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No.41025の一覧
[0] とある幻想の弾幕遊戯Ⅱ(とある魔術の禁書目録×東方シリーズ)[ベリーイージー](2017/07/15 20:30)
[1] 第一話 学園都市悲喜こもごも・一[ベリーイージー](2015/04/29 22:53)
[2] 第一話 学園都市悲喜こもごも・二及び二の裏[ベリーイージー](2015/04/29 22:55)
[3] 第一話 学園都市悲喜こもごも・三[ベリーイージー](2015/03/28 14:27)
[4] 第一話 学園都市悲喜こもごも・四[ベリーイージー](2015/03/28 14:28)
[5] 第一話 学園都市悲喜こもごも・五[ベリーイージー](2015/03/30 16:03)
[6] 第一話 学園都市悲喜こもごも・六(終)&六の裏[ベリーイージー](2015/04/11 20:13)
[7] 第二話 幻想の命・一[ベリーイージー](2015/04/17 22:21)
[8] 第二話 幻想の命・二[ベリーイージー](2015/04/17 22:22)
[9] 第二話 幻想の命・三[ベリーイージー](2015/05/09 19:47)
[10] 第二話 幻想の命・四[ベリーイージー](2015/05/11 20:10)
[11] 第二話 幻想の命・五[ベリーイージー](2015/05/11 20:11)
[12] 第二話 幻想の命・六[ベリーイージー](2015/05/30 20:33)
[13] 第二話 幻想の命・七[ベリーイージー](2015/05/30 20:33)
[14] 第二話 幻想の命・八[ベリーイージー](2015/05/30 20:34)
[15] 第二話 幻想の命・九[ベリーイージー](2015/06/01 00:59)
[16] 第二話 幻想の命・十[ベリーイージー](2015/07/11 19:32)
[17] 第二話 幻想の命・十一[ベリーイージー](2015/06/06 19:52)
[18] 第二話 幻想の命・十二[ベリーイージー](2015/06/20 16:56)
[19] 第二話 幻想の命・十三[ベリーイージー](2015/06/20 16:56)
[20] 幻想の命・エピローグ&第三話序章[ベリーイージー](2015/07/11 19:33)
[21] 第三話 無自覚な迷子達・一[ベリーイージー](2015/07/16 00:54)
[22] 第三話 無自覚な迷子達・二[ベリーイージー](2015/07/27 19:51)
[23] 第三話 無自覚な迷子達・三[ベリーイージー](2015/09/05 14:25)
[24] 第三話 無自覚な迷子達・四[ベリーイージー](2015/09/05 14:26)
[25] 第三話 無自覚な迷子達・五[ベリーイージー](2015/08/10 21:11)
[26] 第三話 無自覚な迷子達・六[ベリーイージー](2015/09/05 20:51)
[27] 第三話 無自覚な迷子達・七[ベリーイージー](2015/09/05 20:50)
[28] 第三話 無自覚な迷子達・八[ベリーイージー](2015/10/02 20:55)
[29] 無自覚な迷子達・九(終)[ベリーイージー](2015/10/02 20:55)
[30] 3話エピローグ&3.5話『再会』[ベリーイージー](2015/10/02 20:56)
[31] 第四話 希望を求めて・一[ベリーイージー](2015/10/16 00:09)
[32] 第四話 希望を求めて・二[ベリーイージー](2015/10/22 00:04)
[33] 希望を求めて・三[ベリーイージー](2015/11/08 18:43)
[34] 希望を求めて・四[ベリーイージー](2015/11/08 18:48)
[35] 第四話 希望を求めて・五[ベリーイージー](2016/12/23 19:09)
[36] 第四話 希望を求めて・六[ベリーイージー](2015/11/19 00:15)
[37] 第四話 希望を求めて・七[ベリーイージー](2015/11/28 20:29)
[38] 第四話 希望を求めて・八[ベリーイージー](2015/11/29 01:29)
[39] 幕間&希望を求めて・九[ベリーイージー](2015/12/05 13:59)
[40] 希望を求めて・十(終)[ベリーイージー](2015/12/05 14:00)
[41] 第五話 狂信と敬心・零 [ベリーイージー](2016/11/06 23:47)
[42] 第五話 狂信と敬心・一[ベリーイージー](2016/10/29 16:04)
[43] 第五話 狂信と敬心・二[ベリーイージー](2016/02/05 20:59)
[44] 第五話 狂信と敬心・三[ベリーイージー](2016/10/29 16:06)
[45] 狂信と敬心・四[ベリーイージー](2016/02/25 21:37)
[46] 狂信と敬心・五[ベリーイージー](2016/02/25 21:57)
[47] 第五話 狂信と敬心・六[ベリーイージー](2016/03/11 18:54)
[48] 第五話 狂信と敬心・七[ベリーイージー](2016/03/11 18:55)
[49] 第五話 狂信と敬心・八[ベリーイージー](2016/03/14 21:08)
[50] 第五話 狂信と敬心・九[ベリーイージー](2016/03/26 18:52)
[51] 第五話 狂信と敬心・十[ベリーイージー](2016/04/04 20:43)
[52] 第五話 狂信と敬心・十一[ベリーイージー](2016/04/24 16:45)
[53] 狂信と敬心・十二(完結編・上)[ベリーイージー](2016/04/24 16:46)
[54] 狂信と敬心・十三(完結編・下)[ベリーイージー](2016/10/29 16:07)
[55] 閑話 不和と不安と一[ベリーイージー](2016/06/04 18:20)
[56] 不和と不安と・二[ベリーイージー](2016/06/10 17:24)
[57] 不和と不安と・三[ベリーイージー](2016/06/19 19:08)
[58] 不和と不安と・四[ベリーイージー](2016/07/17 15:54)
[59] 不和と不安と・五[ベリーイージー](2016/07/17 15:55)
[60] 不和と不安と・六[ベリーイージー](2016/12/23 19:10)
[61] 不和と不安と・六の下[ベリーイージー](2016/10/29 16:06)
[62] 閑話乃二・ご無体な無頼たち[ベリーイージー](2016/08/31 17:04)
[63] ご無体な無頼たち・二[ベリーイージー](2016/09/10 17:41)
[64] ご無体な無頼たち・三[ベリーイージー](2016/11/17 17:06)
[65] ご無体な無頼たち・四[ベリーイージー](2016/11/17 17:06)
[66] ご無体な無頼たち・五[ベリーイージー](2016/11/17 17:07)
[67] ご無体な無頼たち・六[ベリーイージー](2016/12/23 19:07)
[68] ご無体な無頼たち・七(完)[ベリーイージー](2016/12/30 00:01)
[69] 第六話 祭りの夜に星は散る・一[ベリーイージー](2017/09/10 11:30)
[70] 第六話 祭りの夜に星は散る・二[ベリーイージー](2017/01/22 16:02)
[71] 祭りの夜に星は散る・三[ベリーイージー](2017/03/06 00:05)
[72] 祭りの夜に星は散る・四[ベリーイージー](2017/03/06 00:05)
[73] 祭りの夜に星は散る・五[ベリーイージー](2017/03/06 00:06)
[74] 祭りの夜に星は散る・六[ベリーイージー](2017/03/06 00:07)
[75] 祭りの夜に星は散る・七[ベリーイージー](2017/03/15 17:29)
[76] 祭りの夜に星が散る・八[ベリーイージー](2017/03/15 17:30)
[77] 祭りの夜の星が散る・九[ベリーイージー](2017/04/23 20:35)
[78] 祭りの夜に星が散る・十[ベリーイージー](2017/05/13 11:32)
[79] 祭りの夜の星が散る・十一[ベリーイージー](2017/05/31 18:35)
[80] 祭りの夜に星が散る・十二[ベリーイージー](2017/06/25 21:49)
[81] 祭りの夜に星が散る・十三[ベリーイージー](2017/08/24 23:54)
[82] 祭りの夜に星が散る・十四[ベリーイージー](2017/07/30 23:29)
[83] 祭りの夜に星が散る・十五[ベリーイージー](2017/07/30 23:30)
[84] 祭りの夜に星が散る・十六[ベリーイージー](2017/09/01 19:22)
[85] 祭りの夜に星が散る・十七[ベリーイージー](2017/09/28 21:49)
[86] 祭りの夜に星が散る・十八[ベリーイージー](2017/09/28 21:49)
[87] 祭りの夜に星が散る・十九[ベリーイージー](2017/12/03 21:35)
[88] 祭りの夜に星が散る・二十[ベリーイージー](2017/12/03 21:35)
[89] 祭りの夜に星が散る・二十一[ベリーイージー](2017/12/03 21:31)
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[41025] 祭りの夜に星が散る・十三
Name: ベリーイージー◆16a93b51 ID:f172d5c7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2017/08/24 23:54
バアアッ

