・・・えー、勝手な話ですが『展開変更』になりました、『天使関係』の設定が書き変わってしまって・・・
閑話 不和と不安と
スウと『二つの星』が夜空を駆けた。
それに学園都市の者達は一瞬見惚れ、だが数日後の祭の準備に慌てて戻る。
「ふうむ、あれはまさか……」
が『一人の少女』は違った。
「どうした、お嬢様?」
「あー、ちょっと……出てくるわ、黒夜」
『青い髪に水色の髪飾りの少女』は同居人に告げて家を出た。
『はああっ!』
ガギィンッ
ガギィンッ
空を『二つの星』が駆ける、絶え間なく拳打と弾幕が行き交う。
それは光を纏って落ちる二人の人影。
片方は『金と紫が混じった髪に貫頭衣の少年』、もう片方は『青い髪と翼に月の文様の服の女性』だ。
「ちいっ、しつこい……諦めたらどうだ、ガブリエル!?」
「久々に会ったと思えば……『天界』の宝物庫を襲撃してよく言うね、ウリエル!」
「……悪いとは思っている、だが……まさか地上まで追うとはな」
追い払うように翼を振るう女性を少年が必死に追い縋る。
彼の視線、拳や弾幕の先は女性が担ぐ『二つの布包み』が有った。
「……まだ『ただのウリエル』だった頃の剣と鎧、何に使う気!?」
「……全ては大願の為だ、不足分を補う必要が有ってな」
「だからって……神罰の為に使うべきそれを狙うなんて!?」
「文句は……ラファエルの眷属や異教徒共に言え!」
スウと透ける自分の体、前回のダメージで時折明滅する四肢を見せて女性、サリエルが愚痴るように叫ぶ。
地上で偶々会った同僚の力を持つ黄のシスターを始め、様々な敵から受けた傷はまだ癒えていないのだ。
(ええい、それを何とかする為なのに……ガブリエルに見つかるとは裏目にでたか)
本来なら『まだ』戻る気のなかった天界に忍び込んだのはそれを補うため、が見つかってこの有様だ。
持ち逃げした宝物毎地上に(撒く意味も含め)降りたが『慣れてる』ミーシャは普通に追ってきた。
「……それを返して!」
「断る、この先『必要』なのでな……」
断固拒否し、また妨害を防ぎながらサリエルは少しずつ降下していく。
そうして『目的地』、逃げながら向かっていた『科学の街並み』を見下ろしにやりと笑った。
あそこには彼女の求める、『幾つかの要素』が集まっていた。
「もう直ぐだ、もう直ぐで……ザカリアスの残した呪いは晴れるのだ!」
「同情はするが……現世への干渉なんてさせるかあっ!」
だが、先を思った彼女の意識が一瞬だけ緩んで、すかさずミーシャが加速し相手の懐に飛び込む。
彼は体を縮こませ肩から、渾身のタックルを掛けた。
「友よ、借りるぞ……セラフィムズ・クレイドル!」
「ぐあっ!?」
ドゴオッ
不意を突いた一撃が命中、サリエルはバランスを崩し、二人は揉み合いながら学園都市の郊外に落ちていった。
『二つの光』が一瞬接近し、かと思えば離れる。
空を見上げた『青い髪の少女』は呆れた顔で嘆息する。
「……ふう、久々の再会なのに……慌ただしいことね、ミーシャ」
はあと溜め息ついて、それから少女、吸血鬼のレミリアはバッと翼を広げた。
高く飛び上がり地上に落ちていく星の片方の進路へ。
そこで大きく手を広げ、『友』を待ち構える。
ボフッ
「よっと……無事かしら」
「……あ、ども」
その手の中に、目を回して地上に落ちていく『布包み付きの』ミーシャが納まった。
彼は頭を振ってから立ち上がり、自分とは違う郊外に消えた光の跡を数秒見送る。
が、それは直ぐ止める、『協力者』か『準備が有った』かすぐに向うの魔力、気配が追えなくなったのだ。
残念そうに俯いて、その手の中にある布包みをギュッと握る。
「むうう、『鎧』しか取り返せなかった……あれ、ここ現世だよね、何でレミリアが?」
「遅いって……久しぶり、動けるかしら?」
「……無理かも、最後強引に突っ込んだから」
「仕方ないわね、もう……黒夜のところに運ぶわ」
リアクションの遅い彼の、どこか天然気味な答えに苦笑しながらレミリアが友人を抱えた。
「訳有りみたいだけど……今は休むことね、ミーシャ」
