<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.42724の一覧
[0] 【習作】アイドルマスター短編集[ふぉるく](2017/06/18 23:22)
[1] 【シンデレラ】あの頃私のクラスメイトには幽霊がいた[ふぉるく](2017/06/18 23:18)
[2] 【シンデレラ】荒木比奈は動かない[ふぉるく](2017/06/18 23:19)
[3] 【ミリオン】七尾百合子の写真集を買った同級生の話[ふぉるく](2017/06/18 23:17)
[4] 【ミリオン】めんどくさい二人[ふぉるく](2017/06/18 23:21)
[5] 【ミリオン】もっと鏡を見て[ふぉるく](2017/06/18 23:20)
[6] 【SideM】勇敢なるキミへ[ふぉるく](2017/06/18 23:18)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[42724] 【シンデレラ】荒木比奈は動かない
Name: ふぉるく◆3d94af8c ID:ffe1bd03 前を表示する / 次を表示する
Date: 2017/06/18 23:19

 荒木比奈は困惑していた。にわかに感じていた違和感がいよいよもって確信的なものとなり、荒木比奈はただひたすら戸惑っていた。

 漫画描きとは因果な人種であって、特にこれが本職ではなく趣味の一環として本を出している同人作家というやつは、殊更に救いようのない連中であると荒木比奈は常々思っている。仕事でもなかろうにどれそれのイベントに出ると決めると自ずから締め切りを抱え込み、理想の自分と現実の己の乖離に打ちのめされながら、純白の原稿を前に己の定めた刻限に追い立てられる苦を味わうのだ。夏休みの宿題を計画的に終わらせられなかった子供が、大人になって自分で決めた締め切りを守れるのかと言えば残念ながらそううまいこと成長してくれることはなく、なぜあと一ページ進めておかなかったのかと前日の自分への呪詛を吐きながら、締め切り当日の朝日を眺めた記憶が、比奈自身にも何度となくあった。

 それでも、そんな苦行のごときサイクルから今時分に至っても結局抜け出せていないのは、やはりその苦しみの果てに何かを作り上げた瞬間のカタルシスを知ってしまっているからだし、細々とながら同人イベントで誰かに自分の作品を手に取ってもらう喜びを知ってしまっているからに他ならなかった。そもそも絵を描くことも物語を考えることも、突き詰めれば好きでやってることであり、さらに付け加えるならば、本業が忙しくなってくるほど、ペンの走りがよくなってくるものなのだった。

 そんなまさに救いようのない同人作家を自認する荒木比奈の本業が何であるかと言えば、絢爛たる芸能界を舞台に歌って踊れる、今も昔も女の子みんなの憧れの的、アイドルであるというのだから、これは世の中巨大質量で宇宙が数回滅んでいたって驚きやしない、と比奈は語る。ともかくも何の巡りあわせか、スカウトマンたる担当プロデューサーに見初められた比奈は、ある時からアイドルを生業とすることになった。日ごろ日陰者として生きてきた比奈にとって、歌も踊りも、化粧して着飾ることさえも未知の体験であったが、やってみるとこれは思いのほかに比奈を夢中にさせていった。

 プロデューサーの口車に乗せられるように華やかな衣装を着こみ、ともに肩を並べる仲間たちと立つステージは、今までになく色鮮やかな景色をもって比奈を迎え入れ、己自身が歓声を浴びる快感に、比奈はすぐさま虜になった。レッスンで慣れない歌やダンスに悲鳴を上げながら、新しいパフォーマンスを身に付けるたびに拳を握り、まるでスポーツ漫画の主人公のような振る舞いに、自分がこんな風になったのはプロデューサーのせいだとクダを巻いた。

 しかしてやはり同人作家というのは因果なもので、アイドル活動が楽しくなればなるほど、創作意欲というやつは無遠慮に顔をのぞかせ、結局は一度は捨てようと思った同人作家としての荒木比奈に、夜ごと舞い戻っていくのであった。

 そうして徐々に忙しくなり始めた本業の合間を縫って参加した同人イベントで、比奈は困惑していた。

 彼女の頒布する同人誌の売れ行きが、思いがけず好調だったからである。





 ◆





 荒木比奈は現場で眼鏡をかけない。
 正直に言えば、俺はそれをひどくもったいないと思っている。





「やっぱりクライマックスにかけて感動するシーンはいくらでもありますけど、クラウンの担い手を選ぶときに、誰も示し合わせたわけでもなくミライちゃんが選ばれるところは何度見ても涙が溢れちゃうんスよ!」
 
「わかる! やっぱあれはミライの成長の物語でもあるんだよ! 一番おっちょこちょいだったミライが誰よりもクラウンにふさわしいって認められる、何より視聴者がそれを認められるって作りが秀逸なんだよなあ!」

