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No.41025の一覧
[0] とある幻想の弾幕遊戯Ⅱ(とある魔術の禁書目録×東方シリーズ)[ベリーイージー](2017/07/15 20:30)
[1] 第一話 学園都市悲喜こもごも・一[ベリーイージー](2015/04/29 22:53)
[2] 第一話 学園都市悲喜こもごも・二及び二の裏[ベリーイージー](2015/04/29 22:55)
[3] 第一話 学園都市悲喜こもごも・三[ベリーイージー](2015/03/28 14:27)
[4] 第一話 学園都市悲喜こもごも・四[ベリーイージー](2015/03/28 14:28)
[5] 第一話 学園都市悲喜こもごも・五[ベリーイージー](2015/03/30 16:03)
[6] 第一話 学園都市悲喜こもごも・六(終)&六の裏[ベリーイージー](2015/04/11 20:13)
[7] 第二話 幻想の命・一[ベリーイージー](2015/04/17 22:21)
[8] 第二話 幻想の命・二[ベリーイージー](2015/04/17 22:22)
[9] 第二話 幻想の命・三[ベリーイージー](2015/05/09 19:47)
[10] 第二話 幻想の命・四[ベリーイージー](2015/05/11 20:10)
[11] 第二話 幻想の命・五[ベリーイージー](2015/05/11 20:11)
[12] 第二話 幻想の命・六[ベリーイージー](2015/05/30 20:33)
[13] 第二話 幻想の命・七[ベリーイージー](2015/05/30 20:33)
[14] 第二話 幻想の命・八[ベリーイージー](2015/05/30 20:34)
[15] 第二話 幻想の命・九[ベリーイージー](2015/06/01 00:59)
[16] 第二話 幻想の命・十[ベリーイージー](2015/07/11 19:32)
[17] 第二話 幻想の命・十一[ベリーイージー](2015/06/06 19:52)
[18] 第二話 幻想の命・十二[ベリーイージー](2015/06/20 16:56)
[19] 第二話 幻想の命・十三[ベリーイージー](2015/06/20 16:56)
[20] 幻想の命・エピローグ&第三話序章[ベリーイージー](2015/07/11 19:33)
[21] 第三話 無自覚な迷子達・一[ベリーイージー](2015/07/16 00:54)
[22] 第三話 無自覚な迷子達・二[ベリーイージー](2015/07/27 19:51)
[23] 第三話 無自覚な迷子達・三[ベリーイージー](2015/09/05 14:25)
[24] 第三話 無自覚な迷子達・四[ベリーイージー](2015/09/05 14:26)
[25] 第三話 無自覚な迷子達・五[ベリーイージー](2015/08/10 21:11)
[26] 第三話 無自覚な迷子達・六[ベリーイージー](2015/09/05 20:51)
[27] 第三話 無自覚な迷子達・七[ベリーイージー](2015/09/05 20:50)
[28] 第三話 無自覚な迷子達・八[ベリーイージー](2015/10/02 20:55)
[29] 無自覚な迷子達・九(終)[ベリーイージー](2015/10/02 20:55)
[30] 3話エピローグ&3.5話『再会』[ベリーイージー](2015/10/02 20:56)
[31] 第四話 希望を求めて・一[ベリーイージー](2015/10/16 00:09)
[32] 第四話 希望を求めて・二[ベリーイージー](2015/10/22 00:04)
[33] 希望を求めて・三[ベリーイージー](2015/11/08 18:43)
[34] 希望を求めて・四[ベリーイージー](2015/11/08 18:48)
[35] 第四話 希望を求めて・五[ベリーイージー](2016/12/23 19:09)
[36] 第四話 希望を求めて・六[ベリーイージー](2015/11/19 00:15)
[37] 第四話 希望を求めて・七[ベリーイージー](2015/11/28 20:29)
[38] 第四話 希望を求めて・八[ベリーイージー](2015/11/29 01:29)
[39] 幕間&希望を求めて・九[ベリーイージー](2015/12/05 13:59)
[40] 希望を求めて・十(終)[ベリーイージー](2015/12/05 14:00)
[41] 第五話 狂信と敬心・零 [ベリーイージー](2016/11/06 23:47)
[42] 第五話 狂信と敬心・一[ベリーイージー](2016/10/29 16:04)
[43] 第五話 狂信と敬心・二[ベリーイージー](2016/02/05 20:59)
[44] 第五話 狂信と敬心・三[ベリーイージー](2016/10/29 16:06)
[45] 狂信と敬心・四[ベリーイージー](2016/02/25 21:37)
