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No.4247の一覧
[0] There is no angel (リリカルなのはsts×Fate R15)[ゆきほたる](2012/03/25 16:02)
[1] prologue そして始まりを (前編)[ゆきほたる](2009/09/11 03:01)
[2] prologue そして始まりを (後編)[ゆきほたる](2009/07/05 00:19)
[3] 第01話  届かぬ夢[ゆきほたる](2011/02/09 02:37)
[4] 第02話  エース・オブ・エース[ゆきほたる](2011/02/09 00:35)
[5] 日常編part01 (注:日常編を飛ばすと本編が分からなくなります) 短編×3+没ネタ×1[ゆきほたる](2011/04/16 12:08)
[6] 第03話  帰路~迷い子2人~[ゆきほたる](2011/02/09 00:38)
[7] 日常編part02 短編×2[ゆきほたる](2011/04/16 12:07)
[8] 第04話  運命の悪戯・1/4 ~魔導士殺し~[ゆきほたる](2011/02/09 00:44)
[9] 第05話  運命の悪戯・2/4 ~交差~[ゆきほたる](2011/02/09 00:45)
[10] 第06話  運命の悪戯・3/4 ~白い悪魔vs死神見習い~[ゆきほたる](2011/02/09 00:46)
[11] 第07話  運命の悪戯・4/4 ~運命の悪戯~[ゆきほたる](2011/02/09 00:47)
[12] 日常編part03 短編×2[ゆきほたる](2011/04/16 12:09)
[13] 日常編part04 短編×1[ゆきほたる](2011/04/16 12:09)
[14] 日常編part05 本当の依頼[ゆきほたる](2011/04/16 12:09)
[15] 日常編part06 守るべきもの [ゆきほたる](2012/03/25 15:57)
[16] 第08話  羽を捥がれた騎士VS剣を持つ銃使い[ゆきほたる](2012/03/25 15:50)
[17] 第09話  螺旋回廊  [ゆきほたる](2012/03/25 15:53)
[18] 第10話  不協和音[ゆきほたる](2011/04/16 14:39)
[19] 設定・時系列、等[ゆきほたる](2011/04/16 12:43)
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[4247] 第04話  運命の悪戯・1/4 ~魔導士殺し~
Name: ゆきほたる◆56193382 ID:ff5a7143 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/02/09 00:44
管理局は歪んでいる。

マフィアとの癒着を始めとする不祥事や、一極化された武力、魔法至上主義、特定宗教の優遇。

反管理局組織と名乗る武装集団も根強く存在し、特に魔力資質を持たない人間達の、抗議、デモ、テロも問題になっている。

現状、管理局は正しい状態ではありえない。





だが……それがどうしたというのか?





どんな組織にも歪みと言うものは存在する。


少なくとも、彼の見てきた組織と比較すれば、管理局は至って健全だとすら言えるだろう。


質量兵器を導入すればいい?聖堂協会との離別すべき?確かにそれは現状の不満を打開するべき策ではあるが、反面それを行ったことによってもたらせる危険も当然ながら考えられる。ただ、目の前だけの問題に囚われて、反抗するのは愚の骨頂である。そういった失態を幾度となく犯してきた馬鹿な男も、そのぐらいは分かるようになった。


ましては管理局は無くなるべきだという声は論外。


客観的に考えれば、管理局が世界を救っている事実は間違いないことであり、この世界には無くてはならない存在ということは言うまでも無い。


故に『管理局の崩壊』などと言うものが実現するなどということはあってはならないのである。






衛宮士郎はバリアジャケットを装着する。


マフィアなどから“死神”などと呼ばれるまでになった異名を象徴する、漆黒の装束ではなく、


『魔導士殺し』としての、紅いバリアジャケット。“魔術師殺し“の代名詞であった聖躯布を模した、新たな舞台での彼の衣装。


それは、如何なる手段を用いようが、何を犠牲にしようが、目的を果たすという覚悟の証であった。













【第04話 運命の悪戯・1/4 ~魔導士殺し~】









“戦況”