「……行け、『般若』に『泣き女』!」

『仮面』が輝く、そこから広がる爆炎が口裂け女に襲いかかった。

ズドンッ

「ちいい、魔術師のように逃げればよかったか……」

彼女はこころの弾幕を必死に下がり逃れようとし。
直後前方を覆う爆炎を割いた『一つの影』にオカルトは驚愕する、勢いよく飛び掛かるこころが勇ましく長刀を構えた。

「弾幕で怯ませ、近接か……だけど!」

長刀による白兵戦、持ち込まれれば不味いと口裂け女が慌てて対処しようとする。
口裂け女は口元を隠す布に手をやり、バッと勢いよく引き下げる。
大きく裂けた口、生者に本能的に驚かせ怖気を覚えさせる異形、呪いと言っていいそれを見せつけた。

(一瞬でも動きが止まれば……)

その思惑通りこころの体がグラと傾むいて、が次の瞬間オカルトにとって予想外のことが起きる。

「む、体が重い、けど……なら別の手だ!」

フワリ

『面』が浮いて散開した、一瞬で口裂け女を囲むように陣形を組んだ。

「……確かに動かないがそれは『本体』だけ、半身たる仮面には関係ない!」
「馬鹿な、面のみが!?」

ズドンッ

四方から仮面が弾幕を放ち、予想外だったそれに反応できず口裂け女が苦悶の声を上げる。
グラと体勢を崩して跪き、すかさず自由となったこころが反撃の長刀を構える。

「……お返し、行くよ!」
「くっ……」

呻くも相手は待ってくれず、踏み込みと共に長刀の一閃が放たれる。

ヒュンッ

「ま、まだ……」

慌てて体を捻って口裂け女はそれをギリギリ躱し、そして焦った様子で弾幕を構え、その瞬間長刀の穂先がクルと返される。
こころの手の中で滑らかに反転し、その勢いのまま石突き部分が突き出される。

