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No.4247の一覧
[0] There is no angel (リリカルなのはsts×Fate R15)[ゆきほたる](2012/03/25 16:02)
[1] prologue そして始まりを (前編)[ゆきほたる](2009/09/11 03:01)
[2] prologue そして始まりを (後編)[ゆきほたる](2009/07/05 00:19)
[3] 第01話  届かぬ夢[ゆきほたる](2011/02/09 02:37)
[4] 第02話  エース・オブ・エース[ゆきほたる](2011/02/09 00:35)
[5] 日常編part01 (注:日常編を飛ばすと本編が分からなくなります) 短編×3+没ネタ×1[ゆきほたる](2011/04/16 12:08)
[6] 第03話  帰路~迷い子2人~[ゆきほたる](2011/02/09 00:38)
[7] 日常編part02 短編×2[ゆきほたる](2011/04/16 12:07)
[8] 第04話  運命の悪戯・1/4 ~魔導士殺し~[ゆきほたる](2011/02/09 00:44)
[9] 第05話  運命の悪戯・2/4 ~交差~[ゆきほたる](2011/02/09 00:45)
[10] 第06話  運命の悪戯・3/4 ~白い悪魔vs死神見習い~[ゆきほたる](2011/02/09 00:46)
[11] 第07話  運命の悪戯・4/4 ~運命の悪戯~[ゆきほたる](2011/02/09 00:47)
[12] 日常編part03 短編×2[ゆきほたる](2011/04/16 12:09)
[13] 日常編part04 短編×1[ゆきほたる](2011/04/16 12:09)
[14] 日常編part05 本当の依頼[ゆきほたる](2011/04/16 12:09)
[15] 日常編part06 守るべきもの [ゆきほたる](2012/03/25 15:57)
[16] 第08話  羽を捥がれた騎士VS剣を持つ銃使い[ゆきほたる](2012/03/25 15:50)
[17] 第09話  螺旋回廊  [ゆきほたる](2012/03/25 15:53)
[18] 第10話  不協和音[ゆきほたる](2011/04/16 14:39)
[19] 設定・時系列、等[ゆきほたる](2011/04/16 12:43)
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[4247] 第07話  運命の悪戯・4/4 ~運命の悪戯~
Name: ゆきほたる◆2cf7133f ID:647a93e7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/02/09 00:47




六課から離れて、もう4ヶ月
             

本当にいろいろなことがあった。本当に………





でも、その間、機動六課の皆のことを忘れたことはなかった。

スバルはちゃんと元気にしているかな。私がいなくても、ちゃんとやってるのかな、とか。

エリオやキャロも仲良くやってるのかなとか。

他の隊長たちや、副隊長たちも相変わらずかなとか。

そして、なのはさん。

この人のことを考えると、胸がざわめきだして、平常心を無くしてしまう。

でも、この人はティアナのことを気にかけていてくれてたはずだっていうのは、本当は良く知っている。

あの人は、優しいから。

今は別件で六課を離れているらしいけど、きっと心配してくれてるんだろうと、すごく責任を感じてしまっているのではないかと、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

ごめんなさい、ごめんなさい、と、何度も何度も心の中で謝っていた。

嫉妬と謝罪。ずっと、ずっとこの人のことを考えていた。






なのに、それなのに










【第07話 運命の悪戯・4/4 ~運命の悪戯~】










時が止まったかのように、表情が固まる。

頭の中が真っ白になるということはこういうことを言うのだろうか。

起こっている出来事がまるで理解できない。

「え……どういう……こと?」

紅い魔導師の味方であったその少女

変装を解いたその素顔は、なのはのよく知る顔だった。

「なんで、ティアナが…………?」

目の前のどう考えても彼女の教え子のティアナ・ランスターで間違いない。

今は、青ざめた表情で俯いている。


分からない、どうやっても理解できない事実が目の前に突きつけられる。


嫌な感じの汗がべっとり背中に染み付き、ド、ド、ドと動悸がおかしな音を立てて鳴り響く。

「ねえ……どういうこと?」

「…………」

返事は無い。

ティアナはなのはの視線に併せないよう俯き、口をギュッと結ぶ。

考える……信じたくない真相を必死に直視しようとする。

誰かの変装……のはずはない。いまそれを解いたばかりなのだから。


それに、先ほどの戦闘を思い出す。
幻術、2丁拳銃、戦闘形式は変わっているが、銃の構え方や足運びの癖。
簡単に真似などできない部分、それらは間違うことなきティアナの動きだった。


ようするに……本物


つまりティアナは……………敵?