この物語は、先の事件による影響で数ヵ月ほど遅らせながらも、歴史は概ね正史をなぞっていくこととなる。

新人達の久方ぶりの休暇中に起った戦闘機人達との交戦。

別部隊に配属中のなのは、脱走したティアナを欠く六課の面々は、レリックを運んでいた少女とレリックを捕獲しようと奮闘する。

2人がいないながらも、何とかヘリや少女の救出と、戦闘機人の撤退に成功した。



だが、正史ではある筈のない出来事が起こってしまう。



新人とヴィータ、リインは、ナンバーズのセインによって、拘束していたルーテシアとレリックを奪われてしまったのである。

本来ならばティアナの機転により、レリックは偽物にすり替えられていたはずだった。

しかし現在、彼女はいない。

故に、セインの持っているレリックはまさしく本物だったのだ。












“side セイン”


ミットチルダ、市街地。高速道路の高架下。

戦闘機人No 06であるセインは、固有スキル“ディープダイバー”によりレリックの回収及び、ルーテシアの救助に成功したところだった。

「アギトは?」

共に行動していたユニゾンデバイスであるアギトを心配するルーテシアに対し、セインは安心させるように話しかける。

「アギトさんならさっきの一瞬で離脱しました、さすがいい判断です」

感情の起伏の少ないルーテシアではあるが、どうやら安心していることはセインにも感じられた。

「じゃあ 潜りますね~」

そう言って、まさに、地中に戻ろうとしたとき時。

「それはいいのだが、その前にいくつか話をしてもらおうか?」

どこからともなく声が聞こえてきたのだった。

















“side 六課”




「くっそーー!!!!」

悔しがり、地面に手を叩きつけて叫ぶヴィータ。ほんの一瞬、僅かな隙が生み出した失態だった。リイン、ギンガ、スバル、エリオ、キャロの5人も、その様子を呆然と見ている。

捕まえた犯人を逃がし、あまつさえレリックまで逃がしてしまったのだ。

それも仕方のないことだろう。



だが、最悪の状況は免れたようだった。

「ヘリは………無事か。良かった」

入ってきた連絡で、とりあえず、仲間の無事を確認しホッと安心する一同。

そこでようやく、「あれっ」と、リインは気付いた。いや、それは本来ならすぐ確認しなければいけないこと。しかし、逃げられたという、ある種の絶望感で見落としていた。そう、


「まだ、魔力反応続いています。反応は…………真下、これは……地下です!!!!」


「「「「「!!!!!!!!」」」」」」」」


言葉を聞くや否や、ヴィータが先陣を切り、思考を超えて、飛翔する。
敵はどうしてまだ留まっているのか?何故自分は確認しなかったのか、そういった疑問や自分への叱咤は後でいい。何があったかは分からないが、可能性があるならば一刻も速く敵の元へ辿り着か無くてはいけない。

高速道路の横側に飛び出し、重力に身を任せるのももったいないとばかりに、真下に加速。

不幸中の幸いか、地下への入り口は近く、全速で反応のある所へ向かう。

そして、あっという間に、反応の地点に辿り着き、現れた敵を見定めようとした時だった。



目の前にあるべきは、ルーテシアと呼ばれる少女、レリックを奪っていった青髪の少女、そして炎を司る融合型デバイスの3人のはず。



だが、目に入ったのは、予想だにしない光景だった。



いや、確かにいる。3人。



ルーテシアと青髪の女。

しかし、もう1人は先ほどの融合型デバイスでは無く、紅い外套と白い仮面に身を包んだ長身の男であった。


紅い外套の男は、その長い腕で青髪の女の首を握り片手で持ち上げ、体を壁に押し付けていたのだ。


「かっ、はっ……」

嗚咽を漏らす少女の足は地についてなく、敵であるヴィータ達に助けを懇願するような眼さえしている。よく見れば、指の一本があり得ない方向に曲がっている。正にそれは、拷問でも始めようかとする光景そのものであった。


