トトトッ
「ふうう、危なかった……」
少女が『井戸』を軽やかに駆け下りる、黒電話とナイフを手にした少女、オカルトの一人であるメリーだ。
彼女は仲間である番町の井戸で戦場を逃れ、ホッと一息着いたところであれと首を傾げた。
「……八尺の気配が?」
仲間であり後続に来ている筈の相手が感じられない、思わず井戸を見上げたところで『音』に目を見開く。
それは全く予想外の音、ギャリギャリと何かを削りながら金属質な物体が建てる音。
明らかに仲間ではない、彼女は反射的に大弾を振り被る。
「不味い、これは……八尺じゃない!?」
『……今更気づいても遅い、はああ!』
バギィン
が、その判断は遅きに徹していて、大井戸から飛び出してきた『巨大な鉄塊』が迎撃を踏み潰しながらゆっくりと降り立った。
それは戦闘用パワードスーツ、脚部のホイールとウィンチで速度を調整しながら下りてきたシルバークロースアルファだ。
彼は鉄の腕で弾幕の余波を煩わしげに払い除け、それから背負っていた『影』を促す。
『ふう、到着だが……そちらはどうする?』
「ふふ、それは当然……」
「突撃だよ!」
そこからピョンと影二つ、こいしとフランドールが元気よく飛び降りメリー目掛け特攻をかける。
『目標発見……早い者勝ちィだァ!』
ドガアア
「じ、冗談じゃ……」
「待てええ!」
「良うし、鬼ごっこね!」
メリーは慌てて背を向け走り出し、が当然こいしもフランもそんなこと許すはずがない。
バラの花弁と炎の弾幕を盛大にばら撒いて、妖怪少女たちが逃げ出したオカルトを追った。
「くく、子供は元気が良いのが一番だぜ」
『明らかにそういうレベルじゃないが……』
呑気に笑う魔理沙と引いてるアルファが見送って、それから残された形となった二人も慎重に歩き出した。
『……顧問、敵はどう来ると思う?』
「まあ迎撃かな、流石に陣地は失いたくないだろうし……尤も問題は自由に動かせる戦力が有るか?」
そう良いながら彼女は機雷型の弾幕を握り、壁側の手近な柱、『死角になり得る位置』を見やる。
それにアルファもそういうことかと得心しつつ『得物』のエネルギーを半分程チャージする。
「涙子の情報じゃ相手は五大オカルトと名乗ったが……上に一人、妹コンビにまた一人、他にも出てる相手がいるかもしれない」
『そうなると迎撃に出せる戦力は少ない、少なくとも真正面からは来ない、と?』
ニヤリ
「そんなとこ、て訳で……陣地を潰す意味でも『荒らしながら』進もうぜ、生き埋めにならない程度に?」
魔女は邪悪に笑ってそう言って、直後爆音が立て続けに鳴ったのだった。
ズズッ
「……派手にやってるわねえ、派手好き共」
地から響く音にクッと笑う霊夢、当座の仕事はまだ先と壁際に体を預けた彼女は時折来る弾幕らしき振動に苦笑していた。
敵地だけに少々心配だがこの振動が続く限り、つまり今の状況が続く限りはまあ問題は無いだろう。
そして向うから必要な時、『地霊殿の異変で使った特性陰陽玉』の連絡が来た時が仕事となる。
「それまでノンビリ出来そう……私はだけど」
「そうねえ、霊夢さん……なら『あれ』はこっちに『譲って貰う』わ」
そう言って隣に立つ僧服の女、入道使いの一輪が再び雲を手甲状にし立ち上がる。
視線鋭いその先はドンドンと『閉じた大井戸』を叩く二メートル越えの巨女。オカルトの一体である八尺様だ。
「ぽおお、ぽお、ぽおおおおっ!?」
「帰還できずか、何というか……ご愁傷様?」
「ま、逃がさないけどね」
閉じ切った帰り道にパニック状態に八尺に、が同情しつつも手加減する気は一輪には毛頭無い。
彼女は井戸の後を叩く八尺へ『鉄拳』をゆっくりと振り被った。
「はあい、一発行くわよ……避けるか防ぐかしたら?」
「ぽおおおおっ!?」
ブンと振るわれたそれに、直前でやっと気づき八尺が飛び退く。
が、その瞬間彼女は『背』にドンと軽い衝撃、いつの間にか貼られていた結界が逃げ道を塞いでいた。
霊夢が軽く手を振り、それに手を振り返しつつ一輪が八尺に叫んだ。
「ありがと、霊夢さん……これで逃げ場はないわ、私の相手をして貰おうかしら?」
「ぽ、ぽ、ぽおおっ!?」
「……僧侶なのに荒っぽいのね、師弟揃って」
「……ま、私は軍神縁の僧で、それに姐さんに不意打ちした怒りも有る!」