裏切った……?


それとも………最初から………スパイ?

ううん、違う。後者はあり得ない。

だってティアナはあんなに頑張って執務官を目指していた。

ちょっと方法を間違えちゃって、あの時流した涙に嘘は無い。


なら………なぜ?


「どういうこと………?」

「……………」


馬鹿みたいに同じ言葉を繰り返す。

でも答えない、ティアナは答えようとしない


「ねえ、何か言ってよ!!!!!」


処理できない頭で、つい声を荒げてしまう。

ティアナは、ビクッとなのはの叫びに体を震わせる。

それでもティアナは何も言わなかった。


「………知ってるの?その人は殺人犯なんだよ」


もしかしたら、もしかしたらティアナは何も知らずに騙されているのではないか?

分からないけど何か誤解があるんじゃないか?


そう思って放った言葉。

でも、沈黙は雄弁だった。

表情が悪いのはそのままだが……ティアナは特別驚いた表情を見せなかった。


つまり、すでにそれを知っているということ。


騙されているのではないかという、淡い希望は折れる。

もう何も考えたくない気持ちを必死に抑えて、さらに考える。


ティアナとは決して長い付き合いではない。

でも、ティアナはあんな事件に加担する子では決してなかった。

じゃあ、なんで?

なんで、こんな見たこともないバリアジャケット、改造された銃を身に纏い、あまつさえ管理局らしからぬ動きを身につけなのはに立ち向かったのか。


それは…………なのはが六課を離れていた間に変わってしまったていうことだろうか?


ティアナは何も話そうとしない。

今、なのはが推測できる範囲で考えられるのは………

最後の訓練のあの出来事。

それで………心の傷を負ってしまったとか…………

そこにつけ込んで……誑かされたとか?


考え過ぎ?


他には………元からこの男の人のことを知っていた……恋人とか。だから、好きだから管理局……私を敵にまわした……?

違う。それだけでは、この改造されたデバイスや、さっきの戦闘方法が説明できない。


結局、考えるだけでは何もわからない。


「ねえ、お願い。何かあるなら話してよ。このままじゃ……ティアナも犯罪者になっちゃう」


それも、ただの犯罪者ではない。

自ら、あんな事件に荷担していたってことになれば、もう更正の余地はないって思われる可能性は極めて高い。


「もう、管理局に戻ることも出来なくなるんだよ?それじゃティアナの夢も叶えられなくなるんだよ?ティアナは絶対に犯罪なんかしない。何かあるんでしょ、お願いだから話して!!!」


ティアナがぴくっと反応して、ようやく、そこで口を開いた。


「残酷なことを言いますね…………私なんかじゃ執務官になんて……………」


息を飲む。

まさか……本当に……あのことで……


「何で!?確かにあの時は失敗したのかもしれない。でも、ティアナは、本当に才能あるんだよ!?自分じゃ気づかなかったかもしれないけど、訓練中もどんどん成長していったんだよ。ティアナなら絶対執務官になれる!」


「………正直、なのはさん達みたいな才能を本当に持っている人に言われても説得力ありませんよ……昔のなのはさん達を見ました。なのはさん達の9才の頃にすら私はとどかないじゃないですか」


「…………」


あれを……見たんだ………でも


「………確かに私は魔力量は他の人よりもあったのかもしれない。
でも、魔導士って言うのはそれだけじゃ決してない。ティアナも十分凄いんだよ。私もたくさんの教え子達を見てきたけど、その中でもティアナは覚えが早いし、なによりも誰より努力してる。私は絶対に執務官になれるって思ってる!!!」


心からの思いで、必死になりながらも、まっすぐ澄んだ目で見つめるなのは。


真摯ななのはの言葉に感じるものがあったのか、ティアナの頑なな様子が、少しだけ和らいだようだ。


それはなのはが本音で話していることが伝わったことと、


『誰よりも努力している』


ということを、なのはが言ったからだろう







“side ティアナ”


