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No.41025の一覧
[0] とある幻想の弾幕遊戯Ⅱ(とある魔術の禁書目録×東方シリーズ)[ベリーイージー](2017/07/15 20:30)
[1] 第一話 学園都市悲喜こもごも・一[ベリーイージー](2015/04/29 22:53)
[2] 第一話 学園都市悲喜こもごも・二及び二の裏[ベリーイージー](2015/04/29 22:55)
[3] 第一話 学園都市悲喜こもごも・三[ベリーイージー](2015/03/28 14:27)
[4] 第一話 学園都市悲喜こもごも・四[ベリーイージー](2015/03/28 14:28)
[5] 第一話 学園都市悲喜こもごも・五[ベリーイージー](2015/03/30 16:03)
[6] 第一話 学園都市悲喜こもごも・六(終)&六の裏[ベリーイージー](2015/04/11 20:13)
[7] 第二話 幻想の命・一[ベリーイージー](2015/04/17 22:21)
[8] 第二話 幻想の命・二[ベリーイージー](2015/04/17 22:22)
[9] 第二話 幻想の命・三[ベリーイージー](2015/05/09 19:47)
[10] 第二話 幻想の命・四[ベリーイージー](2015/05/11 20:10)
[11] 第二話 幻想の命・五[ベリーイージー](2015/05/11 20:11)
[12] 第二話 幻想の命・六[ベリーイージー](2015/05/30 20:33)
[13] 第二話 幻想の命・七[ベリーイージー](2015/05/30 20:33)
[14] 第二話 幻想の命・八[ベリーイージー](2015/05/30 20:34)
[15] 第二話 幻想の命・九[ベリーイージー](2015/06/01 00:59)
[16] 第二話 幻想の命・十[ベリーイージー](2015/07/11 19:32)
[17] 第二話 幻想の命・十一[ベリーイージー](2015/06/06 19:52)
[18] 第二話 幻想の命・十二[ベリーイージー](2015/06/20 16:56)
[19] 第二話 幻想の命・十三[ベリーイージー](2015/06/20 16:56)
[20] 幻想の命・エピローグ&第三話序章[ベリーイージー](2015/07/11 19:33)
[21] 第三話 無自覚な迷子達・一[ベリーイージー](2015/07/16 00:54)
[22] 第三話 無自覚な迷子達・二[ベリーイージー](2015/07/27 19:51)
[23] 第三話 無自覚な迷子達・三[ベリーイージー](2015/09/05 14:25)
[24] 第三話 無自覚な迷子達・四[ベリーイージー](2015/09/05 14:26)
[25] 第三話 無自覚な迷子達・五[ベリーイージー](2015/08/10 21:11)
[26] 第三話 無自覚な迷子達・六[ベリーイージー](2015/09/05 20:51)
[27] 第三話 無自覚な迷子達・七[ベリーイージー](2015/09/05 20:50)
[28] 第三話 無自覚な迷子達・八[ベリーイージー](2015/10/02 20:55)
[29] 無自覚な迷子達・九(終)[ベリーイージー](2015/10/02 20:55)
[30] 3話エピローグ&3.5話『再会』[ベリーイージー](2015/10/02 20:56)
[31] 第四話 希望を求めて・一[ベリーイージー](2015/10/16 00:09)
[32] 第四話 希望を求めて・二[ベリーイージー](2015/10/22 00:04)
[33] 希望を求めて・三[ベリーイージー](2015/11/08 18:43)
[34] 希望を求めて・四[ベリーイージー](2015/11/08 18:48)
[35] 第四話 希望を求めて・五[ベリーイージー](2016/12/23 19:09)
[36] 第四話 希望を求めて・六[ベリーイージー](2015/11/19 00:15)
[37] 第四話 希望を求めて・七[ベリーイージー](2015/11/28 20:29)
[38] 第四話 希望を求めて・八[ベリーイージー](2015/11/29 01:29)
[39] 幕間&希望を求めて・九[ベリーイージー](2015/12/05 13:59)
[40] 希望を求めて・十(終)[ベリーイージー](2015/12/05 14:00)
[41] 第五話 狂信と敬心・零 [ベリーイージー](2016/11/06 23:47)
[42] 第五話 狂信と敬心・一[ベリーイージー](2016/10/29 16:04)
[43] 第五話 狂信と敬心・二[ベリーイージー](2016/02/05 20:59)
[44] 第五話 狂信と敬心・三[ベリーイージー](2016/10/29 16:06)
[45] 狂信と敬心・四[ベリーイージー](2016/02/25 21:37)
[46] 狂信と敬心・五[ベリーイージー](2016/02/25 21:57)
[47] 第五話 狂信と敬心・六[ベリーイージー](2016/03/11 18:54)
[48] 第五話 狂信と敬心・七[ベリーイージー](2016/03/11 18:55)
[49] 第五話 狂信と敬心・八[ベリーイージー](2016/03/14 21:08)
[50] 第五話 狂信と敬心・九[ベリーイージー](2016/03/26 18:52)
[51] 第五話 狂信と敬心・十[ベリーイージー](2016/04/04 20:43)
[52] 第五話 狂信と敬心・十一[ベリーイージー](2016/04/24 16:45)
[53] 狂信と敬心・十二(完結編・上)[ベリーイージー](2016/04/24 16:46)
[54] 狂信と敬心・十三(完結編・下)[ベリーイージー](2016/10/29 16:07)
[55] 閑話 不和と不安と一[ベリーイージー](2016/06/04 18:20)
[56] 不和と不安と・二[ベリーイージー](2016/06/10 17:24)
[57] 不和と不安と・三[ベリーイージー](2016/06/19 19:08)
[58] 不和と不安と・四[ベリーイージー](2016/07/17 15:54)
[59] 不和と不安と・五[ベリーイージー](2016/07/17 15:55)
[60] 不和と不安と・六[ベリーイージー](2016/12/23 19:10)
[61] 不和と不安と・六の下[ベリーイージー](2016/10/29 16:06)
[62] 閑話乃二・ご無体な無頼たち[ベリーイージー](2016/08/31 17:04)
[63] ご無体な無頼たち・二[ベリーイージー](2016/09/10 17:41)
[64] ご無体な無頼たち・三[ベリーイージー](2016/11/17 17:06)
[65] ご無体な無頼たち・四[ベリーイージー](2016/11/17 17:06)
[66] ご無体な無頼たち・五[ベリーイージー](2016/11/17 17:07)
[67] ご無体な無頼たち・六[ベリーイージー](2016/12/23 19:07)
[68] ご無体な無頼たち・七(完)[ベリーイージー](2016/12/30 00:01)
[69] 第六話 祭りの夜に星は散る・一[ベリーイージー](2017/09/10 11:30)
[70] 第六話 祭りの夜に星は散る・二[ベリーイージー](2017/01/22 16:02)
[71] 祭りの夜に星は散る・三[ベリーイージー](2017/03/06 00:05)
[72] 祭りの夜に星は散る・四[ベリーイージー](2017/03/06 00:05)
[73] 祭りの夜に星は散る・五[ベリーイージー](2017/03/06 00:06)
[74] 祭りの夜に星は散る・六[ベリーイージー](2017/03/06 00:07)
[75] 祭りの夜に星は散る・七[ベリーイージー](2017/03/15 17:29)
[76] 祭りの夜に星が散る・八[ベリーイージー](2017/03/15 17:30)
[77] 祭りの夜の星が散る・九[ベリーイージー](2017/04/23 20:35)
[78] 祭りの夜に星が散る・十[ベリーイージー](2017/05/13 11:32)
[79] 祭りの夜の星が散る・十一[ベリーイージー](2017/05/31 18:35)
[80] 祭りの夜に星が散る・十二[ベリーイージー](2017/06/25 21:49)
[81] 祭りの夜に星が散る・十三[ベリーイージー](2017/08/24 23:54)
[82] 祭りの夜に星が散る・十四[ベリーイージー](2017/07/30 23:29)
[83] 祭りの夜に星が散る・十五[ベリーイージー](2017/07/30 23:30)
[84] 祭りの夜に星が散る・十六[ベリーイージー](2017/09/01 19:22)
[85] 祭りの夜に星が散る・十七[ベリーイージー](2017/09/28 21:49)
[86] 祭りの夜に星が散る・十八[ベリーイージー](2017/09/28 21:49)
[87] 祭りの夜に星が散る・十九[ベリーイージー](2017/12/03 21:35)
[88] 祭りの夜に星が散る・二十[ベリーイージー](2017/12/03 21:35)
[89] 祭りの夜に星が散る・二十一[ベリーイージー](2017/12/03 21:31)
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[41025] 祭りの夜の星が散る・十一
Name: ベリーイージー◆16a93b51 ID:f172d5c7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2017/05/31 18:35
ヒュオオオッ