「うんうん! チカも、ミライちゃんみたいな魔女っ子になーりたいなー♪ あ、でもレイカちゃんもいいかも♪」

「レイカさんはやめとけ」

「レイカさんはやめとくっス」

 事務所ぐるみで何かと付き合いのある某芸能事務所の番組『マジカル☆クラウン』の特番の一環として持ち込んだ、魔法少女好きで通じる荒木比奈、神谷奈緒、横山千佳の三人をゲストにしてのトークコーナーに成功の手ごたえを感じていた俺は、収録現場でオタク特有のなんちゃらを繰り広げる様子を見ながら、おや、と首を傾げた。名前繋がりで魔法少女の一人の変身シーンをカメラに披露する奈緒と千佳の後ろで、比奈がどこを見るでもなく見ながら、何やら思いつめた表情をしているのが目に入ったからだ。

 現場でそんな表情を見せることについては、ようやく人気の芽が出始めたとはいえまだまだアイドルとしての日の浅い比奈にさほどうるさく言うつもりはないが、それよりもこうして自分の『好き』が絡む仕事でああも上の空な様子を見せること自体が荒木比奈としてはかなり珍しく、さてこれは何事だと気持ちの配分は心配のほうに寄っている。

 純真に魔法少女(あるいは魔女っ子)が好きなことを前面に表している千佳に引き替え、どちらかと言えばその手の趣味をあまり表には出していない比奈や奈緒にこの仕事を振ったことに何か思うところがあったのか、とも考えたが、話を振ったときの様子にはゲストに選ばれたことへの嬉しさがにじみ出ていたし、何ならマジカル☆クラウンを演じる本人たちに会えるという下心もあけすけだった。収録が始まってみれば三人揃って大はしゃぎで、MCのほうが若干引いているさまなのだからこれはおそらく杞憂だろう。そもそも普段から擬態しきれていない比奈や奈緒がそっち側の人間であることは、もはやファンの間では周知の事実だ。であれば、私生活で何かあっただろうか。またぞろ仕事の前に徹夜を決め込んだのかとも考えたが、あの物憂げな様子はそうしたときの独特のテンションとはまた違ったものに思える。

 マジカル☆クラウンで主役を演じたMCの少女に水を向けられ、どれほど自分がマジカル☆クラウンが好きかをまくしたてる比奈を眺めながら、さてどう聞き出したものかなと手元の眼鏡に目を落とした。あれが一過性のものでないのだとしたら、どこかでこちらからつついてやらなければいけないだろうか。

 その後も撮影自体はつつがなく続き、無事必要分の収録を終えて終了となった。当然番組のメインパートはマジカル☆クラウンの宣伝や出演者たちのトークだが、ゲストとして呼ばれた三人も十分視聴者に印象を残せる映像になっただろうと確信できた。それがパフォーマンスやスキルによるものではなく、とかくそのオタク気質によるところなのはアイドルとして一考の余地はあるのかもしれないが、今の時代アイドルはまず知ってもらうことが第一だ。そこからステージに惹きこんでいけるだけの実力は、間違いなく彼女たちに備わっている。

「はー、楽しかったー! 本物のミライちゃんに会えるなんて、チカかんげきー♪」

「ま、まあ確かにこんな機会なかなかないからな! 貴重な体験だったと思うな、うん!」

「顔がにやけきってるぞ、奈緒」

「に、にやけてねーし! はしゃいでもいない!」

 そんな興奮冷めやらぬオタクなアイドル達は、控室に戻って着替えを終えてもまだこの調子である。元気なものだ。ゲストトークでだいぶMCを食ってしまったりした件については先方に頭を下げに行ったりもしたものだが、ウチにも似たようなのがいるから、と快くお許しいただいたので、まあ良しとしたものだろう。

「おっと、そうだ。比奈、眼鏡返すぞ」

「あ、どうもっス。ううう、やっと視界が戻ってきたっス……くぅぅ、アタシも生ミライちゃんたちをもっとはっきり見たかったっスよぉ!」

「外すって決めたの自分だろうに」

「それはそうなんスけど……」

 荒木比奈は現場で眼鏡をかけない。絶対に破ってはいけないルールというほどではないし、そもそも視力が低いので文字を読まなければならない時などはその限りではないが、現場に入る前に眼鏡を俺に預け、アイドルとしてのスイッチを入れるのが半ば習慣となっている。儀式のようなものだ。

「今日くらいはよかったんじゃないのか?」

「いやぁ、やっぱりアタシどうも眼鏡があると表情がだらしなくなっちゃって。ミライちゃんたちにそんな顔を見せるわけにはいかないっスから、苦渋の決断っス」

 というのが彼女なりの理由らしい。それについてはいろいろと思うことはあるものの、それが比奈なりのアイドルへの向き合い方かと思えば、あまり俺からは口出ししないことにしている。落ち着くっス、と肩の力の抜けた比奈の雰囲気が、アイドル荒木比奈から急に野暮ったいオタク女の風情になるというのは認めざるを得ないが。