加害者だと推定される男は、磔にされた少女を視野の片隅に入れつつ、突然現れた5人の出方を伺うように、頭だけヴィータ達の方を向いていた。


「お前、何をしている!!!!」


数刻前まで敵だったはずの少女が、今では一種の拷問を受けている。
男はいったい何者なのか、何の目的があるのか?
内心の動揺を隠しながらも、その非情ともいえる行動をとっている男に対して怒りを込めて叫んだ。

対して男は、仮面の下からでも口元を釣り上げているのが分かるような挑発する口調で、相手を小馬鹿にするように話す。

「見てわからないかね。少々聞きたいことがあったのでな。多少手荒な方法をとらせてもらったのだよ」

「………なんだと!?」

罪悪感のかけらもないそのいいように、切れて飛びかかりそうになるのを堪え、他のメンバーに注意を促す。

(おい、いつでも戦闘に入れるようにしとけ。それと周辺に仲間が隠れてないか十分注意しろ)

今、司令塔的存在のティアナがいない。他の3人は戦力としては育ってきたが、周りの状況を見ながら的確に指示を飛ばせるだけの能力は持っていない。
ギンガも同様に、こっちの能力を満足に把握していないのだから指揮をするのは不可能だ。

この場においてヴィータの判断が全てだった。

すぐにでも相手を叩きのめしたい気持ちを抑え、管理局員の義務を全うする。

「こちら管理局機動六課、八神ヴィータだ。その少女を放せ。その少女は、公務執行妨害等、複数の容疑で逮捕させてもらう。
お前も、過剰暴力行為、及び非人道的行為により拘束する。抵抗しなければおまえには弁護の機会が与えられる」

「ほう、私を捕まえるのかね」

君にできるのか?とでもいうように、またしても挑発するような口調で笑っている。そして次には意味不明な言動を口に出した。

「が、しかし、もう少し待った方が君達にも得だと思うのだが?」

と、そんな言葉を口に出した。

(何言ってるんだ?こいつ)

ヴィータは、全く意味の分からない言葉に困惑しつつも押し殺した声でその真意を聞き返す。

「どういう意味だ?」

「いや、今ちょうど、この娘を裏で操っている人間の正体と、居場所を聞き出そうとしていてな。
君達もそこで待っていれば、この事件の概要が分かるかもしれんぞ?
このまま捕まえてしまっては、お優しい管理局では吐かせることはできんのだろ?」

目の前で拷問するから、ここで待っていろ。この男は、そういう馬鹿げた内容の話をなんでもないことかのように言い放った。

「なめてるのか?んなこと認めねーに決まってるだろ!!!」

しかし、目の前の男はやれやれと言った顔で、

「何か不満なのかね?なに、いざとなったら捕まえようとしていたところということですむだろう?」

などと的の外れたことを口に出す。

「馬鹿じゃねーのか!?そういう問題じゃねー!!!アイゼン!!!」

『Raketenform』

クールダウンが間に合わない。ふつふつと沸騰していく頭で相手を打倒しようと臨戦態勢に入る。

直接攻撃であるラケーテンフォルムへと己を変えた鉄槌は傍目にもわかるほど力を誇示し始める。


ギンッ、と睨みつけるとともにヴィータの明らかな敵意が男に向けられた。

姿勢も極端な前傾姿勢。今にもその身を砲弾と化して、飛びかからんとする構えだ。

緊張感の中、男は全く意に介した様子を見せず、今までと変わらない口調で答える。
6対1のこの状況でこのような態度をとっているのは、強さに対する自信なのか、それとも恐ろしいまでに場慣れしているのか。

「やれやれ、頭が固いな。この娘の腕の一本や眼球がちょっと無くなるだけで、この後、大勢の命が救えるかもしれんぞ?犯罪者1人の人権と、大勢の命。どちらが大切か比べるまでもなかろう?」

