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No.4285の一覧
[0] 逃亡奮闘記 (戦国ランス)[さくら](2010/02/09 17:04)
[1] 第一話[さくら](2008/10/14 08:51)
[2] 第二話[さくら](2009/12/08 15:47)
[3] 第三話[さくら](2008/10/22 13:09)
[4] 第四話[さくら](2008/10/22 13:12)
[5] 第五話[さくら](2008/10/30 10:08)
[6] 第六話[さくら](2008/11/04 21:19)
[7] 第七話[さくら](2008/11/17 17:09)
[8] 第八話[さくら](2009/03/30 09:35)
[9] 番外編[さくら](2009/04/06 09:11)
[10] 第九話[さくら](2009/09/23 18:11)
[11] 第十話[さくら](2009/09/26 17:07)
[12] 第十一話[さくら](2009/09/26 17:09)
[13] 第十二話[さくら](2009/09/28 17:26)
[14] 第十三話[さくら](2009/10/02 16:43)
[15] 第十四話[さくら](2009/10/05 23:23)
[16] 第十五話[さくら](2009/10/12 16:30)
[17] 第十六話[さくら](2009/10/13 17:55)
[18] 第十七話[さくら](2009/10/18 16:37)
[19] 第十八話[さくら](2009/10/21 21:01)
[20] 第十九話[さくら](2009/10/25 17:12)
[21] 第二十話[さくら](2009/11/01 00:57)
[22] 第二十一話[さくら](2009/11/08 07:52)
[23] 番外編2[さくら](2009/11/08 07:52)
[24] 第二十二話[さくら](2010/12/27 00:37)
[25] 第二十三話[さくら](2009/11/24 18:28)
[26] 第二十四話[さくら](2009/12/05 18:28)
[28] 第二十五話【改訂版】[さくら](2009/12/08 22:42)
[29] 第二十六話[さくら](2009/12/15 16:04)
[30] 第二十七話[さくら](2009/12/23 16:14)
[31] 最終話[さくら](2009/12/29 13:34)
[32] 第二部 プロローグ[さくら](2010/02/03 16:51)
[33] 第一話[さくら](2010/01/31 22:08)
[34] 第二話[さくら](2010/02/09 17:11)
[35] 第三話[さくら](2010/02/09 17:02)
[36] 第四話[さくら](2010/02/19 16:18)
[37] 第五話[さくら](2010/03/09 17:22)
[38] 第六話[さくら](2010/03/14 21:28)
[39] 第七話[さくら](2010/03/15 22:01)
[40] 第八話[さくら](2010/04/20 17:35)
[41] 第九話[さくら](2010/05/02 18:42)
[42] 第十話[さくら](2010/05/02 20:11)
[43] 第十一話【改】[さくら](2010/06/07 17:32)
[44] 第十二話[さくら](2010/06/18 16:08)
[45] 幕間1[さくら](2010/06/20 18:49)
[46] 番外編3[さくら](2010/07/25 15:35)
[47] 第三部 プロローグ[さくら](2010/08/11 16:23)
[49] 第一話【追加補足版】[さくら](2010/08/11 23:13)
[50] 第二話[さくら](2010/08/28 17:45)
[51] 第三話[さくら](2010/08/28 17:44)
[52] 第四話[さくら](2010/10/05 16:56)
[53] 第五話[さくら](2010/11/08 16:03)
[54] 第六話[さくら](2010/11/08 15:53)
[55] 第七話[さくら](2010/11/12 17:16)
[56] 番外編4[さくら](2010/12/04 18:51)
[57] 第八話[さくら](2010/12/18 18:26)
[58] 第九話[さくら](2010/12/27 00:35)
[59] ぼくのかんがえた、すごい厨ニ病なゆうすけ[さくら](2010/12/27 00:18)
[60] ぼくのかんがえた、すごい厨ニ病なゆうすけ(ふぁいなる)[さくら](2011/01/05 16:39)
[61] 第十話[さくら](2011/01/05 16:35)
[62] 第十一話[さくら](2011/05/12 18:09)
[63] 第十二話[さくら](2011/04/28 17:23)
[64] 第十三話[さくら](2011/04/28 17:24)
[65] 第十四話[さくら](2011/05/13 09:17)
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[4285] 幕間1
Name: さくら◆c075b749 ID:78a263e8 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/20 18:49
ばんがいへん!