「甘いよ!」
「しまっ!?」

バギッ

「う、あっ……」

今度は意表を突かれ躱せない、口裂け女の手を石突きが強かに打ち反撃を中断させ、更に長刀は再び返され通常の構えへ。

「……これで」

ヒュ
バギィンッ

「終わりだ!」
「ぐあっ!?」

『刀の峰』が側頭部を打ち据え、口裂け女が力なく沈んだ。

「こころ?」
「……生け捕りにします、神子様」
「そうか、それで良いのか?」
「少し、他人の気がしないから……自分の顔に自信がないとことか」

仮面の少女は笑い(といっても僅かに口の端を引くつかせる程度だが)、ある意味同族と言える顔のないオカルトを見下ろす。
何となくの共感と、顔を曝け出されたままは恥ずかしいだろうと『隠すよう』に般若面を被せその後言った。

「あっちに連れて帰って怨念を『鎮めてみる』、踊り手として……」
「……鎮めるか、根を上げるまで踊りに付き合わせるの間違いでは?」
「そうとも言う……問題は『下』だね、無事だと良いけど」

強引にこの後のことを決めて、その後彼女はチラと地下の方を見やる。
何だかんだ世話になった巫女やライバル視する悟り妖怪を心配した。



祭りの夜に星が散る・十三



そして更に地下深くの戦場、ちゆりは油断なく敵達を睨む。

「巫女に魔女か、データを取らせてもらうぜ!」
「……援護するわ、助手殿!」

ギュッと彼女は銃を握り直し、その背の花子も頷きつつ構える。
そして対峙する二人、霊夢は真っ直ぐ駆け出し、更にそれに合わせるように魔理沙が飛んで頭上から仕掛ける。

「タイミング合わせなさい、魔理沙!」
「おうっ、行くぜ……ドラゴンメテオ!」
「同時に……陰陽玉将!」

ズドドッ

上からは星形の弾幕が降り注ぎ、更に正面から圧縮した霊力が壁のようになって叩きつけられた。
ちゆりは刹那の逡巡の後自身は前を睨み、そして肩越しに視線やって花子に上の対処をさせる。
それから彼女自身は未来的デザインの拳銃を腰貯めに構えた。

「はっ、そう簡単には……」

ドガガッ

素早く『照準と並行しトリガーを叩くように打ち』連続で射撃する。

ドガガガガッッ

「……やれると思うなよ、紅白女!」
「ちいっ!?」

彼女は全弾有るだけぶつけて霊夢の『霊力塊』を押し留め、霊夢が舌打ちして下がったところで次に花子が動く。
ヒュバッと弾幕、見えざる異形の腕で大きく頭上を薙ぎ払う。

「ええいっ!」

ドガアア

「こっちもやらせないよ!」
「……っと、量重視の弾幕じゃ駄目か」

愚痴る魔理沙の視線の先、埃を払うように無造作に振るわれる不可視の触腕が弾幕を叩き落としていく。
そこから更に花子は腕を上へ、迎撃の動きから一転させて狙いを頭上の箒で飛ぶ魔理沙へ。
クルと軌道を変えて触腕が魔理沙に振るわれた。

「……反撃!」
「おおっと!?」

ガギィンッ

咄嗟に展開される魔力の障壁、が花子は構わず上から握りつぶそうとした。

ギギッ

「盾か、でも……このまま!」

彼女はそのまま妖気で構成された大腕に力を籠めようとした。

ダンッ

「……掛かった!」

が、その瞬間魔理沙が跳んだ、乗っていた箒を、更に壊れかけの魔力の足場を蹴って跳ぶ。
不可視の腕を迂回、空中で体勢を整えながらミニ八卦炉を眼下の敵にグッと突きつける。

「囮か!?」
「……貰いだぜっ!」

頭上から鋭く絞った光条、チャージを省略し収束させた弾幕が真っ直ぐ伸びる。
障壁への攻撃に集中していた花子は動けず、がその寸前別の影が割って入る。

「ちっ、させねえ!」
「助手殿!?」

パチパチと全身に紫電、何らかの加速機能かスパークする水兵服の裾を靡かせたちゆりが花子を横から蹴りつけた。

ガッ

「退け!」

部下である花子を安全圏へ、同時に新たにカートリッジを装填した銃を真上に。
ダンダンダンッと素早く数度、光線の軌道を読んで迎撃の射撃を行う。

「二発めは温存しとけ……私が抑える!」

ズドッ
ドゴオォオ

「はっ、どうだ!」
「へっ、やるな!?」

光と弾丸は相殺、魔理沙はどこか面白がるような表情で見下ろし、それに対しちゆりも不敵に睨み返す。

「さあて悪いけど……」

がそれは一瞬だけ、ちゆりはバッと背後、『もう一人』を振り向いた。
土産とばかりに頭上に一度引き鉄を引いてから。

バンッ

「おわっ!?」
「……アンタは後回し!」

慌てて魔理沙は身を竦め弾丸を躱し、がそれで稼いだ時間で霊力チャージ途中の霊夢の方へ駆ける。
彼女は走りながらカートリッジの残弾を一気に放った。

「喰らいなっ!」

ドガガッ

二度目の掃射、霊夢は微妙に顔を顰め霊力チャージを中断し結界を展開。
だが、次の瞬間表情を更に深く顰める、隣に並んだ花子が全身から妖力を放出したのだ。

「……やっちまいな!」
「了解、はあっ!」

花子は先の温存分も解放、床を余波で割りつつ二方向から不可視の大腕を伸ばす。
一旦左右に分かれ、弾丸を受けていた結界を迂回し霊夢を挟撃する。

「うひゃ、不味……でも、ある意味好都合!」

それを見た霊夢は焦った様子で、結界を維持するのと逆の手で『札』を掲げた。

「……亜空穴っ!」

ドガンッ

轟音と共に二つの腕が打ち合わされ、が寸前で掻き消えた影を掠めるに留まった。
結局攻撃は不発、ちゆりは不満そうに嘆息し、それから銃床(ストック)部分を上に掲げた。

ガギィンッ

直後『一閃された針』が弾かれ、スウと宙から現れた霊夢が出現後舌打ちする。

「……ちぇ」
「物騒な女だな全く……」

霊夢は不満そうに、ちゆりは恐々とした顔で視線を交わし、その後同時に飛び退く。
二人は後退し間合いを取り直し、そこから瞬時に再度仕掛ける。
掌中に霊力を集めた状態で霊夢が踏み込み、対し『輩出したカートリッジ』を勢いよくちゆりが放った。