「……ふっ、大覇星祭もたけなわですね」

『猛り立つ風』その中心で女が吠える、風に煽られ黒髪棚引かせながら『高下駄六角巾の少女』がニイと邪悪な笑みを浮かべる。
競技用トラックに立つ少女、射命丸文がノリノリで言った。

「速度なら負けん……郷最速、この射命丸文の足を見せてあげましょう!」
「いや、これ……ただのリレーなんだけど」
「後さ、これから姉妹、友人対決な空気ってなの読んで欲しい」
「……ふっ、聞こえませんね、これから打ち倒すものの言葉等!」
『大人げない……』

呆れるように見る美琴達、だけどその生暖かい視線(特に同郷の椛は心なしか強い)をスルーし文はどこぞの悪役のように高笑い。
そして他の言葉を自信を目立たせる添え物とばかりに自信満々で叫んだ。

「さあ、恐れ慄き、そして目に焼けつけなさい……この射命丸の走『えい、伝家の宝刀のロー!』ごふ!?」

スパアアァンンッ

が、その途中で魔女と人形、後ろからこっそり近づいたアリス母娘が文の腿辺りを鋭く蹴り抜く。
グラと衝撃でその体が傾ぎ、それから鋭く走った痛みに文は地面にごろごろ悶絶する。

「あやややや!?」
「『姉妹の思い出作り』ノジャマハ……メッ!」
「悪いわね、文……今回は娘につくわ」
「そんなあ!?」
「……まあそうなるよな普通は」

母娘の叫びに白い超能力者は頷きつつ、地面を転がる文の元へ。
そのまま拾って首引っ掴んで立たせてやる。

「あ、どうも、助け……あやや!?」

ガシイィ

但しその腕は文の首で合わさり、しっかりと確保した状態で。

「あやや、あくせらさん、何を!?」
「いや、一応スタッフ側だし……何よりあの母娘敵に回したくないし『鎮圧』させてもらう!」

ゴキィ

「が、ふっ!?」

そう言うとその足で逃げられる前に、彼は先手必勝で文を沈めるのだった。

「……て訳で競技準備再開な、ああ観客参加のラストはリレーだから」
『は、はい、了解でーす』

ちょっと引きながら美琴や番外個体等は頷き、それを確認し彼は準備のスタッフを促す。
鎮圧を終えた彼に軽く手を振って別れ、美琴と番外個体、それに椛と氷華とパチュリーが思い思いに散る。

「ま、まあ、これで競技再開……競争する?」
「ようし、負けないよ、お姉様!」
「……ふふ、なら私は御坂さんの方に」
「なら妹ちゃんにつこうかな」
「折角だし他のも呼びましょ、一応事情知ってるので……」

最後に締めたパチュリーがチラと応援席やスタッフの方を見て、それに気づいた幾人かが立ち上がり歩き出す。
まずは水色の髪の元気娘と白尽くめのシスター、顔を見合わせてから駆けていく。

「折角だしこっちも出ようか」
「……じゃ、私達も競争する?」
『……負けないよ!』

チルノとインデックス、共にシスターズの『姉』と深く関わる少女二人。

「ふうむ、なら……数合わせと、魔女対決と行きましょうか」

そして続いて、文を鎮圧したばかりのアリスもまた、スタッフ側から『二人』程連れて出た。

「まあ、偶にはこういうのも良いか……私はパチュリーの相手を」
「……リレーなら後何人か居るわね、一緒に来てもらえるかしら、黄泉川先生?」
「はいはい、ぼっちの桔梗に付き合ってやるじゃんよ」

人形に手を振ってからアリスが、そして保護者として気になるのか芳川とその付添いに友人の女教師がまた競技場へ。
皆揃って姉妹対決、友人対決を盛り上げるという共通の目的の為に。

「あらあら、皆物好きですねえ、あくせらさん」
「……まァ良いンじゃねえの平和で」
「……喜んでるくせにー」

一頻り残念な同僚(文)の写真を収め笑うはたてが言って、適当に頷きつつも一方通行も特に否定せず同意し文の運送を手伝うルーミアがからかう。
そんな三人や応援席、上条やミサカ等に見守れながら御坂姉妹を初めとする少女達は競技場に向かうのだった。

