく良い人間であった。

『そう、ですね…話すにしても、話さないにしてもタイミングが重要だと思います』

日光はそんな二人を慰めつつも、祐輔に関して少し警戒をしていた。

(森本祐輔という人間、悪い人間ではなさそうですが…決してただ良い人間というわけでもなさそうですね)

実に巧妙に逃げ場を無くし、選択肢を狭めていくやり方。
日光は祐輔の奥底にある打算的な部分に鋭く気付いていた。
本人にもし自覚がないのなら大した物だと日光は率直に思う。

祐輔と健太郎達との会話において、チラホラと自分たちをこの城に縛りつけようとしていた節があった。
聖刀日光が魔人に対抗する唯二つの武器である以上逗留を促すのはわかるが、その縛りつけようとするための餌があまりにもピンポイント過ぎる。

(少し、気にしても損はないでしょう)

結局はそう結論づけて、日光はずーんと沈んでいる二人を元気付けるため城を散歩でもしようと提案する。
これから暫く世話になると思われる城。何処に何処があるかぐらい把握していても損はない。



ひとまずなんとかなりそうか。
棚からぼた餅を落とすわけにはいかない交渉で、なんとかぼた餅をキャッチする事に成功した。
もうちょっと日光さんに出張られたらやばかったもしれないが、終わりよければ全て良し。

これで一方的に攻め込まれるという最悪の危機は回避できる。
今警戒しなければいけないのは原作のようにザビエル単体が城に忍び込み、城主を討たれる事。
いかに元就のおっさんが強いとはいえ、致命傷どころか傷一つ負わせられないのなら勝ち目はないのだから。

簡単に例をあげるならポケモ○のゴーストタイプに物理攻撃を延々としかけるようなもの。
しかも相手の攻撃は一発でもうければ死ぬのだからやっていられない。
まぁその心配はさっきの交渉でなんとか回避できたわけなんだが―――

「やべ、俺これからどうすればいいんだろう」

健太郎君達の部屋から抜けだしたのはいいが、これからどうすればいいかわからない。
あの衝撃の宣戦布告から痺れた頭でてる殿に連れられて直接部屋に行って、健太郎達に会いに行った。
そこを抜けだしてきたのだから、自分の部屋の場所などわかるはずがないのである。

いや、まさか部屋用意されてないとかないよね?
それはないと思いつつ、とりあえずてる殿の部屋に戻ろうとして、

「………」

部屋の場所を忘れた事に気付くのだった。
しまった。こんな大きな城、一回迷ったら絶対辿り着けないぞ?
しかも道を聞くにしろ、周りはモヒカンばかりなので尻込みしてしまう。ぶっちゃけ触りたくない。

「まったく、神様もさっきの幸運をこんなとこで帳尻合わせしなくても。
いや、ちょっと待て…さっきの幸運を使い果たしたから、これから不運ばかりだったりして」

HAHA、冗談きついぜと笑い飛ばせない自分が辛い。

「いやいや、まさか。いやいやいや、まさか」

「あっ、ユウちゃん! 探したよ!」

ここで否定しておかないと後に怖い事になりそうなので、一人ブツブツと呟いていた。
傍から見てこんな怪しい人物である自分に話しかけるのはいないと思うのだが、案外そうではないらしい。
俺の名前(?)を呼ぶ声に顔を向けると、ちぬがにぱーっと笑いながらパタパタ廊下を走ってきた。

「こっちこっち、こっちだよ」

「え、ちょ、おま」

そして有無を言わさず俺の手を引っ張って引き摺っていこうとする。
思ったよりも力があるのか、俺の体はズルズルとされるがままにされてしまう。

「俺これからてる殿の部屋に行こうとしてたんだけど」

とりあえず魔人に対抗する手段が見つかった事を報告しないといけない。
毛利家のブレーンの役割を てるが果たしている事は明らかだから、報告するなら彼女だろう。
俺の部屋を聞くついでに報告しておこうと思っていたんだけど。