「そうする、体力は武闘派のあっちのが有るし……(学園都市か、休憩がてら身内の謝罪でもしようかな)」
早朝の珍しく静かな学園都市、それに浸りながら少年は寝ぼけ眼を擦る。
「先輩、寝不足?」
「土御門の愚痴がなあ、堕天使の件で後始末大変だったらしくて……」
カチャカチャと食器を抱えた上条が問いの相手、同じく食器を持つ美琴に答えた。
二人は並んで歩き、朝食が乗せられた皿やお椀を机に置いていく。
それから待っていた一同に、特に『白い少女』声を掛けた。
「はい、召し上がれ……全部食うなよ、インデックス」
「出来立てで熱いから気をつけて」
『頂きまーす!』
インデックスにチルノ、ミサカがパンと手を合わせた。
そして、それにやや遅れて上条達も朝食の前へ。
「……量が量だけに疲れた」
「インデックスさん、食べるものね……お疲れ様、先輩」
「ああ、御坂も……後手伝ってくれてありがとな」
二人は苦笑しながら座り、がそこであれと首を傾げる。
机の数カ所に不自然な空白、メニューの一部が消えている。
それに加えて、存在する筈のない『六人目』が。
「……くううっ、久々の和食、堪らないぜ!」
モシャモシャと朝食を平らげる『水兵服を来た金髪の少女』の姿が有る。
その姿に、『赤い天才と消えた旧友』に、上条達は思わず目を見開く。
「……えっ、岡崎さんとこの」
「ちゆり先輩!?」
「よっ、『教授の使い』でこっちに来てて……あー、ヴェントのことで少し聞きたくてな」
『はっ?』
昔馴染みの言葉に、上条と美琴は困惑したように首を傾げた。
「……」
「……」
「……」
そうして『一見無関係な出来事』は重なって教会は酷いことになった。
向うでは新入りのオルソラ、暇なのか手伝いの番外個体ががミサをやっている、が後ろの平和そうな光景に反し『彼女』を取り巻く状況は違う。
ヴェントは頭を抱え、上条と美琴とちゆりは疑うように見、レミリアと共に来たミーシャは首を傾げている。
「よう、今日はどうした、上条に御坂……それと久しぶりだね、教授のとこの……」
「少し話が有って……」
「そうか(……前回の件か)」
探りを入れようとする旧知の相手に、困ったことに成ったと内心ではあと溜め息を付いた。
そして、もう一方の客達にも。
「……あれ、『私以外の三人の誰か』の匂いがするような……」
フンフンと数度鼻を鳴らし、実体化した天使が小首を傾げた。
つまりそれと確信なった瞬間『上条達の疑い』は確定になるのだ。
(主よ、これはどんな試練だ、タイミングが悪すぎる……)
ヴェントは力無く天を見上げて恨めしげな顔をした。
そして『要素の一つ』である少女にも転機があった。
「ひぐ、えぐ……ぐすん、『お姉ちゃん』の馬鹿……」
年齢は十を少し過ぎた頃だろうか、『白い帽子』『金髪の少女』が泣き喚く。
彼女は偶に行く教会(昼は大体開いている)のテーブルに突っ伏し愚痴った。
その手には一枚のプリント用紙が握られている。
「来てくれるって……約束したのに、運動会に」
用紙には『保護者の参加要項』という一蘭があり、そこに自棄っぽく『×』が書かれている。
「お姉ちゃんの嘘つき、急に職場でって……アイテムでの仕事って何よ、私より大事なの……」
金髪の少女は姉を恨んだ、大好きな姉が来てくれると楽しみにしていたのにそれは中止と成ったのだ。
彼女は孤児院に住み、唯一の家族である姉と一緒に騒げることをずっと楽しみにしていた。
普段は『孤児院の近くで行動するチームのリーダー』やその仲間が会いに来るから寂しくないが、それでも偶に一緒にいたい時も有る、そして今回で不満が吹き出した。
「お姉ちゃんの馬鹿、もう嫌い……」
だけどそれは裏切られ、少女は悲しみの底に沈んだ。
「馬鹿、馬鹿……フレンダお姉ちゃんの馬鹿あっ!」
「……うんうんわかる」
「にゃ?」
が、一人ごとのつもりだったそれに答えがあった、びっくりして周りを見渡せば同じくらいの年の『淡い茶の髪の少女』がウンウンと頷く
その頭の上には『真っ白な子犬』、更にその上には『お洒落な人形』、どこかの童話みたいな少女がにっこり笑う。