なのはは知らないが、今のティアナにとって『夢に向かって努力し続ける』ということは、本当に大切な意味を持っていたから。


だから、努力していると言われて、敵として現れた自分にあんなに必死になって説得してくれて、感じるものがあったのだろう。


本当は分かっているのだ、高町なのはに対して、ただ嫉妬しているだけということは。
本当に分かっているのだ、高町なのはが優しい人であるということは。


4ヶ月前のティアナだったら、なのはが必死に説得すれば、反発心を抑え、再び六課に戻っていたかもしれない。


だが、4ヶ月の間に様々な価値観に触れてきた。管理局への疑問、本当に才能の持たない人たちの思い、正義の味方。

管理局で執務官を目指し続けることが本当に自分のやるべきことなのか?

分からなくなってきた。心が揺らいできた。



そして、それ以上に退けない理由がある。



なによりも、衛宮士郎を、彼女の背後にいる、不器用な生き方しかできない彼をほっとけないのだ。

この馬鹿な人は、今、管理局に捕まったら、“自分に都合の悪いこと”、だけしか話さないだろう。あの挑発する口調で。

もし、ティアナが弁解して、うまくいって刑が軽くなっても、管理局に使われるのがオチだろう。


ちらりと士郎の方に目をやる。

何者にも代え難い感情が蠢いて、心を満たす。

彼が何かに属するというのは考えられない。思ったように、信念に生きて欲しい。


そして、自らも共に………



“パリン“と音と共に、話ながら組んでいた術式でバインドを解除する。



うれしかった。

敵として現れた自分のことを一生懸命説得してくれて嬉しかった。

信じてくれて嬉しかった。

執務官になれるといってくれて嬉しかった。


でも


「でも………この人を見捨てるわけにはいきません」


ティアナの真っ直ぐなのはの瞳を見返した。


例え、どんなに分の悪い、戦いになるとしても


それでもやるんだと、覚悟を決めた。








“sideなのは“





分からない、何故この男のことを庇うのかがなのはにはわからない。

勝ち目はほとんど無いだろうことは分かっているはずなのに、それでも立ち向かってくる理由が分からない。

「なんで?なんでそんなにその人のことが大事なの?分かってるの?その人は殺人犯なんだよ?」

「それでも………です」


誤解、そこには小さな誤解がある。


なのはの刺しているのは例の連続殺人犯。

ティアナが捉えているのはニブルヘルムの死神


どちらも殺人犯であることには違いない。

故に、2人の間の微妙なずれが生じている。


「そんな…………」


なのはは思った。

この男が、ティアナの倫理観を破壊するぐらい、大きな存在になってしまったんだと。

非道にも心の弱い部分につけ込んで………


でも……いつのまに?


「いつのまに…………」


4ヶ月前には無かった、管理局では身に付かない動きや、改造されたデバイス。


「いつのまに………この男の人とそういうことになったの……六課の訓練もあったはずなのに」


なのはがいなくなったとはいえ、訓練は行われていたはずだ。そんな時間はいったいどこに………

いつのまに、この男にティアナは惑わされてしまったのか。

ずっと、ずっと、執務官を目指して頑張ってきた、兄の汚名を晴らすと頑張ってきたティアナの価値観を捻じ曲げるまでになったのか?

六課の仕事も大変なはず。管理局員でも無い人間に接触する機会なんて殆どとれるはずないのに。


だが、その問いに、思いがけない反応が返ってくる。


「え?」


ティアナは、ぽかんと、そうつぶやいた。


「え?」


ティアナの純粋な驚きに逆になのはの方が驚いた。


「どういう………ことですか?」


「どういうことって………?」


「六課の訓練って…………どういうことですか?」


「…………?だから…………訓練もあったはずなのにどうやって、その人と………デバイスも、あの動きも簡単に身に付くものじゃ………ヴィータちゃん達の訓練もすごく厳しいのに、いつのまに………」


言ってから、『しまった!!!!!』と総毛立つ。どんな失言をしたのかは分からない、

分からないが……まるで爆弾のスイッチを押してしまったかのようないやな予感がした。









“side ティアナ


『訓練もあったはずなのに…………』


一瞬言っている意味が分からなかった。

何を言っているんだろう………誰がどう考えても、士郎と会ったのはティアナが六課を出て行った後のことだと推測できる。

なぜ、六課にいた時のことをいうのか理解できなかった。

「・・・・ヴィータちゃんの訓練も厳しいはずなのに」

言葉からすると、高町なのはは現在もティアナが六課にいると思っていると考えて間違えない

(…………なんで?)

