まいったな……今の状況をゲームなどで表すなら詰みだろう。
俺は車の上に避難し奴らからなんとか逃れられたが車のしたには奴らがうじゃうじゃと手を伸ばし俺を捕食しようとしている。
なんともおぞましい光景だった。
車から車に飛び移ろうにも取れる助走はだいたい1mにも満たない。
それに比べ次の車まではだいたい2m程ある……絶望的状況だった。
そもそも何故この状況に陥ったかそれは今から三時間前に遡る。

三時間前俺は何故か学校をサボりホームセンターに居た。何故今日に限って学校をサボったのかは今となってはどうでもいいことだ。
ホームセンターで何を買う訳でもなく俺は工具コーナーで日曜大工でも始めようかなどと考えながらバールを手に取っていた。
バールってなんで曲がってる方の先端が赤色なのだろう……そんなどうでもいいことを考えているとホームセンターのレジ辺りにあるテレビから信じられないニュースが流れている事に気がついた。
「えーただいま美空市の各地で連続殺傷事件が起きています犯行の手口はどれも噛みつきによるものですべての事件の関連性はわかりません美空市の皆様は危険ですので外に出ないようにしてください」
噛みつきで人が死ぬのかよ。
そんな事を思っているとホームセンター中に響き渡る程の悲鳴が聞こえてきた。何事かと悲鳴のする方へ行くとそこには男が女に覆いかぶさるように倒れていた。

こんな公衆の面前でお盛んなこと

そんな事を思い声をかけてみるとそんな生温いものじゃなかった。
男が女を貪っていた。幸いグロ耐性はついていたと言う設定はよく小説などでも目にするが流石にこれを見て吐かない奴はクレイジーだと俺は思いながら盛大に男にゲロをぶちまけた。
男はゲロまみれになっても尚女を貪り食うのをやめず俺は恐怖を感じた。そしてこのままここに居てはやばいと思いバールを持って店を後にした。
店の外に出るとさっきの男の様に様子がおかしい奴らで溢れかえっていた。そして俺は近くにあった車の上に飛び乗った……そして現在に至る。
とりあえず持っているものを俺は確認した。そして再び絶望した。
電話のできない携帯にバールそしてお金をいくらか……それだけだった。
この状況をどうにかして打破できないか……頭をフル回転させ俺は考えた。
そしてある考えを思いついた。
奴らがゾンビであるのなら音に敏感なはず……そう考え俺は携帯に10秒後アラームを鳴るように設定しなるべく遠くの方へと投げた。
我ながら中々のアイデアだった。
しかし携帯は10秒経ってもアラームが鳴らなかった。
それもそのはず硬いコンクリートに打ちつけられた携帯は見事に壊れていた。
もうこれは終わった……そう思った時お金を持っている事に気がついた。
小銭を手に持てるだけ持つと今度は失敗しないように遠くの方へと投げた。
小銭は10秒ほど中を舞うとコンクリートにチャリンと言う大きな音とともに落ちた。
そしてゾンビ共は音のなった方へとゆっくりと歩いて行った。
この時俺はてっきり音に釣られたのかと思ったがそれは違っていた。お金の落ちた方向に生存者と見られる男が車の下に隠れていたのだった。
男は慌てて車の下から出ようとするが時既に遅し……ゾンビの餌になってしまった。
男の人には悪いがこれも生き残る為そう思い俺は急いでその場を離れた。
ホームセンターを離れようとした時1匹のゾンビが俺の事に気付き襲いかかって来ようとしたがバールで頭を殴ると一撃で沈んだ。
ゾンビの事は映画などで何回か見たことがある程度の知識だったがバールがこれ程強いとは思ってもみなかった。
そして今までの事から俺は三つの事を学んだ。
一つ目はゾンビは音に反応すること。
二つ目はゾンビの優先順位が人間<音だと言うこと。
そして三つ目がバールは強いということだった。
音も立たずに釘なども抜けるし威力も充分……もしかしたらゾンビ相手だったら銃より強いんじゃないかと思いながら銃を手に入れる為に近くの警察署へと向かった。

続く