「だからといってそんなことは許せねーんだよ!お前とそいつを捕まえて、被害者もぜってー出させねえ!!!」

ヴィータがそう言い放ち、他の面々の頷きながら男を睨み付け、さらに臨戦態勢に近づく。


その様子を見て男はやれやれといいながら、溜息を吐いた。


「所詮は組織の犬か。全てを助けようなどと甘いことを」


今にも場の空気が弾けんとする中、目の前の男は、ヴィータの方の方を真っ直ぐ見ると、にやっと笑い最後の『鍵言葉』を口にしたのだった。


「『そんなことではお前はまた、大事なものが守れないかもな』」


ヴィータから、まるで血管が破裂したのではないかと間違えんばかりの、『ぶちっ』、という何かが切れた音がリアルに発せられた。


爆せた。


もはや、話など必要ない。

体は爆風を纏い、その小さい体を弾丸と化して男に突っ込んでいく。

初速から最速。渾身の一撃をお見舞いしようと、彼女と共に駆け抜けてきた相棒、グロー・アイゼンを限界まで振りかぶり男に向かって突撃する!!

対する男は無防備そのもの。手にデバイスは持っていなく、その手をぶらりと下げているだけだ。

もはや、デバイスの武器の製造など間に合う筈も無い。


(もらったぁぁぁぁぁ!!!!!)


大槌を振りかぶり、怒り任せに渾身の一撃を男に加えんと振り下ろしたしたその時

突如

振り下ろしている手の、ほんの僅か先に“ナニ”かが現れたのだった。


「なっ!?」


驚きと、手に、ぐしゃりという感触がしたのが同時。


感触は、ハンマーが男の体に命中した感触では無く。

ヴィータ自身の手が砕ける音であった。


「ぐぅ、かぁ、あ」


痛みをこらえて相手の方を見ると、何故か、目の前の男はあるはずのない双剣を握っていた。


起こったことは単純である。


ヴィータが接近し鉄槌を振り落とすまさに直前、男は魔法陣も無しに双剣を取り出し、カウンターのように手の先に向けてそっと刃を添えて固定しただけ。


その結果、ヴィータは勢いを押し殺すこともできず、自ら剣に向かってその両手を振り落としてしまったのだった。


ギリギリ、本当にすんでの所で僅かに軌道を逸らし、手が丸ごと吹き飛ぶのは回避できたものの、ありったけの力を込めて振るった大槌の力がそのまま手に圧し掛かり、辛うじて手首が本体にひっついている程度。

手からは血が溢れんばかりに零れ落ち、とてもではないが鉄槌を握ることなどできない状態になっていた。


「ヴィータ副隊長!!?」


驚いたのは残りの5人だ。あのヴィータが一瞬で致命傷を負った。その信じがたい光景に、皆動きが止まっている。

(馬鹿、ちゃんと相手の方を見とけ!!!それと、迂闊に手を出すなよ)

心配する新人を余所に、ヴィータは手による苦痛に耐え、男の方を振り向きながら、この後のことを考える。

体の傷だったらまだなんとかなった。しかし、手にこれほどの傷を負えばもはや、まともにアイゼンを振るうことは不可能に近い。

手は全ての攻撃の起点である。少なくとも鉄槌を振るうヴィータにとっては。

下手に体に大傷を貰うよりも、手がまともに動かない方が遥かに致命的とも言える。


「致命傷を避けるとはな。思ったよりは場慣れしていたか……まあ、いい。これでは攻撃もまともにできんだろう。で、どうするかね?残りの君達が相手をするのか?」


落ち着き払った男の声に対し、ここにきてようやく、ヴィータはあることを確信する。


(くそっぉお!!そういうことかよ!!)