「精々楽しみな、お調子者は排除したンだし」
『頑張れー、御坂(美琴お姉様)も末っ子も!』
「ええ、行ってくるわ、先輩達!」
「うんっ、頑張るよ!」

バッと応援に手を振って、少女らとその付き合い達は明るく笑った。
そんな風に和やかに、慌ただしい戦場の合間にも笑い声が響いたのだった。

パシャリ

「……青春ですねえ、あっまずは一枚っと」「しっかり記録しとけよ姫海棠」
『頑張れー、皆(お姉様達)!』

『夏休み』奔走した者達に笑って見守られながら。



「えーと、はいチーズ……」

どこかで誰か笑ってる遠くの教会で、掛け声と共に小さくシャッター音が鳴った。

カシャカシャッ

「……うーん、ちょっと恥ずかしいわね」

そう言って銀髪のメイド、咲夜が緊急時の連絡用携帯端末(一方通行と霊夢が用意したものだ)を使い自分の姿を撮った。

カシャカシャッ

「ふんふーん……こんな感じかしら」
「……何してるんです、メイドのお姉さん?」
「……頑固な従妹への罰ゲーム用資料?」

窓から覗き込んで問う涙子に答えつつ、彼女は撮り終えたそれをすぐさま『前回の事件で知り合った相手』へ。
邪笑と共に『嘗ての妹分』に対し姉気取りで接する『暗部少女』へ送られた。

「良しっ、滝壺様の依頼終了、私の代わりに……ミューズを弄って貰わなきゃね!」
『……イイ趣味してるなあ』

この言葉に涙子と布都達は軽く引いたのだった。



そしてそれを送られた二人は笑い、あるいは絶句する。

「……て訳で次捕まえたら『ミニスカメイド服』だから覚悟してね、マイシスター!」
「何で協力してんのよ、十六夜い!?」

交渉初めの牽制、軽いジョブと言いたげにコスプレ衣装(まあ本職だが)見せつける滝壺に、ミューズは悲痛な悲鳴を上げた。

「やっぱここの連中は変なのばかりね、表も裏も」
「いや、滝壺はその中でも特にひどいから……」
「……まあ、いい感じにペース乱されてるから良いのでは?」

そんな姉妹(言い張ってるだけだが)の会話に、見守る(というか立会いの立場の)ヴェントにフレンダに神子等は苦笑気味に笑っていた。
敵対勢力の交渉というには余りに生暖かい空気だった。

「ふっ、まあ現地人にお手並み拝見か……こちらも見張る相手がいるしな」

そんな微妙な空気の中で、立会人である神子は役目を果たしつつ静かに『部外者』を見張る。
今も踊るこころを囲う民衆の中で、容姿端麗でありながらマスクで顔を隠す一人の霊に敢えて隠さず睨みつける。
仕込み杖に偽装した七星剣を『わかるように』僅かに抜いて白刃を露わにする。

カチャリ

(……くっ、警告のつもり?)
「ふむ、暫く足止めしておくか」

両者は油断なく互いの隙を伺い合う、尤もその硬直状態こそが神子の目的なのだが。



祭りの夜に星が散る・十一



ズドドッ

「ふっ、さあ覚悟なさい……」
「ぽおおおおお!」

彼女は立て続けの拳、『やたら武闘派尼僧』の攻撃を悲鳴あげながら必死に躱す。
それから慌てて向き直り、このままでは不味いと、オカルトの少女は奇怪な叫びと共に両腕に紫電を纏わせる。
生者への反感、それを込めて拳を突き出した。

「ぽおお!」

ズドッ

妬み嫉みといった怨念、命を持たぬ霊がそれを持つ者に抱く共通のそれを込めた拳打を叩きつける。
が、尼僧はそれに立ち向かうことこそが仕事とばかりに無抵抗で受けた。

「……温いわ」
「ぽ!?」

紫電纏う拳は確かに相手の頬を打って、だけど青地に白という空を彷彿する僧服の少女はビクともせず立ち続ける。
そして僧服の少女、雲居一輪は落ち着いた表情で睨む八尺を見返した。

「……その程度?」
「ぽぽっ!?」
「姐さんの拳、寺の日課の組手で受ける拳に比べれば……軽い、全然足りないわ!」

ギロリ

「それじゃあ……反撃、行くわよ」

その冷たく見据える瞳に八尺が一瞬飲まれ、そこへすかさず一輪が飛び込む。
肩口からぶつかる程の勢いで相手の懐へ、そこから伸び上がり雲の手甲に包まれた拳を突き上げる。

「お返しよ、まず一つ!」

ドゴオオ

「ぽおお!?」
「更に……撹乱、崩す!」

ゲシィッ

八尺が怯んだ瞬間一輪は低く伏せ、右足を鞭のように撓らせながら地面すれすれを払う。
上から下、虚を突かれた八尺は足元を掬われ、一瞬その体が浮んだ直後『巨大な腕』が『その場』に捕らえる。

ガシッ

「……ぽっ!?」
「雲山、ぶん投げなさい!」

コクと無口な巨人は頷いて、引っ掴んだオカルトを天高く放り投げた。

ブウンッ

「ぽおおおおお!?!?」
「……貰った、これで仕留める!」

悲鳴を上げて吹っ飛ぶ八尺、彼女はくるくると舞い上がり、それを会心の笑みを浮かべたまま一輪が追撃の体勢へ。
タンと地を蹴り飛んで、更にその途中で『両の拳を合わせた巨人』を足場に続けて跳躍する。
そしてそのまま、一気に最高速に達したままその右足を振り上げた。

「さあ、姐さん直伝の技を……受けなさい、とりゃあああ!」

ドゴオオォオオ

「ぽおおおおお!?」
「はっ、その程度の怨念等……何度でも挑んできなっ、返り討ちにしてあげるから!」

渾身の飛び蹴りが八尺の胴を穿って、それで消え行く彼女に一輪は武神(毘沙門)の系譜らしく雄々しく再度の挑戦を受けると叫んだ。

「……うん、流石あの超人さんのお弟子さん、最後の啖呵なんて彼女を彷彿とさせる」
「いやあ、姐さんにそっくりなんて……照れるわね」
(別に褒めてるわけじゃないんだけどなあ……)

師が師なら弟子も弟子、霊夢が思わず毀した苦笑気味の言葉に、一輪が僅かに顔を赤くし頬に手を当てはにかむ様にする。
微妙に届いてない言葉に霊夢は呆れたように嘆息し、それからグッと交信用の陰陽玉を握った。