■ その一: 祐輔さん、実は○○オンチ

時は少し遡って。
時間軸としては香を助け出し、ランスから逃げ出した頃。
見事祐輔はランスから逃げ出したのだが―――――

「…ここは誰、私はどこ?」

見事に道に迷っていた。
どれくらい道に迷ったかというと、現在位置どころか方向すらわからない。
本当にどうしようもない。お手上げ状態というやつである。

確か以前もこんな事があったよな…とぼやきながら祐輔はぶらぶらと歩き出した。
そう、足利領から太郎と命からがら逃げ出した時である。
あの時も無我夢中で逃げ出したために完全に迷子状態になったのであった。

理由はわかっている。
それは何故か。少し考えれば。いや、考えずとも答えは出る。
祐輔は――――方向オンチだったのです。

「今日中に町に着きたいな~、できれば織田領の」

香が信長を攻めると決めた以上、魔人勢との決戦は必然である。
ならば織田の領内にいれば兵の招集など様々な方法で決戦の開始をしることが出来る。
そう思ってがさごそと歩いていたのだが…

――30分後――

「う~ん、中々つかないなぁ…」

――1時間後――

「…もう、ゴールしてもいいよね」

ぽっきりと祐輔の心の芯は半ばからへし折られてしまっていた。
早いと思うかも知れないが、祐輔は山の中で迷子、もとい遭難中だったのである。
少し慣れてきたとはいえ現代人。やる気が挫けるのは仕方ないのかもしれない。

「諦めたらそこで試合終了ですよって言うけど、大抵は諦めなくても終わりだよね…いたっ!?」

なんともバチあたりな事をブツブツと言いながら俯いて歩いていた祐輔。
すると突然頭にコツンと硬質な何かがぶつかった感触が伝わり、思わず声をあげてしまう。
アイタタタと頭を摩りながらゆっくりと顔をあげるとそこには―――

「………わーお」

――円盤の、未知の物質でできているっぽい何かがあった。

「え、いや、え? いやいや、ちょっと、ねぇ…」

これはあれでしょ? もうあれだよね? UF○的な。
内心で全然伏字になっていない事を審議するも、考えられるのはそれ以外考えられない。
祐輔はほー‥っと感嘆して手の甲でコンコンと未知の物質でできてるっぽい何かの底部分を叩いた。

「ほぇー…これが宇宙船か。これが宇宙を縦横無尽に飛ぶのか。凄いな」

「こ、これが宇宙船ってどうしてわかったんですか!!?」

え、と祐輔は投げかけられた驚愕の声に未知の物質で出来てるっぽい、もとい宇宙船を叩く手を止める。
そこには祐輔の知識の中にある宇宙服そのまんまを着込んだ少女が興奮冷めやらない様子で外窓から首を出してこちらを覗き込んでいた。



『少しモチツケ。話はそれからだ』
『了承』

実際は違うが、そんな感じで少女を落ち着かせる祐輔。
ひぃ、ふぅ、と宇宙船の壁を一瞬でスライドさせて祐輔に声をかけた少女はあわあわと焦っていたものの、祐輔の言葉に落ち着きを取り戻す。
二人の邂逅から少し時間がたち、ようやく二人は自己紹介となった。

「俺は祐輔。どうして宇宙船を知っているかも教えるけど、まず君の名前を聞いてもいいか?」

「そ、そ、そうでしたね…カ・グヤと言います」

やっぱりそうかと祐輔は確信を深める。
この時代に似つかわしくない宇宙船、宇宙服、未来的なデザイン。
今はちょっと思い出すのが危うい原作知識から彼女に対する記述を掘り起こした。

祐輔の目の前でスーハーと息を整えるこの少女。
実は見た目そのまんまの宇宙人で、高度文明からルドラサウム大陸に派遣された偵察員なのである。
本来は侵略戦争をしかけるための偵察員なのだが、機械が壊れてしまったために立ち往生しているのだ。