「ほれ」
「え?」

カキンと霊夢は投擲物を反射的に弾き、が直後その表情が驚愕に歪んだ。

「弾切れのそれで……隙なら上出来だろう!?」

投擲でその気を引いて、すかさず距離を詰めたちゆりが銃を持つのと逆の手でポケットに収められたカートリッジを引き抜く。
カシャッと新しいカートリッジをねじ込んでそのまま突きつけた。

「げっ、結界を……」

これには意表を突かれ霊夢は貯めていた霊力で防御、が結界が張られた瞬間ちゆりはニヤリと笑った。

「……待ちな、先に牽制さ」

彼女は徐に振り向いて上へ射撃、ダンダンと続けて放たれた弾丸が霊夢の援護に行こうとした魔理沙を追い払う。
そしてそれから素早く霊夢に向き直った。

「うお、悪いっ、霊夢!」
「……妨害の後は当然反撃!」

ダンッ

「あうっ!?」

ギシと一瞬軋むも防ぎ、だが攻撃はそれで終わらない、ちゆりがトンと横に飛び振り被った状態で花子が滑り込む。
ゴウッと不可視の大腕、再チャージ後の一発目が放たれた。

「はああっ!」
「くっ……」

ドゴオッ

結界で受けるも吹き飛ばされる、余波の衝撃に怯みながら霊夢は蹈鞴を踏んで後ろ退った。
すかさずちゆりと花子が後退した霊夢に追撃に向かった。
ダンダンと拳銃で上の魔理沙をけん制後、ちゆりは花子を見た。

「霊夢!?」
「……このまま追うぞ、花子!」
「了解!」

銃弾を躱し、それで距離の空いた魔理沙は妨害できず、それを尻目に二人は霊夢に追撃を仕掛ける。
霊夢が眉根を寄せる、結界の展開直後でチャージ時間がないのだ。

「っと、霊力が間に合わ……」
「さあ、これで……」

止めとばかりにちゆりと花子が飛び掛かり、霊夢は近づく二人に顔を顰め。

カッ

「まだだ!」

そして魔理沙が頭上で、輝く八卦炉を掲げた状態で叫ぶ。

「……霊夢、空間操作!」
「っ、ええ!」

瞬時に霊夢は呼びかけに頷き、防御にはいくらか足りない霊力を束ねる。
ユラユラとその手元で空間が、『恒星の如く発光する八卦炉』直通の空間が開いた。

「亜空穴……魔理沙!」
「おうっ、私を忘れんな!」

ドガアッ

「うお、不味!?」

空間の裂け目からぶち撒けられた閃光がちゆり達を襲った。
司会が白く染まり慌てて花子が前に出た、焦りの表情で触腕を伸ばそうとした。

「さ、させない!」
「馬鹿、それは……」

彼女残り『二回分』で防御しようとし、それを見たちゆりが目を見開く。
閃光を弾くそれは軋みながらも伸びていて、だけど同時に二人の周囲、引く先を塞ぐような位置でもあった。
それ以上腕を動かせない、前に出せず下げられず、『絶妙な』出力で砲撃した魔理沙が頭上で笑った。

「駄目、迂闊に動かせば……」
「そういうこと、それに攻撃ならともかく……防御に使うなら不可視は関係ない!」

確実に物理的に目の前にある、それがわかり切ってるなら触腕への警戒は必要ない、そう叫んだ魔理沙は更に出力を上げる。
今必要なのは目の前に掲げられた触腕を破る出力なのだから。

「マスタースパーク!」
「援護するわ、夢想封印!」

ドガアアッ

『ぐあああっ……』

ミニ八卦炉から放たれた閃光と、ついでとばかりに霊夢ががばら撒いたお札の光、それ等が合わさって派手に爆炎を迸らせた。
ジュと不可視の腕が嫌な音を立て、直後跡形もなく消し飛ぶ。
そのまま相殺し切れなかった破壊力がちゆりと花子に襲い掛かり、二人をクルクルと宙に舞いあげる。

「ぐあっ!?」
「助手殿、あうっ!?」

炎に揉まれながらちゆり達は壁に叩きつけられ、すかさず霊夢が封魔針二つ構える。

「……止めよ」

ヒュッ

冷たく見据え彼女は勢いよく腕を振り抜く。

ズドッ

『ぐあっ!?』

風を切って二本の針が飛んで、直後重なった痛々しい音。
ちゆりと花子の肩を深々と貫き地下道の壁に磔にした。

「……もういっちょ!」

ヒュッ
ズド

更に霊夢は念を入れて針を投擲、今度は銃を握るちゆりの手を貫き封じた。
鋭い痛みに彼女の表情が歪んだ。

「……くっ」
「覚悟するのね、お二人さん?……さあ、これで……」

動けない二人に霊夢がゆっくり近づく、これみよがしに弾幕用の霊符を手挟み、止めの一撃の為に霊力を集中していく。

「……終わりよ」
「……っ、まだだぜっ」

霊夢がその手に気弾を拵え、がその瞬間ちゆりが叫んで針を受けていない腕を掲げる。
カシャンという音がし、『服の裾から飛び出した小型拳銃(デリンジャー)』が構えられる。