「ま、おかげで敵が一人減ったし……安心して下に注意できる、更に撃墜数を追加と行きたいわね」

そう言って彼女は集中しつつ霊力チャージし、『下』に干渉する為の術の準備に移った。



ドンドンドンと地下に爆音が鳴る、その源であり無秩序に放火をばら撒くのは『黒帽子に金髪の少女』と『パワードスーツの暗部』である。

「……さあ、派手にいくぜ!」
「了解だ、顧問!」

両者とも火力重視の戦い方、競うように二人は火力を全開にしていく。
二人が魔法の媒介を放り、あるいは引き鉄を引く度にオカルトが住まう地下道は激しく揺れる。
何せ完全な敵地で壊して損するのは向う側、加えて荒らすついでに『死角』潰しの意味もある、だからノリに任せて二人は無茶苦茶するのだった。

ズドンズドン
ドゴオォ

「……そうらっ、さっさと出てこーい、オカルト共!」
「ま、隠れるなら撃ち続けるだけだが」

呑気に呟きながら二人は更に火力追加、魔理沙は彼女らしく自由気ままに、シルバークロースαは最近こき使われるストレス発散に。
それぞれ違う理由でノリノリに撃ち捲る。
更に加えて言えば、この地に仕掛ける場合の障害であるオカルト、そのうち『一人』は変なの二人に絡まれていた。

「うふふ、何時まで逃げられるかな、オカルト『メリー』!?」
「あら得意の『あなたの後ろにいるの』やらないの?まあそっちにも弾幕用意してるけど……」
「……鬼か、こいつら!?」
『片方はそうかな?』

そんな風に時々爆音に混じり、遠くの方でオカルトの悲鳴が時折聞こえた。
メリーの十八番である奇襲は対策済みで、彼女は逃げ回るしかないのだった。

「はは、あっちは順調みたいだぜ……っと、少し止まりな、アルファ」
「む、どうした、顧問?」

笑いながら地下道を進んで、がある程度のところではっとした表情で魔理沙がシルバークロスアルファを制止する。
奥まで来たか暗がりに幾つかの資格、彼女は警戒した様子でアルファを見やる。
前へと促すようにしながら、同時に榴弾タイプの媒介を見せて言った。

「アルファ、警戒しつつ前進、それと……合図したら『撃って』から『打て』」
「……ふむ、やってみよう」

コクと頷いてアルファは歩き出す、そして魔理沙が直感から選んだ『影』に行かせる。
ゆっくりと鉄巨人は影に近づいたところで魔理沙がその背に叫ぶ。

「……今!」
「おうっ!」

ズドッ
ドゴオォオオッ

すぐさま彼は携行レールガンを振り上げ射撃、次の瞬間『不可視の弾幕』と相殺し合い衝撃を撒き散らかす。

「へっ、やっぱり来たな、だけど面白いのは……ここからだぜ!」

が、前以て準備していた魔理沙は衝撃に揺らされながらも瞬時に次の動きに出た。
彼女はすかさず魔術の媒介であるアミュレットをアルファのスーツの胸辺り、『打ち易い高さ』に榴弾型の星を放ったのだ。

「(『不可視の弾幕』、暴かせてもらう)……叩きつけろ、アルファ」
「おうっ!」

直後シルバークロースアルファは巨大な砲身をブンと振るい、星を勢いよく陰に潜む少女のオカルト目掛け叩きつけた。
するとそこで動揺した気配、僅かに慌てながらもそいつは二度目の弾幕で星を打ち落とす。

「ちっ、ああもう!?」

ズドンッ

「危なっ、でもこれで」
「……おっと、まだだぜ!」

安堵した様子で一息つく人外の少女、がその瞬間を狙って魔理沙が仕掛ける。
バチバチとこれ見よがしにミニ八卦炉を向け、会心の笑みで影へと問いかける。

「マスタースパーク……さあ、『どうする』?」
「くっ、まだ来る!?」

ズドンッ
ドゴオオ

魔理沙の砲撃と同時に向うも迎撃、八卦炉から放たれた輝きと不可視の弾幕が真正面からぶつかり合う。
が、その直後魔理沙は一歩横にずれ、確保した射線を示しながらアルファに言った。

「アルファ」
「チャージは完了済みだがこれも防がれるのでは……」
「試すのはたださ……さて、この場合は『どうする』、花子?」

意味深に問いかけ、すると直後ダンッとそこから学生服の少女が飛び出した。
どこか焦った表情で、花子は並び立つ魔理沙を睨んでいた。

「む、これは……」
「へっ、出てきたな……『三発』まで防ぐ、だが……」

そこで言葉を切って、それから指折り折りつつ魔理沙は焦った様子の花子に勝気な笑みを向ける。

「『四発目』は無理、さてこれはどういうことかな?」
「……顧問、一体?」
「……トイレの花子、出るのは『右から三番目のトイレ』、『三度のノック』で答える」
「つまり?」
「『法則性』『縛り』、そういうのが有るってこと」

探るように推論を口にし、すると花子は沈黙するも歯噛みし構える。
すると相手の感情に反応したようにその周囲の空間がゆらゆらと揺れる、が魔理沙の眼はある物を確かに見た。
時折花子の周りで発する『細く伸びる三条の光』、確固とした形で蠢く何か。

「……動揺したな、『種』がちらほら見えてるぜ?」
「くっ……」

からかうように言うと魔理沙は駆け出し、まずミニ八卦炉を軽く放る。
それで両手を開けて、すかさずポッケから榴弾型の媒介を引き抜き、それで続けて投擲した後丁度落ちてきた八卦炉をキャッチし瞬時に魔力を放つ。

「さあ、答え合わせだぜ!」
「ちいいっ!?」

ズドンズドンズドン
ドゴオオッ

轟音が続けて三つ、瞬く間に爆炎が広がって、直後それを『大きな掌のようなもの』『三つ同時』がグワと掴み覆い隠し防いだのだった。

「……種が大分見えてきたな、ボロが出たっていうか」
「むう、しまった……」

花子の背から一瞬だけ延びた『歪な人外の腕』が弾幕を握り潰しのが爆炎の中にしっかりと見え、それに魔理沙はニヤリと笑う。

「ふーん、でかい腕が三つ……まあつまりオカルト『トイレの花子』、何から何まで『三』に拘る妖怪。
……でその攻防、不可視の奴もそれ関係ってとこだろ?」
「ぐっ、目敏い……」

魔理沙は相手に会心といった表情で笑いかけ、それからその表情に幾分皮肉気な色が混じる。
彼女は宣言と共に、魔力をチャージしたミニ八卦炉を突きつけた。

「大分手品のタネも見えてきた……そろそろ積みかい?」
「ちいい、まだ……生者なんかに負けない、ああ妬ましや!」
「……へっ、なら怨念の程を図ってやる、妖夢や幽々子とどっちが上か……見せてみな、花子!」

さあ追いつめたとばかりに魔理沙は飛びかかり、が生者への羨みと共に花子も諦めず迎え撃った。
二人は笑みと怒り、それぞれ対極の表情で向かい合い激突するのだった。

(……やれやれ『そっくりさん』め、暴れてくれるぜ……子分どもの手に余るかねこれは?)