「初めまして、カ・グヤさん。
それでどうして俺が宇宙船を知っているかというと…」

「そ、そのですね、祐輔さんも私と同じで?」

「いや、それは違う。俺はここの住人なんだけど…色々複雑なんだよね。全部聞く? 結構長い話になるけど」

「は、はい! 是非!」

原作では彼女とランスの心温まる(?)エピソードによって彼女は上司に侵略をやめるよう要請する事で事無きを得るのだが。
ここで自分の真実を話してもどうしようもないし、彼女に怪しまれずに丁重にお帰り願ったほうがいい。
祐輔はそう判断して彼女に嘘と真実を織り交ぜて自分の境遇を言って聞かせた。

「突拍子のない話だけど、ここには未来と過去を繋ぐ門があってね。
それが滅多にないけど不定期かつランダムに現れて、過去と未来を繋げてしまうんだ。
俺は科学が発達した未来からこの時代にきたから、宇宙船について知ってるってわけさ」

「未来と過去をですか? それは凄いですね…」

フンフンと興味深そうに祐輔の言葉に頷くカ・グヤ。
彼女のサジ加減一つでこの大陸が消える可能性がある事を知っている祐輔は彼女にある事を優しく問いかけた。
祐輔は原作知識から彼女が何に困っているかわかっているのだ。

「それで、この宇宙船何かトラブルでも起こっているの?
なんか宇宙船の底に雑草とか生えてきてるし…相当長い間飛んでないみたいだけど」

「あぅ、それはですね…」

言いづらそうにヘルメット越しの表情を暗くするカ・グヤ。
それでも背に腹は変えられないと思ったのか、ここで祐輔を逃がしてはいつ解決するかわからないと決意したのか。
そのどちらかはわからないが、カ・グヤは現在直面している問題について吐露した。

端的に言えば、カ・グヤが乗ってきた宇宙船は不慮の事故で壊れてしまったのである。
ここJAPANに不時着したのはいいものの、彼女だけではどうしようもない。
涙混じりで現在の窮状を訴えるカ・グヤは涙声で祐輔に懇願する。

「あの、ですね…宇宙船を修復するのにどうしても必要な部品がいるんです。
でも親切な現地の人にいくら伝えてもわかっていただけなくて……」

「ああ、なるほど。その先は言わなくてもいいよ。俺に任せろ」

ドンと胸を軽く叩く祐輔にぱぁっと顔を輝かせるカ・グヤ。
これで印象はばっちりだと祐輔も笑顔の裏で黒い思考を働かせる。
カ・グヤの様子を見る限り大陸消滅の危機は八割去ったなと。

ここで脳裏にちらっと魔人も消し炭にできる凄い武器とか貰えないだろうかと浮かんだが、却下する。
下手に疑いをもたれたらその時点でアウトなのだから。

「それで必要な物は? 町の方向さえ教えてもらえれば調達してくるよ」

「はい、えぇっと、必要な物は…【セロハンテープ】【コイル】【鉄パイプ】です」

そりゃないわ。この時代にコイルとかいわれても、困る。
本当にそんな物この時代にあるのかと首を捻りつつ祐輔は了解と告げて宇宙船を出た。
というかセロハンテープで補強とかまずくないかと祐輔は思うのだが、それは口にしなかった。

―――2時間後―――

「まさか本当にあるとは…」

人間探せばなんとかなるものである。
運良くその町には工場があり、祐輔が特徴を伝えるといとも簡単に作ってくれたのだ。
日本もそうだが、JAPANの職人の技術も相当に高いらしい。

「あ、ありがとうございますぅ!! これで星にかえれますぅ!!」

ハイと二時間後にいとも簡単に三つの品を渡されたカ・グヤは鼻水と涙を盛大に流して感動していた。
ブンブンと宇宙服越しに祐輔の手を握って上下に振り、感謝を表現する。
祐輔はハハハと笑いながら、これだけ恩を売ったんだから侵略してくんなよと内心で呟いた。