ちょっと呆れた様子の霊夢に言い訳し、それから一輪は雲を掻き集め八尺へと駆け出した。
「迷いし霊に、仏に代わりて……介錯の拳を!」
「ぽっ!?」
僧らしい言葉に、それにしてはアグレッシブなテンションで一輪は霊を(物理的に)鎮めるべく向かっていく。
呆れる程師の白蓮の影響が見えて、見送る霊夢は思わずクスと笑ってしまう。
「前から思ってたけど元気のいいお寺、ノリのいい郷の連中が気に入るわけね……ちょっと悔しいけど……」
祭りの夜に星が散る・十
ワアアアッ
『さあ今回の競技は自由参加の……借り物競争っ、どう課題を熟すか見物ね!』
歓声の中、数人の少女が競技場を駆け回っていた。
それを司会席の超能力者や人外娘が煽るようにしていると、早速目的のものを見つけたらしき『黒髪に高下駄の山の少女』がゴール地点に駆けていった。
『おおっと、まず……初日解説者だったA嬢がゴールに!』
『課題クリアならゴールだねー』
「あやや、一番乗りは気持ちいいですねえ」
前と違い『重り』の無い彼女はニコニコ笑いでゴールの係員の前へ、がその手に何もなく係員は首を傾げる。
「む、これは」
「どうしました、係員さん?」
「いや、だが手ぶらで……」
「ふっ、ご安心を……まあ、私の『お題』を見ればわかることかと」
ピラと紙片、借り物競争の肝であるお題の書かれた紙を見せ、すると係員がピシと固まった。
おやと司会側や客席のものも困惑し、それを見てカメラ班が気を利かせて文の手物にカメラを向ける。
するとそこには『才色兼備な女性』と書かれていた。
「ほら、どうです!見ての通りの器量良し……最速の弾幕撃ちで郷の名物記者な私なら才の部分も完璧でしょ!」
『……えーと』
むんと自信満々に文が胸張って、が美琴やルーミア他も係員と同じように固まってしまう。
『第三位さん、判定はー?』
『……うーん、自己申告だからなあ、まあアウトで』
「あややっ、そんなあ!?」
判定し切れない係員に代わり司会側からの不合格判定、文が愕然とした表情で悲鳴を上げる。
肩を落とす彼女に、司会の二人が同情したように見ながらあくまでノーを突きつけた。
『そういうの自分で言うのは違うと思う、横着せず条件に合う人探さないと』
『それに、他からしたら解説やった時ので……精々ノリのいいお姉さんくらいだしー?』
「あややっ、しまった、確かにここじゃそうか……」
これにはぐうの音も出ず、ガクと項垂れた後彼女は慌てた様子で踵を返した。
そして直後、入れ替わるように『三人の少女』がゴールへ。
「ふう、先取られなくてよかったあ……」
「わふ、とりあえず判定を」
「……むきゅ、通ると良いけど」
氷華と椛とパチュリー、前の競技の勢いのまま行きたい二人と雪辱したい最後の少女は『一人の少年』を連れていた。
が、お題らしきの少年を見て係員が再び固まる。
『真っ白い超能力者』が所在無げに立っていたからだ。
『えーと、代わりに聞くけど……一方通行、何でここに?』
「何かスタッフといたところにあの三人が来て……」
一方通行もよくわかってない様で、このままでは切りが無いとカメラ班が再びお題を映しに行く。
すると三者三様、異なる内容が競技場に知らされた。
『はい……』
「え?」
直後揃って沈黙、紙片には順に『保護者』『ツンデレ』『駄目人間』と書かれていた。
「おい、全然合ってねェンだが……『クリアね、ええ』待てや、超電磁砲!?」
『じゃ同着一位だね、おめでとー』
納得行かず吠える一方通行に構わず司会二人がコールし、それに氷華等三人は腕を掲げタッチしながら喜んだ。
「やったあ……お兄さんお姉さんキャラ誰が居たかな、ってとこで彼と御坂さんが思い浮かんだんですよ」
「ああそれで暇なそう方をと……こっちは天狗二人の情報でそういえばって」
「……えっ、第三位さん以外の超能力者は駄目人間の隠語でしょ?」
「ふざけンなっ、異議有っ特に最後の!」
喜んでるそれぞれの題を、『保護者』クリアの氷華、そして『ツンデレ』と『駄目人間』をクリアした椛とパチュリーに一方通行が異議を叫ぶ。
が、(特に最後で)初日からの言動で観客からもそういうイメージの付いた彼の言は聞き届けられずただ一人唸るのみだった。