最奥で嘆息する『水兵服の少女』に見守られながら。



二人の少女が並んで『舞い狂う無表情少女の舞い』を見て、いや正確には見ているように振る舞いながら牽制し合う。

「ふふ、ああ楽しみ……ねえ、ギン子ちゃん?」
「くっ……」

クスと滝壺が微笑む、その手には携帯端末、『メイド服の美少女』の自撮り写真を見せつけるようにしていた。
それに銀髪の少女、ミューズが小さく震える。
それまでの戦いで片腕を使えず、中を通さず片袖を流すようにする彼女は、だけどその頼りない姿に合わない力強さで叫ぶ。

「ま、まず言っておくわ」
「うん、なあに?」
「……コスプレなんてしないからね、滝壺お姉さん!」
「あら残念……」

瀟洒なメイドのそれにミューズが吠えた、真っ赤な顔で怒鳴るように全身全霊で拒絶の意を露わす。
が、必死なそれは滝壺にとっては『後々のからかいの種』に過ぎず軽く流すのだった。

「……で、それは兎も角さ、今すぐ降参するなら罰ゲームは軽めにしてあげるけど?」

半分冗談めかし、だけど一部本心で彼女はミューズに最後となる投降を呼びかける。
何だかんだ気に入ってる彼女への私人としての感情と、暗部としての見逃せないという義務感、二つの妥協ぎりぎりからの言葉。
だけどそんな言葉にミューズは僅かに済まなそうな表情で首を横に振った。

「ううん、それは無理だよ、お姉さん……もう動き出してるし『彼女』への『責任』もあるから」
「そう……」

ミューズは一瞬目を伏せ、その後僅かに憂うような表情で滝壺に答える。

「私達、魔術師は……科学側に、この街とそれを管理する者に複雑な思いがある」
「それは?」
「私達はね、科学を恨んでる、いや『羨んでる』、多分心のどこかだけど嫉妬してるの」
「嫉妬?」
「うん、魔術はどうしたって古き伝統から逃れられない、技術の革新なんて夢物語。
でも……科学は違う、自由にそれを伸ばし急激な成長を続けていく」

どこか寂しそうに彼女は広がる街並みを見た、自分達とは違う発展を続ける地を。

「長くなるから端折るけど、ここのトップは嘗て魔術勢力で権力を振るって……でも突如姿を消し、その後科学勢力に移ったんだって」
「……上層部、もしかして理事?」
「うん、だから一層妬ましく感じるんだと思う、前は一緒で……なのに今は全然違う、自分達と違って自由に振る舞い知識を蓄える裏切り者。
そして嫉妬の余りこう考える……裏切り者で目の上の瘤、いっそ全て奪って利用したら良いんじゃないかってね?」

それは完全な開き直りで、だけど嫉妬に捉えられた者達にとっては身勝手ながらも復讐のような考え。
斜陽にある自分達を尻目に伸びる学園都市、ある種(当て付けともいえる)意趣返しでもある。

「まあ『口実』に過ぎないのは私達だってわかってる、だけど……まあ、何もしないと落ちるだけだから。
だから……だからね、奪わせてもらうから、この街の知識と技術の全てを」
「……そっか、必死なんだね、貴方達も」

済まなそうにしながらも開き直ったような表情で宣言し、がそれに対し滝壺は困ったように笑った。
だが反応はそれだけ、彼女は鋭く睨めつけるミューズに視線をしっかり合わせると静かに返した。

「でも……こっちもそうされると困るんだよね、学園都市は一部の人には必要不可欠なんだ」

どこか自嘲したように笑って、滝壺は必死に学園都市を欲する少女に告げる。
自分達も必死だと、この箱庭のような地で独自のルールの中で生きている者の権利を彼女は叫ぶ。

「学園都市という『特殊な場所』だから許される生き方が有る、私や暗部もそう……学生達や研究者だってそう。
外から見れば慌ただしくて強欲で無秩序で……けど止まらずに騒がしいこの街だからこそ許される生き方が……」
「……お姉さん」
「……異常性を寧ろ有難がって許容する街、他じゃ生き難い人にとって理想……絶対に渡さない!」
「なら……恨んで、こっちも引けないの、そんな人達を踏み躙ってでも奪わせてもらう!」

滝壺がここに生きる数万の人々の代わりに『権利』を叫び、それに対し理不尽を自覚しながらミューズも動いた。
二人はほぼ同時に懐から得物を引き抜き、そして仕掛ける。

『……覚悟!』

バンッ

直後小さく炸裂音が鳴った。



「……ミューズ、焦らないでよ」

はっとした表情で『戦女神』が空を、遥か彼方を見上げた。
彼女だけでは学園都市とは戦えない、共犯者を心配した。



『ちいいっ!?』

まずバンと炸裂音、直後周囲が気づきザワめく。
客等の視線の中心で滝壺とミューズ、銃を明後日に向けた滝壺と片手で強引に銃口を逸らしたミューズが睨み合う。
そして一瞬遅れ、カランカランと『予め着込んだ防刃スーツ』で勢い失った短剣が地に落ちた。

『き、きゃあああ!?』
「(……ちっ、奇襲はもう無理か)皆さん、こちらは暗、でなく理事直轄部隊……現在治安維持の為の行動中です、離れて!」
「……避難なんて待つと思う!?」

客等は当然のごとく悲鳴を上げ、その中で両者が再度動いた。
表向きの立場を口にしながら滝壺が周りを逃がそうとし、がミューズはそうはさせじと追撃に出る。

ジャキンッ

「前のようにはいかないよ、お姉さん!」
「……こっちもね、フレンダ!」
「あいよ!」

新たな短剣を抜刀したミューズが切りかかろうとし、がそこに呼びかけだけでフレンダの妨害が入った。
ポイと無造作に、お手玉程の大きさの金属の球体、何らかの爆発物と思われる何かが放られた。