[46] 狂信と敬心・五[ベリーイージー](2016/02/25 21:57)
[47] 第五話 狂信と敬心・六[ベリーイージー](2016/03/11 18:54)
[48] 第五話 狂信と敬心・七[ベリーイージー](2016/03/11 18:55)
[49] 第五話 狂信と敬心・八[ベリーイージー](2016/03/14 21:08)
[50] 第五話 狂信と敬心・九[ベリーイージー](2016/03/26 18:52)
[51] 第五話 狂信と敬心・十[ベリーイージー](2016/04/04 20:43)
[52] 第五話 狂信と敬心・十一[ベリーイージー](2016/04/24 16:45)
[53] 狂信と敬心・十二(完結編・上)[ベリーイージー](2016/04/24 16:46)
[54] 狂信と敬心・十三(完結編・下)[ベリーイージー](2016/10/29 16:07)
[55] 閑話 不和と不安と一[ベリーイージー](2016/06/04 18:20)
[56] 不和と不安と・二[ベリーイージー](2016/06/10 17:24)
[57] 不和と不安と・三[ベリーイージー](2016/06/19 19:08)
[58] 不和と不安と・四[ベリーイージー](2016/07/17 15:54)
[59] 不和と不安と・五[ベリーイージー](2016/07/17 15:55)
[60] 不和と不安と・六[ベリーイージー](2016/12/23 19:10)
[61] 不和と不安と・六の下[ベリーイージー](2016/10/29 16:06)
[62] 閑話乃二・ご無体な無頼たち[ベリーイージー](2016/08/31 17:04)
[63] ご無体な無頼たち・二[ベリーイージー](2016/09/10 17:41)
[64] ご無体な無頼たち・三[ベリーイージー](2016/11/17 17:06)
[65] ご無体な無頼たち・四[ベリーイージー](2016/11/17 17:06)
[66] ご無体な無頼たち・五[ベリーイージー](2016/11/17 17:07)
[67] ご無体な無頼たち・六[ベリーイージー](2016/12/23 19:07)
[68] ご無体な無頼たち・七(完)[ベリーイージー](2016/12/30 00:01)
[69] 第六話 祭りの夜に星は散る・一[ベリーイージー](2017/09/10 11:30)
[70] 第六話 祭りの夜に星は散る・二[ベリーイージー](2017/01/22 16:02)
[71] 祭りの夜に星は散る・三[ベリーイージー](2017/03/06 00:05)
[72] 祭りの夜に星は散る・四[ベリーイージー](2017/03/06 00:05)
[73] 祭りの夜に星は散る・五[ベリーイージー](2017/03/06 00:06)
[74] 祭りの夜に星は散る・六[ベリーイージー](2017/03/06 00:07)
[75] 祭りの夜に星は散る・七[ベリーイージー](2017/03/15 17:29)
[76] 祭りの夜に星が散る・八[ベリーイージー](2017/03/15 17:30)
[77] 祭りの夜の星が散る・九[ベリーイージー](2017/04/23 20:35)
[78] 祭りの夜に星が散る・十[ベリーイージー](2017/05/13 11:32)
[79] 祭りの夜の星が散る・十一[ベリーイージー](2017/05/31 18:35)
[80] 祭りの夜に星が散る・十二[ベリーイージー](2017/06/25 21:49)
[81] 祭りの夜に星が散る・十三[ベリーイージー](2017/08/24 23:54)
[82] 祭りの夜に星が散る・十四[ベリーイージー](2017/07/30 23:29)
[83] 祭りの夜に星が散る・十五[ベリーイージー](2017/07/30 23:30)
[84] 祭りの夜に星が散る・十六[ベリーイージー](2017/09/01 19:22)
[85] 祭りの夜に星が散る・十七[ベリーイージー](2017/09/28 21:49)
[86] 祭りの夜に星が散る・十八[ベリーイージー](2017/09/28 21:49)
[87] 祭りの夜に星が散る・十九[ベリーイージー](2017/12/03 21:35)
[88] 祭りの夜に星が散る・二十[ベリーイージー](2017/12/03 21:35)
[89] 祭りの夜に星が散る・二十一[ベリーイージー](2017/12/03 21:31)
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[41025] ご無体な無頼たち・六
Name: ベリーイージー◆16a93b51 ID:cc0b4777 前を表示する / 次を表示する
Date: 2016/12/23 19:07
注意・旧作キャラが数人出ます、一分捏造設定つきで(チョイ役ではありますが・・・)