どうやら自分は嵌められたのだと。あの、人を挑発するような話し方や、管理局員としては、人として許容できないような提案。そしてどこから手に入れた情報かは知らないがヴィータにとって禁口中の禁口であるあの言葉。

それらの言葉によって、ヴィータはまんまと逆上させられたのだ。


普段のヴィータならば先ほどの無防備に立つ男の様子にも違和感を感じて警戒を取ることができただろうが、男の言葉によって、冷静な判断力を奪われてしまったのだ。本当なら、得体の知れない相手に対しては距離を取った攻撃で、まず様子見をすべきであったのに。


もちろん冷静さをただ失わせただけで可能な芸当では無く、魔法陣を使用しないで剣を作ったレアスキルらしきものと、直線の攻撃とはいえ完全に動きを見きったその洞察力の高さも伺えた。


しかも、しかも、まずいのは手に残る傷だけでは無い。


目の前の男を見定める。


先ほどは怒りで考えが飛んでしまっていたが、その男はある人物の特徴を全部揃えているのだ。


双剣、紅い外套、長身、突如現れるデバイス……そして残虐性も併せ持つ人物。


それは、管理局がこの数ヶ月間探し続けていた人物とぴったり重なっている。


(まさか……いや、間違いじゃねーって考えた方がいい。だとしたら、やべぇ)


唯でさえ、手の傷とリミッターと言う最悪の状況下、この男が例の殺人犯だとするならばあまりにも相手が悪すぎる。

なのはや決して練度の低くない先遣部隊を打倒した実力もさることながら、目の前の男は非殺傷設定など使ってはいないという事実。それは、今も続く彼女の手の痛みが、嫌がおうにも伝えている。

つまり、戦うならば本当の命がけの戦いとなるのだ。

強くなってきたとはいえ、とてもじゃないが新人達に戦わせてもいい相手ではあり得ない。



「私がっ!!!!」

怒りに燃えたスバルが飛び出し、他も続こうとするのを咄嗟に止めた。

「止まれっ!!!!!!スバル!!!!!!」

ヴィータの大声にビクッとして、なんとか足を止めるスバル。


(おい、お前らは倒れている奴を連れて逃げろ)

(でも、それじゃヴィータ副隊長は)

(大丈夫だ。時間稼ぎぐらいどうとでもなる。お前らも知らないわけじゃないだろ?私は人間じゃない。相手が殺傷設定だろうがどうとでもなるんだ。いいか、これは命令だ。今すぐここから離れるんだ。早くしろ!!!!)

(でも、怪我してるじゃないですか。そんな命令なんて聞けませんよ!!!!!)

(いいから、行けと言っているだろう)

(できません。いっしょに戦いましょう)

(だから、




「!?」

ヴィータ達が押し問答を繰り返している中、突如男が別の方を無理向いた。

そして、ソレと同時によく知る声がかかってくる。


「いや、お前ら全員ここから逃げろ。ヴィータ、お前もだ」


「「「「シグナム(副隊長)!!!!!それに、シスター・シャッハ!!!」」」」


そこには紫の甲冑を身に纏い、威風堂々と応援に駆け付けた騎士、シグナム、それに続いて来たシスターシャッハの姿があった。


(ここは私達に任せろ。いくらお前でもそれじゃあ戦えないだろ。お前は新人達と共にレリックと少女を持って行け)

そういうシグナムに対し、ばつの悪そうな顔をしながらヴィータは頷いた。

(ちっ、わかったよ。だが、気をつけろよ。あいつはなのはと戦ったあの殺人犯かもしれねー。いくらお前でも限定解除しないままじゃ厳しいぞ)

(こいつが……なるほどな。忠告感謝する)


そして、忽然と現れる双剣のことなどの簡単な注意を念話で伝えて、シグナム、シャッハと別れる。


(負けるんじゃねーぞ。おい、新人ども、ギンガもこの場から離れるぞ)


そう言って、レリックとセイン、ルーテシアを連れて5人は去っていった。



残ったのは、リイン、シグナム、シャッハの3人。


男は、それに何の声もかけることなく、ただその鷹の目で3人を捕えていた。


「追わないのか?」


不自然な男の様子にシグナムは疑問を投げかけてみた。


「なに、あのまま8対1の方が私には都合が悪かったのでね。君が現れた時点で、既にあの青髪の女に吐かせるのは諦めていた」

「ほう、自分の能力を過信しないか……あの連続殺人犯だというから余程の性格破綻者を予想していたが、意外とまともな判断だな」

連続犯確信を得ようとカマをかけてみたが、どうやら相手は引っかかったようだ。

「くっ。なるほど、そこまで検討は付いているのか。まあ、いい。このまま君と戦っても私には得るものが無いのでね。黙って見逃してもらえないかね?それなら君達を殺さないでも済むのだが?」