「私は防御スーツがあるけど……どうする?」
「ちっ、余計な邪魔を……」

ガギィンッ

呑気な言葉に忌々しそうに顔を歪め、ミューズはとっさに剣を振るう軌道を変える。
クルと弧を描いてから下から上へ、小さく巧みに振り抜かれた刃が爆弾らしき物体を弾いた。

ポスン

「……何?」

が、直後一瞬煙を吹いただけで沈黙、その後ミューズの視線の先でコロンとアスファルトの上で転がる。

「ダミーか!?」
「正解、流石に避難前に爆弾はね……シスター!」
「……時間稼ぎ感謝!」

ミューズの動きが思わず止まった瞬間、横合いから滝壺等に僅かに遅れてヴェントが仕掛ける。
避難する者達を避けるように回り込み、視界から逃れた彼女がハンマーを振り抜く。

「おらああ!」
「くっ!?」

ガギィンッ

咄嗟に短剣を翳し、が受け止めきれずミューズが一メートル程蹈鞴を踏み後退する。

「ちいいっ、馬鹿力め!?」
「……こっちとしても『避難完了』まで風使えんのが難だがね」

注意を引いた暗部の少女達に一度手を振って、その後残念そうにヴェントが呟く。
対してミューズはふらつきながらも立ち上がると周りに、客等に紛れる仲間の錬金術師に叫んだ、

「何してる、このまま乱戦へ!」
『は、はい!』

それで突然の開戦に固まっていた一同が動き始め、がしかしヴェントもまた『伏兵』に指示を出す。
ギュルルと『上から』、何かが勢いよく回転する音が響いた。

「……アニェーゼ、アンジェレネ!」
『イエスマム!』

軽く手を掲げ、それに従い『空を舞う車輪』とそれに捕まる『二人』が急降下を掛けた。
ミューズと暗部の会話前から照準済みの魔力射撃が撃ち込まれ、ある者は倒れてあるいは必死に攻撃を中断し飛び退く。
数秒後トンと杖を手にしたアニェーゼがヴェントの隣に降り立った。

『援護します、ヴェント様!』
「おう、頼むな、二人とも」

仲間らにヴェントはそう答え、それから部下の統率を乱され苦々しそうにするミューズにハンマーを向ける。

「ま、そんな訳で私等の相手もしてもらう……学園都市に味方するのは癪だが『そこに住むだけで巻き込まれる誰か』、後味が悪くて仕方ないしな」
「……ええ、主も隣人への愛を望でるでしょうし」
「……ああそう、私にとっては面倒なだけだけど!」

嫌そうに答えると彼女は更に数歩分飛び退き、それから着地と同時にハンマーとの打ち合いで刃毀れた短剣の投擲体勢に。
ヒュンと風切るような音を立て、が刃物は暗部でもなくシスターでもない方へ回転し飛ぶ。
『オカルトと睨み合う貴族の少女』へと。

「……っと!?」

ガギィンッ

虚を突かれた神子が動揺しつつ鞘のままの七星剣で弾き、がそれで一瞬動きが止まる。
すかさずミューズはオカルト、横合いからの刃に神子程ではないが目を見開いている口裂け女に叫んだ。

「そこの死霊、今です……後々ぶつかるにしても学園都市側を削るのはお互い好都合のはず!」
「……いいだろう、この場はその通りに」

コクと頷き数発周囲に弾幕を放った後口裂け女が、それに合わせるようにしながら短剣をミューズも放ちつつ駆け出す。
精度を捨て手数重視の攻撃で周りを怯ませると、向うの連携が整わない内に並んで突撃を仕掛ける。

『集中攻撃、一人でも落とせば……』

即席で組んだ一人と一体はそう考えて、が直後即席らしきその対応が分かれてしまう。

「うーん、困った……じゃあ『追加』ね?」

滝壺は自分が狙われる可能性が高いのに呑気に言って、ピョンと一歩真横に飛ぶ。
すると一両のバン、速度を緩め逃げる人々を抜けてきた暗部の車両がゆっくりと近づいてくるのが見えた。

「はい、援軍ね……立場的に応援できないけど?」
「ああもう、避難中途半端で運転に気使う……まあ行け、嬢ちゃん達!」
『おうっ!』
「……あ、帰ろっと、じゃあねオカルト」

この援軍にミューズはさっさと見切りをつけ、それに対して口裂け女は止まり切れず孤立する。

「え、ちょ……」
「ガルーダの爪を……受けなさい、やああ!」
「ふっ、合わせるわ、白蓮……はあっ!」

ズドオォ

「あうっ!?」

貴族と尼僧、肩書に似合わぬ武闘派二名の豪快な飛び蹴りが口裂け女を高々と吹き飛ばす。
更にその二人、レミリアと白蓮は蹴りつけた衝撃で飛び上がると体勢を立て直し、空中でゆっくりと逃げようとするミューズへと視線を向ける。

「……あれ、貰っていいかしら、暗部の御お嬢さん?」
「うん、言いたいこと言ったし良いよ……向うの援軍に気を付けてね、ブリュンヒルドだっけ」
「だから今回は白蓮を呼んだのさ、念の為にね」
「合流されても何とかなるでしょう……そちらも気を付けて」

滝壺に許可を取ると二人は飛翔し飛びかかり、それに慌ててミューズは踵を返す。
先日のように逃げを打つ彼女に滝壺は呑気に手を振り、ヴェント等は苦笑しつつ更に数名つけ追わせる。

「ひゃ、また吸血鬼!?」
「捕まったらコスプレね、頑張ってねギン子ちゃん」
「一応付いとけ、アンジェレネも……暗部側は?」
「……暗部じゃないけど私とミーシャも行く、車輪相乗り頼む」
「……は、はい、どうぞ、天使様!」

一瞬の逡巡もせず逃げ出すミューズとやや遅れ飛んでいくレミリアと白蓮、そして更に遅れて黒夜とミーシャを乗せた車輪が空を駆けた。
それを見送った後滝壺とヴェントは取り残される形となったオカルトと下部組織の魔術師に視線をやる。
特に上司であるミューズに見捨てられた魔術師たちはギクと射竦められたようになる。

「……さて、後はこの場の始末ね」
「私とアニェーゼが居りゃまあ何とかなる……煙幕でも焚いてな」
「はーい、わかったー……フレンダは撹乱、絹旗と浜面は私護衛ね」
『了解!』
「……じゃ、こっちも仕事だ、アニェーゼ」
「はい、ヴェント様!」