自分の感謝を出し尽くしたのかカ・グヤは感涙したまま祐輔の手を離す。
うん?と祐輔が掌の中に何かが残っている事に気がついた。

「あの、これ、お礼です!」

「お礼…?」

「ハイ!!」

掌の中にあったのは小さな瓶。

「その中には超強力な睡眠薬が入っているんです。
本当は凄い傷薬とかを渡せたらいいんですけど…私の裁量で渡せるのは、それくらいなんです。
…本当にすみません」

「ああっ、いやいや落ち込まないで! 別に見返りが欲しくてやったわけじゃないから!」

言いながら申し訳ないと思ったのか、ずーんと落ち込むカ・グヤ。
そんなカ・グヤに気にしなくていいと祐輔はブンブンと手を振った。

「すいません…で、でもでも、その睡眠薬すっごいんです!
全長90mの生命体でも五秒で眠りにつく優れものなんですよ!」

「そ、そうなんだ…ハハ(ゴジラレベルを一瞬って…使い道、なくね?)」

人、それを致死量と言う。
無邪気に効能を披露する少女をよそに祐輔の乾いた笑いが響く。
もらったけど使い道ないな、これ。いや、薄めればいけるか? などと考えるも、あまり使いたくない貰い物だった。

その後何度も祐輔にお礼を言いながらカ・グヤはJAPANを飛び出し宇宙へと旅だった。
こうしてランスの知らない所で原作のイベントを一つ無事に処理した祐輔であったが。

「っあ!! カ・グヤの宇宙船って治癒ビームとかついてなかったっけ!?」

現地の住人とカ・グヤが仲良くなる原因となった要因。
彼女は現地の住人の怪我を直す代わりに食料を手に入れていたのである。
それにカ・グヤが飛びたってから思い出した祐輔は悲鳴をあげた。

「呪い憑きでどうしようもないこのEDもひょっとすれば…!!
チクショーーー!!! なんでもうちょっと早く思い出さなかったんだ、俺!!」

そのなんとも切実な叫びは山中に響き渡ったという。

■その二: 香ちゃんと太郎くん

織田の命運をかけた戦い。
魔人を逃がしてしまうという結果に終わってしまうものの、それも対外的にはあまり痛手にはならなかった。
それは天志教の働きが大きいと言ってもいいだろう。

正直な話、性眼は己達だけでこの問題を解決するつもりだったのだ。
大陸から来た異人・ランスを信用できないと判断し、月餅の法に必要な戦力を温存。
織田の精鋭達は魔人の戦力を少しでも削ってくれれば…と。

しかし結果から見れば性眼達は何もしていない。
万全の体制を整えていたといくら言い繕ったとしても、魔人を追いつめたのは織田の精鋭達である。
歴史にもしもはないが、もしも性眼達が織田を捨駒としてではなく協力者として扱っていたのならば、魔人は既にいなかったかもしれないのだ。

各地の高僧を集めて使徒を押さえ込む協力はした。
しかしそれがどうしたというのだ。

性眼は己を恥じると同時に悔いた。
何故自分はランスを異人であるというだけで信用に値せずと協力しなかったのか。
だがそれを今更悔いたところでどうしようもない。

ならば出来る限りの事をして織田に報いなければならない。
性眼は各地に帰る高僧達に自筆の書を持たせ、各地の大名に織田と魔人との繋がりをきっぱりと否定し、魔人に対する防備を呼びかけた。
書面は魔人が信長の姿をしている事に最大限考慮した内容だった事は言うまでもない。

その手紙の中に瓢箪を持つ大名に対しては真実を伝えてある。
性眼は瓢箪を一箇所に集めるよりも、各地の強力な大名に守ってもらったほうが得策であると判断したのだ。
もちろんそんな物は持てないという大名に対しては回収するとも伝えてある。

それはともかくとして、対外的な織田の評価はフラットのまま。
魔人許すまじと他国から侵略される心配はなくなったのだった。
激戦の疵痕を癒すように尾張の地はしばしの平和を謳っていた…………