「比奈さん、コンタクトにはしないのか?」

「目に何か入れるのってどうも怖くてダメなんスよねえ」

 照れくさそうに頭をかく比奈を、そうやって無造作に髪をいじるからぼさぼさになるのだ、と眺めながら、さていつ切り出そうかと思案していると、会話の切り口は思わぬところから現れた。

「そういえば比奈ちゃん、今日はなんかちょっと元気がなかった?」

 子供というのは思いがけず周りのことをよく見ているものだ。唐突に切り出してきた千佳に俺は軽く身構えた。まさかこの場でその話になるとは思っていなかった。

「え、そ、そうっスか?」

「もしかして何か悩みごと? なにか困ってるなら、このラブリーチカがなんでも解決しちゃうよ!」

 おーおー、比奈のやつ、小さな魔女っ子の勢いにたじたじになっておる。

「なんでもないっス! ホントなんでもないっスから!」

「えー、ホントにー? むー、ドラマで比奈ちゃんに教えてもらった魔法、ホントにも使えればなあ」

「あ、あはは、それはちょっと困るっスね」

 千佳にまとわりつかれる比奈を横目に、俺はそっと奈緒に近寄って耳打ちする。

「ひゃっ、な、なんだよプロデューサーさん」

「いや、比奈のことだけどさ。奈緒から見て今日の様子、どうだった?」

「え、ああー……どうだろ、あたしはちょっとわかんなかったけど」

「ああ、ミライちゃんとかカナちゃんに夢中だったもんな」

「わかんなかったけど! け、ど! いつものアニメトークのときよりちょっと大人しいかなって気がしたの! あたしがマジカル☆クラウンのことしか見てなかったとかじゃないからな!」

「うんうん、そうだな、奈緒は気配りちゃんとできるもんな」

「だああああ! ホントにわかってるのかよ!?」

「冗談冗談、奈緒がそういうならそうなんだろうな。正直俺もちょっと気になってたし」

 千佳の追及をどうにか逃れようとする比奈の様子からしても、何か比奈が心中に抱えているものがあるらしいことは確かなようであるが、かといっていつまでも控室を占拠してお悩み相談室を開くわけにも、打てば響く奈緒の反応で遊んでるわけにもいかない。

「なんにせよそろそろ撤収だな。ほら、二人とも遊んでないで行くぞー」

「はーい!」

「た、助かった。了解っス!」





 走らない車の中というのはこれほど退屈なものもないもので、これが生起しやすい夕方の都内主要道路は可能ならば避けて通りたいものなのだが、今日に関しては千佳の送迎もあって車移動を選択せざるを得なかった。その結果として見事に動脈硬化に巻き込まれてしまったわけでが、幸いにしてこの後は仕事の予定もなく、事務所や女子寮にも連絡済みであるので、あとはもう悟りを開いて血流がよくなるのを待つばかりである。

 夕刻の紅い日差しが描き出すビル影と光のコントラストは、最初こそいくらかの見応えを感じはするものの、いつまでも鑑賞に堪えうるということもなく、今日の撮影やら学校での出来事、アニメや漫画の話も尽きてくるといよいよ無為な時間が車内に流れ始め、多少は話の種になるかと手持ちの音楽データをカーステレオから流してみる。

「なんだよー、うちの事務所じゃないじゃん」

「いいだろうが、敵情視察だよ敵情視察」

「チカはヒーローズも好きだよ!」

 プレイリストが一周するころにはそんなガヤも聞こえなくなり、ルームミラーを覗けば後部座席の奈緒と千佳が仲良く寝息を立てている姿が見えた。

「寝ちまったか、二人とも」

「はしゃぎ疲れちゃったっスかねえ」

「まるで自分ははしゃいでないかのような言いぐさ」

「そ、そんなことは……あるっスね、正直はしゃいでました」

 やはりどうも、今日の比奈は本調子でないように思えた。夕日に照らされた比奈の横顔が、やけにしおらしいというべきか、物憂げな表情が垣間見えている。しばらく様子を見ることも考えたが……聞くだけは聞いてみるべきか。話したくないというのであればその時はその時だ。

「なあ、比奈。最近なんかあったか?」

「え? どうしたっスか、急に?」

「千佳も言ってただろ。今日の比奈、なんとなく様子がおかしかったって。最初は俺の気のせいかなとも思ったけど、そうでもなさそうだったからな」

「あー……」

 比奈は、また照れくさそうに頭をかいた。せっかくセットしてもらった髪型はすっかりぼさぼさで、隣に乗っているのはもうすっかり冴えないオタク女そのものになっていた。まあ、それで比奈の魅力が損なわれているとは、俺はこれっぽっちも思っていないのだが。