そこで、ふとある事実を思い出し、そこでようやくある一つの結論が導き出される。


『高町なのはは、あれからそのまま別部隊に配属された』


そのことは、鎧衣という男の人が話してくれた……というより勝手に喋った


あの日、ティアナが六課を飛び出したちょうどその日、かなり大きな事件が起こったらしい

なのはさんは偶然そこに居合わせ、それで、その対策として突如、そのまま本局の方の別部隊に異動になったと聞いた。

責任者の1人で、休む暇が全くないほど忙しいとも。


そして………どうやら………いや、そんな馬鹿なことあるのだろうか?

あり得ていいのだろうか?

あって、いいはずがない。でも……あの言葉から、推測できるのは………


乾いた声で、なのはに問いかける。


真実を確かめるために。


「…………は……は…はは、まさか…………知らなかったんですか?」


「………………何を?」


どうやら、なにか失言してしまったことに気がついたらしい。だが、それが何か分からずに、困惑している。


「何か分からないんですか…………?」


「………………」


答えられないなのは。おかしいぐらいに焦っているのが見て分かる。

そして、ティアナは事実を告げた。


「なのはさん、知ってました?私、なのはさんと最後に会ってから、六課から逃げたんですよ……それから4ヶ月、管理局にはずっと戻っていません。この人と、一緒です」


「………え………………え!!?」


狼狽し、さっと血が抜けたかのように青くなるなのはを見て、本当に知らなかったのだと、確認してしまう。


あっていいはずないことが、現実であると理解してしまう。


同時に、黒く、ドロドロした感情が沸々と浮かび上がってくる。

どうしようもなく、止まらないほどの熱に変わっていく。


「は……はは、ほんとに………そうなんだ。知らなかったんだ。心配してるようなこと言って………
そうですよね。私とのことなんか、大事件に比べれば河原の小石に過ぎませんよね………流石、空のエース・オブ・エース」


なのはは何か言おうとしたが、口をぱくぱくさせるだけで、言葉を見つけることが出来ないでいた。


ティアナは知らないが、六課に戻ることが出来ずとも、ティアナの様子を何度かはやてに聞いてみたりした。だが、大丈夫だと言われたし、電話で話したりする内容でもないと思った。

忙しい現状、電話で中途半端に蒸し返すのもティアナをますます混乱させるだけかもしれないから、今度、面と面を向えて時間があったときにじっくり話そう。

はやて達が、これ以上なのはに負担を掛けないため、ティアナのことを隠し続けていたことを知らなかったなのはは、そう結論づけていたのだ。


だが、そんなことはティアナの知る由もない。


冷静だったら、何か事情があったんだと考えることができるのかもしれない。


だが、この4ヶ月、ティアナは悩んで、悩んで、悩んで、ずっと、悩み続けてきたのだ。その中心にあったのは、高町なのはのことだったのは言うまでもない。


嫉妬であれ、謝罪の念であれ、ずっとなのはのことを考えていたのだ。


なのに、その肝心の高町なのはは、心配することはおろか、ティアナが六課から脱走したことさえ知らなかったという。


何の冗談だろう?


どんな忙しかろうと、電話なりなんなりでティアナの様子を聞くことぐらい出来たはずだ。

それをしなかったのは、所詮ティアナなど、彼女の大勢いる教え子の1人に過ぎないから。

この前のことも、所詮、数いる教え子とのトラブルの中の1つにすぎないから。


だから、知らないなんてことが起きた。


大事件を前にしたら、ティアナのことなんて些細なことでしかないのだから。


そう、たった2週間ちょっとの付き合いでしかない、特に優秀でもない凡人のティアナなど、気に掛ける価値はない。

所詮ティアナはそこらの訓練生にも埋もれるただの凡人なのだ。

スバルのような魔力も無い、エリオのように9歳でBランクといった才能も無い、キャロのようなレアスキルも持っていない、目の前の女なんて比べることすらもがおこがましい、ただの魔導士。