「……これに懲りたら普段から真面目にやると良いですの」
「ドンマイ、一位さん……あやや、一位取られましたかあ」
「ぐっ、写真撮ったらカメラ叩き割る……」
ポンと文と(はたての仲介で)黒子が横を抜け際に一方通行の肩を叩き、すると止めになったか彼は力無く項垂れたのだった。
『……なんて酷い絵柄』
そんなどこか生温い空気の競技側に対し、司会や観客席は呆れに呆れる。
するとそんなところに、スタッフからの一報が入った。
「……おーい、第三位さん?」
『あら……』
伝言の金髪の少女、何時かの一方通行と同じくスタッフに排除されたアリスが美琴等に何事か伝える。
その内容に彼女がむっと少し考えたように腕を組み、そしてそれと入れ替わるようにアリスが美琴の席に代わりに入った。
更に学生側にも知らせるのか鉢巻の少年、『第七位』が学生側の席に入っていくのも見えた。
『代わるわね、ええと……初日と同じ理由で繰り上げよ、観客参加と学生の競技一回ずつやってそれで今日はお終いとのこと』
『ああ、治安維持の為にお昼までと……まあ、最近物騒だからねー』
「……あァそういうことか」
外の状況からスムーズな大会進行の為に繰り上げを決め、が参加者の感情を考え『目立つ大型競技』はやることにしたようだ。
更に状況の変化に気づいた一方通行はゴールから戻り、美琴を『ある方向』に押しやりつつ司会に入った。
『それじゃあ俺はこっちで……観客参加と通常の競技、それぞれ看板競技の筈だから気合入れるンだな?』
「……一方通行め、気を使ったつもりかしら」
司会席から追い出された美琴が競技場を、そこに近づく数人に納得したように苦笑した。
見えたのは天狗等に案内されるよく似た少女、僧服からジャージに着替えた番外個体。
「(借りが出来たか……)よく来たわね、番外個体」
「……お姉さま、時間空いたんで来たけどこれは?」
「思い出作り、ってことでしょうね多分」
少し困ったようにする番外個体に微笑んでやりながら、彼女は手招きする氷華や椛の方に駆けて行く。
『ふふ、イイ話だなー』
『ま、向うが集中できるようしっかり司会やりましょう』
『……へいへィ、じゃ準備の後競技開始だな』
ルーミアとアリスは楽しそうに微笑み、一方通行も呆れつつも静かに笑い大会進行へ、微笑ましい空気の中で二日目の大覇星祭は進むのだった。
ガヤガヤ
「えいっ、行くよ!」
学生の為の大覇星祭、それ等の競技に賑わう学園都市だが何も人が集まるのはそういった競技場だけではない。
例えば何の変哲もない路上、目立ちたがりやプロを目指すアマチュアといったパフォーマーが熱く叫んでステップする。
そしてそこに、特に目立つ『桃色髪の無表情な少女』が『金髪の少女』の応援の元に軽快に舞っていた。
タンタンダダンッ
「……よっ、とう、えいやあ!」
「頑張れ、こころ!」
『うおお、いいぞ『飛び入り』の子!』
他を圧倒する派手にして計算され尽くした足取り、それが飛び入りながらノリノリで踊る少女を否応無く目立たせる。
通りすがっただけの者も直ぐ引き付けられ、ライバルである先に踊っていたパフォーマーも魅了され芸の肥やしと見に回りあるいはバックダンサーを引き受ける。
そういった自分を中心とした集団を作った少女、秦野こころはこれ以上ない高いテンション(顔は無表情だが)で己の舞いを周囲に見せつけていく。
「うりゃあああ、はああっ!」
ステップから高く跳躍、取ってから着地し天高く指を指し、そして決め顔でアピール。
ビシイッ
「ふぃにっしゅ!」
『わあああああ!』
保護者の神子も観客も周囲のパフォーマーもこれには大興奮、一斉に叫んで耳が痛くなる程手を叩きまくるのだった。
パチパチパチッ
「ふうう、大満足!」
「うん、見事だったぞ、こころ!」
舞いを終えたこころは会心の笑み(と一見わからないが口角がピクと揺れていた)そしてそれを微笑ましく思いながら神子も彼女を褒め称える。
そして一頻りそうしたところで、ふと二人は我に返った。
「……あれ、オカルト誘き出しに目立とうって……それで始めたけどこれ何時もと同じじゃ?」
「はっ、そういえば本当だ!?」
あれと二人は顔を見合わせハッとした顔になった、目的自体はずれてはいないが割と唯の日常風景だった。
