『堕天使』とその信徒が眼下に、敵対者への警戒か緊張の表情で隊列を組む。
ギロリ
『……諸共に、切って捨てよう』
狂信者達を『金髪』と『銀髪』の剣士が冷たい目で見下ろす。
「……行きますか」
「ええ、我等で……道を切り開く」
チャキッ
鯉口が切られ、刃が陽光で輝いた。
神子と妖夢、二人の剣士が動き出した。
「……決戦、て感じだニャア」
同じく集合する堕天使等を、路地の影から土御門が伺う。
彼は太刀とルーンを入念に準備する仲間に問いかける。
「……準備はいいかい、お二人さん?」
「問題有りません」
「ああ、何時でもやれる」
この問いに、神裂とステイルが戦意万全といった感じで頷く。
そして次に土御門は後方『別勢力』を見やる。
その先頭で真新しいフランベルジュを、更に十字槍やその他武器を『針鼠』のように武装した男が居た。
「そっちは……聞くまでもないみたいだな、天草式」
「おうよっ……何の因果かこうして共闘なんて不思議な気分ですよ、『教皇』」
「……神裂でいい、今はただの戦闘要員ですので……期待してますから、建宮」
嘗ての師弟がニッと笑い合い、それから得物を構えた。
太刀とフランベルジュが堕天使とその信徒に突きつけられた。
「……ふん、どいつもこいつも『やる気』だね」
そして、三つ目の勢力も堕天使達を遠巻きに伺っていた。
黄色い装束『司教』が呆れる横で、武装シスター軍団もまたやる気だ。
中心で小柄なシスター、隊長であるアニェーゼが拳を突き上げる。
「皆行きますよ、どの道オルソラ確保は難しい……せめて堕天使を妨害して最悪を防ぐのです!」
『はいっ、アニェーゼ隊長!』
もう半分諦めて微妙に自棄に成っていた。
それでも堕天使相手に戦って、(その功績で)粛清だけは免れるようにしようと彼女達は後ろ向きに戦意を燃やす。
そんな貧乏くじなシスターに、司教は同情したように慰めを口にした。
「ああ、まあ……私から上に言っといてやるよ、だから諦めるなって」
「信じますからね、司教!」
ガシイっとアニェーゼ初めシスター達が抱きつく。
少し前まで裏切りに怒っていたのに、そう司教は苦笑した。
「はいはい、出来るだけ何とかするから……てか暑苦しい、離れてくれ。
……私はもう少し『上』を説得してみる、『後処理』も考えないといけないだろうし」
「……はい、お願いします」
『オルソラ関係』も含む処理、可能な限り寛大な処置を、上層部に通すと司教は別行動に出る。
ふとそこで考え、彼女はその間際に、ポイと大槌をアニェーゼに放った。
「……アニェーゼ、貸してやるよ、一般構成員の支給品よりは上等だろ」
「か、感謝します、司教!」
「私が居ない間に全滅すんじゃねえぞ」
一度アニェーゼの頭を撫でてから、彼女はタンと跳躍し風に乗った。
「アニェーゼ、戦闘開始は向うで『合図』するはず……見逃すなよ?」
「はい、お戻りまで全力で戦います……そちらも上の説得を頑張って!」
二人は手を振り合い、それからそれぞれの戦いに向かった。
そして、『白』が堕天使の前に立つ。
「この戦いは要は歪んだ信仰、『狂信』と……誰かの『心の在り方』を良しとし『敬い尊重する』、信仰ではないけどそれに近い物のぶつかり合いだと思うんです……」
滔々とインデックスが歌うように言い、それにサリエルが顰め面になる。
「ちっ、また……イギリス清教のシスターか」
「まだやる気みたいですね、ウリエル様……結局、言葉は届かなかったかあ」
「……インデックス、お前は必要なことはやったよ」
インデックスが悲しそうに睨み、護衛の上条がその肩を左手で慰めるように叩く。
自分の前に立ち塞がる二人に、サリエルはバツ悪そうな顔をした。
「ウリエル様、やはり引いてはくれないのですね」
「……ああ、我は天界に帰ると決めたのだ、今更止まれないよ」
「……そうですか、本当に残念です」
インデックスは結局敵対することに悲しそうに俯き、それからゆっくりと顔を上げる。
彼女は決意の表情で、両腕を掲げるようにする。
その掌中がカッと輝き、『金髪の生き人形』が現れる。
「ああ残念……ならばお覚悟を、ウリエル様」
隠蔽効果のある装束を解除した人形が『書』を展開し、余波に備える上条の後ろでインデックスがビッと『敵』を指差す。
「やっちゃって、人形さん!」
「……オッケー、『リクエスト』ハ!?