保存食、代えの草鞋、長い旅に耐えうる路銀。
急拵えの旅の仕度を大急ぎで太郎は整えていた。

太郎はある任務を主君である香より受けている。
その命令は端的に言うなら実にシンプルかつ明瞭。

【森本祐輔を客将として抱え込むために捜索してこい】

説明に三行も必要ない。
僅か一行で太郎が旅支度を整える理由が説明できてしまうのだ。
それでは何故このような命を太郎が受け賜ったかというと、先の戦の後にあった。

二度も祐輔に命を救われる事になった香。
彼女は当然祐輔が戦後に織田の陣地に来てくれると思っていたのである。
光秀の最後を看取った後、気丈にも織田の全軍の総指揮を五十六に委任し、本大将としてドンと構えていた。

天志教の後押しもあってか戦線を無事維持する事に成功。
五十六の絶妙な指揮によって被害も最小限に減らす事も出来た。
そして勝家達精鋭部隊が織田の陣地に帰還する事によって合戦は織田・天志教の勝利で終結する。

さて、ここで問題である。
果たして祐輔は合戦の後、織田の陣地に立ち寄ったのか?
答えは否。祐輔はどこへともなくふらりと消えてしまったのである。

待てども待てども祐輔が来る気配はない。
香は戦後処理があらかた終わった後も残ろうとするが、家臣達の強い説得もあって尾張に帰還せざるをえなかった。
そして後日、あの場で祐輔と面識のある太郎が香に呼び出されたのである。

そこで太郎に対して命令が下された。

『森本殿を捜し出して来て下さい。
当家は彼を客将として…いずれは召抱えたいと思っています』

それは祐輔を織田の武将に、いずれは正式に家臣としたいという思わぬ申し出だった。
それ以前に祐輔を捜し出さなければならないが、それよりも太郎はそこに驚きを顕にする。
何故なら香も祐輔が呪い憑きであるという事を知っている一人であるからだ。

呪い憑きを武将として正式に登用する。
それは織田という名家の名誉に著しい傷をつける事と同意。
それを承知で言っているのですかと訊ねたところ。

『当家は3Gに家老として頑張ってもらっています。
当時は偏見と疑問の声があったと聞き及んでいますが、それでも今のようにいずれは認められるでしょう。
それに森本殿が武将として闘うのを嫌ったとしたら、彼に織田に居る限りの平穏を約束します。

私は彼に御礼がしたいのです。
命を二度も助けて頂いたのに恩に報いないでいれば、兄上や義姉上に叱られてしまいます』

『おお、香様…!』
『本当は登用に反対せねばならぬというのに…!』
『なんと凛々しく、ご立派に成長なされた…!』

『あの時、私は驚きのあまり森本殿に声をかけられなかった。
彼がその事を許さないと叫弾し、責められるというのなら、その責めを甘んじて受けます。
それでも私は…彼に御礼を言いたいんです。助けて下さって本当にありがとうございますって』

『『『爺は、じぃはぁぁあああ!! オーーイオイオイ!!』』』(感涙)

私、約束を破られて怒っていますと不満そうな香。
魔人との戦いの折、香は祐輔に自分を恩知らずのままにしないでくれと伝えている。
その上恩を上乗せしておいてどこに消えたんだ、と怒っていらっしゃるのである。

そんな香の隣で香の成長を見せつけられて涙腺が崩壊する3G。
彼と香の様子を見て、太郎はこの話が事実であるという事に確信をもてた。

これは太郎にとって思いにもよらぬ幸運である。
香に呼び出されるまで太郎はずっと二つの道について悩んでいた。

即ち山本家復興を五十六に任せ、祐輔について行くか。
織田家で確固たる立場を築き、山本家を復興する事に心血を注ぐか。
そのどちらかを選ばざるをえなかったのだが、その両方を選ぶという選択肢が香より与えられたのである。

『その任務、是非わたくしめに! 必ずや祐輔さん〈ボンクラ〉を連れてきてご覧にいれます!!』

『そ、そうですか…ありがとうございます(今凄い失礼な言葉を聞いたような?)』

祐輔の事について織田の中で一番知っているのは自分であるという自負が太郎にはある。
そして太郎には祐輔の行き先に目星がついている。
太郎の快活な返事に香はちょっぴり困惑しつつも、よろしくお願いしますと正式に命令を下したのであった。