思考は悪循環し、ドロドロした感情にさらに拍車をかける。


ブチリと、なにかが切れたような音がした。


死んだ。理性が死んだ。感情が壊れた。


憎しみを通り越して、分けの分からない殺意にも似た感情がティアナの名かを駆けめぐる。



「クロスミラージュ……オールフリー」



『Yes………
自己制御停止
オールリミッター解除
許容値限界突破機能稼働
――――――――――非殺傷設定解除』


明らかな憎悪を持って、高町なのはを睨み付けた。







“side なのは”







「違うのティア「なにが違うんですか?知らなかったですよね、私のこと」

何か言わなきゃと思って、出した言葉を遮られる。

否定できない。どんな事情があれ、彼女がティアナのことを知らなかったのは本当だから。

ここでうまく、嘘を言えるほどの器用さはなのはには無い。言い訳が言えるなのはではなかった。


「もう……いいです」


そう言って、ティアナは大規模の魔法陣を描きながらなのはに向かって銃を構える。同時にガシャン、ガシャン、ガシャンと、ティアナのスペックからすると、過剰なまでのカードリッジロードが繰り返された。


「くぅっ」


明らかに許容値を超えた行使に、ティアナは痛みを堪えるように顔を歪ませる。

だが、苦痛に耐えながらも、それに構わず、銃を構え一点に集中させるように魔力を高めていく。


「やめてっ!!!それじゃティアナが………………えっ!!!?」


目の前の光景を見て、今度こそ、総毛立つ。

ティアナはなのはの言葉を完全に無視、いや、聞いたせいで余計に逆上したのかもしれない。

今度は、ティアナの周りから、光……魔力が構えた銃に向かって集まってくる。


(う………そ………いつのまに…………)


集束魔法。


戦闘中、周りに飛び散った魔力を集束し利用する魔法。

なのはのスターライトブレーカーもそれにあたる。

これだけでも、驚くべきこと。

その上、カードリッジロードも併用するなんて………


(このままいけば、魔力値は、AAA……いや、それ以上!?そんな………)


一体いつの間に、魔法までこんな成長したのか?


膨れあがる魔力。


だが、


突然、ぐにゃりと、その魔法陣が形を歪ませた。


「え?」


疑問に思う暇も無く、魔法陣はさらにその形を崩していき、魔力が集まっている丸い球体もアメーバ状にその形を変えていく。


それは何を意味するのか?


(暴…………走………!!!?)


そう、当たり前だ。

そんな芸当、不可能に決まっている。

集束魔法を使うことでさえ、たった四ヶ月で出来るはずがないのだ。

それをカードリッジロード、しかも限界を超えて併用するなんてできる可能性は皆無。自殺行為以外の何者でもない。

暴発するに決まっている。


ティアナは自分の負担を度外視していただけではなかった。

もはや、ティアナは怒りで完全に自分を見失っていたのだ。

制御できるかどうかなんて概念すらが頭からすっ飛んでいた。


「止めてえええええーーーーーーーー!!!!!!!」


声と同時に、なのははティアナに向かって翔ける。

一刻も早く止めさせないと、ティアナがとりかえしのつかない体になってしまう。


(お願い、間に合って!!!!!)


ティアナまで、ほんの僅か。


なのに、今まで歪みながらも何とか保っていた魔法陣が、ここにきて完全に壊れる。


同時に、1点に集約された魔力が弾けた。


ティアナの制御技術か、それとも偶然か、最悪なことに、その魔力はティアナの方向には行かず、目と先にであるなのはの方に解き放たれた!!!!


(しまっ…………た)