「仕込みか!?」
「喰らえ!」

ドンッ

引鉄と共に弾丸が飛び出す、それは真っ直ぐに攻撃に集中している霊夢の方へ。

(これでっ……)
「……甘いわ!」

だが直後霊夢は『斜め下方』に貯めていた霊力を解放した。
ドンと衝撃が弾け、霊夢の体がフワと浮いて、一瞬遅れ弾丸が霊夢の先までいた場所を素通りした。

「……読まれた!?」
「はっ、『赤ドレスのマッド』の関係者なら……そりゃ奥の手くらい持ってるわよね!」

霊夢は警戒していた、同類と思しき女性を霊夢は知っていた、だから一筋縄でいかないと心の準備もしていた。
その警戒で反撃を躱した彼女は空中で素早く次の弾幕を展開する。

「ふん、あのマッドの関係者相手に深追いはごめんね、ここで『お開き』……魔理沙!」
「はいよっ」

霊夢は仕込拳銃以外の暗器、あるいは切り札を警戒しこの場での決着を諦めた。
宙空で弾幕を用意し、それに心得たりといった様子で箒に乗った魔理沙が並んでミニ八卦炉を構える。

「ここで倒すまでやるのはリスクが大きい、だから……『埋まっときなさい』」
「なっ、しま……」

ドガアアッ

ちゆりが止めよう銃を構えるより一瞬早く弾幕が放たれ、ちゆり等の『周囲』を特に狙って光弾の雨が降り注ぐ。
着弾後壁が、足場が、そして余波に引き摺られて天井部までもがゆっくりと崩れていく。

「あんた等、まさか……」
「……『三日目か四日目』に会いましょう、だからこの場はさよなら!」
「ま、お前等この程度じゃ終わらんだろ、頑張って這い上がってきな!」
「そんじゃガキンチョ達に合流、拾ったら即亜空穴で」

無責任な期待の言葉を好き勝手に残し、霊夢は魔理沙の後ろに飛び乗って出発の合図を出す。
二人はフワと浮かび上がり、そして落下し続ける崩落物を抜けていく。
落ち行く瓦礫の僅かな間でちゆりが屈辱に叫んだ。

「畜生、性悪どもが……覚えてやがれ!」
『はっ、何時でも来なさい!』

負け惜しみめいた言葉に二人は意地悪く返し、そして悠々と飛び去る。
結果この場は決着つかず、だけど片方の心に屈辱を刻んで終わりとなった。



「ちっ、以前と違うな……」

レミリアが不満そうに舌打ちする、目の前の光景は聊か予想外だった。
それは死屍累々というべき有様で、沢山の人々が倒れ伏し呻き声をあげていた。
『その身を文字通り盾に』、犠牲としてレミリア達の行動を妨害した魔術師達だ。

「ぐ、うう」
「うああ」
「……すまない、だが感謝する、同志よ」

彼等という犠牲に無表情で銀の少女、ミューズが言葉少なに謝辞を示す、レミリア等の追撃を逃れたのが仲間のお蔭だと理解している。
が、それと同時に今倒れている彼等が『羨ましい』とも思ってもいた。

(いっそここで倒れていられれば……楽なんだけどね)

そう弱音を吐きかけ、が流石に口には出せないと、『戦女神を唆した少女』が嘗ての行動を内心でだけ後悔する。
ある意味でこの騒ぎの元凶である少女は責任感と罪悪感混じった思いの中で嘆息した。

「(ま、今更なんだけどね……)はあ、もう少し頑張りましょうか」
「……嫌々なら止めてしまったら?」
「……そういう訳には行かないのよ、人に任える側としては」

『上司』への一応の忠誠、それとその人物を巻き込んだ責任から彼女は追ってきたレミリアと白蓮を睨む、まだまだ追われないと。
二人に追われたまま何とか仲間『で』凌ぎつつ、市街から郊外部付近、暗部の影響の低い場所まで逃げられた。
が、ここまで逃げ込み、がそこで流石に追いつかれてしまったのだ。

「……これ以上は少し不味いですね」
「ふふん、部下を盾にするのも限界でしょう?」
「そろそろ諦めになられては?」

倒れ伏す仲間、弾幕の盾とした者達の奥でミューズがその端正な顔を顰める。
勝ち誇ったような向うの警告、だが悔しいがそれは間違ってもいない、連日の消耗重なるミューズではこれ以上の抵抗は不可能だ。

「ええ、確かに辛いわ、でも……」

但しそれはミューズ個人の話だ、迫りくるレミリアと白蓮の弾幕の前で彼女は微笑む。

ダンッ

影が一つ、ミューズの前方に庇うように落ちた。

「……行きなさい、罪深き者達……『セートルア』の眷属よ」

コクと頷き、二つの影は『刃物の破片』を埋め込んだ拳を振り被る。
そいつは『人形のように意思も生気も感じない目』で睨めつけると即席の白兵器具(セスタス)で弾幕を『握り潰し』消滅させた。

グシャッ

『何ですって!?』
「……ええ、私一人じゃ無理、だから応援よ」

あくまでミューズ『だけ』では限界と、『部分的』に彼女は認めニヤリと笑う。
そして『戦女神を唆した少女』は『その怒りの矛先とした相手の残党』を指し示す。

「……一応切り札よ」
「何、そいつ?」
「五大派閥『セートルア派』の者よ、ガワは……でもこういうべきか、その身に『戦神の槍の破片』を移植してあるわ」

先日損傷した切り札の一部、せめてとその有効活用し、更にいえば使い潰しても惜しくない戦力でもある。
何せ『嘗てブリュンヒルドを意のままにしようとした結社』なのだから。