「それなら丁度いいね☆ 今から行くとこに てるねーたまもいるよ」

あ、それなら問題ないす。
俺は自分から ちぬの後をついていく。
これから何処に行くのかと聞いても ちぬは曖昧に笑うだけで、教えてはくれなかった。



どんちゃんどんちゃん。
擬音語にするのならそんな感じの騒がしい喧騒が ちぬに連れられてきた部屋では満ちていた。
ちぬが連れてきたのは大広間なのだが、そこでは様々な料理が大きな皿に盛られており、酒の空き瓶がそこら辺に転がっている。

「昨日は母ちゃん犯した~ぜ! ―――――――――――!!!!!!!」

【HYAAAAAAAAAAAAA!!! 最高だぜぇぇえええええええええええええ!!!】

何処かで聞いたような悪魔の歌を叫ぶモヒカンがいれば、ヘッドバンキングしているモヒカンもいる。
そこは一種のカオスというか、既に皆が出来上がってしまっていた。

「こ、これは一体…」

頬をひくつかせながら隣にいる ちぬに訊ねる祐輔。
一般的な生活をしてきていた祐輔にとってライブ会場に近い空気は味わった事のない物だった。
隣のちぬはイェ~イ! と可愛らしく右手を挙げてノッていたが、祐輔の質問に笑みで返す。

「これはね、宣戦布告したから景気付けに大宴会してるの!
それにユウちゃんも来たから、いつもより盛大にやってるんだ☆」

「え、宴会…これが…」

「ほら、ユウちゃんはこっちこっち! おとたまが呼んでるよ」

どうみても黒ミサにしか見えない。
そんな感想を抱く祐輔を他所に、ちぬはまた祐輔を引っ張っていく。
放心状態だったので、またもや祐輔は気づいたら上座の毛利一家のところにいたという事態に陥ってしまったのである。

「お、来た来た。まぁここに座れよ」

ちぬが引っ張っていった先では きくが人数分の料理を用意しており、ちぬと祐輔の姿を見るとパンパンと座布団を叩く。
あは♪ と ちぬが嬉しそうに頬を緩まし、祐輔と一緒に用意されていた座布団の上に座った。
そして何故か祐輔の座った位置は元就の隣であり、一番の上座の次の席という異様な位置。
もっとも毛利では礼儀作法があまり浸透していないので、なんとなく偉そうという事しか周りの家臣達も知っていなかった。

「祐ぅぅぅゥ輔えぇ!!」

「…は、はい! 俺がどうかしましたか!?」

元就の地に轟くような叫びにビクっとようやく現実に戻ってきた祐輔。
即座に現状を理解し、どうして一番厄介なところに来てしまったのかと ちぬに恨めしい目をやった。
祐輔からして元就は顔も怖いし、威圧感も凄まじいしで一番毛利家で怖い人物なのだ。
もっとも ちぬは祐輔の視線に気付いて にぱりと笑うのみで全然伝わっていない。

「飲ォぉめぇえ」

「え”!?」

「何がえ!? だ。ほら、さっさと持て」

正面に元就。左側に祐輔、ちぬ。右側にてる、きくの順番に並んでいる。
祐輔の対面に座っていたきくが右手に大相撲の優勝者が飲むような大きな盃を持ち、左手には大きな酒瓶を持って祐輔に近寄る。
そして祐輔の目の前に両手に持っていた酒と盃を置いた。

「固めの盃だ。今日よりお前は毛利の客人なのでな」

「え、あ、う? その、つまり」

「それなりに期待しているという事だ」

ニィッと男らしい笑みを浮かべる てる。
祐輔もここに来てようやく理解したのか、酒瓶を持って元就の盃に酌をするため立ち上がる。
これが毛利なりの歓迎のやり方なのだと理解したのだ。