『それと余計な事かもしれませんが、叫弾される事は刹那の可能性よりもありえません』

『え…』

『あのヘタレ…失礼しました、森本殿に女の子を悪く言う度胸はありませんから』

『まぁ』

太郎の発言に祐輔の人となりを思い出してクスクスと笑う香。
そういえば優しい方でしたね、と。ザビエルから命からがら救出された時、祐輔から受けた配慮を香は忘れていない。
香の微笑を思い出し、太郎は回想をここまでと打ち切った。

旅立ちの準備が出来たのだ。
よっと背中に荷物を背負い、腰に下げる脇差と日本刀を確かめる。
準備は万全。後は探索の旅に出ればいいだけだ。

「太郎、その、なんだ…やはり姉さんがその任務を受けるべきだと思うのだが。
私でも森本殿の顔はわかる。太郎にはこの尾張にいて欲しい」

身支度を整えた太郎に姉である五十六がおずおずと任務を交代すると言ってきた。
捜索の旅は危険がつきまとう。太郎を子供扱いしていると思いつつも、心配でしょうがないのである。
そんな戸惑いがちな五十六の申し出に太郎はきっぱりと断りを入れた。

「なにを言っているのです、姉上。
これから織田は大事な時期、姉上も武将なのですから。しっかり働いてください」

「うっ…し、しかし…」

「僕の地位は今のところ足軽大将です。それにそんな事を抜きにしても、この任務を代わるつもりはありません」

祐輔を見つけ出し、織田に連れてくるのは自分の役割。
祐輔に断られるならそれもよし。それを判断するのは祐輔だ。善意を押し付ける事はしたくない。
しかし―――それでも祐輔と織田で暮らしたいと思うのは傲慢だろうか。

「行ってきます!!」

この日、一人の少年が一つの決意と共に織田を出発した。
結果はどうなるかわからない。しかし彼の心に不安はあっても、不信はなかった。
何故なら祐輔がどのような選択をしても、ああ彼らしいで納得してしまう自分がいたから。

■その三: すくーる水着と火縄銃

火縄銃――。
大陸のチューリップの劣化量産型である。
劣化というものの火縄銃だけにしかない利点もあり一概には言えないが、おおむねそういった認識でよい。

火縄銃の開発、生産をしている種子島家。
ここでは日進月歩で技術の改良が行われており、失敗と成功を繰り返している。
失敗も多いが、着実に火縄銃の性能は上がっていた。

〈ズダーーン………ズダーーーン……〉

「今日も、か…」

蒸せかえるような熱気にダラダラと汗を流しながら鉄を鍛える種子島重彦。
彼は修練場(鉄砲の試射などをする場所)から聞こえてきた発砲音に作業の手を一時止める。
首にかけた手ぬぐいで汗を拭き取りながら、隣で作業をしている側近に声をかけた。

「なぁ…柚美があそこで撃つようになって、どれくらいだ?」

「そうですね…大体ですが、自分がここで仕事をしている時は毎日発砲音が聞こえやすね」

ぬぅと重彦は側近の言葉に眉を寄せる。
つい先日休息日を取るように言いつけたというのに、あいつ全然聞いてなかったな。
はぁぁと深くため息をつきながら、ここ最近の柚美の行動に頭を悩ませた。

ここ最近柚美は毎日のように――いや、毎日、休憩もとらずに鉄砲の訓練に精を出している。
しかしそれは訓練と言えるような物でなく、過酷な訓練を身を削るようにしているのだ。

「んっ…たく。あいつを残して先に逝きやがってからに。俺は娘の育て方なんてわからねぇぞ」

柚美が無茶とも言える訓練をしだした時期。
それは病弱で病に伏せていた柚美の父親がついに他界してしまったすぐ後の事であった。

敬愛する父親が死に、柚美は変わった。
外見は以前と変わらない。しかし内面が重彦以外には気付けないほどだが、確かに変わったのだ。

箒星――柚美の父親が彼女に残した形見。
現時点で最高傑作である火縄銃であるそれを片手に柚美は訓練に没頭するようになった。
まるで、自分にはこれしかないと言わんばかりに。