「……『皆』に届くように目一杯で!」
ズドンッ
炸裂音を合図に戦いは始まった、まずは閃光が弾けて『それ』に皆が乗じる。
その輝きを裂くように二つの勢力が、そして『二人の剣士』がサリエル達に襲い掛かった。
「ウリエル様、少しだけ同情します……片や手傷を負わされた報復で、片やただ前回切り損ねた相手を切る為だけに、そんな面倒な人達に『絡まれる』ことを」
「ええいっ、碌でもないな特に後者!?」
『うおおっ、今度こそ……貴様達を斬る!』
狂信と敬心・十二(完結編・上)
ガギィンッ
『はあああっ!』
「ぬうっ、力ばかり使わされる……だが、人斬り二人は信徒には相手させられんか」
サリエルの魔力を込めた拳と、神子達の振るう刃がギリギリと競り合っていた。
その横で彼女の信者とそれを認めない者達も衝突する。
右翼側は『天草式の今と嘗ての指導者』を先頭にした天草式と、左翼側は『大槌を振るう小柄なシスター』を先頭にしたローマ正教に抑えられている。
何とか援護したいところだが、そうしたくてもサリエルの前に立つ二人が許さない。
「またかよ、道教の……そして冥府の剣士よ」
「面子が有るんですよ……顔に泥を塗られて、そのままにする等と」
「ええ、そうですとも……ま、私は斬ることが目的ですが」
「……どうしようもない、片方は判らなくもないが」
前者は矜持の問題でまだ理解できなくもない、だが後者は完全に戦闘狂の台詞だった。
サリエルは思わず頭を抱えたくなった。
「……これだから俗世はわからんのだ」
「はは、確かに理屈ではないかもしれない、ですが……それを楽しんでこその人でしょう?」
「人の信仰を欲するならば……受け止めてみなさい、この想い!」
「絶対に断る……そう言って、斬るつもりだろうっ!?」
ガギィンッ
「信者は欲しいけど、人斬りは要らん……」
殺気に目を爛々と輝かせての発言、受け止めろと言われてもサリエルは悪寒が止まらない。
慌てて掌中から魔力を放ち、押し込もうとしてくる刃を遠ざける。
すかさず後方に跳んで、大弾をその手に拵えた。
「ちっ、間合いを抉じ開けて……」
仕切り直すべく弾幕を展開したサリエルだが、そこへ剣士二人の横を『白』が走る。
「……ウリエル様、私が居る限り自由には……」
「……ああ、君ならそうするだろう、だが……その厄介さは既に骨身にしみている!」
「あっ、術式が二つ!?」
がそこでグシャと弾幕を自ら握り潰した。
介入先を失い妨害が不発して、すかさずサリエルは潰した分の魔力で魔法陣を描く。
今度はサリエルが読み勝って、召喚は無事終了する。
「ダミーに掛かったな……魔眼よ、放て」
現れた目玉の悪魔達が四方に弾幕をばら撒いた。
ズドンッ
「うっ、不味……きゃっ!?」
「……応援を呼ばれたな、インデックスさんは下がって!」
歩く教会で防ぎながらインデックスが後退し、それと入れ替わるように妖夢達が前へ。
二人が刃を突きつける先で、サリエルと四体の幽幻魔眼が隊列を組んだ。
「……結局こうなるようですね、堕天使」
「そういうことだ……数を集めた分信徒はまだ崩れぬ、ここを片付けて援護させてもらう」
チラとサリエルはローマ正教や天草式と戦う信徒を視界端に見、『質』では劣るも数で、何より遅滞戦術に徹して粘っているのを確認する。
今から彼女が向こうに行けば突破できる、そう思った彼女の言葉に剣士達が不満そうにした。
「突破前提か、それは……」
「少し気が早い……なあっ!」
「……かもしれんが、我が身も信仰も共に必要……妥協は出来んのだよ!」
まず自分達を見ろと、二人は堕天使に切り込み、彼女はそれを迎え撃つ。
「例え二人がかりだろうが……はああっ!」
ボウッとサリエルは魔力を放ちながら、ブンと拳を大振りで横薙ぎにする。
その軌道に沿い大弾が一列に並び、更に周囲の魔眼達も連携し射撃する。
一瞬で光弾が壁を作り、そして崩れて一気に開放された。
「……薙ぎ払え!」
「ちっ、まだ抵抗するか」
「ま、簡単には切れませんよ」
ヒュバ
ガガガッ