「やっぱりわかっちゃうもんスかね」

「まあ、お前表情隠すのあんまりうまくないからな」

「そう言われるとなんにも言い返せないっスね……」

 観念したように苦笑すると、比奈は言葉を探すように一つ二つ唸った。

「言いにくいことか?」

「いやー、なんていうか、ちょっとお恥ずかしい悩みで。でも、プロデューサーになら言っちゃってもいいっスかね」

「おう、言っちゃえ言っちゃえ。変な話だったらとりあえず爆笑するから」

「ぇぇー……いや、あはは、そうしてもらったほうがありがたいっスね」

 ようやく意を決したか、それでもまだ言いにくそうにしながら比奈は歯切れ悪く口を開く。

「まず最初に白状するんスけど、最初にスカウトされたとき、アタシ漫画描きだけど脱オタしたって言ったじゃないっスか」

「そういえばそんなこと言ってたな」

「でもその、結局なんだかんだ脱しきれなくって……実は今も漫画描いてイベント参加してたんスよ」

 急に白状するとか言い出すから何かと思えば。

「うん、知ってた」

「はい、ずっと黙ってて……え!? 知ってたんスか!?」

「隠そうとしてるなあとは思ってたけど」

「ま、マジっスか……えぇぇ……」

 どうやら本気で隠せてると思っていたらしい。友人の手伝いだとか下手な言い訳はしていたが、たびたび徹夜はするわ、夏と冬のある時期のスケジュールは絶対譲らないわ、時々髪にトーンの切れ端をくっつけて事務所にやってくるわ、本気で隠したいのかそれともそういうロールプレイなのか判断に困るとは常々思っていたが、そうか本気だったか。

 隣で頭を抱える比奈には申し訳ないが、正直この時点でだいぶ面白くなっている。

「ま、まさかプロデューサーにばれてるだなんて」

「いや、うん、上手く隠せてたと思うよ、はい」

「あからさまに笑いこらえながら言っても説得力皆無っスよ!」

 顔を真っ赤にして突っ込む比奈は見物だが、こうして遊んでいても話が進まないし、後ろの千佳たちを起こしてしまってもややこしいので、俺はともかく先を促すことにした。

「まあまあ、それで、それがなんか関係あるのか?」

「う、いやまあ……関係あるっていうか」

「うん」

 また比奈は言葉に詰まった。それは口に出すのが恥ずかしいというよりも、自らの口でそれを言ってしまうことを何か恐れているように見えた。自分の言葉で決意を確かなものにしてしまうのが怖いというような。

「ゆっくりでいいぞ」

「平気っス。いろいろ考えたっスけど、アタシ、今度こそ本気で同人活動やめようかな、って」

 少し、返答を考えた。こういうタイミングに限って車の流れがよくなって、比奈の表情を窺うことはできなかった。
 比奈がアイドルをしながら同人活動に精を出していることはもちろん知っていた。アイドルとしてこれからもっと顔が売れて来たらいくらかこちらで手綱を握る必要があるだろうかと考えてはいたが、その活動自体をとやかく言うつもりはない。なぜならそれは荒木比奈を構成する重要な要素の一つだからだ。アイドルが群雄割拠する今時分、それぞれが持つ個性とは、これを蔑ろにしてアイドルをプロデュースすることなど不可能とさえ言ってもいい。誰も間に何も挟まっていないハンバーガーを買おうとはしないのだ。だからこそ、俺はアイドル達が持つそれぞれの『好き』は大事にし続けてほしいと思っていた。

「それはまた、なんでか聞いてもいいか?」

「いやー……これこそ順番に説明すると恥ずかしいんスけど」

 隣でもじもじと指をこねる気配を感じる。
 そして帰ってきた返事はと言えば。

「好調なんスよ、ここのところ。アタシの出した本の売れ行きが」

「んん?」

 今一つ比奈が何を言っているのかピンと来なかった。俺に経験がないからわからないだけで、同人作家というものは作品の売れ行きが良くなるとやめたくなるものなのだろうか。

「どういうことだ?」

「や、その、もちろん本が売れるのはうれしいんスよ。アタシはまあずっと弱小個人サークルで細々とやってきて、描いた本も二桁刷っ半分も売れたら御の字って感じでしたし。イベント出て黒字なんて経験したことなかいっス。それでも好きなものを好きに描いて、それが本って形になって、少ないけど手に取って読んでくれる人がいるのがすごくうれしかったっスよ。だからずっとやめられなくって」

 比奈の口ぶりは静かながら熱がこもっていて、比奈を創作活動に駆り立てる情熱の一端が窺い知れるようであった。

「でもそれで食べていけるほど世間は甘くないわけで、ついでにその世間ともなじめなかったアタシはめでたく半ニートの同人作家になってたわけっス。当然生活だってどんどん立ち行かなくなってきて、もう限界かなって思ってた、そんな頃にプロデューサーにアイドルにしてもらったっス」