「あの、片手で失礼します。俺の左手、呪い憑きのせいで動かなくて」

構わないと元就は大きく頷く。
トクトクと酒瓶から透明な液体が元就の手に収まる巨大な盃に注がれる。
祐輔の目の前にある盃も巨大だが、元就の手にある盃は本人の大きさも相まって超巨大である。

「持ぉぉてえぇぇえ」

「はい!」

注ぎ終わったら次は祐輔の番である。
元就本人が注いでくれるのか、元就の隣にある大きな酒樽を無造作に持ち上げた。
祐輔は慌てて酒瓶を畳の上において、てるに手渡された盃を手に取る。

〈ドボドボドボドボ〉

(おおう……)

祐輔の目の前で清酒がなみなみと注がれていく。
鼻にツーンと来るアルコール臭から、軽くアルコール度数20はありそうだなと祐輔は推測する。
これは飲みきれるかと顔を青くしたが、飲まないという選択肢はない。

「祐ゥ輔えぇエ」

「はい、元就様」

互いに酒で満杯になった盃を持つ。

「こォれからぁああああぁあ、ワぁあぁァシノことわぁああ、オやじぃいとぉぉ呼べぇええ」

「親父、ですか」

「そぉおだぁあああ」

そういえば原作でもモヒカン達は元就の事を親父と呼んでいたなと思い出す祐輔。
なるほど、これも毛利流なのかと祐輔はやっと元就を前にして肩の力を抜いた。
今までの場所と違ってどうなる事かと思ったけど、どうにかなりそうだという思いと共に。

「はい、よろしくお願いします! 親父!!」

「良ぃいい、そぉのいきだぁああァ」

カツンと盃を少しだけぶつけ、盃に口を付ける。
元就は豪快に一気に飲み干し、祐輔は徐々に顔を真っ赤にしながら飲んでいく。

「ぷあ…」

なんとか一息に飲み干した祐輔は目をぐるぐると回して畳に前のめりに崩れる。
「ユウちゃん!?」と ちぬが焦って近寄るが、ただ酔いつぶれただけなので心配ないとわかるとそのまま放置する。

「酒の弱いやつだなぁ」

「うむ。ここでやっていくには強くなければな」

「だよねー☆」

「ガハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」

酔いつぶれた祐輔を眺めて笑う毛利一家。
こうして祐輔の毛利家一日目の夜は過ぎていった。



宴もたけなわになったころ、ようやく祐輔は目を覚ました。
祐輔が目を覚ましたのを敏感に察して ちぬが駆け寄ってくる。
色々好奇心旺盛な ちぬにとって、今一番興味を惹かれるのが祐輔なのだ。

「ユウちゃん、おはよー。目、覚めた?」

「…ユウちゃん、か。なるほど、オレの名前だったな。
ふむふむ、そうだ。そうだな。ひっひゃは、そういえばオレの名前だ」

ニタリと笑う祐輔。
どうも少し様子がおかしい祐輔の様子に ちぬが首を傾げる。

「変なユウちゃん、どしたの?」

「いやいや、気にしないでくれ。それでお前の名前は?」

「やだなー、ちぬだよー…あ、そっか! 酔ってるんだね!」

「かもしれん。まだ少し眠いから眠る事にする」

「えー、ユウちゃんの歓迎会も含めてるのに、酔いつぶれてちゃ駄目だよ」

「ひゃっはっひひひ、そう言われてもね。
もう少ししたら起こしてくれ。その内目覚めるよ、オレも」

「そっか。じゃあ、もうちょっとだけ寝てていいよ。
あと少ししたらちぬが起こしてあげるー☆」

「ああ、よろしくな」

そう言って祐輔はまた軽く目を閉じ、意識を手放す。
結局この後 ちぬが祐輔を起こそうとしても、祐輔が目覚める事はなかったそうな。
そしてこの時の会話も覚えていなく、お酒って怖いと思ったそうだ。



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