ドガガガガッ

「落ちて貰いますわ、お嬢様!」
「はっ、来なさい、この天然娘っ!」

紅の主従が剣戟を交わす、『第三者の誘導』に乗せられるまま二人は全力で打ち合った。
速度に勝るレミリアが先制し、対する咲夜は要所要所での時間操作で隙を狙う。
数度目の交差後に、咲夜が鉤爪を抜けて相手の懐へ飛び込む。

「……全力で行きます、お許しを」
「ちいっ、抜かれる!?」

苛立たしげに舌打つ視線の先で、銀のメイドが純銀の刃を二刀で構える。

「天敵である銀器ならば……」

ズガッ

「ソウルスカルプチュア、はああっ!」
「ぐ、あっ!?」

レミリアが呻きつつ下がる、剣閃が掠めてその首元が僅かに赤黒く染まる。
反射的にそこを手で押さえるレミリアの表情が引き攣り、それを見た咲夜はどこか済まなそうにしながらも追撃に移った。

「くっ……」
「……お嬢様、ご容赦を」

スカルプチュアの体勢のまま彼女が間合いを詰めに行く。
が、その瞬間レミリアの瞳がスウと細まる、ニイと口元が僅かに歪む。

「……なんてなっ、神槍!」

右手を掲げ、左の手を添える、カッと掌中が輝いて禍々しい刃を形作った。

「スピア・ザ……グングニル!」

ガギィンッ

閃光と共に二刀の上の衝撃、今度は咲夜の体が押され後退する。

「なっ、弾かれ……」
「……咲夜、行くわよ?真正面から相手してあげる!」
「……良いでしょう、ならばこちらも!」

すかさずレミリアが反撃のため前に出て、が咲夜も負けじと後退分を取り戻さんと反転し迎え撃つ。
二人は一気に加速し、少しの減速もせずに真正面から激突する。

『はあああっ!』

ガギィンッ

真紅の槍と白銀の二刀、ぶつかり合った両者の攻撃が二人の間で噛み合う。
ピタと一瞬程停止し、それからギシリとそれぞれの得物が軋みを上げる。

「くっ……」
「……ふん」

硬直状態はほんの僅かな時間、二人は同時に後方、いや斜め上方へ飛び上がった。

『……まだ(です)!』

二人は素早く体勢を整え、弧を描く軌道で飛びながら、空中戦の優位となる上を取り合い始める。
鳥獣同士の争いのように空を舞う二人の表情に『戦場に合わない色』が浮かぶ。
それは親しいもの同士の睦み合いのような明るい笑顔で。

「……ふっ」
「く、くく!」
『あははははっ!』

もっともっとと、まだ足りないと、互いに力の底を求めるように二人が笑いながら刃を振り回す。

ガギィンッ
ガギィンッ

『それでこそ、お嬢様(咲夜)!』

がむしゃらに剣戟が繰り返される、二人は急所を狙うと同時に常に相手の上を取ろうとする。
クルクルと競いながら螺旋を描くように、銀と黒が学園都市の空を翔けていく。

「やあああっ、せえいっ!」
「うりゃ、うりゃ、どうりゃあああ!」

ガギィンッ

白銀の二刀が交差し、レミリアの頬と胸元を切りつけ幾らかの裂傷を負わせる。
が、反撃に紅い槍が突き出され、咲夜の脇腹をチッと脇腹が掠めて血が吹き出す。

『……ちっ、かすり傷か!?』

剣戟が交差し、直後二人は舌打ちし同時に刃を引いて飛び退る。
手数は二刀の咲夜が、一撃の重さは身体能力が上のレミリアが勝り、結果戦況は激しさの裏で互角に近い硬直状態となった。
両者は仕切り直すために間合いを離す。
『近くのビル』を足場に駆け上がり、屋上の対極で睨み合う。