「……て訳で行きなさい、潰れても誰も嘆かない鉄砲玉」
「ちいっ、ここに来て面倒なことを……」

殴り掛かるグングニル移植者、その攻撃をレミリアと白蓮は鉤爪と独鈷杵で弾き、がその瞬間ミューズは殿にした魔術師を微塵も気にせず飛ぶ。

「どうやらブリュンヒルドは私をこき使うらしい、なので……今日はこのまま逃げさせてもらうわ!」
「ちいっ、ここまで来て逃がすか……」
「……ですが新手は無視できません、レミリアさん!」

ミューズは言い捨てて飛び去り、それを一瞬追いかけるもレミリア等は目の前の敵に向き直る。
一瞬のアイコンタクトの後二人は左右に散り、迎え撃つ魔術師は順に見た後破片を埋め込んだ拳を振り被る。

「……ッアァ!」

奇声から横薙ぎに腕を一閃、ブワと突如吹き出した灼熱の塊が彼を中心に広がる。

「……甘い、眷属よ!」

が、レミリアは向うが広範囲攻撃に出た瞬間対処する、手を掲げ魔力で作り上げた蝙蝠の群れを放つ。
それ等は陽光に億劫気にしつつ飛び立ち、バアと白蓮の周囲で壁となって炎を受け止める。

「っ!」
「……一網打尽なんて欲張りなのよ!」

彼女は友人への攻撃と防ぎ、更に自身を狙う炎は慌てず鉤爪を一閃。
吸血鬼の膂力で炎を引き裂くと一瞬で散り散りにさせる。

ガギィンッ

「そら、次は……お前自身よ!」
「っっ!?」

炎を力付くで四散させ、それからレミリアは魔術師を指し示す、ニイと凶悪に口の端を釣り上げる。

「……さああ、どうする?」
「ッアアアァ!」

ゾッとする笑みに、正気でない魔術師は一瞬後退りかけ、それからそれを隠すように再び腕を大きく振るう。
ドンと今度は火ではなく水流、地下から強引に呼び出した水塊を砲弾のようにしレミリアに叩きつける。

「……ま、吸血鬼にはそうするでしょうね」

が、彼女は微塵も動揺せず、ただ軽く『引き抜いた髪飾り』をその手に指揮杖のように。

「……ホントあの子には感謝ね、とりゃあ!」

ブンと大上段から下に振り抜かれ、直後水塊はボンッと内から散華する。

「っ!?」
「ふふっ、残念……白蓮、チャージは?」
「……完了です、任せて!」

魔術師の二度目の攻撃も不発し、それにニヤリと笑うとレミリアはフリーである白蓮に攻撃を指示。
そしてそれにコクと頷き、彼女は『円形に像った右手』を顔の前に掲げる。

「折角ですので私も新技を……ブラフマーの瞳!」

ヒュバッ

直後光が走った、指で作った円形を瞳の前に重ねた瞬間数条の光が収束し放たれる。
それ等はまず一射目が魔術師の手に埋め込まれた『破片』の縁を、次にそこから僅かにズレて命中、そのまま破片の周囲を丸るく囲むように。
そして、コツッと赤く染まった破片が『穴の開いた掌』から落ちた。

「ほう、ピンポイント射撃か!」
「……雨垂れ石を穿つ、ですね……何か妙に肉体派に見られるので『技巧寄り』のを新しく作ってみました」

イメージ改変を試みての技と言いつつ落ちた破片を蹴り転がし、彼女は破片の喪失に呆ける魔術師に間合いを一気に詰める。
それから相手の首筋に法具の独鈷杵を突きつけ問う、無駄かもしれないとわかりつつも。

「見た感じ洗脳、まあ一応問いますけど……まだやりますか?」
「……っ!」

がやはりそれは跳ね除けられ、傷ついたままの拳で魔術師は殴り掛かろうとする。

「……でしょうねえ、やっぱり」
「ま、そうだろうなあ」

そしてそれも二人はわかっていて、だから軽くトンと後ろに飛ぶ。
何故なら『後ろの方からの喧噪』が聞こえたから。

『……ぉいてええぇ!?』

それは『巨大な車輪』、加えて『羽ばたく水の翼』と『放射される窒素』、友人を追おうと後さき考えない天使と大能力者により激しく加速を続けている。

「……お、ミーシャか、やっと来たな」
「あら、魔術師さんに直撃コース……」
「ごめーん、遅れたって、ああああ!?」
「窒素で加速加速、どりゃあ……あ、ブレーキ間に合わねェや」
「ちょ、無責任なって……きゃああああ!?」
「っっ!!?」

ズドンンッ

『ひゃあああ!?』

慌てて飛び退ったレミリアと白蓮の視線の先で、高速で激突事故を起こした車輪がドグシャと魔術師を跳ね伸ばしたのだった。

「む、撃墜数取られたか」
「まあまあ、手間が省けていいのでは?」
『……頭がくらくらするう』
「……三半規管に来ます、天使様ひどいです」

苦笑した様子の二人に笑われながらミーシャ達は起き上がり(その際気づかず車輪+三人分の体重に踏み躙られ)残った魔術師は車輪の下で沈黙した。
うーんと乗り物酔いで真っ青な三人を開放しつつレミリア等は困ったように顔を見合わせた。