 そこから先、比奈の物語がどんな展開を迎えたのか、もちろん俺が一番よく知っている。比奈は今、まさにこれから売れていこうとしている新進気鋭のアイドルの一人だ。

「最初はアタシがアイドルなんて、って思いながらも続けていって、意外にイケるんじゃないかって思わされて、それで今のアタシがいることはプロデューサーもご存じの通りなんスけど」

「そりゃな。イケると思ったからこそスカウトしたんだ、俺の目に狂いはないし、そのことは比奈自身が証明し続けてるよ」

「えへへ、そこはプロデューサーを信じることにしたっスから。で、それはそれなんですが、どーもリアルが忙しくなってくるとペンが走ってくるのが、端くれとはいえ漫画描きの性質ってやつなんスかねえ。アイドルが楽しくなればなるほど、漫画を描くのも楽しくなっちゃって。それでこっそり……になってなかったみたいっスけど、とにかくちまちまと描いてはイベントに出してをまた繰り返してたワケっス」

 多少流れが良くなったかと思った都内の大動脈はまたしてもつまりはじめ、俺は横目で比奈の表情をちらりと窺った。大切なものをいつくしむような、しょうのない自分に苦笑いを浮かべるような、どちらともつかない笑みが浮かんでいた。今まであまり見たことのない表情だった。

「なるほどなあ。そういう話、今まで比奈から聞いたことなかったな、そういえば」

「アタシもこんな風に言葉にしたことなかったっスけど、口にしてみるとホントどうしようもないっスね、アタシ」

「いや、そうは思わないけどな。それで?」

「はい。それで、ちょっと前のイベントからなんスけど、だんだんアタシの出す新刊が完売とか、ほとんど完売とか、そんな調子になってきて。ネットに上げたサンプルの閲覧数の伸びもいいし」

「いいことじゃないのか?」

「それだけだったらそうなんスけど、でもほら、アタシも曲がりなりにもアイドルじゃないっスか。それが、本の売れ行きもアイドルとして売れてくるにつれて上がってるみたいで。で、この間ついに言われちゃったっス」

 ────もしかして、アイドルの荒木比奈さんですか?

 イベント会場でサークルスペースに座る比奈に、そう訪ねてきた人がいたそうだ。

「その場はマスクもしていたし、誤魔化して切り抜けられたんスけど……でもなんかその瞬間、気づいちゃったわけっス」

「気づいた?」

「アタシはただ、同人活動もアイドル活動も、どっちも好きで履いた二足の草鞋っス。でもいつの間にか、アイドルとしての知名度を同人活動に利用しちゃってたんじゃないかって」

「いや、それは」

「だってそういうことじゃないっスか。アイドル荒木比奈の出す本だからって買っていった人が増えたから売れてたってわけで。そう思ったら、なんだか自分のやってたことがただの売名行為なんじゃないかって、他のサークルさんや、プロデューサーにも申し訳なく思えちゃったっスよ」

「……それでアイドルじゃなくて、同人のほうをやめるって言い出すのは、プロデューサーとしては喜ぶべきなのか?」

「あはは、正直アイドルやめるっていうのも考えたっスけどね。でもアイドルは今が楽しくなり始めたところだし、プロデューサーや事務所にも迷惑かけちゃいますし、逆に同人は一度はやめようって考えてた話っスから、ここらできっぱり見切りをつけるべきかなって」






 道路状況はようやくしこりが取れたとみえ、ブレーキを調整していた右足もアクセルを踏み込める速度に乗ってきた。同時に、隣に座る比奈の口ぶりからも、どこかつっかえが取れてしまったように思えた。

「聞いてくれてありがとうっス、プロデューサー。話したらなんか決心も固まったっスよ。未練がないって言ったらウソになっちゃうっスけど、これもアイドルとして次の一歩を踏み出すためだと思えば、気持ちの整理もつけられそうっス」

 比奈はそう言って、一人で話を畳もうとしている。あたかもいい話のように切り上げようとしているが、あいにくと俺はそんな形での『アイドルとしての一歩』なんてこれっぽっちも求めてはいないのだ。

「あくまで比奈のプライベートの話なわけで、俺がとやかく言うこっちゃないっていうのは解ってるんだがな」

「はい?」

「そう結論を急ぐこともないんじゃないか? 比奈だって別に同人活動をやめたいわけじゃないんだろ?」

「そりゃまあ、そうっスけど。けどこれでも同人作家やってきたプライドってもんがあるっスよ。アイドルで名前が売れて本が捌けても、ちっとも嬉しくなんかないっス」

 珍しいことに、比奈の語気は強く、表情にも明らかに不満が浮かんでいる。プライド。その一言でも、比奈の中で同人活動をすることへの比重がいかほどのものか窺い知れる。だがどうもやはり、彼女は自分のことにとことん疎いらしい。荒木比奈はそこのところ、大きく勘違いしているのだ。