「ふふっ、まだよね、楽しませなさい、咲夜!」
「……ええ、そんなの当然で……」

今度はレミリアが跳んで上、身体能力を活かし重力を味方につけ、対し咲夜は不利な体勢ながら微笑を浮かべ迎え撃とうとする。
が、そこで下の位置の咲夜だけが『それ』に気付いた、頭上に二つ目の『真紅の月』、に見える存在が浮かんでいた。
ボウボウと音を立てる三日月の輝く何かが。

「……で、えっ?」
「……禁忌」

長大な火柱、炎の大剣が輝く、『三沢塾』の看板を背にした金髪の吸血鬼が大上段に構えていた。

「レーヴァテイン……ご飯時にどかどか五月蝿ああいっ!」
「妹様!?」
「しまっ、ここフランの……」

ドゴオオッ

『うわああああ!?』

真紅の一閃にふっ飛ばされて、主従の戦いは『戦場近くに住む少女』の怒りによる『無効試合(ノーゲーム)』に終わった。



ご無体な無頼たち・六



「……ふわあ(……夜更かし、健康に悪そう)」

『少女趣味の格好』の滝壺が欠伸一つ、それを押し殺しつつ外の仲間の報告を待った。

『……という訳で、吸血鬼主従は三沢塾の金髪による乱入でダウンしたようです、滝壺さん』
「そっか、監視お疲れ様、絹旗」

寝巻き姿に着替えた滝壺は携帯端末の向うから呆れ気味の報告を受けた。
懸念であった二人、咲夜とレミリアが『事故的』に落ちた知らせに思わず苦笑した。
同じ気持ちらしい絹旗も複雑そうな声音で続ける。

『とりあえずぶっ飛ばして満足したか……妹の方は止まってくれました、黒夜達を行かせて吸血鬼主従を引き取らせに行ってます』
「わかった、じゃあその後『監視及び貸し作り』の意味で適当な拠点へ……」

彼女は今後の対処を一通り頼み、それが一段落したところで仲間との会話を終える。
端末を仕舞い、それから真面目になっていた顔を崩し、ある部屋の扉を数度叩く。

「……ギン子ちゃん?」
「あ、大丈夫です、お姉さん」

許しを得て訳有り客の元へ、ぎこちなさそうな表情に敢て気づかない振りしながら歩み寄った。

「ねえ、気分転換にでも『色々』話さない?」
「は、はあ、別に構わないけど……」

一瞬首を傾げてから銀の少女は頷いて、それに気を良くしたようにしベッドに並んで座る。
どこか探るような暗い目を隠しながら。

(……少し反応を見てみようか、それと……釘くらい刺しとこっと)



ニシシと『鬼』、紅白衣装の女が邪悪に笑い、男達は少し嫌そうに眉を顰める。

「……『ペース』遅いわよう、暗部さあん?」
『くっ……』

からかうように言う女の手には杯、暗部の伝手やらで入手した高級酒が並々と注がれている。
それを彼女、霊夢は躊躇うこと無く一気し、空いたのにお代わりを要求する。

「こく、うん、次……そっちに花持たせたのよ、これくらい安い物でしょ」
「むう、ほんとうに自由だな、この人……」

呆れながらも浜面はそれに従い、その後自身の分の杯もゆっくり傾ける。

(……やべ、ちと頭が揺れてきたな、恨むぜサブリーダー)

美女と飲むのに当初は心躍るも、今は相手の蟒蛇振りに圧倒されてしまう。
ミューズの手当を終えたら速攻これで、彼は内心巫女の相手を押し付けた上司を恨んだのだった。

「あら、手止まってるわよ」
「……うす、まだ行けます」

促され内心の愚痴を一旦止め、限界悟られないよう仏頂面に為った浜面は次の酒瓶へ。
既に他の暗部、手隙の者達はシルバークロースアルファを始め大半が飲み潰され、残った浜面が相手している状態だ。
それでもここで機嫌を曲げられては不味いと、浜面は何とか付いてこうとする。