前々から柚美は己の殻の中に篭り、気の許した相手以外とは関わらない気風があった。
しかしそれが父親の死後以来顕著であり、重彦以外とは言葉を交わす事はなくなってしまった。

「どうしたもんか…」

今はまだいい。
柚美は元々無口な娘であり、周囲もそれほど気にしていない。
だが今の状態が今後も続くようであれば、種子島家に柚美の居場所はなくなってしまうだろう。

「あんの馬鹿め。こういう時こそてめぇの出番だろうに」

「はい?」

「ああいや、何もねぇ。気にすんな」

少し苛々してしまい、側近が何事かと重彦に伺いをたてる。
それに重彦は何もないと返して、作業を再開した。

重彦の言う【あの馬鹿】とは言うまでもなく祐輔の事である。
種子島家に来て僅かな時間で柚美と打ち解け(可愛いモノ好きだという弱みを握られただけ)、休みの日には共に外出する仲になった。
重彦の記憶の中において、今の柚美が気を許しそうなのは自分以外祐輔しか思いつかない。

〈――キン!!〉

(出奔、ねぇ…本当のとこはどうなのやら)

赤く煌々と輝く鉄を鍛えながら、重彦は浅井朝倉の使者を思い出した。
重彦は鉄砲の重要なアドバイザーとして祐輔の派遣要請を友好国である浅井朝倉に要請したのである。
しかし帰ってきたのは【その者は既に自国にはいない】という、一点張りの答え。

重彦はまず間違いなくそれはあり得ないと判断した。
祐輔は同盟を結ぶ条件としたほどに両国にとって重要な人物。それは浅井朝倉も理解しているはずで、祐輔を手放すはずがない。
そしてその考えを下した後に推測されるのは、

(死んでねぇといいんだが、な!!!)

思いっきり槌を振り落とす重彦。
上記の理由から浅井朝倉が祐輔を逃がすとは思えない。

ならばもっともありそうなのが、浅井朝倉にとって同盟以上に祐輔が厄介な事を知ったか。それとも祐輔自身が厄介な存在になったかのどちらかである。
そしてその両方の結論として帰着するのが祐輔を秘密裏に暗殺する事。

(どっちにしろ、あいつをこのままここにしておいても仕方ねぇ。
頭を冷やさせるのと、休息をとらせるために他国へ鉄砲売り込ませに行かせるか)

このままでは柚美は間違いなく潰れる。
重彦は体の良い方便で柚美に休養を与えるつもりだ。
鉄砲の機密は柚美も充分に知っているため、一歩国の外に出れば鉄砲の訓練も容易には出来ない。

やれやれ、なんて切り出そうか。
柚美に伝える事を考えて憂鬱になりそうな気持ちを鉄にぶつける重彦だった。

■その四: ざんげ姫

「雪姫様、どうぞ休息をお取りになられてください」
「そうです。これ以上のお勤めは本当に体をお壊しになられます」
「あとの事はどうか我々に任せて」

「いえ…よいのです」

願い縋る臣下の忠言を一言で切り伏せ、浅井朝倉の姫・雪は今日も復興現場へと脚を運ぶ。

織田との終戦後、浅井朝倉は震災復興金という莫大なGOLDを織田より受け取っている。
これによって飢えで人が死ぬという心配はなくなったものの、それでも浅井朝倉の国は荒れていた。
人が住む家がない、水が出る井戸が壊れている、川の堤防が決壊してしまっているなどなど…まだまだ復興には時間がかかるのは誰の目にも明らかである。

そんな復興の現場に朝倉雪は必ずいた。
家を再建するのであれば大工達の小間使いとして慌ただしく動き回り、井戸を掘るのであれば自ら掘り上げた土砂を川まで運ぶ。
その土砂は川の堤防を作るための土嚢として利用された。

浅井朝倉において雪を評価する声は二つに別れる。
それは聖女という民衆の評価と、愚姫という評価の二つである。

民衆から見れば雪は聖女と同一視されるほどに神々しく見えた。
自分たちのために玉のような汗を掻き、同じように作業をする。
それはまさしく長い復興の間に差し込んだ一筋の光明であった。