「……帰るか、向うの切り札っぽいの見たし」
「……ですねえ、今日はここまでで」

互いに一度肩を竦めて、それから二人はその日のミューズ追走を切り上げたのだった。



「……はあはあ、流石馬鹿従姉の主か」

トンと離れの一角、目立たない町の陰に降りたミューズが荒く息を吐く。
逃げることはできたがあまり余裕はない、ほっと安堵の息をついた。

「……」
「ああ来ましたね、迎えご苦労」

そこへ数人の影、どれも等しく無表情で意思が感じられない。
ミューズはその群れ、先頭の一人に皮肉っぽい笑みを向ける。

「次からはあなた方も動いてもらいましょう、ねえ……『セートルア』?」

手だけでなく体、そして四肢にすら「グングニルの破片」を埋め込まれた魔術師がコクと頷いた。



そして同時刻『血生臭くない戦場』もまた佳境に入っていた。

「ぜえぜえ……」
「……椛さん、ナイスファイト」

前三人のツケ、多大な差を埋めるはめになった彼女は自他認める貧乏籤だった。
運動嫌いでもないし幾らか見栄もある、少し本気を出した彼女は中々見事な走りを見せた。
が代償に荒く息を吐いてへたり込んだ、ハッハッと疾走直後(種族的にはそのままだが)犬科のように舌を出したまま息を吸い込んでいる。

「……ふ、はあ、辛いけどノルマは何とか」
「お、お疲れ様です」
「いや、頑張ったわねえ、椛」

息も絶え絶えで彼女は座り込み、それを競争相手だった氷華、そして一旦カメラを代わって貰った天狗等が労う。
ある意味貧乏籤の被害者、がその代償の分大健闘といってよかった。

「……感謝するわ、椛さん!」
「ふふっ、やるねあの人……でも、負けないよ、お姉さま!」

彼女の頑張りの成果は競技場の二人、十メートル近い差はほぼ同列、不利だった赤のラストランナーである美琴が椛に手を振る。
対し白の側、ほぼ同じ速度を維持する番外個体も椛を褒め、また互角の勝負にやる気を見せる。

「……はあはあ、姉妹対決楽しみにしてたんだし……こっちで帳尻合わせないと」
「椛さん、貴女って人はどこまでも健気な……」

ヒラと美琴の方に椛は手を振り替えし、そんな椛に思わず氷華達が愛しくなって撫で回す。
友人の為に一人体を張って、それを知る美琴と番外個体は元々あった以上のやる気を見せる。

「番外個体、わかってると思うけど……」
「うん、全力で……」
『……勝負よ!』

だからこそ二人は全力でただ走った、誰かさんへの感謝の意味でも。

「……ふうう、頑張って、そして楽しんで、美琴さんもその妹さんも……」
「大丈夫、どっちが勝っても……」
「椛が頑張ったおかげね、きっと」

そんな様を遠くで見守って、互角の勝負の場を整えたある意味MVPの少女とその友人は優しき微笑んだのだった。

(本当に感謝ね、ここまでお膳立てされちゃあ……私だって!)

美琴は一度視線をちらと座り込む友人にやってフッと笑い、それから腕を大きく振ってそれ以上の歩幅のストライドで只管前へ。
対し隣をひた走る番外個体も負けじと体を動かす、追い抜かせてたまるかそれどころか先を行かんと。

「おっと、お姉様……ミサカだって負けないんだから!」
「ふふっ、ならもっと頑張るだけ!」

ダンッ

二人は更に足を速め、そんな激しい攻防にワッと湧く観客、更にはシスターズからのネットワーク越しの視線も集まるのがわかる。

「(ああ見ているか、自分もと思うかな?)……全く、いい思い出になると思わない、番外個体!?」
「うん、お姉さま……でも、これ競争なんだし……」
「ええ……」
『……勝てばもっと良し!』

二人は笑いながら全力で駆けた、奇妙な成り行きで結ばれた姉妹であっても関係なく思い出にする為に。
更に競り合いは激しく、それにワアッと段々と競技場の熱気も高まっていく。

『……名残惜しいが決着は近い』
『残り十メートルー!』

司会席が煽るように言葉を挟む、呑気にルーミアがカウントし、美琴と番外個体は最後に一瞬視線を交わす。

((……負けないわよ!))

意地の張り合い、言葉にしなくても互いにそれがわかった。
だから肩をぶつけ合う勢いで並びながら二人は先を急ぐ。

『残り五メートルー!』

隣の顔に負けたくないと、だけどそれ以上にこうして競い合うことを嬉しくも思い。
二人とも闘志に視線を鋭くしつつもどこか幸せそうな笑みが浮かんだ。

『残り一メートルー!』
『……決着だ』
「……どっちが!?」
「先に来た!?」

ダンと微笑んだまま二人はゴールに縺れ合うように飛び込んで、そして慌てて振り向きゴール横のスタッフを見る。

「……判定は!?」
「勝ったのは!?」

美琴と番外個体は半ば叫ぶように問いかけ、それにスタッフ陣が一瞬悩んだように黙り込む。
そして勿体着けるように視線を周囲にやった後『離れ』に待機させていた『小さな影』に合図を出す。