「別に比奈がアイドルしてるから本が売れてるとは限らないんじゃないか?」

「でも、そうとしか思えないっス」

「まあまあ、そう言わずに。とりあえずさ、帰ったら昔出した本でも読み返してみたらどうだ? どうせ明日は休みにしてるし」

 渋滞を抜けさえした今、もうどれほどもかからずに車は女子寮に着く。ここから先はもうアイドルとしての時間は終わり、俺が口を差し挟むべきじゃない彼女たち自身の時間だ。だが、彼女たちの過ごす一秒一秒、その十すべてがアイドルとしての一につながると、俺はそう思っている。だからこそ比奈にも、アイドルではない、同人作家の荒木比奈を大事にしてほしいなんて思ってしまうのだが、もちろんそんな説教くさいことを言ったところで決めるのは比奈自身なのだ。比奈や寝ぼけ眼の千佳を降ろし、最後に奈緒を送り届け、俺は車を事務所へと向けた。





 ◆





 比奈は自室に戻るや、着替えるのも億劫なままベッドに寝転んで天井を見上げた。物が雑然と散乱した部屋の中で僅かな隙間に身を投げ出すと、比奈自身も散らかった物の一つになったようだった。なんだか妙に疲れた一日だった。よその事務所の、大好きなアイドル達に会える緊張もあったかもしれないが、それよりもプロデューサーに悩みを打ち明けたことのほうが、比奈にとってはプレッシャーが大きかった。

 まさかプロデューサーに同人活動のことがばれているとは思ってもいなかったが……それに、まさかプロデューサーに同人引退を引き留められるようなことを言われるとは、それこそ予想外であった。

「むしろこっそり活動してたこと怒られるかとすら思ってたんスけどねえ」

 しかも、昔の本を読み返してみろだなんて。正直気は進まなかった。漫画を描かないプロデューサーに何が分かるんだという思いも、少なからずあった。だというのにプロデューサーの言葉は妙に確信的で、そう口にするだけの根拠のようなものを感じてもいた。

 のそのそとベッドの上で寝がえりを打つ。のろのろと上着だけ脱いで、ベッドの脇に投げ出した。なんとなく踏ん切りが付かなかった。コチコチとなる時計の音が妙に大きく聞こえてくる。何もせずにいると、やりきれない煮凝りのような鬱屈した思いばかりが渦巻いて、胃袋の下あたりがずっしりと重苦しくなった。プロデューサーに悩みを打ち明けたときには、すっきりと決心がついたと思ったのに。相談したのは間違いだったのだろうか。それとも、これは未練なのだろうか。本当にペンを捨てたいのだろうか。その点に関しては決まっていた。やめたい理由なんてなかった。

 何かしていないとますます気分が沈みそうで、漫画でも読もうかと寝返りを打つ。枕元に置いてある漫画に手を伸ばしたが、もう少しのところで届かない。もう一つ、手の届く範囲にあるものが思い出された。また一つ寝返りを打って、ベッドの下に頭を突っ込み、段ボール箱を一つ引きずり出す。中には、これまで比奈が描いて発行してきた同人誌が詰まっていた。荒木比奈のこれまでの歩みの一端だともいえた。

「昔の本なんて、ずっと見返してなかったっスね、そういえば」

 プロデューサーがなぜそんなことを言い出したのか、比奈には見当がつかなかった。だがもう同人活動に見切りをつけるのであれば、その前にこれまでのことを振り返るのも悪くはないかな、と言い訳がましく口の中でつぶやき、箱の上にたまった埃を払って、中から一冊の本を取り出した。ちょうどアイドルにスカウトされた頃に描いていた本だった。

 パラパラとページをめくっていくと、その当時の記憶もぼんやりと蘇ってくる。セリフ回しや、構成や、演出の端々に、その当時自分が感銘を受けた何かの影響が如実に見て取れ、確かにこの漫画にはまっていたなとか、こんなアニメを見ていたななどと、その一冊に記憶されたかつての自分を見つめ直すのは、思いのほか楽しいものだった。一方で勢いだけで描いていたり、いま見直すと恥ずかしくなる場面も多々見つかって、そういうページは苦笑いで読み飛ばした。

 だが不意に、比奈は顔をしかめ、数ページめくり返した。それからまたいくらかページを進め、首をひねった。急にベッドから体を起こすと、今度はまた段ボールに手を入れ、別の一冊を取り出す。ついこの間イベントに出したばかりの、比奈の新刊であった。ページを比べるようにめくっていき、さらにいくつかの本を取り出して比較する。アイドルになる前の本、なってしばらくしてからの本、最も新しい本。何度も何度もページを行ったり来たりして、今度こそ比奈は愕然とした。こんなにも明らかに変わっていたことに、なぜ今までずっと気づかずにいたのか。