目の前の弾幕に僅かに二人の足が鈍る、神子は七星剣を抜き放ち、妖夢は小太刀二刀で迎撃する。
三振りの刃が目まぐるしく振るわれ、弾幕を払い落とす。
が、それを見たサリエルは素早く次の行動に移った。
「ちっ、ならば……魔眼よ、行くぞ!」
彼女はもう一度拳を構えた、先の一撃の勢いのまま回転し拳を薙いだ。
ブンと腕を振るい、叩きつけるような一撃を魔眼の一体に向けた。
「弾幕は払えても、これならば……喰らえっ!」
ズドンッ
『うおっ!?』
打ち出された魔眼が物凄い勢いで飛んで、弾幕乱射して飛ぶそれに神子達が慌てて回避する。
同時に左右に跳んで躱し、がその瞬間サリエルが魔力を纏う。
「まだだっ!」
『ちいっ!?』
堕天使の追撃、二人は息吐く暇も無なかった。
神子達が目を見開き、その視線の先でサリエルが青い翼を一打ちする。
ダンッと跳躍したサリエルが体を捻り、空中で右足を撓ませた後大きく振り被る。
追随するように二体の魔眼がそこへ飛んだ。
「『弾』はまだ有る……回避で散った、ならば各個に!」
「……不味っ、防御くぉ、妖夢殿!」
「ええ、そちらも、太子さん!」
神子達が身構えるのとほぼ同時に、サリエルが二体の魔眼を蹴りつけた。
「同時に行く、はああっ!」
ズドンッ
今度は魔眼二体、同時に弾幕を連射しながら飛んだ。
神子は七星剣を正眼に構え、妖夢は逆手に握った小太刀二刀を構える。
ビュウ
ガギィンッ
刃で弾幕を払い、が続いて降った魔眼は刃の峰で何とか押さえた。
ギリリッ
「ぐっ……」
「むう!?」
二人は軋む刃で辛うじて堪え、が衝撃までは完全には殺せず踏み止まれない。
凡そ一メートルばかし後方に飛ばされ、頭上で蹴りから復帰したサリエルが笑みを浮かべる。
「ようやく怯んだな……次こそ!」
「じ、冗談じゃ……」
慌てて三度目が来る前に、そう考えた神子と妖夢は同じく不自然な体勢のまま刃を振り被った。
空中を跳ねながら、二人は気の刃を作り堕天使を睨む。
「そう、好きには……叩き落とす!」
「同感です、やああっ!」
ザンっと気の刃が三つ続けて風を切り、空中のサリエルへと飛んだ。
「……甘いぞ、そのような手打ち等が!」
が、次の瞬間サリエルが翼を一打ちした。
強引に体を持ち上げ、気の刃を飛び越す、そして攻撃を飛び越え躱した彼女を最後の魔眼が追う。
ギュルと『縦』に回転した彼女が足先に全体重を込める。
「……あの『巫女』の技、貴様達も味わうが良い……」
「ええい、どこかで聞いたような話を!?」
逆さの見下ろすサリエルがまだ体勢の不自由な二人を睨んだ。
それに神子は睨み返しながら、咄嗟に『威力のない弾幕』を妖夢に放つ。
「妖夢殿、強引にだが離れさせる……」
「太子さん!?」
「舌噛むなよ、やっ!」
バンッ
「……ちっ、仲間を庇ったか」
最小限の衝撃、妖夢が『直接狙えない』程度に横に飛んだ。
それにサリエルは舌打ちし、その後渾身の力を込めた右足を振り下ろす。
高高度のオーバーヘッドキックが魔眼に叩き込まれる。
「なら、貴様からだ、道教の……はああっ!」
ドゴオォォッッ
それまでで最も勢い良く魔眼が落ちて、轟音と衝撃が辺りにまで広がる。
間違いなく神子を直撃し、ブワと舞った土煙が彼女の姿を飲み込む。
「どうだっ!」
「太子さん!?」
サリエルが勝利の確信から、妖夢が自分をかばった彼女の心配で、それぞれ土煙の方に叫んだ。
ブワと舞った砂塵が風で幾らか流れ、その隙間に金髪が一瞬見えた。
小さくだが、サリエルが残念そうに舌打ちする。
「……ちいい、耐えたか、戻れ魔眼!」
舌打ちした彼女は素早く四体の魔眼を呼び寄せ、彼等が障壁を張った瞬間『土煙から飛び出した足刀』が弾かれる。
不発した上段蹴りに、ボロボロの外套を棚引かせた神子が顔を顰める。
「奇襲為らずか、残念です……」
「それはこちらもだ、ああいや……『宝刀』は奪えたか」
堕天使が言った瞬間、ダンと七星剣が二人から数メートル離れた地面に突き立った。
魔眼の突進を防いだものの弾かれたのだ。
ギョロリと魔眼の一体が落ちた剣を睨んだ。