迫り来る魔力に反応し、オートで張られるバリア。


だが、それはあまりに展開の速さを重視しすぎた即席のモノ。


「くっうううううううう」


残り少ない魔力を込めるも、その攻撃はバリアを浸食し、バキ、バキ、バキ、という音と共に、亀裂が走る。


まずい


そう思った瞬間には、その守りを突破してしまっていた。


「きゃあああああああああ」


悲鳴とともに、吹き飛ぶ。まるでポールのように飛ばされて、ダンッという音と共に地面に叩きつけられ、さらに勢いで転がり廻っていく。

そして、ゴロゴロ転がった後、勢いが止まる。しかし、なのはは、一向に動く様子を見せなかった。

バリアジャケットは、至る所が破れ、あちらこちらが血で染まっていた。








その、光景を……ティアナは呆然と見ていた。


「嘘……………………勝った?なのはさんに勝っ………」


んだ。そう思うや、ティアナも緊張感が切れたのと、過剰な魔力行使からくる体への負担からふらっと倒れて意識が途切れてしまった。









「は……はぁ…うぅ」


対するなのはは、まだ意識はあった。


あの直撃を受けて、まだ生きていられたのは、なんとかバリアが間に合ったからなのと、暴発したのが、ちゃんとした魔法では無く、魔力をぶつけただけのモノだったから、貫通性を持たず、魔力が大分周りに拡散したからだろう。

それでも、殺傷ダメージで放たれたその魔法は、バリアジャケットをも貫通して、なのはの体に襲いかかり、致命的なダメージを与えた。


痛い。

全身血だらけで、痛みを感じない所なんて無い。

もはや、立つどころか、腕一本動かすことも出来やしない状態だ。


だが、精神に受けたダメージはそれをも上回った。


(ごめん、ごめん、ティアナ………)


彼女の愛する教え子にこんなことさせてしまったこと。

苦しいぐらい、悩みつくしたはずなのに……その原因を作ったのは、高町なのはであるのに。

それなのに、ティアナのことを知りもしなかったなんて………

しょうがなかったなんて、口を裂けても言うことはできない。


『なのはさんにとって私は河原の小石―――』


情けないぐらい、否定することができない。

だって、それは事実。あの凄惨な光景ばかりが目に浮かび、ティアナのことははやてと合う時などにたまに思い出す程度だった。正直、ほとんどの時間は忘れたままだった。

今までも他の訓練生と何回か似たようなことがあった……だから……決して軽視してた訳ではないけれど……なのはにとって“特別“なことではなかった。

才能の無さ……これが個人にとってどんなに大変な問題になるのか。そして、自分がどう見られるのかを、深く考えてなかったんだ。

あの無茶は、それでティアナが本当に追いつめられていたからこそ起こした行動だった。

あれはティアナからのサインだったんだ………それを私は………!!!!



(最低だ……私)



地面に体が崩れ落ち、もう指一つ動かすのも難しい状態の中、全身に痛みを尚超えて、己の怪我をも無視し、なのははただティアナに対しての謝罪だけを繰り返していた。











どのぐらいたったのかは分からない。

流血で意識が朦朧とする中、気がつくと………あの男が立っていた。片手にはさっき投げた槍を持っている。

しかし、なのはの体はピクリとも動いてくれない。

男は、ティアナを担ぎあげると、なのはの方に向かってくる。

(……殺すの?)

状況はさっきと真逆。今度は、なのはの方が圧倒的に不利……そもそも勝負すらできない状況だ。

男はティアナをおろして、地面に這いつくばっているなのはをおもむろに拾い上げ、傷口の所を見定める。

「何を……?」

何故か男は、体の状態を確かめ、簡単な応急処置をしたのだった。

「運がいいやつだ。これなら後遺症も残ることも無いだろう」

そう言って、なのはをまた地面に倒し、再びティアナを持ち上げた。

「なんで……?」

こんなことをするのか?男の予想外の行動に頭がついていかない。

一瞬男は黙り込み、何かを考える素振りを見せてから、なのはに言い放った。

「…………ただの礼だ。高町なのは」

「………え?」

「いや、君のおかげで随分優秀な駒を手に入れることができたからな。
君が徹底的に叩きのめしてくれたおかげで、ずいぶん落ち込んでいたよ。彼女は。
ちょっと甘い言葉をかけてやればすぐだった。
人殺しに加担しているとも知らないで健気に尽くしてくれたよ。
しかも、今回のことで、今まで以上に奉仕してくれるだろうな。いや、本当にありがたい。これはその礼だとでも思ってくれ」

「な」

何を………言ったのだ?この男は!?

「あ、あなたが、あなたのせいでティアナは!!!!!!!」

「くっ、地べたに這いつくばって言ってもなんの恐怖も無いな」

男の言うとうり、なのはは地べたに見っともなく這いつくばったままで叫んでいた。

手が、動かない。頑張っても、頑張ろうとしてもぴくりとも動いてくれない。

くやしい、くやしい、くやしい、くやしい、こんな男にティアナが!!!!!