剣士としてのプライドを刺激するような物の云いよう。多少シグナムはいらっとしながらも、それが動揺を誘う挑発だと気が付き返答する。

「できるとでも思っているのか?いや、それは私を挑発させ、冷静さを削るためのブラフか……さっきのヴィータに対してと同じ手だな。まあ、いい。私は貴様を捕まえるだけだ」

シグナムは愛剣のレヴァンティン、シャッハは双剣型のヴィンデルシャフトを構え、戦闘態勢に入る。


「ほう私を捕まえると?管理局の狗ごときがよく言った!!」


醸し出された低い声色の言葉と共に、双剣を取り出し、2人に向けて今までとは比較にならないほどの殺気が放たれる。

その獰猛な殺気に、周りの空気が一気に凍りついたようにさえ感じさえする。

息を飲む。表情にこそ出さなかったが、歴戦の騎士であるシグナムさえ背中には大量の冷たい汗がつたっていた。


だが、彼女は最大級の警戒心を払いながらも、その純然たる殺気に美しささえ感じている。

純粋な殺気。

生きるため、守るため、理想を叶えるため、殺害という手段しか持ち得なかった者たちが、幾千もの屍を乗り越えて得た闘気。

復讐心、憎しみ、欲望、そんな不純物を交えた殺意とは一線を駕した純然たるもの。

過去、幾つもの戦闘を重ねてきた彼女だったが、これほどの雰囲気を醸し出す敵を相手に遭遇したことはただの一度もない。

頭の中に最大級の警戒音が鳴り響く一方、相手が連続殺人犯であることも忘れ不謹慎ながらも口元がつりあがる。
強者との戦闘できることへの歓喜。それはシグナムの戦士としての性なのだろう。


それ故に口惜しい、未だ限定解除で力が出し切れない状況と、3対1であるということが。

しかし、これは任務。しかも相手はあの連続殺人犯。そんなことは言っていられない状況であるということは承知だ。


(シグナム、ここは私が先に出ます)


そういって、シャッハの方が初撃の攻撃を示唆する。

魔力限定に、空というフィールドが活用できない今の状況ではシグナムよりもシャッハの方が実力が上と言うことは間違いない事実であり、彼女を軸に攻撃をした方が効率的だろう。

(ああ、わかった)