「どうする、道教の……拾い直すか?」
「……そうすれば魔眼が狙うのだろう?」
はあと神子が面倒そうに嘆息し『拳』を構え、それにサリエルが少し苛立ったような顔になる。
「ならば、こちらだ……妖夢殿、時間を稼ぐから大技を頼む」
「……剣士が格闘家に無手で挑むか、舐めてくれるな」
敢えて敵の得意分野で、挑もうとする神子にサリエルが青筋立てた。
インデックスに信仰の矛盾を突かれて以来の素の顔、それを曝け出した神子が更に挑発する。
「私は負けず嫌いでね、ところで……それとは別に一つ言わせてもらおう」
「……ほう、それは?」
「……信徒は妥協するべからず」
「何?」
「この言葉を宗教家として送らせてもらおう……『求める質』を落とせば君自身の『格』まで落ちるぞ?」
『難しい』『厳しい』宗教は信徒を遠ざける、がかといって緩めすぎれば堕落を招いてしまう。
腐敗からの既存利益の取り合い、そういったものの温床と成り得ると政治家であり宗教家でも有る彼女は知っていた。
その視点から見ると『信徒を甘えさせる』サリエルのやり方は正に『それ』だった。
「……余計なお世話だ、痛い目を見たいか」
「おや失敬、自覚が有るのか……」
ガギィンッ
痛いところを突かれたサリエルが拳打を放ち、神子が両手を重ねてそれを受ける。
が、直ぐ様次が来た、翼を一打ちして舞ったサリエルが捻りながら足を振り被った。
「続けて行くぞ、はああっ!」
「ぐっ、言い過ぎたかな……」
ズドンと音がし撓るような強烈な一撃が放たれ、咄嗟に神子は体を伏せる。
頭上スレスレを足先が掠め、がそこから拳打を放った神子が目を見開く。
ガギィンッ
魔眼が割って入った、拳を止めた魔眼がギロと睨む。
「ぬうっ、悪魔か……」
「今は従者付きだ、その程度届かんぞ」
跳躍の隙を埋めるように魔眼がカバーし、更に残りの三体が包囲からの弾幕を展開する。
ドンドンドンッと同時に光弾が目の前の神子に放たられる。
「くっ、不味い、外套で……」
チチチッ
ギリギリを掠めた、咄嗟に振るった外套で狙いを幻惑しつつ、神子がギリギリで間を抜けたのだ。
が、弾幕で外套焦がした彼女の体勢が崩れた。
ニヤリと、サリエルが邪悪に笑って前傾姿勢を取った。
「やはり、この間合ならば……負けない!」
「っ、不味……」
「太子さん!?」
彼女が走り出し、神子が顔を引き攣らせ、霊力を貯めてる最中の妖夢が叫んだ。
が、対処は間に合わず、助走からの拳打が放たれた。
「まず、一人……やああっ!」
ドンッと豪拳が振るわれ、『赤』が吹き出すように現れる。
そして、ピタと拳が止まる、意思有るかのように波打つ『赤いマント』に絡まれた状態で。
「……こいつの名はな、『赤マント』……そういう器物の魔性らしい」
ズドン
「な、何……ぐあっ!?」
「反則気味かもしれないが……おまけはそっちも居る、お相子ということで」
『先日調伏したばかりの下級妖怪』が呆然とするサリエルの側頭部を殴りつけ、一瞬眩んだ瞬間今度は神子が拳を振り被る。
今度は頬、フック気味の拳がサリエルの横っ面を張った。
「ぐあっ、仙人崩れ等に!?」
(……意表を突くには良いな、問題は強化の細かい部分はこいつの気分な点だが)
愚痴りながら神子は拳を振り抜く、着用者を強化するのだが『打撃強化の赤』と『射撃強化の青』のどちらかは彼の気紛れだった(今回は撃たれて堕天使に怒っただけだ)
そんな神子の心中等知らず、頬を打たれたサリエルがフラつきながら神子を睨んだ。
「貴様、やってくれたな……」
「いや、それは……『彼女』に言うべきだ、私に気を取られたな?」
が、神子は睨む視線を介さず笑みを返し、そこでサリエルはハッと『神子により一瞬意識から外れた少女』を見た。
ダンッと彼女が丁度一歩目を踏み込んだ、二刀を手に駆ける姿に堕天使が目を見開く。
「っ、しまっ……」
「遅いっ、桜花閃閃!」
「くっ、まだあっ!」
魔眼を追い詰めたのと同じ技、迎撃しようとした魔眼の下を一気に抜けた。
が、咄嗟にサリエルも腕を横に振るい、肘打ちに寄る反撃に出た。