ヴェントと滝壺に言葉に頷いて(今度こそ本物の)各種爆弾を手にしたフレンダと車から出てきた絹旗と浜面がそれぞれ位置につく。
滝壺の安全を確保し、それからフレンダの煙幕弾という援護を受けてヴェントとアニェーゼはそれぞれの得物を手に魔術師たちに仕掛ける。
そして、困惑顔でフリーの口裂け女、真の意味で孤立した彼女にもまた受難の時が訪れる。

ジャリ

「見てみて……踊りの中断で怒ってますって顔だよ」
「……何というか君もツイテいないな」
「……っ、全くね」

半ば八つ当たりでこころが怒りを意味する鬼面を被り、そんな彼女を抑える神子が同情を口にする。
当然口裂け女は後方、分が悪いと見てミューズのように逃げようとする。

ヒラリヒラリ

「……囲め、赤マント」
「う、しまっ……」

が一瞬早く神子の『外套』が生き物のように怪しく蠢きながら広がり、伸ばされた裾で描かれた即席の円陣が口裂け女を包囲する。
ダンと直後円陣を飛び越えた仮面の少女、こころが口裂け女の目の前に長刀を手に着地する。

「……逃がさないよ、叩きのめしてぶっ倒れるまで踊り見せてやる!」
「下手な調服より酷くない!?」
「まあ、踊り中断したからなあ」

八つ当たりに叫ぶこころの宣言に、口裂け女は攻撃を躱しながら全力でクレームを口にしたのだった。



ドガガガッ

「おりゃおりゃあ、派手にやろうぜ!」
「……ああもう、厄介な魔女め!」

そして地下でも別のオカルト、花子が苛立たしげに叫んでいた。
矢継ぎ早に打ち込まれる特大レーザーを不可視の弾幕で受け止め、そこから反撃にやはり不可視の弾幕を放つ。

「……っと、盾になってくれ、アルファ」
「使われ方に文句を言いたくなってきた……」

すると反撃体勢に移った時点で攻撃を止めた魔理沙が飛び退り、同時に後方から飛び出したシルバークロスアルファの背に逃げ込む。
ドンと不可視の攻撃の衝撃で彼の巨躯が揺れ、が十分覚悟し彼が食い縛って耐えた所で再び魔理沙が前に出る。
逃げてる間に再チャージした弾幕を、花子は都合三度目の不可視の弾幕で迎撃する。

「喰らいな、マスタースパーク」
「くう、相殺する……」

ドガアアッ

八卦炉から放たれた閃光が不可視の何かに衝突し弾け、が弾幕同士の激突で激しい衝撃が巻き起こる。
離れた位置にまで届くそれに双方押され、魔理沙も花子も身を低くし激しい風に耐える。

ブワッ

「お、っとと、だが……更にマジックミサイルだ!」
「くっ、四発目、ここぞとばかりに……」

黒帽子を押さえた魔理沙が逆の手で接触炸裂型の弾幕を放り、慌ててミューズが更に後方に跳ぶ。
が、爆炎が広がった瞬間『照り返しでギラつく鉄巨人』が炎を突っ切てきた。

「不味っ、デカ物の方が……」
「……三撃毎のインターバル、やはり有るようだな」

ブンと勢いよく巨大な銃身が振り抜かれ、慌てて花子は身を翻して横に跳ぶ。
チッと馬上槍の如き砲の先端が彼女の髪を掠め、がギリギリで躱した彼女は髪数本を散らした程度で安全圏へ。

「ちっ、躱すか、だが……顧問!」

ダンッ

「おう、交代だぜ!」
「ちいっ、さっきのは囮!?」

巨人の横を駆け抜けてきた魔理沙がチャージを終えた八卦炉を眼前で突きつけ、慌てて花子も精神を集中し力を練る。
カッと八卦炉が輝いて、が発する寸前花子の背後の空間が揺らめく、ギリギリで三発目の後の硬直が解けたのだ。

「貰った、ゼロ距離……マスタースパーク!」
「そんなの、喰らうかあ!」

ドゴオッ

砲撃の閃光と『一瞬だけ反射光で露わとなった異形の腕』、互いにぶつかり合い直後相殺した。
爆炎に煽られながら双方飛び退り、特に三発目と四発目の隙を着き切れなかった魔理沙は残念そうに愚痴る。

「……ちぇ、即席連携じゃワンテンポずれるか」

復帰から不可視の弾幕の再開一発目、それで弾幕を防いだ花子を魔理沙は残念そうに見やる。
が、花子の方は余り余裕はなく、二発め三発目を何時でも打てるようにしつつ息を整える。

「はあはあ、面倒な子……」
「いや私は至って普通だぜ、郷水準では……やっぱ三発目で一旦間が空くか、尤も小回り効かない今の連れじゃ詰め切れんが」

信じる者のイメージに囚われる故の縛り、その弾幕のクールタイムに気づいた魔理沙はどうそれを狙おうか思案する。
そして暫し悩んだ後決断し、彼女らしく真正面から仕掛ける。

「……ま、やっぱ力押しだな、順当に」
「それが一番嫌なんだけどね!?」

まずポイと中型弾幕、マジックミサイルが放たれ、当然それを花子は撃ち落とす。

「……まだだあ!」
「くっ……」

だがそこへすかさず、八卦炉を翳した魔理沙は再び至近距離の砲撃を、対し花子も顔を顰めながらも迎撃に出る。
再び両者の間で爆炎が弾け、二人とも数歩ふらつきながら後ずさった。

ドゴオオッォオォ

『うあっ……』

爆炎に炙られながら二人は距離を開け、がそこで花子にとって予想外の状況に。

トン

その背に軽い手応えが。

「え?」
「……あれ、花子?」

至近弾か顔を黒くしたメリーがポカン顔、肩越しに二人のオカルトが困惑した様子で視線を合わせる。
花子とメリー、そしてそれを挟んで魔理沙と、それにフランドールとこいし(連係ミスか互いの攻撃で少し焦げていた)が挟むような位置にいた。

「しまっ、追い込まれた!?」
「そういうこと、そいつ等とは異変で打ち合った仲だからな……遠くの音でも距離と大まかな状況は分かる」
『……え?』
「え?……あー、うん、私だけかい」

まるで悪戯成功を自慢するように彼女は笑い(尚反対側の少女達は小首傾げ中、こちらは天然のようだ)、その後勿体ぶって対極の少女に言った。
敢えて三発目の硬直に仕掛けるではなく、その間に魔理沙は最後の下準備、敵の弾幕の正体暴きに入る。