「新刊のほうが、全然面白いっス……」

 構図やコマ割り、そもそもの画力が劇的に変化しているようなことはない。もちろん冊数を重ねた結果技術的に伸びている部分はあるが、それは以前から勉強して身に付けた技術を基礎として、経験が伸ばしてきた部分でしかない。それ以前のもっと根本的な部分。登場人物の表情や、セリフ回しや、物語の緩急が、明らかにアイドル活動を始めてから描いたもののほうが、どの点についても生き生きと躍動してるのが一目瞭然であった。どのコマを見ても、主人公たちが、その物語で何を思って、どんな時間を生きているのかが、目の動きから、手の動きから、いちいち訴えかけてくるようで、それに引き替えれば、かつて発行したものはどれも、言葉や演技に表現が伴っているとは、とても言えなかった。何よりもその基盤となる物語が描きだすものが、アイドルになって以後のもののほうが、断然魅力的であった。

 比奈はプロデューサーが何を言わんとしていたのか、認めざるを得なかった。

「つまり……面白くなったから、売れた……?」






 ◆





 熱く炙られた金網の上で、じゅうじゅうと脂がはじけ、ぱちぱちと肉が躍る。立ち昇る煙は馨しきタレの香りをふんだんに纏っている。ハラミ、タン、ホルモン、テーブル一体型ロースターの周りは、紅色に輝く肉を満載にした皿が所狭しと取り囲んでいる。副菜にキャベツも忘れてはいけない。手元の白いご飯がほくほくと湯気を立てている。そんなこの世の贅を集約したかのようなテーブルを前に、比奈は勢いよくジョッキのビールを呷った。眼鏡が若干白く曇っている。

「あーーーー! やっぱ同人誌の売り上げで食べる焼き肉は最高っス!!」

「あのさ、お前そんなに飲むほうだっけ?」

「いいんスよ、こういうときくらい!」

 いいんスよ、と言われても、慣れない飲み方をしてうっかり酔いつぶれられでもしたら、二人で焼き肉に来てる以上必然的に介抱するのは俺なのだ。その辺解ってるのだろうか?

「それに普段は一人だったっスからねー、いざとなった時にお任せできる人がいるから今日は存分に飲むっスよ」

 ダメだー、わかってねぇー。この女いろんなことわかってねぇー。ついでにそれだと俺が飲めねぇー。

 腹が立つほど解ってない比奈に腹が立ってきたので、酔いつぶれても放置してやろうかなどという考えが脳裏をよぎるが、それが出来ればこちとら苦労はしないので、勢い飲み続けるようならどうにか適当なところでジョッキを取り上げることも考えなくてはなるまい。プロデューサーの仕事じゃないぞこれ。

「だいたいよかったのか? 急におごってくれるなんて言うから何事かと思ったけど、いつだかのイベントでの売り上げなんだろ?」

 昼間、事務所でパソコンと格闘する俺の前にばたばたと騒々しい足音を響かせてやってきた比奈は、開口一番こうのたまった。

 ────プロデューサー、アタシやっぱり同人続けるっス! アタシの漫画めっちゃ面白くなってたっス!!

 別にその報告ははっきり言って全く俺にする必要のないことなのだが、それでも確かに続けてほしいと思っていた身としてはうれしい話で、ただしかし仕事中の真昼間に大声でしてくることはなかろうに、おかげでだいぶちひろさんに白い目で見られてしまった。まあまあ落ち着けと座らせるも、どうしたことだかえらくテンションの高い比奈はそのまま今日は俺に焼き肉をおごってくれるなどと言い出し始めた。ちひろさんの目からどんどん色が抜けていったのを見るのは正直かなり恐ろしかった。

「アイドルばれのこともあって、売名で出来たお金なんて、とか思って手つけてなかったんスよ。だから打ち上げもなんもしてなかったし、二人分の食べ放題くらいの売り上げはあるから気にしないでほしいっス!」

「でも収支的にはマイナスなんだろ?」

「うぐっ……いや、そういう話じゃないんスよ。同人イベントの打ち上げって言ったら売り上げで焼き肉なんスよ。神絵師はみんなそうしてるっス」

 ホントかよ、と思わないでもないが、まあそこまで言うのであれば、たまにはアイドルに奢ってもらうのも悪くはないだろう。だいたい自分より年下のアイドル相手ではこちらが財布を出すのが普通で、稼ぎで言えばこいつらのほうが全然上なんだけどなあ、と思った日がなかったわけではないのである。アイドルとしてのギャラで奢ってもらうなど言語道断なわけだが、同人誌の売り上げでということであればまだしも心情的なハードルは低くて済んだ。それこそ俺は何も関わっていないのだが。