そして、銀と青が交差した。
ギィンッ
「ぐっ!?」
「うあ……」
『朱に染まった銀髪』が、そして『青い羽根』が宙に舞う。
妖夢は無手で蹈鞴踏む、その額が強かに打たれ割れている。
しかしサリエルも追撃せず下がる。
その体が浅く斬られ、また反射的に盾にした翼に『深々と短刀が突き刺さっていた』。
「くう、羽のせいで急所がズレて……小器用な人だ、吸血鬼を思い出すな!」
悔しそうな顔で妖夢は下がり、が『ただ一人の彼女』は『自分の代わりに』『待機させていた半霊』に指示を出す。
攻撃には加わらせなかった、密かにある場所に向かわせていたそれに叫んだ。
「……半霊、七星剣を!」
ヒュッ
バシイ
半霊が放った七星剣を、丁度息を整え終えた神子がキャッチした。
「マークは外れたのでね……任せた、太子さん!」
「おうっ、任されたあ!」
ブンと神子が大きく七星剣を振り被って、慌ててサリエルは飛んで躱そうとする。
がその時、体の左右『二箇所』に違和感を感じた。
ガクンと、飛翔した彼女の体が止まった。
「なっ、何……」
右半身に『二重に巻き付く鋼線』が、左半身に『ピンポイントに展開した結界』が、正確に捉えていた。
視界の先で、サリエルの信徒を片手間に処理しながらこちらを睨む『天草式の今と前の指導者』と『大槌をその手に持つシスター』が。
『……好きにさせない、罰を受けろ、堕天使!』
「ま、まさか……この乱戦でこれを狙って!?」
「いいや即興だ、だがやれる実力と賭けに出る度胸が有った……理解したなら覚悟っ、詔承けては必ず鎮め!」
ギュオ
ズドンッ
その言葉と共に、彼女の握る七星剣が輝く。
霊力が束ねられて天を衝く程の柱となって、それから光刃が振り下ろされる。
そして『ブツンッ』という音がした。
「……まず一太刀」
「が、があああ!?」
ゆっくりと堕天使の、その右半身から翼が『ずり落ちる』。
彼女はギリギリでそれを盾にしたのだが、その代償は大きく、脱落した翼が地に横たわる。
「あ、ああ……貴様等あっ、どこまで私の邪魔を!?」
怒りの形相で彼女が叫び、僅かに神子達は顔を顰めながら数歩間合いを取り直す。
「ふむ、何て殺気……手傷負わせても油断するなよ、魂魄殿」
「わかっています、手負いの獣は手強いといいますし……」
警戒の視線の先で、サリエルがバッと腕を高く突き上げる。
ドンと『合図の大弾』を打ち上げた。
「この所業、後悔するなよ……船を、氷の矢を!」
「ちっ、あれか……『砲撃』が来る、注意をして!」
サリエルが仲間に叫び、神子が妖夢に警戒を促す。
すると彼方から、河川部から『特大の氷』が上がり放物線を描く。
そして『白光りする雷光』も。
ピシャンッ
「……っ、何!?」
彼女達は突如現れた『巨人』を見た。
オルソラや御坂姉妹達もその光景を、『大太刀を振り上げた巨人』が氷を砕くのを見ていた。
その中の数人が何が起きたかを理解した。
「わうっ、『奴』か……手駒にする動物の少なさは堕天使への恐怖と思ったのですが」
「……彼女だったのかも」
「……いいタイミングねえ」
椛にチルノに美琴は感心やら呆れるやら、複雑な顔で巨人を見上げた。
『……やるじゃない、涙子(佐天さん)』
『痴女』がボックスカーの座席で荒い息を吐いていた。
乗り物酔いと超能力者にやられた傷のぶり返し、そして長距離で『ある少女』を飛ばした負荷だ。
「ぜえはあ、吐きそう、もう無理……」
「……洗面所にでも連れてってやれ、女性陣」
アイテム車両、それを運転する浜面が『痴女』(強制労働で償い中の)結標を流石に心配した。
そしてそれから『もう一人』、一方通行に頼まれ送った少女のことも。
「あっちは……本人次第か、『最強に次ぐ超能力者』を追い詰めたらしいし大丈夫と思うが」
「友達思いな人ですね、『修行帰り』のところに第一位に押し付けられたらしいのに……」
こうして、場違いに乱入した堕天使にやり返すように、やたら回りくどく間接的に『別の神の眷属』が乱入したのだった。
今回はもう一話あり、そちらで完結です・・・