愚姫という評価も、彼女を酷評しているのではない。
一国の姫である彼女が民衆と同じように作業をせずとも、声をかけるだけで充分な効果がある。
雪がすべき仕事ではない。むしろ彼女の体を心配するものが大半であった。

しかしこの二つの評価は正しくはなかった。
あえて言うとするならば、後者の評価がやや正しいと言ったところか。

雪は贖い(あがない)を求めていた。
あの日、発禁堕山から己の罪を告げられて以来、ずっと。
誰からも与えられない贖いをただひたすらに求めて。

何もしていなければ、雪は常に己を苛む声が聞こえた。
それは雪と同じ声で、ずっと囁き続ける。

『お前は恥知らずの愚か者だ』
『大恩ある人間にお前がした仕打ちはいったいなんだ?』

【違うのです、知らなかったのです! 私は、私は…!】

『知らなければ何をしてもいいというのか?』
『あの者は国を救うために左腕を捨て、呪い憑きにまでなったというのに』
『嗚呼、なんという悲劇』

【ぅ、う……あ、ぁぁああ……‥】

『何も言えぬとなれば、涙を見せるか』
『なんと狡賢く、厭らしい娘よ』
『ならば敢えて言わねばならぬだろうな。お前がした大罪を』

【やめ…やめて、くだ…さ……】

『お前は己を捨て、浅井朝倉を救った英雄を餓鬼畜生のように扱い、国を追放した売女だ』

己を苛む声はやまない。
何故ならこれは雪の罪悪感と後悔が作り出した虚像なのだから。
この幻想はいずれ彼女を喰らい尽くすだろう。

己を苛む声は体を動かしている時は聞こえなかった。
浅井朝倉の復興のため、自ら手を汚して作業をしている時は。

今日も雪は復興作業に赴く。
誰からも許されない罪を贖うために。
この罪を許せるのは生死不明の祐輔だけなのだから。

「…‥?」

ふと、雪は雑踏の中に祐輔を見た気がした。

「…本当に、どうしようもない女」

なんと都合の良い事をと自分を責め、雪は頭を振ってその場を去る。
祐輔を突き離し、この国から去らせる原因を作ったのは己なのだから。



「復興は順調みたいだな…よかった」

俺は毛利へと帰る前に浅井朝倉へ立ち寄っていた。
気にはなっていたんだよな。瓦版で復興は順調と書いていたけど、こうして目で見ないとわからないし。
自分が救った…というのはおこがましいかもしれない。だがその一翼を担っていればいいなと思う国は僅かながらだが活気が戻りつつあった。

流石内政チートの義景様と一郎様、あっという間に国を立て直せるだろう。
既に仮設住宅と思われるものもチラホラ見えるし、そのどれもが中々頑丈そうな作りだ。
一体どうなる事かと思ったけど、俺が大好きだった。今でも大好きな国は復興しつつある。

「そろそろ行くか…」

俺はこの国にはいられない。
今この国に、他国から責められるような火種が少しでもあってはいけないのだ。
織田は香殿が知ってるけど…大丈夫だろ。あれだけ恩を売ったし。

雑踏から目を逸らし、立ち去ろうとする。
だがその中に俺が知っている…片思いしていた女性がいたように思い、硬直した。
後ろ姿だけど、あの透き通るような空色の長い髪。

「雪、姫、様…?」

その髪の長い女性はこちらを見ることなく後ろ姿のまま立ち去っていく。
その後姿がどうしようもなく、胸を掻き乱した。

「はは、ありえない、だろ…うん」

よく見れば一般庶民が着るような服を着ているし、肌も泥だらけだし、俺の見間違いに違いない。
雪姫様がこんなところにいるはずない。うん、ないわー。

それに雪姫様だとしても、俺には会わす顔がない。
結局雪姫様に対して誤解を解く事はできなかったし、今の俺は呪い憑きだ。
原作における彼女の呪い憑きに対する反応を考えるに…とてもじゃないけど、怖くて会えない。

怯えた表情でもされてみ? しかもそれが惚れた女。
俺すぐ死ぬ自信あるね。そんなわけで怖くて雪姫様には会えないのだ。
知り合いに合う可能性もあるので、俺は今度こそ浅井朝倉を後にするのだった。



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