「あなたみたいな人に!!!!!」

必死の形相で睨みつけるなのはだが、男は何処吹く風だ。

「く、自分で追い出しておいて今更。
もう彼女は、退路も断たされたからな。これから少しずつ調教していくことにしようか。
簡単に、人を殺すことができるように。
まあ、それが失敗すれば…捨てるだけか。
……これ以上は、管理局の応援が来るかもしれないからな。では、機会があればまた会おう」

そう最後ににやりと笑って、男は気絶したままのティアナを抱えて走り去っていく。


「待っ、ティアナあああああああああああ」


声にならない声で叫び続ける。だが、殺傷ダメージによる攻撃のせいか、魔力が全く持って無いせいか、どんなに願っても体は一向に動く気配を見せない。

いま、動かなきゃ、今動かなきゃティアナは取り返しのつかないことになってしまう。

分かっている。なのに、どんなに、どんなに思っても体は動かない。

くやしくて、くやしくて、情けなくて、もう壊れそうに。

それでも、何もできないまま、その男が逃げていくのを、ただ、ただ見ていることしかできなかった。








…………でも、どんな悔しくても、相手がどんなに悪党だろうが、結局悪かったのは自分。

ティアナをあの道に走らせたのは、高町なのは。

その事実は、決して変わらない。

















“side 士郎”



張り巡らされた地下道を士郎は走っていた。

(これでいい)

ここまで言えば、ティアナは完全に被害者だ。今後、管理局に捕まっても軽い刑で済むだろうし、おそらくかなりの地位にあるだろう高町なのはが全力で庇ってくれるはずだ。

高町なのはとティアナの間にどんなやり取りがあったのかは、分からない。だが、あの傷、おそらくティアナは殺傷設定の攻撃までしてしまったのだろう………

(くそっ!!)

なのはと同様に士郎も自分自身の不甲斐なさに憤る。

(ずっとティアナを連れまわしたばっかりに)

彼女が士郎と共に行動するのを是としなければ、管理局に返していれば。そうすれば、こんなことにはならなかった。

危険と思いつつも、結局止めなかった。

彼女と居る心地よさに流されてしまった。


だが、いくら後悔しても、どうしようもない。


高町なのはにも悪いことをした。士郎の言動は彼女の傷をこれ以上なく抉ってしまっただろう。

しかし、今の士郎にはティアナに最低限の立場を残してやることしかできなかった。

せめて、自己を責めず、士郎のことを恨んでくれるといいのだが。


(魔導士殺しとして動いたはずが、結局最後には感情に走ってしまったな………)





「ん」

その呻き声と共に、ティアナの目がそっと開く。

「えっと、私……」

何故士郎の腕の中にいるのか、少しの間逡巡した後、

「あ」

じわじわと先ほどのことを思い出してきたのだろう。目は潤みだし、顔がくしゃっと崩れていく。

「士郎さん、私、私、うっ、ううっ」

溢れんばかりの涙が零れ落ちてきた。

「―――――」

士郎は黙って、ぎゅっと、泣きじゃくるティアナを抱きしめる。

「わ、わたし……なんて、なんで、うっうう、」


ティアナは士郎の胸の中で、ただ、ただ、泣いた。

もはや、何に対して泣いているのかも分からない。

あらゆる感情が蠢いては消えていく。



別離の時がきた。



もう……帰る場所は無くなった。














/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////




番外編1話での、はやての言葉は、この展開に対する伏線のつもりでしたが、どうだったでしょうか?

無理やりかも知れませんが、眼をつぶってください(>_<)

ここまで書いてようやく2合目……まだ先は長いです(汗)


多分、このタイトルや、今までの展開から分かったかと思うのですが、リリカル×Fateという熱い物語同士のクロスでありながら、目指すのは“天使のいない12月”や、“君が望む永遠”的な人間関係を弄っていくという方向性を考えています。

だからというか……戦闘は多いのにも関わらず、熱い戦いとかで魅せようとか思っていないから、戦闘は変なのになっていくかもしれません……

あからさまな、型月>>>リリカルは、暗くするための必須要素です。

バトル作品なら拮抗している方が面白いんでしょうけどね。













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