そもそも目立ちたがりとその保護者、前者が人の多さにはしゃいで、後者がそれを見守る体勢だった時点で予想できたことだが。
目的はある意味果たして、が実はそれを忘れて踊りと応援に夢中な二人は少し罰悪そうにする。
「……ええと、どうしよう、太子様?」
「い、いや、一応私たちの目的としては間違っては……」
困ったようなこころの言葉に、神子は微妙に言い訳めいて返す、というのも自分達を見やる『視線』が有るからだ。
それらしく客に扮した、だが共通して外国客である複数の視線。
そして『帽子とマスクで顔を隠した長身の女性』、そういった面々が二人を見ていた。
「け、結果的には良し、だから問題ない!」
「……じゃ、じゃあ、折角だしもう少し踊っていい?」
「……少しだけだからな、こころ」
仙人と九十九の組み合わせに気づいたか錬金術師とオカルト(涙子の情報から口裂け女とわかる)、見張っている両勢力の前で悪乗りしたこころが踊りを再開する。
見張られるということ、つまり衆目を向けられる行為に気を良くした目立ちたがりに、神子は困ったように笑うもあっさりと許可。
娘に甘い彼女は再び群衆に混じって、どっちが見張っているのか一見わからない奇妙な空間が出来上がってしまった。
(う、うむ、何かよくわからんことになったが……この地に害を成す勢力の構成員を止めたのならサボりとは言われまい……多分、そうだと良いなあ)
少し自分に言い聞かせるようにしながら現状維持を決め、するとそれに生温い物を見るような『三人』の目。
「いや、何やってるの……流石にこれは応援できない」
「あうっ……」
「結局同郷者の自由人と同じくって訳ね」
「……どいつもこいつも、こっちは身内の不始末に頭が痛いのに」
暗部『アイテム』の暫定リーダーの滝壺と部下のフレンダ、そして向う側の知識を持つと駆り出されたらしきヴェントが呆れたような視線を送っていた。
「何ていうか趣味人ねえ」
「行動としては間違っていないけど」
「す、すまん!?」
「……まあ、こっちとしては好都合といえば好都合だけどね」
思わず平謝りする神子に苦笑しつつ、三人は『探るような視線』を無視し客の間を抜けてこちらに来る。
その最中に、滝壺が『明らかに堅気でない雰囲気の外国人客』に何事か囁いていて、それを受けてそいつはギョッとしたように顔を顰め直ぐに『どこか』に向かう。
そんな様子に訝しむ神子に、滝壺はニヤリと悪い笑みを浮かべた。
「これで良し、後は待ちだね」
「今のは?」
「……仕込み、それまで踊りでも見よう、保護者さん」
それだけ滝壺等は言ってこころの方を見、思わせぶりな言葉に問い返したくなったがそれより早く答えは出る。
踊りが熱を上げ渦中に入る中、近づく気配が一つ。
「ほら、来たよ?」
『銀髪に赤の瞳』、やりずらそうな曇り顔の一人の少女。
「やあ、数日ぶりだね、マイシスター?」
「ええ、そうですわね、滝壺お姉さん……態々部下に話したいことがあると言付けされたらね」
「ふふ、色々話しましょう……無駄だろうけど最後の降伏勧告と、それにオカルトのせいでややこしい状況の纏めでもさ」
「……まあローマ側である私と、そっちの保護者の金髪は立会人みたいなもんだね」
「……良いでしょう、私としても完全に敵対する前に言いたいこともあるので」
そう言いながら滝壺とミューズは敵意とそれ以外の混じった視線を交わし、ヴェントやフレンダ、神子にミューズの部下が見守る中二人は数日ぶりに相対する。
この先の戦いに大きな影響を与え得る対話と、その裏で読みと策を差し合う為に。
(……今頃みんな頑張ってるんだろうな、なのに『こんなこと』で少し悪いかな)
ポカポカとした陽気の中の教会、すると『呻き声』と共に座椅子に少女二人だらしなく体預けられた。
『呻き声』の主は黒髪と水色髪の少女、涙子とにとりだ。
「……ぐにゅう」
「ひゅいい」
「あらあら、お昼寝にはお早いでしょうに」
『いや、二日酔いぃー』
「……ここ、教会なのですが」
残念な連中にオルソラが困ったような顔をする、(二人と違い)普通の客に飲み物を配るその顔は珍しく苦笑気味に引き攣る。
前からといえば前からだが、どうにも教会を教会として扱う者が少な過ぎる気がするのだ。