「え、ええと……巫女の姉さんも大変だな、元々学園都市には休暇で来たんだろ?」
「そうなのよ、それなのに問題ばかり……全く困ったもんだわ、どいつもこいつも」

時間稼ぎに世間話を仕掛け、すると向うも思うところがあるのか乗ってきた。
すると出るわ出るわ、聞いてる浜面が圧倒される程に、愚痴と恨み言が怒涛の勢いで流れ出した。

「そもそもさあ、まずチルノとフランドールでしょ……その後ルーミアやら輝夜やらが『外』で暴れるのよ、溜まったもんじゃないわ。
現地の知り合い、上条君やインデックスちゃんは矢鱈事件巻き込まれ……そういや、鈴科君からして首突っ込んでは引っ掻き回してたか」
「……は、はあ、巫女の姉さんとしちゃ気が気じゃないと(……その割にこの人も暴れてたような気もするが)」

何だかんだ乗りがの良さで騒動中は自分から楽しみ始める霊夢とて不満はあるようで、彼女は酔いに任せぶち撒けていく。
自分『が』振り回すのは気にしないが、振り回『される』のは余り宜しくないらしい。
すると、愚痴に圧倒される浜面の代わりに『第三者』の合いの手が。

「いや、本当ですよねえ、霊夢さん……年中酔っぱらいの鬼じゃないんだから落ち着けっての」
「そうそう、全くよねえ、でも……言える立場かしら、その弟子である子鬼の佐天ちゃん?」
「……あはは、いやあ、私はまだマシだと思いますよ?」
「……それが本当だから厄介なのよねえ」

思わず首を傾げた浜面、視界の端に開きっぱなしの窓が映った、堂々の暗部拠点への不法侵入である。
そんな長髪黒髪の少女、涙子がうんうんと頷きながら霊夢に乾杯する。

「……増えたよ」
「いや、霊夢さんにお呼ばれして……」
「後で『頼みたいこと』が有ってね」
「は、はあ……」

その言葉に再度浜面は首を傾げ、嫌な予感を覚え先を促す。
それに対し霊夢がニヤリとどこか悪い笑みを浮かべ、追随するように涙子も似たような笑い方をする。

「明日は大仕事になりそうだから……『お手伝い』かな」
「……派手にはしないでくれよ」
「ええ、大丈夫……彼女『は』戦わないわ、謂わば準備部分だけだから」
「そんな訳で安心してくださいねー……上手いお酒分、働くようにしますから」

この恐る恐るの頼みに心よい返事、がそれに対し浜面は全然安堵できなかった。

(……こりゃ始末書かねえ、二日酔いでそれは勘弁したいが)

薄々無駄かもしれないと思いながら彼は心底祈ったのだった。



「ふうん、ギン子ちゃんはお姉さんが……」

そんな風に嘆く部下に対し、滝壺は勝手に妹分にした少女と呑気に話していた。

「正確には親戚、従姉妹程度の繋がりですが……あれが実の姉とか泣きますよ」
「……仲悪いの?」
「……正直苦手です、以前叩きのめされたし」

一緒にベッドに座る少女は溜息一つ、嘗ての仲間への恨みを込めて答える。

「はあ、あいつ、何を間違ったか……『少(幼)女趣味』こじらせたんですよ、そのまま飛び出して身内中もう大混乱で」
「はああ、大変だねえ(……『方向性』は違えど麦野に振り回される私達みたい)」