「そんじゃ最後の答え合わせ……躱すでなく『全力』で防ぐしかない攻撃を、フラン!」
「……うん、なあに?」
「久ランベリー、いや……迷路の方を」
「おっけー、禁忌『恋の迷路』!」

ダンダンと連続してフランの手から光の帯が伸び、それは複雑に広がった後複雑でそして不規則な文様となって二人のオカルトの周囲を覆う。
まるで逃げ道塞ぐようはゆっくりと旋回しながら縮まり、更に逃げ場を塞ぐように魔理沙とこいしが低速の弾幕を設置する。

「さあ……どうする!?」
「くっ、そういうことか……最早温存とは言ってられないか」

このままでは耐えられない、が唯打つだけでは到底足りない、そんな弾幕に花子は一瞬歯噛みする。
が無抵抗に受ける訳には行かず、彼女は悔しそうな表情でその霊力を全開にする。
その周囲が揺らめき、『赤』と『青』と『緑』、『俗にいう三原色』、それぞれ淡く輝く異形の腕がバッと広がる。

「おのれ……おのれ、魔女め!」

恨めしげに叫びながら彼女は身を捻り、それに合わせ異形の三つの腕が勢いよく振るわれる。
そして撓るそれ等が一瞬触れ合い、そしてスウと『三色混じり合ってから』掻き消えた後まず前方の弾幕を消し飛ばした。

ズドンッ

「まだだ……ここから、散らす」

ドゴオオッ

次に左右と、そして後方から襲いくる弾幕を準備に払い落す

「……へえ、成程、要は特定を反応させ合い『不可視域の光』に変えるか」
「……ちっ、ここまでか」

全てを明かしてしまった花子は同様の表情を浮かべ、反対に魔理沙は勝ち誇るように笑う。
不可視自体は変わらずとも三発毎の間隔と『大体の攻撃範囲や形状』を知ることができた、後はこのまま仕留めるだけだとミニ八卦炉を握る手に力が籠る。

「さあて、後は詰将棋みたいなもんだ、このまま撃墜数二を……『待った!』っ、おっと!?」

が、仲間と共に止めを刺そうとした魔理沙だが、そこへ若い女の声が掛けられる。
狭い地下に反響するそれは場所がわかり難く、警戒し辺りを見回した後魔理沙は咄嗟に後ろに飛ぶ。
直後ダンダンと、直前までいた場所に弾丸が撃ち込まれた。

『おっと、そこまで……そこを動かないで!』

鋭い言葉、それと弾丸を頼りに視線をやれば瓦礫の影に人影が僅かに見えた。

「……誰だ?」
『……黒幕、かな、一応は?』

魔理沙の問いに相手が答える、一瞬サラと流れる金髪が見えた、そして手元と思しき方で輝く銃火器らしき何かも。

「……見たところそちらの代表は君かい、黒帽子」
「まあ、一応はそうなるか……お前さんも花子の仲間か?」
「ふっ、私個人としては戦う気はないぜ、オカルトの戦闘データは欲しいけど……そのまま帰ってくれたらお互い平和に住むんだけど」
「嫌だと言ったら?」
「……私の手にあるのは強力な武器だ、そっちのデカ物に比べれば玩具に見えるかもしれないが。
逆らわないほうが身の為だと思うぜ、黒帽子?」

少女らしからぬ様子で相手は凄んでみせ、するとそれを受けた魔理沙は左右の少女達を視線を合わせた後口を開く。

「ふむ、答えは……」

一瞬貯めて、それからニヤリと笑って前へ踏み出す、同時に飛び出したフランドールとこいしと共に。
三人は弾幕を展開しながら言い放った。

『……いやだね、どりゃああ!』
「ちっ、やっぱ無理か……構えな、花子、メリー」
「ああもう、期待させて……」

大弾三連発が瓦礫を砕き、が寸前でそこから飛び出した『金髪に水兵服の少女』が銃を構える。
二人のオカルトも左右に並び、彼女達三人と魔理沙にフランドールにこいし、更にやや離れてシルバークロス、敵対者同士が睨み合う。
そして、両者は同時に駆け出すと火力を全開にする。

「……交渉決裂、じゃあ……」
「ああ……」
『どっちが上か、勝負と行こうぜ!』

ズドッ
ドゴオオォオオッ

巻き上がる爆炎を縫うようにし、どこか似た者達は弾幕を交わすのだった。



その同時刻少女ははっとした表情で地下を見た。

「……掛かったわね、大物、いや黒幕が」

地上で『通信能力を付加した陰陽玉』を握った巫女がボソと呟く。
博麗の巫女と、嘗て戦った『科学の異端児の相棒』、その再会は直ぐ近くまで来ていた。





てな感じで中盤戦三に続く(うーむ一日目より地味というか無難というか・・・・)
前回から地上と下でのオカルト戦、そしてその他・・・からの各勢力の開戦及び地下の花子ピンチと『そっくりさん』乱入でした。
因みに三原色は本当は『白』になるんですが・・・白は各色の光では目立ち難いってことで納得してください(バグの謎判定の理屈これしか思い浮かず・・・
後最後のそっくりさんの登場セリフが原作準拠ですが微妙にうろ覚え・・・間違いあったらあとで直します。

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以下コメント返信
九尾様
割と神子様はすんなり保護者キャラやれるイメージがあります、他にも布都がやらかした後始末といい・・・まあ彼女自身は常識人なので時々頭抱えてるけど。
因みに各保護者ですが根っからそれがやれるのと、苦心しつつ保護者やって段々と成長したりする一方通行型に別れます・・・精神年齢というか落着きの差かな?

青大根様
だ、大丈夫、崩れたら崩れたでそれで避難の言い訳になるから・・・祭りの後苦労するのは変わりないけど。

返信追加・・・

九尾様
肉体派な一輪ですが相棒及び師弟関係的にこうとしか思えず・・・巨人を従えるのが絵的にもインパクト有りすぎ、何かそれだけでキャラ濃くなるし。
花子に関しては完全こじ付け、原作ゲームの巨大腕×3や『ぬえ使役時代のバグ』から能力考えたら・・・割と穴のある設定ですが中ボス故盛ったということで。

ゆうじろー様
プライヴェーとの咲夜さんキャラ付けに少し悩みましたが・・・まあ従妹絡みなのもあるし無難に茶目なお姉さんキャラで。

マルルン様
競技に応援にコントにと、客からしたら視点的に慌ただしくなりそうですね・・・巻き込まれるのは絶対ごめんですが。


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