「でも自分でも正直驚いたっスよ。アタシの描く話、いつの間にかあんなに面白くなってたなんて。いやぁ、ここにきてついに才能が開花してきちゃったっスかねえ!」

 焼けたハラミをタレで噛みしめながら、比奈は自分の成長を噛みしめている……というよりも浸っている。

「ホントお前すぐ調子乗るよなあ」

「ぐぬ……いいじゃないっスか、ガチで悩んでたんスから。アタシなりにどっちにも誠実にいたかったんスよ、アイドルにも同人活動にも」

「はいはい。でもまあ、よかったと思ってるよ。内容が面白くなってたから売り上げが上がってた。それで比奈が納得してどっちも続けていく気になったなら、俺としても安心する。アイドルと天秤にかけて私生活を諦めるって、そんな残酷なことはないからさ」

「ホントに納得しちゃっていいのかなって気持ちは、なくはないっスけどね」

 そういうと比奈は箸を置き、少しばかり神妙な顔つきになった。

「でも今すぐ急いで決めなくてもいいかなって思ったっス。本当にアタシが今までより面白い漫画を描けるようになってるなら、それをここで手放しちゃっていいものかって。少ないとはいえ、同人作家としてのファンもいてくれるわけですし。アイドルばれしかけたことは事実っスから、それについてはまた考えないといけないっスけどね」

「それについては、俺も手伝うよ。いっそ公言しちゃうのも手だと思うしな」

「同人アイドルってことっスか? あり、っスかねえ、それも。なんか、結局こっから動けてないっスねえ、アタシ」

 またジョッキを一口。少しずつアルコールが回ってきたのか、比奈の頬にはやや紅い色が走っている。どれくらいもつかな、と見つめていると、ジョッキと眼鏡の向こうから覗く上目使いと目が合った。

「そのー」

「ん?」

「プロデューサーは判ってたっスか? アタシの漫画が、前より面白くなってるって」

「んー」

 どう言ったものだろうか。少し言葉を探して、ホルモンを一かけら飲み込むまでたっぷり咀嚼してから答えた。

「比奈、言ってただろ、いまアイドルが楽しくって、その上で漫画を描くのが楽しいって。けど、出会った頃の比奈は、漫画ばかり描いてることに息苦しさを感じてなかったか? 職業としてではなく趣味として漫画を描いてるのに、半ニートで、生活もままならない自分に行き詰まりを感じてたんじゃないかって思ってな」

「それは、そうっスね。否定はできないっス」

「だったら、楽しんで描いてる今の漫画のほうが面白いものになってるんじゃないかって考えたわけだ」

「なるほどっスね……」

「もっと言えば、俺も曲がりなりにもクリエイター側の人間だからな。モノ作りに必要な素養ってのは少なからず通じる部分はあるだろ。作品作りってのはインプットとアウトプットの連続、漫画しかなかった比奈よりも、アイドルっていう新しい世界を知った比奈のほうが描けるものの幅が広がってるってのは想像に難くないよ。ページ数が減っても、そこにぎゅっと詰め込む方法も知ったみたいだしな」

 アイドルだけを見ていては、アイドルをプロデュースすることはできないのだ。

「はー……」

「納得したか?」

「プロデューサーって、プロデューサーだったんっスねえ」

「すみませーん、特上牛盛り合わせくださーい」

「ちょちょちょちょ、それコース外じゃないっスか! 冗談っスよ冗談!!」

「ったく、人をなんだと思ってるんだ……」

「申し訳ないっス」

 本当に、まったく。



 荒木比奈は現場で眼鏡をかけない。



 この荒木比奈という女は、眼鏡をはずして衣装を纏いステージに立てば、その姿は目元の垂れたふわりとした印象の美少女。だというのに、私服はとことん野暮ったく、今日にいたってはジャージ姿という有様で、ぼさぼさの髪で眼鏡をかけた見てくれは完全に冴えないオタク女そのもので、特に漫画だったりアニメだったり、自分が好きなものについて語るときの眉をハの字に曲げた笑顔はとことんだらしなくてしまりがない。

 何より始末が悪いのは、荒木比奈のその表情が、どんな瞬間よりも魅力的だと思えてしまうことなのである。


「いやあ……プロデューサーがアタシのプロデューサーでよかったって思ってるっスよ、ホントに。いつもありがとう、っス」


 眉をハの字に曲げただらしなくてしまりのない笑顔で、眼鏡をかけたときにしか見せない表情で、比奈はそう言った。














「あ……? ちょっと待ってほしいっス……プロデューサー、なんで最近アタシの本のページ数が減ってるって知ってるっスか?」

「すみませーん、ウーロン茶くださーい」

「ちょ、待って、読んだっスか!? アタシの本読んだっスか!? どうやって、いつから!? ちょ、プロデューサー!?」




前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.048338174819946