銀の少女が肩を落とす、その端正な表情を歪めての言葉に滝壺は(多少重ねてしまい)神妙に頷く。
思わず少女の頭を撫で、彼女は顔を赤くし慌てて逃げようとする。

「ふふ、元気出して、ギン子ちゃん……ほら、ナデナデー」
「ちょっ、子供扱い止めっ、滝壺さん!?」

悪意なく元気づけようとしたら本気で避けられ、滝壺はぶうと口を尖らした。

「……ひどい、甘えさせようって妹への気遣いなのに」
「だから、何時姉妹に妹に……」

姉と妹を強調し聞こえ見がしに不満だと訴えれば、銀の少女は呆れたように肩を落とす。
その隙にと滝壺は撫でる手を再開し、今度は諦めたか受け入れるままとなった。

「もう、好きにして」
「ふふ、宜しい……はい良い子いい子」
「……はあ」

自棄ぽい顔で、自称姉の手にされるがままで項垂れてしまう。

「……ねえ、ギン子ちゃん」
「はい?」

暫しそうしてると、妙に真剣な声音で滝壺が声を掛けてきた。
まだ少し赤い顔の少女がそちらを見れば、思わぬ問いが。

「何を望んでるかわからないけど……もう『止めない』?」
「……はっ?」
「……態々外国から学園都市に来たんだもの、きっとそれなりの目的が有るんでしょ。
けど見た限り上手くないようだし……ここで手を引くのも『アリ』だと思うの」
「それは……」

珍しく真摯な、幾らか情を感じさせる言葉、少女は言葉に詰まる。

「私達の仕事、ここの治安維持……それは人命を、他所の人達を軽んじるわけじゃない、だから注意くらいするよ」
「……注意、ですか」
「……ここ何日か楽しませてもらったしお節介でもと」

要らぬ親切かもしれないと前置きした上で、彼女は妹と一方的に読んだ少女に警告を送る。

「戻ってきた時言ったけど……貴女が異国の子でも『普通で居るなら助ける』、損切りは悪いことじゃないよ。
……特別なことは考えず、祭でも楽しんでから帰っても良いんじゃない?」
「……でも私は、私『達』は」
「……ま、これ以上はそっち次第」

戸惑い気味に数秒詰まってから『責任を負う少女』は警告を受け入れられず、それには滝壺はあと嘆息する。
相手も何かを背負っていると流石にわかり、彼女はそれ以上の追求を断念する。
きょとんとするミューズに、滝壺は気にしないでと撫でて『話はもう終わり』とベッドに倒れこむ。

(私が暗部であるように……彼女もまた、ってとこかな)

どうやら互いに背負っているものが有るようで、それではこれ以上無理だと滝壺は話を切り上げる。

「(これ以上踏み込めないか、少なくとも『今』は)もう寝よ、ギン子ちゃん……どうしたの、不思議そうな顔して」
「……ええと、何なんですか、お姉さんは?」
「……学園都市の『影の支配者(代理で下請け)』……ああ後君のお姉さんかな?」

心底理解出来ないものに対するが如き問いに、滝壺は曖昧に笑ってそれ以上に曖昧に答える。
だがその実その言葉は結構本気だった。

(嘘ではないんだけどね……現時点で暗部全体でも幹部格だし、この『色々』反応のいい子欲しいなとも思うから)

内心の企み、欲望を隠し彼女はただ一言だけ最後にミューズに言った。

「ま、余り気にしないで……でも覚えて、私の権限内で目溢しするのも限界有るから」
「……わ、わかりました、お姉さん」

最後の言葉には思いの外重みがあり、ミューズは困惑しながらも頷いた。
彼女は『企みに気付いた上での牽制』か『今までどおりの気紛れ』か、暫し悩むも判断できないまま頷き床につく滝壺を何とも言えずそうに見た。

「……でも、私は、私『達』は」

だけど結局受け入れられず静かに床を出、こちらで入手したらしき『端末片手』に部屋を出る。
ベランダからボソボソと、彼女が仲間らしき相手に呼びかける声がした。
咲夜に場を荒らされ、補強に応援を呼ぶようで、それに対し『ベッドで横になる少女』の口元が歪む。

(警告はした、でも……受け入れられないと、少し痛い目見るしかないか……)



「……おい、揃っている?」

翌朝、まだ早朝といっていい時間ミューズはある者達と待ち合わせていた。
『滝壺の目を盗んで確認した暗部情報』、各所配置ルートから割り出した暗部側にとっての死角の位置に仲間を呼び出したのだ。
そうして反科学側勢力の協力で呼び出した仲間たちを迎える。

「準備は?」
『問題ありません、『当主』ミューズ様!』

仲間の錬金術士、ミューズや咲夜程ではないが艶やかに輝く『銀髪』の男達が集まってくる。
彼等は一斉に跪き、主の命を待った。
『死角』だけに静寂に包まれる場所で暗躍劇が始まろうとしていた。

『ご指示を、ミューズ様!』
「ああ、合流後は……」

が、ふとそこで一つの違和感、静か『過ぎる』と。

(何?『祭』を数日後に控えるにしては……)

暗部が居ないと入ってもこれは奇妙だ、通行人や祭を前に働く者の気配まで無い。
そこで、ミューズはゾッとするような内容に思いつく。
『暗部情報を自分達が予め知っている前提』なら話は別だと。

(……私は暗部を避けた、だが逆に言えば……それを『前提』とするなら読める?)