厳しさ、厳粛さに拘る性質ではないオルソラとて困ってしまう程に。
「ヴェント様と何か対策立てるべきでしょうか……」
「ごめんねー、でもここ空気がいいというかさあ」
「何か楽なんだよね、リラックスできて……前と今の管理者さんの人柄?」
「……お褒めの言葉は嬉しいのですが、出来れば多少自制して欲しいというか」
思わずのオルソラの愚痴気味の言葉に、酔っ払い二人は言い訳のように返し、それにオルソラは僅かに顔を赤くし黙り込んだ。
言いたいことはあれど教会と、そこを管理する自分達を褒められたのは宗教者として悪くはなかった。
「ご、ごほん、今回は祭りということもありここまでに……余りこういうことはないように」
『はーい、シスターのお姉さん』
調子よく二人は返事した、その言葉だけは。
「教会目当てのお客様いるし……ちょっと外出ようか、にとちゃん」
「そうだねえ、あんまり勝手やって第三位さんと第一位さん……その先の鬼巫女に話行ったら怖いし」
「……あー、前半の時点で困る、御坂さんに怒られたくないし」
涙子的には特に見栄の意味でもそれは避けたくて、二人は支え合いながら一旦外のテラス部分に回る。
それから椅子と壁に思い思いに別れ、丁度いい塩梅の外気を浴びつつ雑談へ。
「うー、風が気持ちい……酔い覚めたら私達も外行こうか?」
「……だねえ、祭りなのに寝っ放しは勿体ない」
そうテラスで言い合い、二人は教会内から聞こえるラジオ(教会にはあまり合っていないがオルソラの友好関係的には納得だ)それに耳を傾け笑い合う。
折よく広報スタッフが競技待ちの少女たち、美琴等にコメントを求めた所だった。
『ま、半分スタッフみたいなもんで競技は無理でも……見るだけってのは少し勿体ないし頑張るかな』
『お姉、でなくて親戚との思い出作りに頑張りまーす……教会の皆ー、頑張るからねー』
「あらあら、元気にやってるようで……」
年齢逆転姉妹がそれぞれの意気込みを語り、それに教会内でテンション上る気配が伝わってくる。
思わず涙子とにとりは微笑ましそうに顔を見合わせ笑った。
「ふふっ、はしゃいじゃって……」
「そう言いながら笑ってるよ、節姫?」
「……ま、全く知らない間柄じゃないし」
ちょっと大人っぽく笑って涙子は肩を竦め、そこでふとテラスに近づく『気配』に僅かに眉根を寄せた。
「皿一枚二枚、ほら良いのか、『割る』ぞお?」
「駄目えええ!?」
「……酷い懐柔の仕方だ」
人目を避けるよう教会の中ではなくその外、涙子達がいるテラス側に近づく霊の気配、それとそれなりに知る仙人の霊力に涙子の表情がゲッと歪む。
嫌な予感がして逃げるより早く、皿を見せびらかしながら布都と屠自古が見たことのある例を連れてきた。
「ほうれ、貴様の仲間の情報を吐けい、代わりに皿をやる……仙人手製、珍しいぞホレホレ?」
「うっ、欲しい、でも仲間を裏切る訳には……」
「そう言いつつ……ここまで大人しく来てる時点で欲望負けてるって」
「……敵同士で何やってんのさ、シリアスにやろうよ少しは」
『え、だって裏切らせれば敵は減るし』
「ああ、そう……」
自分達の時と違い余りに生温い空気、前の苦労はなんだったのかと涙子とにとりはガクと肩を落としたのだった。
・・・てとこで次回に続きます、戦闘挟みつつ道教組はそれぞれオカルトに接触、謎の関係性を気づいた姉妹もまた・・・
ううむ、にしても展開上どうしても視点がばらけてしまう・・・二日目は二つか三つくらい変えつつ平行進行していきます悪しからず。
あっ一部コントやってますが追々そちらもシリアスやる予定・・・
アカマ様
布都ちゃんがいる時点でお菊さんの霊はオチ担当です、原作でもオカルト攻撃時共に元気よく皿割ってましたしこうなるかなと。
九尾様
似たような妹コンビですが本当にそっくりなんですよね、敢えて言えばフランは基本アッパー系でこいしがアッパーダウナー行ったり来たりな差というくらい?
尚一見ネタ分多めな皿コンビですがお皿、つまり怨念に関わる物で調伏するのはこの手のでは割と正当なはず・・・外見で面白くなってますが。
利三様
いや愉快犯気質で揃えたら火力が高くなってしまって・・・一応威力偵察なので間違ってはないと思う多分。