「わかるよ……ミサカも『兄貴分』『姉貴分』には物申したい時が有るし」
『ただ一人の妹』に何となく着いてきた少女、『打ち止め』は共感する(駄目人間な超能力者や巫女へ)思いをぶち撒けた。
すらすらと、家族といえる者達への不満を垂れ流す。
「一方通行は普段は素っ気ない癖に時々悪乗りするし、巫女のお姉さんは自由人で何か有ればいっつもはしゃいでさあ……
ほら、貴女もどんどん語ったら?」
「え?」
「……家族への不満、溜め込むのって結構キツイよ」
妹同士の共感か、それが当然の権利とばかりに誘いを掛けてきた。
「家族だからこそ怒っていいし……でも実際に怒らない為にも」
「え、あ……フレンダ、お姉ちゃんの……」
「うんうん」
「……お姉ちゃんの馬鹿、嘘つき、運動会一緒にって……」
彼女は泣きながら悪口言って、それから顔を伏せた。
「寂しいよう……」
「そうだろうね、で……嫌い?」
「……ううん、それに来ないのは仕事だもん」
涙を拭って、それから彼女は嫌いでないと首を振る。
そんな彼女の頭を打ち止めはポンポンと軽く触る。
「……ホント、妹って損だよね」
「うん……ありがと」
「ああいいって、で落ち着いたら……ミサが始まるよ、行こうか」
「うんっ」
さっきまで流れた涙は自然に止まって、『フレメア・セイヴェルン』はぎこちなく微笑する。
打ち止めに手を引かれるままに、二人は温和そうなシスターとそのお付きの不器用な少女の元に向かう。
『堕天使を切っ掛けとする事件』で、『ある重要な役割』を果たす少女は二人はこうして出会った。
幕間一・完・・・&おまけ
カタカタ
一本の酒瓶は『独りでに揺れた』、まるでそれは恐怖に震えるように。
その前には『角を生やした金髪の小柄な少女』が目を輝かせる。
「……ジュルリ、上等な酒の匂い」
カタカタカタッ
鬼の言葉に酒瓶が、『変貌した佐天涙子』が動揺するように揺れた。
「節姫、早く戻らないと一回休みだよ」
「……理由が情けなさ過ぎるなあ」
その光景を見ていた同居人(勝手に居着いている)にとりに魔理沙が呑気に言う間に鬼が一歩近づく。
ジャリという音と共に前に立って、それでガタと涙子が震えた。
「一口くらい……」
ガタタッ
相手の言葉に一際揺れる。
それのせいか、それとも火事場の馬鹿力か、バアと一瞬白い花びらが舞った。
それ等は酒瓶を覆い隠し、そしてパアと白い輝く。
カッ
「おわっ!」
『おっ?』
萃香達が目を背け、それに一瞬遅れて『トン』と白い足先が床に揺れる。
酒瓶が消え、そしてバッと長い黒髪が広がった。
「……危ね、解除がぎりぎり間に合った」
「本当に危なかったなあ」
自業自得の呪いを(戦闘直後で消耗していたし)必死に解除した涙子がほうと息を吐く。
が、安堵するのはまだ早かった、萃香がスンスンと鼻を鳴らす。
「まだ……」
「え?」
「名残りか酒の臭いがする、梅酒っぽいかな」
「……さらばっ!」
「……待てい、『一飲み』にしてくれる!」
ガシャアアンッ
『体に気をつけてなー』
その目は笑ってなくて、慌てて涙子が窓を蹴破り外に飛び出す。
そして、萃香もその体を透かせてからそれを追う。
彼女の長い、休暇というには過酷な一日が始まった。
・・・五話の前に閑話です、これは『三つ』の流れで進めていきます(教授は話の都合でまだ出せず、代理人を・・・)
教会での上条さん等によるヴェントへの探り、それと平行してのミーシャ関連のイベント、そして前二つと少し離れて少女達の御話ですね。
あるいは教会側は一纏め、それと妹キャラの日常話、三つでなく二視点になるか?・・・正直佐天さんはどっちにも顔出せそう、謂ば賑やかし。
以下コメント返信
九尾様
まあ来てしまったら謝罪は必須でしょう、穏健派だしその性格的にもね・・・多少展開変更し『来た理由』を変えました、自分で挽回するチャンスではあるかな。
佐天さんのあれ、実は獣系には余り効きません(素で爪とか有るので然程弱体化せず)本当に嫌がらせだけ・・・つまり自爆時のリスクが大きいネタ技。