余りにも静かすぎる場所と、自分がここにいる理由、それに何者かの悪意を仮定とし条件に付け加えたなら見えてくるものが有る。
ハッとした表情でミューズは辺りに見やった、その頬につうと汗が落ちた。

「ミューズ様?」
「これはまさか……」

そして異変、その最初の前兆は『違和感の兆し』と同じ『音』だった。

ヒュウウッ

『っ、何奴!?』

その瞬間どこからか甲高い音が響いた。
警戒の表情でミューズたちは周りを見渡し、一人の人影を見つけた。
『横笛』を奏でながらそいつは落ち着いた足取りで歩み寄ってくる。

ヒュウ
ヒュルル

「誰です!?」

その問いに相手は困ったように小首傾げ、少し考えてから笛を下ろし答える。

「敵、かな……いや前座だけど」

ビュオオッ

怒声に対しまるで気負いのない言葉、直後唐突に局所的な吹雪が巻き起こった。
反射的にミューズ達は目を背け、はっと慌てて視線戻せばそこに巨大な影が聳え立っていた。
見上げる程の『白梅の樹』、そしてその頂、『白い行者装束の少女』が黒髪棚びかせ微笑する。

「東風吹かば、匂い起こせよ、梅の花……」

詠唱しながら樹の頂きで軽やかにステップし、タンタンと足踏み繰り返しつつ句の締めを口にする。
底知れない物を感じたミューズは思わず守りを固め、結果相手の『準備の完了』を許してしまう。

「な、何を……みんな、油断しないで!」
「(……慎重だね、好都合だけど)主なしとて春を忘るな……まだまだあっ!」

言って彼女は柏手一つ、その手がパアンッと大きく音を立て打たれた。
すると、それに誘われたかのように火花が天頂で弾け、それから燃え上がり何かの生き物の形を取った。

「一つの伝説では鬼の祖は『ある妖蛇』だという……因果の繋がり結びて『真なる四(死)の怪』!」

炎が集まり生まれたのは『八首の大蛇』、桁違いの体躯を見せびらかすように旋回し始める。

「……かつて地の果て、世を騒がす邪悪なる妖蛇在り!
八つの頭(こうべ)、その身は山河の端まで掛かる程!蛇は思うまま荒れ狂い、地は乱れに乱れる!」

彼は我が物顔でぐるぐる回り、が涙子がそれをビシと指した瞬間動きが止まる。
プツと長大な胴に切れ目が入り、瞬く間に全身に傷が広がっていく。

「……長く民は嘆くも、ある日それを聞きつけ一人の勇者立たん……伝説に曰く、その名は素盞嗚(すさのお)!
彼の者、策にて妖蛇を縛り、天より授かりし宝剣で八つ裂きにせん!」

最後の祝詞の直後、ブツンと八首の大蛇が一瞬にしてばらばらに千切れ飛ぶ。
同時に彼女はその手を天に掲げ、するとまるで吸い込まれるようにそこに『八岐大蛇』の残骸が集まる。
赤く燃える炎は一箇所に収束、そして乱れのない一振りの刃の形状に。

「勇気ある男、揺るぎなき勲しと、美しき姫に豊かな国得たり。
……ここにその偉業を讃えよう……」

そして、彼女は宣言と同時に跳び上がり、宙空でくるりと身を翻す。
反転し逆さの体勢で、彼女は真下の神木を『見上げ』ながら叫ぶ。

「正しく万夫不当、名は三千世界に轟く、その国もまた……八重垣よ、おお八重垣よ!」

叫びに合わせて掌中の『宝剣』が激しく瞬き始める。

「『詠(うた)』に『なぞり』、伝説の再現にて荒ぶる神の力よ降りよ!」

グッと涙子はその腕を、『素盞鳴』の刃を掲げた腕を突き出し、更にそこに逆の手を沿うようにし力を注ぎ込む。
ボウボウと、限界まで膨れ上がった刀身が妖しく揺らめき輝く。
そして、燃える刃が地に、そこに立つ神木に落ちる。