承諾の言葉と共に、場の緊張がさらに膨れ上がり、まさに一瞬触発。



だが、この今にも戦闘が開始されようかという場が高揚している時にとった男の行動は予想外のものであった。


男は、いきなり持っている双剣を投げつけたのだ。

それも、3人とは関係ない、天井へ向けて。

何事か?と思う暇も無く、次の言葉が紡がれたのだった。


「壊れた幻想」


爆発音と共に、それぞれの剣が、小規模の爆発を舞い起こす。


「なに!?」


驚いているのも束の間。天井が破壊され、ガタガタという音と共に、コンクリートと鉄の塊がその場に降り注いできた。


「しまっ、逃げるつもりか!!!」


だが、気がついた時には既に遅い。

辺りには粉塵が舞い散り視界を覆って、その上落盤が彼女と達を襲い、避けている間に方向性を失った。


「くそっ」


3人は一端立ち籠める煙から距離を取って、辺りを見回す。しかし、男の気配はない。


「ちっ、あっち側か!!」


爆発した場所が、崩落してきたコンクリートなどで埋まって地下のトンネルの道を防いでしまっており、おそらく現在シグナム達がいる位置と逆側にいる可能性が高かった。


「逃がしません!!!!」


シャッハはそう言いながら、シグナムを連れて、己の固有スキル旋迅疾駆で粉塵の中、そして崩落の壁までをも突き抜けたが、もはや男は地下の迷宮に身を隠した後。

「魔力反応は?」

シグナムの声に、あわててリインは確かめたが、そこでも予期せぬことが起きてしまう。

「………?あれ、分かりません……これは……ジャミング?」

なに?と驚いた表情を見せる2人。

「まさか、そんな魔法まで使うなんて………ですが、それなら空間転移で逃げてないで、近くにいるかもしれまんね。急いで探しましょう」

「はい」「ああ」

そうして3人は地下の迷宮をさまようことになる。だが、この日、3人は結局再びあの男の姿を見ることは無かったのだった。








“side ???”



唯独り起つは、漆黒の鎧に身を包んだ男。

その男は、片膝をつきデバイスを杖替わりとして辛うじて前を向く、白き衣を纏いし魔導士を見下ろしていた。

少し離れた所には、ヴィータ、スバル、エリオ、キャロ、はやて、フェイトが既に気を失っている。

はやて、フェイト、そして、なのは。

管理局最強と呼ばれる歴戦の勇士3人と戦ってなお、まるで何事も無かったかのように佇むこの男は、もはや正真正銘、人間という枠を完全に超えた存在であった。

実際に、この男は人間と言うにはあまりにも過ぎた怪物である。

とある儀式によって現世に呼び出されたサーヴァントと呼ばれる伝説そのもの。それは地球という星にある史実上の英雄。

取り分けこの男は、その中でも選りすぐりの実力と、この世界においては至高の宝具を持つ存在。

いったい、この世界の誰が知ろう?

彼こそは円卓の騎士に名を連ねるものの中でも最優と唄われた騎士。サー・ランスロット。

この前の紅い騎士すら霞んでしまうほど、いや、比べることすらおこがましいほどの圧倒的実力を持って、なのはの眼前でその存在を誇示していたのだった。























“side ティアナ”


なのは達が、最強の相手と戦っていた少し前、ティアナは士郎とは別行動で、改造されたデバイスの完成具合を確かめていた。

「どうだったかい?」

目の前の、銃の改造を依頼した女性が話しかけてきた。

「ええ、いい感じでした。ありがとうございます」

とある店の地下。そこには、簡易的な射撃場がある。そこで、ティアナは今しがた試射を終え戻ってきたところだ。

手には改造されたクロスミラージュ。原型は保っているが、外見からは元の形が想像できないように装飾されていた。

それ以外にも、改造された点は多々ある。そのどれもが、正式にはあまり使われない、使うことに厳重な規制がされている技術ばかりだ。

「礼はいいさ、こっちも金をもらっているからね。でも、あんた、管理局にまだ戻る気はあるんだろ?そんな技術あっても、ほとんど使えないと思うけどね」

「そう、かもしれませんね。でも、自分がどこまで強くなれるのか試してみたいんです。普通にやってたんじゃ、絶対届きませんから………」

「そうかい……私も魔法の才能が全く無いことに苛立った時期があったけど、中途半端な才能をもっているほうが、逆に辛いかもしれないね。いつまで経っても、夢を捨てられやしない」

ズケズケと発せられる女性の言葉。でも、不器用であるがティアナを気遣ってはいるのだろう。

「いえ、そんなことは……」

反対に言えば、選択肢があるという分だけ、まだ幸福だともいえる。そこをどう考えるかは個々人で分かれるところだろう。

「ま、いいさね。そんな暗い話は。それよりどうなんだい?」

「は?なにがですか?」

「いや、フジムラとはだよ。もう寝たのかい?」

「ま、まさか、そんなことありませんよ。ていうか何でそんな話になるんですか?」

途端に真っ赤な顔になって狼狽するティアナ。その声は上ずっていて困惑がありありと伝わってくる。

ちなみにフジムラとは士郎の偽名の1つである。

「はあ、まだなのかい?割とお似合いだと思うんだけどね」

とたんに、少し暗い顔をして、声を落としながらティアナは呟く。

「…………そんな、私なんて士郎さんには似合いませんよ」

あんなに強くて、かっこよくて、やさしくて、料理や掃除といったことまで、何でもできて(*どうやらティアナの目には士郎はかなり美化されて映っている模様)