「判定は……」

スタッフの視線に釣られて美琴達もその方を見て、直後視界が『様々な色』に染まる。
ニカと『小さな少女』が笑う、色取り取りの花を『二つ同時に掲げて』。

ポス

「……おめでとう、お姉様に番外個体」

それは第一位の便宜で来た打ち止め、彼女は『右手の花束』を美琴に、『左の花束』を番外個体に手渡す。
彼女は勝者『達』に優しく微笑みかけた。

「コンマの差もなし……同着一位、おめでとう」
「……へっ?」
「引分け?」

予想外の言葉にポカンとする二人、苦笑しつつ打ち止めは姉妹等を引き寄せギュッと抱きつく。
そしてやっと理解し始めた姉と妹へと祝福の言葉。

「惜しかったね、でもいい勝負だったよ」

すると二人は打ち止めの腕の中で困ったように顔を見合わせ、それから何となく可笑しくなって吹き出す。

「……そっかあ、同着一位か、勝ち切れなかったのは残念だけど」
「ま、再戦は何時でもできるし……」

決着着かずな結果に少し残念そうにし、その後自分と互いの健闘に感心もし。
二人はどちらともなく手を繋いで立ち上がる。
そして同時に花束を持つ手を頭上に掲げ、それを見た客達は一斉にワッと湧く、姉妹の複雑な関係やその背景は知らずとも全力で競ったことに心動かされて。

ワアアアアアッ

「……おわっと、応援ありがとうございます!」
「う、ひゃあ、すごい声……」

熱気に少し目を白黒させつつ二人は手を振り替えし、歓声の中で最後まで見てくれた人達に一礼する。
姉妹はペコと頭を下げ、それから気恥ずかしくなって足早に仲間との合流を急ぐ。

「いい勝負でした、二人とも」
「うーん、惜しかった……でも頑張りましたね」
『転倒、面目ない……』
「まあまあ」

そちらでも花束、やはり一方通行の気を利かせたかフレメアや他のシスターズからの花束を手にした仲間達と手を振り合う。

「……打ち止め、お姉さん達カッコいいね」
「当然、自慢の家族だから!」
「にゃ、自分のことみたいに喜んで……」
『……何かネットワークが怖いくらいに湧いてますが』

そんな風にどこもかしこも笑い合い、正に一年に一回の祭りに相応しい光景が広がる。
ある意味『本日最後から二番目』に相応しい空気の中、司会席がある意味『煽り』の言葉をなげかける。

『……さて、観客参加競技でここまで燃え上がったなら……』
『学生の方々も負けてはいられない、違うかしら?』
『ラスト競技、行くよー!』

この言葉に客等は更に期待し、その熱い視線の先では学生達が勢揃いしている。
観客参加のリレーに負けないように、強豪校も無名校も皆等しく闘志を燃やして集まっていた。

「あっ、黒子、それに先輩に10032号も!」
「……おっと、かみじょー達に合流してくる!」
『……て訳で棒倒し、開始ー!』

美琴達は見知った顔にあっと笑い(それどころか参加予定の氷精が慌て)すぐさま応援席に移ればそれに合わせるように競技が始まる。
各校が整列しコール後行進が始まる。
大型競技『棒倒し』、黒子とその補佐のはたて率いる常盤台が、上条とミサカとチルノを中心にした特に特徴のない無名校が。
そして『お邪魔キャラのタスキ』、何故か『巨大毛玉』の群れ、その『先頭で腕組みする削板軍覇』が。

『……ちょっと待て』

一斉に突込みが入った、参加者も客も関係なくマジな突込みだった。

「ふはは、燃える、こいつぁ根性だぜ!」
「……司会席、あれは?」
『見ての通りお邪魔キャラ、目につく端に無差別に突撃の予定……まァ全滅はそのチーム得点ガン減りな上に相手しても加点も無しなマジのお邪魔キャラ』

それは先のリレーが名勝負の弊害、ただ普通にやるのでは見劣りするだろうというスタッフ(及び意見を聞かれた一方通行)の悪乗りの産物である。
誰が見ても血迷った新レギュレーション、満場一致のお邪魔キャラ(新型ペットロボット名義の涙子謹製毛玉付き)が悪意無しの笑みで現れる。

「さあ全力で行くぜ……根性だ、根性あるのみっ!」
『い、いい加減にしろ、この根性バカ!?』

悲鳴と絶叫と罵倒の中で、その日最後の騎馬戦が始まった。





はい、もみじ頑張りました・・・少し短いけど、まあ折角の姉妹対決なんだし勿体ぶってみました。
・・・ごめんなさい、後篇書いたら微妙に納得いかず一部前の展開まで変わりました、大きいのは地下で逃走せずそのまま終わったことでしょうか。
でまあとりあえず二日目の戦いは一旦終了です、競技場の方もクライマックスだし次辺りで一段落でしょうか。
・・・まあ一人暴走してますが、七位さんの性格的にここで耐えられなくなるのは十分あるかなあとこんな展開。
・・・あっミューズの下りで名出てないが最後のは大戦犯こと『大幹部セートルア(毒盛ったのね)』、ただ洗脳されてるんで台詞は無し。

以下コメント返信
小雀様
いや神秘禄でこの幽霊さん矢鱈元気にアッパー(皿割りつつ)してたのであんな感じに、あのノリの良さならありそうな会話かなと。

九尾様
まあインデックスは別に運動苦手でないんですが、組考えたら天丼でコケテ貰たく・・・敢て理由付ければ上条さんのジャージ(借り物でブカブカ)だからとかか。
でも彼女の不幸のおかげで(天丼の意味でも)コント的な事故映像になったと思います、運動会らしいネタな一場面としても・・・常識人の反応含めて。

返信追加分
九尾様・椛は何となく健気キャラのイメージ、ですので誰が貧乏籤引きつつ友情に奮起するか?で彼女がここで抜擢になりました・・・何か完璧に犬科ですが。


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