「……剣の神の加護ぞあれ、やあっ!」

ズドォ
ボウッ

火が頂きから根本まで一瞬で広がり、真紅に染まるそれを背に彼女はゆっくりと地に降り立つ。

「これで二つの力、道真公という賢神と最古の戦神、出雲に縁深き二柱の力が合わさる……
さあ完成せよ……――』式、重ね『禍』楽(かぐら)舞い!」

タンッと両足で降り立ち、それからパアンッと涙子の手が再び打ち合わされた。
その瞬間背後の火が弾けて、それは天を衝く程の火柱となり、同時にニイと涙子の口の端が釣り上がった。
激しく燃え上がる火柱、『ある者』への目印を指し歌うように諳んじる。

「二柱の神の加護、その力を束ねる……ま、本当は『別の使い道』が有るんだけど……
今回のは『場』の調整だ……これを目印に『常世』開け!『人為らざる者達』来たれ!」

この瞬間この場はある種『異界』に変わる、ゴゴと鳴動繰り返し『現世』が有り得ないほど歪む。
すかさずそれを見計らったように『紅白衣装』の女が空間の裂け目から現れ隣へ。

「……霊夢さん、場は温まったでしょ、後は任せたから!」
「ええ、十分……ここからは私の仕事よ」
「ご武運を……じゃ、見学してますので」

言葉を交わして入れ違いに霊夢が進み出る、奇妙なことに彼女に重なるように『三つの影』がうっすらと見えた。
影、人型のそれは『女』のようだった。
何者かを従えた霊夢が親しげに呼びかけた。

「さあ出番よ、『三人とも』……参りませ、博麗が巫女の好敵手にして盟友たち……
まずは……大陸より渡りし『生きた鉄器』、付喪の里香!」

一人の女が前に出る、純朴そうな少女が『巨大な乗り物』から身を乗り出しヒラと手を振る。

「続いて……剣の道に全てを捧げた『剣鬼』、雷切りの明羅!」

更に一人の女が前へ、鋭い目つきの少女が『身長程の大太刀』を構え小さく頷く。

「そして、大取り……数代に渡って博麗神社と張り合った『大怨霊』、祟り神の魅魔!」

最後に妖しくも美しい女、どこか母性的な女性が『天冠』と『白装束』を揺らし微笑む。
三人の人外を伴わせた巫女がニヤリと笑う。

「な、何、一人じゃない?」
「アンタが思ったより手強そうだったから……応援を呼んだの、『道』は他人任せだけど」

そう言い霊夢が駈け出す、呪符を目一杯手挟んで、加えて三人の人外と共に。

「ふ、ふふ、あはははっ……さあ逃げ惑いなさい、偽メイド!」
「……何よこれっ、予想外過ぎるでしょ!?」

鬼のような巫女が哄笑と共に襲いかかり、ミューズは素で悲鳴を上げる。
そんな風に錬金術士の受難が始まり、大覇星祭『前哨戦』の最終幕が始まったのだった。





・・・て訳で鬼巫女が応援を呼びました、話的に出せそうで出せない旧作面子の救済策の意味もあり。
で佐天さんの出番は今回はお終い、キャンプファイヤーやっただけ・・・真四~は彼女のスペカ、それも切札枠(今回のはその準備段階、本命部分は何時書けるか・・・)
次回クライマックス、メイド長は当然として暗部も出ます・・・もしかしたらキャラブレイクも・・・

以下コメント返信
九尾様
まあアイテムで(当然リーダー麦野は確定で)誰が参謀かと考えれば・・・やはり滝壺さんでしょう、となれば多少腹黒くても寧ろそれらしいかなと。
因みに滝壺さんですが・・・今後の展開的にまだまだ大人しいというか、自粛してると言っていいかも・・・


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