機動六課の隊長陣達なら、釣り合うのかもしれないな。ティアナはそんな自虐的な考えをして、また落ち込んでしまった。

暗い顔をして自嘲するティアナにを見て、女性はクックックッと含み笑いをした。

じと目でティアナはそれを睨む。

「なんなんですか?」

「いや、この前、フジムラに同じことを聞いたら全く同じ答えが返ってきてね。いや、本当に似た者同士だね。お前達は」

「!!!!?」

心の中で驚くティアナ。

(えっ?えっ!!?
ていうことは………ん、どういうこと?
自分にはティアナは似合わないって、士郎さんが言ったってことだよね………
ということは、えっと、都合よく考えたら、少なくとも私のことを魅力的だと思ってるってこと……?
え?それは考え過ぎ?えっと?)

そう、ほけーとした顔で逡巡しているティアナを遠巻きから女性は見ていた。

その微笑ましい様子を見て、聞き取れないぐらいの声で呟く。


(この娘はこんな所にいるべきじゃないんだろうね)


そんな時だった。


コール音と共に、彼女の無線に連絡が入る。

「え?どうしたって?街で事件?は?そんなやばいのかい?ああ、ああ、分かった、ああ、とりあえず私も上に行くよ」

その慌てた様子を見ていたティアナが訪ねてくる。

「どうしたんですか?」

「よく分からないが、かなり大きな事件が街でおきているみたいだね。ここじゃ防音が効き過ぎてて分からないし、私はとりあえず地上に行って確しかめてみるけど、一緒にあがろうか?」

「はい」

そうして、2人は階段を駆け上り、店を出た。

中では聞こえなかったが、外は、爆音と、直接は見えないが戦闘の光が舞っていた。街全体で事件が起こっているのは確実だった。


(士郎さん!)


こんな現場に出くわして、何もしない人では無いだろう。


だが、急いで連絡を取ろうとしたが、繋がらなかった。


「しまった。もう動いた後なんだ。すいません、私、行きます」


ティアナは間髪いれず、バリアジャケットを装着し飛びだしていった。


昼間、管理局が来ているだろう中、危険な行為。もしかしたら彼女の所在がばれてしまいかねない状況。


だが、士郎の隣に立つという行為は、既に彼女にとって当たり前となっていたのだった。


















////////////////////////////////////////////////////////////////////////





・今回の士郎は、とりあえずレリックを奪い返すため、また情報を敵から引き出すために動いていました。前者は、管理局に渡ったのでとりあえず成功。後者は、できればやりたかったが、失敗。六課の面々を殺戮してまで、する価値はないと判断。ちなみに、今回の情報はまたしても鎧衣から連絡が入ったって設定です。




・ランスロット登場。

サーヴァントが登場です。

ちなみにランスロットはデバイスを使ってました。例の能力を使ってです。そこは次話でちょろっと書きます。

登場理由は、なのは相手に無双をできる可能性があるサーヴァントを入れたかったからです。

でキャラを考えた結果。

ギル→強いけど、絶対桜に従わないし動かし辛いから×
ヘラクレス(クラス:アーチャー)→ゴットハンド持ってたら倒すには恐ろしく強引な展開が必要になるし……ヒドラの弓は食らったら死んじゃうだろうし調整が厳しい×
セイバー→対魔力Aで無双……いやいや、流石に彼女を登場させると士郎関連で物語がおかしくなるし×
ランサー(5次)→ゲイボルグで無双。死んじゃいますね×通常攻撃じゃ無双は無理っぽいし……でも、性格からしたら動かしやすいから本当は使いたかったです。

というわけでランスロットwithデバイスが結局残りました。ちなみにクラスはセイバーです。しかも、対魔力Aが付いているという理不尽極まりない独自設定です。
そのぐらいしないと、無双はできなさそうですし。









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